覇龍を発動させた俺は豪翼を展開、今も鳴き続ける一誠に向かい突貫する。
仮にも覇龍が相手だ、アリシアが動かない以上今のアイツを止められるのは俺だけしかいない。
「オオオオオオオオオン……!!!」
大切な仲間……アーシアを失った哀しみが、今の一誠を覇龍に堕とす迄に駆り立てているのだろう。
嘆きにも聞こえる咆哮を上げ、自らを止めんとする俺に向かってくる。
「オオオアアアアアアアアァァァ!!!」
怒りと哀しみの全てを俺にぶつけるが如く、襲いかかって来た。
だが正気がない上に中途半端な覇龍に負けられる程………生半可な人生は送っていないんでな。
「ゼァァァッ!!」
迫り来る一誠を逆に尻尾の一撃で上から叩き伏せ、そのまま追撃の踵落としを炸裂させる。
その一撃は大地に巨大なクレーターを作り、一誠を完全に沈黙させた。
「これがユウマ君の、『黒天龍王』の『覇龍』……!」
「ユウマ…先輩…!」
地面に叩き付けられた一誠は、俺を見上げるや否や、
『Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost!!!!!!!!』
口を開いて倍加を発動し、力を装填し始めた。
どうやら今の倍化状態では勝てないと本能的に判断したようだな。
だが俺には、『黒天龍王』には通用しない。
幾ら倍加させようが、幾ら半減させられようが……
『Vanishing!!!』
これで全て無意味になるのだから。
一誠に左手を翳し、纏った紫のオーラを握り潰す。それと共に一誠の全身に満ちていた充填中の魔力とオーラは突如霧散し、掻き消えた。
ゼローグの有する第二の能力、『虚無』によって今迄倍加能力によってチャージしてきた力の全てを零に戻したのだ。
『さあ、痛いの行くぞ……歯ァ食いしばれ!!!』
俺は未だ足蹴にしている一誠へ向けて、『捕食』を発動した。
するとマントの裏側から4体の巨大な龍の顎が出現し、一誠の両腕と両足に牙を突き立てた。
かくいう俺も右腕の爪を思い切り一誠の心臓部、コアを握り潰すように突き立てた。
「グオオオオアアアアァァァァァ!!!」
『始めるぞ、ゼローグ!』
『Predaton!』
ゼローグのコールと共に、顎と爪は一斉に一誠の力を急速に喰らい始めた。
今コイツの中で暴れ回っている赤龍帝の力全てを喰らい尽くし、神器を機能停止にすれば、一先ず時間を作れる筈だ………!!!
『Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost!!!』
ならばと言わんばかりに、一誠も再び力を倍加させようとしているが、
『させるわけねぇだろ』
『Vanishing!!!Predaton!!!』
その度に力の変動を打ち消し、力を喰らう。
一誠の抵抗も虚しく、やがて奴の暴れる力も弱まりぐったりとし始めた。
気づけばもう殆ど一誠の体から魔力やオーラを感じない。
『……今回は成功だ。貴様の力、確かに戴いたぞドライグよ』
ゼローグは静かにだが、久々に満足いくものを喰えた様で満足気に言った。
…しかしそろそろ3分だが、殺さないように捕食する事に神経を払っていたせいか、思いの外体力と魔力を消費してしまっている。
そろそろ覇龍を解かなくては、
「……ユウマ先輩!後ろです!!」
小猫に言われ直様振り返ると、一誠が既に立ち上がり俺に襲いかかって来ていた!
バカな、確かにお前の力は一滴も残らず喰らったぞ!もう立ち上がる力すら残っていない筈、だというのに何故……!?
『Divide Divide Divide Divide Divide Divide Divide!!!』
コール音と共に、大地から粒子が抜き取られているかのように色が消えていく……ってまさかこいつ、半減の力で直接魔力を地脈から吸い上げてエネルギー補充してるってのか!?
ヴァーリじゃあるまいし、まさか今のコイツにそんな器用な真似……いや、形振り構ってねぇだけか!!!
『Vanishing!』
直様ゼローグの力で半減で回復した奴の力を抹消、再び顎を複数展開して力を吸い上げんとするも、
『 Divide Divide Divide Divide Divide Divide Divide Divide!!!』
奴はそれをかわすと、次に眼前に収めた俺の力を半減し、
『Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost!!!』
吸収した力にまた倍化を行なっていく。
半減と倍加を同時併用するような輩に、殺さないように加減して立ち回りながら相手をするというのは中々どころか難易度バカ跳ね上がってないかこれ!?もうトドメ刺す方が簡単に思えてくるぞ!
ドクン!!!
心の中で悪態を突くと同時に、思考にノイズが走り、視界に罅が徐々に入り始め、思わず後ろに下がる。
それを見逃すまいと、一誠が攻め立ててくる。
「あれ、ユウマ君の様子が……」
「……まさか!」
「もう直ぐ5分、限界時間……ユウマ先輩!!」
『クソッ…時間掛けすぎた……!』
『覇龍』で正気を保ち、十全に力を振るえるタイムリミットも目前迄迫って来ている。
任せろ、と一度言った手前情けないにも程があるが、頭が痛みふらつきが出始めた中、俺はどうすればコイツを黙らせられるか思考を巡らせる。
その時だ、突然背後から巨大な音楽が聞こえて来たのは。その音楽を耳にするや否や、目の前の一誠が突然倍化と半減を止めた。
一体何事かと思いその音の発生源である方を思わず振り返って見ると、いつの間にかこちらに来ていたらしい紫藤イリナの持つ機器によって空中に何やらでかでかとスクリーンで映像が映っていた。
その画面上には教育番組のように鎧姿の一誠と子供達が写っており、
『おっぱいドラゴンの歌』
作詞:アザゼル
作曲:サーゼクス・ルシファー
ダンス振り付け:セラフォルー・レヴィアたん
と曲の情報が投影されていた。とその直後に、子供向けと思われるその音楽と共に映像の一誠と子供達が踊り始めた。
歌パートに入ったので歌詞も必然表示された、のだが……
歌詞を聞く毎に、何だか覇龍とはまた別に頭が物凄く痛くなるのを感じる。
仮にも聖書に名高き三大勢力のトップ連中が揃いも揃って何てもん作ってんだ……。しかもおっぱいドラゴンってネーミングよ!?よくこれが企画として通ったな、それでいいのか冥界……。
それにどんな思考回路をすればこの状況でこんな巫山戯た曲をかける気に、
『オ……オッ……パイ』
!?突如惚けていた一誠が唸り声ではなく明確な声を発したと同時に、……歌い出した、だと!?
「モミ…モミ……チュウ、チュウ」
……歌詞だ。こいつ、歌の歌詞を口にしながら、
「ずむずむ…いやーん……ポチッと」
指でおっぱいを揉み、乳首を押す仕草を延々と繰り返している。
う……嘘だろおい、こんだけ体張っておきながらこんな巫山戯た歌の方が効果的だって言うのか!?
「雄真、今すぐ『覇龍』を解いて離れろ。もう既に余裕がないのはお前の魔力残量から察しは付いている」
するといきなり後方より禁手状態のヴァーリが現れ、一誠に向けて半減を発動した。
『Divide!!』
完全にこちらが蚊帳の外になっている一誠に対して、更に半減を繰り返して削ったことで、一誠は完全に鎮静化した。
どうやら何だかんだ峠を越したらしいと判断した俺は、『覇龍』を解除した。解除すると同時に少しふらつき、解除と同時に魔力と体力の消費による疲労が体を襲ったが、右腕をヴァーリに支えられた。
「お前にしては珍しい、随分と疲弊しているようだな」
「まぁ、な…流石に今回は…疲れた。さっき喰らった赤龍帝の力もまだ体に馴染んで無いからか余計にダリぃし、……もう正直、意識保つのも限界だわ」
そして一先ずオカ研のメンバーが固まってる所に合流は出来たが、着くなりなんと『今こそ部長さんの乳首が求められている』等と朱乃副部長が言い出した。しかも質が悪い事に、かなり本気の顔で言っている。
部長さんがヴァーリの方に視線を向けるが、ヴァーリは露骨に視線を外した。これ以上この事案関わりたくないというオーラがひしひしと出ている。美猴は美猴で腹を抱えて笑いを堪えている。
最後に俺の方を見てきた、正直もう休みたいのでこれが最後と思い口を開く。
「……あの巫山戯た歌で暴走が収まった以上、胸でアイツを鎮静化出来るのは多分間違いないだろうな。だったらアンタが今やろうとしてるそれが最後の一手になる可能性は……まあ高いんじゃねーの?多分」
「…………わかったわ」
今の俺の言葉で意を決したのかは知らないが、部長さんは大きく深呼吸をした後、一誠の方に足を進める。
その歩みに一切の澱みなく、あの筆舌に尽くしがたい曲がループする中、部長さんは歩いていく。
既に半減で力を抜き取られ、例の歌によって鎮静化したがそれでも己の求める物を見つけ、
「オ、オレの……お、おっぱい……」
未だ震える指を部長さんの胸へ伸ばし、乳首を押すように触れた。
すると部長さんの喘ぎ声と共に一誠の鎧は弾け飛び、覇龍は強制解除された。
「…………雄真、一つ聞いていいか?」
盛大に顔を顰めたヴァーリが俺に質問してくる。
「………嫌な予感がするけど一応聞いてやるよ、何だヴァーリ」
「リアス・グレモリーの胸は奴の制御スイッチか何かなのか?」
真面目に悩んだ末に出てきたその言葉に、俺は遠い目をするしかなかった。
……この一件が物凄く馬鹿馬鹿しく思えてくる。一体何なんでしょうね、アイツにとってのおっぱいとは……
「お、お前制御スイッチって、それは酷ェな!」
美猴は腹を抱えて爆笑していた。そりゃお前からすれば大爆笑だろうけどさ、俺の『覇龍』何だったんだって話だよ。未だ支えられている俺は天を仰ぎながら
「…ったく、ただの骨折り損じゃねーか」
溜息を漏らす……しかし、オカ研の皆が覇龍の解けた一誠の寝顔を見て安心した顔を浮かべていたので、一先ず、この騒動が終息を迎えた事に安堵した。
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