第7話
俺は五月蝿くて目が覚めた。夏だから蝉の鳴き声で五月蝿くて目が覚めたと思うのが普通だろう。
だが違う、断じて違う!蝉程度なら無視して寝続けることが出来るのだ。だが、今の俺が起きた理由は
『サーゼクス様は眷属仲良く暮らしなさいと仰っていたわ!』
『ここは私とイッセーの家なの!お兄さまも朱乃も私とイッセーの間を邪魔ばかりするんだもの!もういや!』
俺は今、事情と言うか、なんと言うか、アザゼルの提案と兵藤の両親の懐の大きさで兵藤家で過ごしている。そしてアザゼルの提案が
親睦とお前の女性への興味を持たせるためだと言い出した。前者は分からなくはないが、後者は余計なお世話だと思う。というか俺がいたら邪魔で仕方ないと思う。
「たく、うるせぇなぁ」
体を起こし文句を言おうと立ち上がって気づく。あれ?この部屋こんなに広かったけ?俺は部屋を出てその広さに
「あっ……そっか……」
何かを悟るのと同時に
「な、なんじゃこりゃぁあああああああっ!?」
一誠の絶叫が上から聞こえた。ああ、あいつも知らなかったのか。とりあえず俺は着替えるために一度客間に戻った。
「いやー、リフォームしたんだよ。父さんも朝起きてびっくりだ。寝ている間に家ってリフォームできるんだな」
んなわけねーだろ。と突っ込みたいが十中八九部長の仕業だろう……悪魔の成すことには慣れていない俺がいる。
仕方ないんだよ。大体が脱走した悪魔の処理や、仕事で忙しいから面倒見てくれや、執事の代わりとして働いてくれとか、基本普通?の仕事を受けていたんだ。こんなのは普段見ることはないし。
今は兵藤母の手伝いで味噌汁を運んでいる。
「リアスさんのお父様がね、建築関連のお仕事もされているそうで、モデルハウスの一環でここを無料でリフォームしてくれるっておっしゃったのよ」
あってたまるかそんな話!ヴァーリ、兵藤家の両親が普通と言ってたけど……この適応力普通じゃない。俺がおかしいのか?俺がおかしいんだな?
今この食卓には兵藤一家と部長、アーシア、副部長、ゼノヴィア、そして俺が朝食を食べている。
「あっ、そうだ。雄真君!四階のお部屋使いなさいな。折角部屋が空いているのもの自分のお家だと思って使ってね」
「あ、ありがとうございます」
一誠のお母さんには頭が上がらないよ。突然一緒に住むことになった俺を受け入れてくれたし。お父さんは世間話をしてくれるし。平穏だなぁ……
朝食を食べ終え、俺は皿洗いを手伝っていた。
「あら、みんなのところに行ってもいいのに」
「いえ、お世話になっている身ですし、それにじっとしているのは落ち着かないのでやらせてください」
「あらそう?じゃあお願いするわね」
兵藤母を説得し、俺は皿洗いをテキパキとこなした。そして食後の珈琲を兵藤母と父に入れて、自身の荷物を持って、四階の角の部屋に荷物を置いた。
「にしても、本当に広いなぁ……」
そう言えば、一誠の部屋に集合だって言ってたな。よし行くか!
「冥界に帰る!?」
一誠が捨てられた犬みたいな顔をしている。俺は全員分のお茶を入れて、話を聞く。長期の休みの時は帰るらしい。そりゃね、帰る場所があるなら帰るに越したことはないと思う。
「そういう事でもうすぐ皆で冥界に行くわ。長期旅行の準備しておいて頂戴ね。八月の二十日過ぎまで残りの夏休みをあちらで過ごし、修行やそれらの諸々の行事を冥界で行うからそのつもりで」
部長のリアス・グレモリーの言葉に皆はしっかりと頷いている。
なんか忙しそうだな……うん?俺はどういう扱いになるんだろう
「部長さん。俺はどうしたらいい?」
これを聞かなければならない。俺は龍の力を宿して入るが、ヴァーリや一誠とは違い人間だし、リアス・グレモリーの眷属ではない。
もしかして、俺だけ普通の夏休み?
「貴方も同行よ。 折角の夏休みで、親睦を深めるために一緒に活動し始めたのに置いていかないわ」
「了解」
どうやら俺も冥界に行くみたいだ。ああ、冥界に行くのすげー久しぶりだなぁ。
「……海、生きたかったなぁ」
どこかにやついた顔で兵藤がぼそりと呟いた。
海かぁ……記憶にあるのは5歳に時に家族と海水浴に行った時の記憶しかないなぁ。
「冥界には海はないけど大きな湖ならあるわ。それに我が家には大きなプールもあるわよ?温泉もあるし、他にやりたいことがあるの?」
あ、どんどん一誠の顔がダメな方向に歪めている。
「……いやらしい妄想禁止」
案の定小猫が、一誠にツッコミを入れたが、遠い目になった。一緒にいた時間は一番短かった俺だが、そのツッコミの強さは弱く思った。気にはなるが、
「イッセーくん、想像以上にスケベな顔だったよ」
「先輩は想像力が豊かで楽しそうです……うらやましいなぁ」
「……短い間の付き合いだが、本当にすごいな」
木場は爽やかにいい、ギャスパーは心底うらやましそうに呟き、俺は呆れた表情で言う。
「お前らはこの夏は女の子とデートしないのかよ?」
「僕は修行があるからね」
「僕はいいです。……ひ、引きこもりなんで、インドア派だし、お家でネットしながら可愛い服を着られたらそれでいいんで」
「俺がここにいる最大の理由」
「お前はこれらの人生豊かに生きろよな!」
何か一誠が涙を流しながら俺の肩に手を置き言う。何だよ、俺が何したっていうんだ!?なんでそんな目で見るんだよ!
「おいおい、俺をのけ者にしても楽しいそうだな。俺も冥界に行くのにな」
『ッ!?』
「あなた、いつの間に?」
他の部員達は全く気付かなかったらしく驚いている。俺は2階に上がってくる段階で気づいた
「普通に玄関から入ってきたんだが。そりゃあお前たちが修行不足ってだけだ」
アザゼルは事も無げに答える。玄関から普通に来たのか、俺もまだまだだなというか、気を緩めすぎか?
「それよりも冥界に帰るんだろう?なら俺も行くぜ。俺は表でも裏でもお前らの『先生』だからな」
そう言ってアザゼルはメモ帳を取り出して開き読み上げる。案外几帳面なんだな。
「じゃあ説明するぞ。リアスの里帰りと、現当主に眷属悪魔紹介。あとは例の新鋭若手悪魔たちの会合。それとあっちでお前らの修行だ。俺は主に修行に付き合うわけだがな。お前らがグレモリー家にいる間、俺はサーゼクス達と会合か。ったく、面倒くさいもんだ」
「まぁ、そう言うなよアザゼル。俺が適当に冥界で名物買っといてやるから」
何だかんだ言って苦労している人だ。神器好きの研究マニアだけではなくて、世話好きのお節介な部分もある。苦労しているんだから労ってやらないとな
「おお!気が利くじゃねえか。じゃあ、アクマン饅頭三箱と真紅の激情涙を三本買っといてくれ」
ふむふむ、アクマント饅頭に真紅の雫ね……アクマント……向こうのマスコットキャラかなにかなのか?そして真紅の激情涙……涙と本だから飲み物系か。なるほどな
「アザゼル!アクマント饅頭は良いけど、確か真紅の激情涙は確かお酒だったはずよ!未成年に何買わせようとしているのよ!」
悪魔の世界でもやっぱりそう言うのはあるのか?いや、分かんねぇなぁ。
アザゼルはイタズラがバレた子どものように肩をすくめる
「じゃあ、饅頭と適当に酒のあてでも買ってくれ。それかお前がつまみ作ってくれや」
「ああ、時間があればな」
俺とやり取りを聞いてなのか小猫が聞いてくる。
「ユウマ先輩ってなんでもできるの?」
うん?どういう事だ?
「確かに、雄真って、料理ができたり、紅茶を入れたり芸達者だよな!どこで学んだんだ?」
ああ、そういう事か。そうだな、別に隠すことじゃないし教えるか。
「まぁ、知っての通り両親は死んで、アザゼルに拾ってもらったあとからかな。仕事でバルバトス家に呼ばれて半年執事として雇われたんだ。その時に仕込まれたんだよ」
「バルバトス家ですって!?」
部長が驚く。その様子に一誠が質問する。
「凄いんですか?そのバルバトス家って」
「普通に驚いたのよ。七十二柱の八番目の爵位の椅子にいる悪魔の家系よ。その執事として雇われたことがあるなんてね」
「まぁ……その時はド素人だったけど、根気よく教えてくれてな。二回目の仕事でこういう仕事かと思ったけどいい経験になった」
ああ、いい経験をさせて貰ったが、それ故に苦手なこともある。まぁそれは今は置いてい置こう。
「そんでもってリアス、俺は今回悪魔側のルートで行くつもりだからそっちで予約しておいていいぞ」
「わかったわ」
アザゼル先生の指示に部長が頷く。
そんな調子で打ち合わせは進んでいった。
冥界に行くのは久しぶりのような気がする。また、買い物に行かなければ……
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