ハイスクールD×D×R 転生者たちはイレギュラーズ 作:グレン×グレン
本作サブ主人公:幸希
真の主人公(自認):正一
原作サブ主人公も同然:祐斗
原作&本作主人公ズ:イッセー&和正の四人の視点でお送りします
本格的なコカビエルの行動が始まる前の、ちょっとしたひと時。
素直に受け入れがたい良い影響あり。どう考えてもアレな問題あり。原作とは異なるアプローチの精神的成長あり。原作よりエロ本っぽいお色気展開あり。
そんな感じで、どうぞ!
――
そして数日後。幸希はリアスとソーナに呼び出されていた。
幸希は、表向きにはアジュカのエージェントとして振舞っている。それは幸希の直接的には言いたくても言えない原作情報の残滓を、当人の明晰な頭脳とサブカルチャーに対する知識から「神様転生」という事実に思い当たったアジュカが、その知識から「ろくな事をしない神様転生は絶対出てくる」と仮定した事もあり、自分が遠因で生まれる犠牲を減らせた恩も含めて支援しているからだ。
その為、幸希は普段は地球における悪魔の管轄地域を渡り歩いて、アジュカの名代として抜き打ちチェックを行っている。そしてその過程で、同じ五大宗家に連なっている眷属を持つリアスとソーナが駒王町に住んでから、拠点といえるちょっとした高級住宅を購入し、年に三か月以上をそこで寝泊まりしている。
とはいえ顔合わせはあくまで仕事だけでだったが、ついに本格的な原作突入が起きた事もあり、コカビエルが来るまでに本格的に駒王町に逗留する準備は完了していた。
その為挨拶回りはしていたが、まさかリアス達から呼び出されるとは思わなかった。
そして、その内容というのが―
「……コカビエルが、教会からエクスカリバーを盗んで
―当然の事だがよく知っている事である。
コカビエルの目的は戦争再開。聖書の神が初代四大魔王と共に死んだ事で、どの勢力も戦争に対して及び腰な状況に我慢が限界に達し、堕天使勢力首脳陣で唯一の戦争継続派であるコカビエルが暴走したのがこの事件だ。
当初はエクスカリバーを半分奪ってミカエルを挑発。しかしその反応が芳しくなかったので、今度は魔王の妹二人を駒王町ごとこの世から消す事で、相手を激高させようという計画だ。
結果として白龍皇ヴァーリ・ルシファーが堕天使側の火消し役として派遣されて終わる計画だが、今後の状況がどうなるかは分からない。
なにせヴァーリ・ルシファーもまた問題児だ。アンチがいるなら徹底的に嫌ってもおかしくないタイプであり、イッセーのように何かが起きてもおかしくないだろう。
それもあってここまでやってきたし、既にアジュカには「とりあえず、ちょっと駒王町まで精鋭戦力を連れてこれるように」とは伝えている。
リアスもソーナも家族である魔王を呼ぶのには及び腰だった。とはいえ、ソーナは姉の暴走を懸念したが、リアスは婚約破棄の件で兄に余計な負担をかけた後ろめたさだ。このリアスなら比較的誘導の余地はある。
そのため、どちらにしても自分から話を切り出す予定だった。
しかし、今回呼び出された案件は意外だった。
「……コカビエルの一件について、連名の書状でファルビウム・アスモデウス様に一報を入れる……ねぇ」
まさか、誰にも関係がない最後の魔王を引き合いに出すとは想定外だ。
怪訝な表情を浮かべる幸希に、ソーナも少し戸惑った表情で眼鏡を直す。
「確かに意外な案ですが、ある意味最も最適な手札ではあります」
その言葉に、幸希も少しだけ考え―気づいた。
「……ああ。自分の町に潜入している、出方の分らない敵の最強格に対抗するなら、確かに最適解ね」
ファルビウム・アスモデウス。旧名ファルビウム・グラシャラボラス。
リアスやソーナの家族であるサーゼクス・ルシファーやセラフォルー・レヴィアタン、そして幸希の協力者であるアジュカ・ベルゼブブと肩を並べる、現四大魔王の一人。
彼の特徴を上げるなら、三つほどある。
まずは怠け者。ただし「怠ける為の努力は惜しまない」タイプで、全力で優秀な眷属を集め、自分はよほどの事がない限りはだらけても大丈夫な状況を作っている。例えるなら「夏休みの宿題をもらったその日に即座に取り掛かり、さっさと終わらせて残りを遊び惚けるタイプ」である。
とはいえこれは問題ではなく、重要なのは残り二つだ。
一つは、彼が冥界でも稀代の軍師であるという点
もう一つは、彼が防御という点においては魔王クラスの悪魔でも随一だという点だ。
彼に負傷を与える事ができる悪魔は最低でも魔王クラスである事が必須。真っ向勝負で彼に勝機を見出せるのは、それこそ現魔王政権下の悪魔では両手の指が余る程度だろう。
当然防御系の魔力運用にも長けているので、街中という「守るべきものが多すぎる」状況なら、魔王クラスでも別格であるサーゼクスやアジュカより適任ともいえる。
そして原作情報で大隊把握できている幸希以外には把握できていないコカビエルの行動に対して、最も正解に近い推測ができるのは、それこそ戦略戦術に長けるファルビウムが適任だ。何かあっても即座に駒王町の被害を最小限に抑える対応ができるだろう。
そして何より―
「これなら、誰の角も立たないわね」
妹大好きなサーゼクスとセラフォルーでは、下手をしたら必要を遥かに超える大騒ぎを起こしかねない。かといってアジュカとの縁は管理役であるリアスやソーナとは薄いので、いくら幸希がいると言っても、派閥の過激な手合いが余計な揉め事を起こす可能性はある。
しかし、あえて三人共に縁が薄いファルビウムを呼べば、「誰にも縁がないからこそ公平で、しかも状況的に最適任でしたから」という言い訳が出る。セラフォルーの暴走を危惧するソーナはもちろん、リアスや幸希にとっても余計なトラブルが生まれにくい。
完璧とは言えないが、然しこのままコカビエルと教会の戦いを静観するよりは遥かにいい。それも、守りに優れた彼がいれば、ニーベルという不確定要素がいる教会勢力が想定外の活動をしても対応できる。
原作を前提に置いた視点から見ても、あえてそれを除いた視点で見ても、100点満点で80点以上はとれるだろう名案だった。
「……意外ね。てっきり、兄を呼ぶか黙っているべきかと思ってたけれど」
素直に感心すると、リアスは苦笑した。
「ええ。私も色々考えたし、これまで以上に「もっとやれるようになりたい」って思えるの」
原作において、リアスは確かにこの時期から向上心が強くなっていた。
だがそれは、あくまでライザーに負けた事がきっかけだったともいえる。
紅真によってストレート勝ちした現状では、その時ほどの向上心はないと、幸希は思っていた。
だが、リアスの目には明確な「求める先」が見えている。
「彼は凄いの。彼は偉大なの。彼は輝かしいの。その主として、そして彼の光に照らされた者として、私はそれに相応しい存在になる義務があるわ」
その強い決意を示しながら、リアスは告げる。
「だからかしら。「お兄様に迷惑を掛けたくない」と「コカビエルというこれまでない脅威への対策」を両立する術を、ニーベル達の話を聞いてからずっと考えていたわ」
それを見て、どこか不安視するような眼をしながらも、ソーナは静かに頷く。
「結果論ですが、あなたが来てくれて助かりましたよ、櫛橋幸希さん。おかげでファルビウム様以外に縁があるので、逆に縁がないあの方を選択する言い訳ができました」
「ええ、まあそれが一番角が立たないわね。とはいえ、こちらも魔王様を呼び寄せるのだからそれなりの下準備はしておかないと―」
そうして話を詰める三人だが、幸希は片方と目を合わせると、何かを理解した。
紅真正一は色々と活躍しているが、同時に問題も数多い。
正義感が強いといえば聞こえはいいが、過激な正義の執行は排他性の極みだ。当然の如く、彼は行き過ぎた正義を行使しかけており問題視する手合いも数多い。生徒会に何度も関わっているソーナからすれば、その問題の後始末をする事になったので思うところがあるのだろう。
おそらく、ソーナはリアスにも違和感を感じている。普段の彼女ならしないだろう行動を、悪い意味でしてもいるのだ。
悪魔として絞めるべきところは締めるリアスが、紅真に限って言えば甘すぎる。眷属を甘やかすリアスとは言え、ここまでの甘やかしは行わない。
それに気づいているのだろう。おそらく、何かしら相談できる相手が欲しいのかもしれない。
(……それとなく、別件で時間をとるとか言った方がいいわね)
そう判断し、幸希はその辺りも含めた会話を考え始めていた。
……その結果、ソーナの家に行ってしまいもてなしの手作りお菓子という地獄に直面するまで、あと一時間。
幸希は「この苦しみを実感して取り込んでこそ、この世界に転生し同じ一人の命として生きる者としての務め………っ」と徹底的に乗り越える事になる。
「失せろ」
そして紅真正一は、ゼノヴィアにそう真正面から言葉で切り捨てられる。
そして、その言葉に面食らっていた。
「……おい紅真。お前俺を強引に連れて行ったあげく、思いっきり真正面から断られてるんじゃねえよ!?」
そして横から、
想定外の事態に理解が追い付いていない紅真は、それに気づかない。
なので匙はさらに激高し、涙をまき散らしながらわめき始めた。
「強引に「教会と共闘するからついてこい」とか言いやがって!! 完全に拒絶ムードじゃねえか、何考えてんだ!! 会長にばれたら確実にお仕置きが怖いんだぞこの野郎がぁああああ!!!」
限界まで揺り動かした結果頭がぶつかり、その衝撃で我に返る。
おかしい。どういうことだ。
理解ができず、紅真は思わず詰め寄った。
「どういうことだ!? そちらはエクスカリバーを破壊してでも回収したいといったはずだ!」
「そうだが、それがお前たちの協力を得ることに何の関係がある?」
にべもなく告げられる言葉の意味が、理解できない。
ゼノヴィアはもっと柔軟な信仰を持っている。悪魔ではなく龍の力を借りるならいいのなら、聖槍の力なら教義的にももっといいはずだ。
その確信が砕かれ、紅真は信じられないという感情を思いっきり浮かべる。
理解ができない。色情の塊の龍がよくて、聖槍をもつ正義たる自分がだめだということに、衝撃が強すぎる。
「……なぜだ?」
「なぜ、だと? 貴様は自分が何を言ったのか忘れたのか?」
殺意を浮かべ、ゼノヴィアは破壊の聖剣を取り出すと突きつける。
そのオーラに匙がビクリと震えるが、それを二人は意にも介さない。
「我々、主のために主の子らを惑わす存在を撃ち滅ぼすために命を懸ける我々を、快楽殺人鬼呼ばわりしたのを忘れたか!?」
いつでも切りかかれる体勢を取りながら、ゼノヴィアは歯ぎしりをしながら殺意をたたきつける。
目の前にいるものは怨敵だと、その眼と態度が告げていた。
「そのうえ、我らが主を殺人許可証呼ばわりするなど! そんなものの力を借りるほど、私たちは落ちぶれていない。どこまで我々を馬鹿にすれば気が済むのだ!!」
「馬鹿にだって? 俺は素晴らしい者たちが正しくあるべく手を貸しているだけ―」
その瞬間、襟首をつかまれて正一は後ろに飛ばされる。
とっさにバランスを整えて前を向けば、そこには聖剣を振り切ったゼノヴィアがいた。
攻撃をされた。それも、殺意がこもった当たれば確実に死ぬ攻撃を。
理解ができない。ゼノヴィアが自分を攻撃する理由がわからない。
唖然となる正一に、二方向から本気の怒鳴り声が飛ばされる。
「アホかお前は!! さんざんそんなこと言って協力してくれるわけねえだろ!? 俺を無理やり引っ張ってきたことといい、マジで馬鹿じゃねえかお前!!」
「全くだな! ニーベルや彼を慕い強く自薦した者達がいるこの状況下で、貴様らごとコカビエルを殺すことはあれ、貴様らと手を取る選択肢など、現状必要性が全くない!!」
信じられない事を言う二人に、正一はぽかんとする。
そしてあろうことか、二人は自分を差し置いて何やら意気投合したのか頷き合う。
「君もこの馬鹿に迷惑を掛けられた口か。悪魔とはいえ、そこだけは同情しよう」
「ああ。そもそも俺はこいつが嫌いなんだよ。こいつに対するやっかみで意気投合した兵藤達も、変態で覗き魔っていうかなりアレな連中だけど、そこに目を詰めれば良いやつらなんだ」
「なるほど。信徒としては唾棄すべき手合いだが、どんな悪人にも良いところは一つはあるということか」
「ああ。幸か不幸かあいつがやりすぎたおかげで割と抑えてるからな。なのに、こいつは何故か今でもちょっとでも隙があったら徹底的に罵倒するから」
何故か、匙とゼノヴィアが自分を馬鹿にする形で意気投合している。
ありえない。彼らが同じ生徒会に属する事は知っているが、この流れで何故仲良くなるのかが分からない。
兵藤一誠より正しい事をしている男を、兵藤一誠より悪く思っている事が理解できない。
「……なるほど。どうやら、神の加護でもこの世界を正すのは大変なのか」
分かってはいたが、目の当たりにすると中々きつい。
だが諦めない。絶対に成し遂げて見せる。
悪辣な男に女を引き付けさせてはいけないと、あの男が英雄と称される唯一無二の理由も排除した。素晴らしい者達が道を誤らぬよう、人を引き付ける力も求めた。
そして真に世界を導くべく、最強の力も求めたのだ。
全てが叶っている以上、自分は失敗などしてはいけない。
ゆえに、世界を救済する救世主の家族となった者達に、その力をより高める事が出来る環境へと連れて行ってもらった。
そして日夜己を精進させ、原作をより良い世界に導くべく、正すべき間違いは何か真剣に文に残し、毎日読み返している。
家族に己を高める為の資金を出してもらい、その上で槍術を免許皆伝まで極める中、それだけでは駄目だと屋外戦を考慮した軍式格闘術も習得し、救世主として相応しい立ち振る舞いができるよう、身振り手振りまで気を付けている。
何故か悪辣たる兵藤一誠達の味方をして自分を責める者もいる。朱乃や小猫はいまだ自分に対してどこか一線を引いている。しかも別の転生王者はこともあろうに、正しい事を成すのではなく、間違ったままの教義に準じたり、愚者を庇うような真似をしながら何時の間にか魔王に取り入っている。
……紅真正一は知っている。正義は必ず勝つのではなく、勝たなければならないのだという事を。守るものがあるから無敵な存在などなく、守れなかった時点で負けであるが故、守り切る以外の結末が許されないのだと。
生前の頃もそうだった。
悪を成し、隣の席の者に恥をかかせた者を正す為、学業成績、体育の成果、芸術系統の発表全てで己を高め、それを彼を比較対象にする形で見せつける事で、その苦しみを味併せて反省を促した。
しかし逆恨みで下種を引き連れて報復を試み、死闘の末叩きのめして警察に突き出したと思ったら、今度は強引に車を奪って自分をひき殺したのだ。
この世は本当に悔い改めるべき愚者が多い。ハイスクールD×Dもそうだった。
あんな女性を辱めるものが主人公な作品など言語道断だ。その在り方を改めさせる為、出来る事をしようと、正しいものが正しく介入できるならどうなるのかを描いた作品を投稿した。勿論「何故か」正義を成そうとしているのに迫害される、本来称賛されるべき者達をちゃんとした待遇にした形でだ。
にも関わらず、自分の作品は何故か徹底的な低評価がなされる事が多い。もちろん正しいものを知っている者達からは高い評価を受けているが、同時徹底的に低い評価を受ける事もあり、活動報告で問題視されるべき事を小論文として示しても、絶賛の声と共に酷評を超えた罵倒が送られる事も多いのだ。
だからこそ、正一は決して正義を曲げる事などしない。
ここで正しくあるべき姿からかけ離れれば、正しくあれるべき者達が正しくなれない。
ゲームマスターと己を謙遜する、正義なせる者を見出した偉大なる神。
彼に選ばれ黄昏の聖槍という人間最強の力を与えられた者として、彼の期待には答えなければならない。
そう。自分という男を選んだ目的など、面白そうなどといった誤魔化しでは隠せない。
「……諦めない。今が駄目なら、それ以上に努力するのみだ」
この世界を、より良い形で救済してほしい。
その希望を叶える為にも、紅真正一は止まらない。
かつては総理大臣を、そしてその果てに国連事務総長になり、世界をより正しい方向に導こうとするその志。一度悪意によって死んだ程度で、止まる事など決してない。
徹頭徹尾ゲームマスターという存在を都合のいいように解釈したまま、「
そしてその頃、祐斗は一人の少女から呼び出しを受けて、ハンバーガーショップに来ていた。
そして、とりあえず面食らった。
「……夕食が食べれなくなるんじゃないかい?」
「あ、大丈夫。私いつもこれぐらいおやつに食べてるから」
祐斗の、そんな引き気味の質問にそう返答するのはトレイヤ・ワンだ。
なにせ、祐斗はコーヒーと付け合わせ代わりのフライドポテトのSだけだ。夕食や栄養バランスを考えた選択で、実際時間的にこれぐらいがいいと考えている。
だがトレンタは違う。ミルクをLサイズで頼んでおり、更にハンバーガーとナゲットを注文。それもナゲットは最大数の15個セットであり、ハンバーガーは四つである。
君は、小猫ちゃんかい?
祐斗が内心で、大食家である同胞を思い描いたのは、間違っていない。
なにせトレイヤは普通に美少女だ。一見するとお嬢様のようにも見える私服だが、然し体つきはスポーツ系の部活についている程度には見える。
しかしこの食事量はそれにしても多すぎる。軽い感触といったレベルで食べるような量ではない。どう考えても、相撲取りとか「太らなければならない」人物がおやつに食べる量だろう。よく食べる小猫でも、この時間帯にこの量は食べない。
そう思って戦慄していると、トレイヤがふと何かに気づいて苦笑した。
「……あ、私ちょっとした特異体質なの。だから筋線維の密度がかなりあるんだけど、生きてるだけで勝手に筋線維が発達するからとにかくたんぱく質中心でよく食べないといけなくって」
「……ああ、そういうことか」
何とか氷解した。
そういう体質が存在するとは聞いた事がある。確かにそれなら大食いになるしかないだろうし、筋線維の密度が凄いのなら、一見してパワータイプだと思われない体格でもおかしくない。
だから苦笑していると、トレイヤはこちらに視線を向ける。
「イザイヤって呼ばれてたけど、私もそう呼んでいい?」
「……いや、あの施設でもらった名前には思うところがあってね。今は部長が付けてくださった、木場祐斗って呼ばれてるから、君にもそう呼んでほしい」
会った事はないが、しかし聖剣計画の生き残りらしい。そこに対して、親近感があるのは事実だ。
だから、祐斗は少し気になった。
「それより、トレイヤって呼んでもいいのかい? 正直、あの施設での経験は思い出したくないと思うけれど」
「あ、そこは気にしなくていいよ。私は事故で両親が死んでから拾われたから、名前は親の形見みたいなものだからさ」
そう告げるトレイヤは、苦笑交じりで空を見つめる。
そこに映っているのは、きっとその時の光景なのだろう。
「孤児になって半年で死にかけたし、はっきり言ってあそこに拾われた時は助かったと思ったなぁ。「実験内容の比較」とか堂々と言ってたから、たぶん君達とは投薬の量を変えたりとかしてたんだろうけど、私は家族も何もかも失ってから、這い上がるチャンスが得られたんだって、あの時は思ってた」
「……そうだね」
その言葉に、祐斗は同意する。
神に選ばれる為だと。選ばれた存在になる研究だと、彼らはそう言って自分達を実験に使っていた。
それが、聖剣に適合しなかったから処分などと許せるわけがない。
彼らもまた、聖剣に選ばれる事を夢見てただろうに―
「だから、他の子達とは、あまり仲良くなれなかったかな」
―それを、トレイヤ自身が否定した。
「……え?」
「え? やっぱりそっちは違うのかな? 私のところは、エクスカリバー使いになって栄光をつかむ! ……とか考えてなくて、コックとかお花屋とか、普通の夢を叶えたがってたから……さ」
その言葉に、祐斗は何かを思い出す。
あの苦しい実験に耐える日々。今はもう苦痛になるので歌えなくなった讃美歌を支えにした日々。それでもみんなで寄り添って生きてきた日々。
その日々で、彼らはエクスカリバー使いという栄光を、求めていたのだろうか。
「私はむしろこう、勝ち組系能力をゲットして、それを足掛かりに今まで以上の素晴らしい何かになってやるんだーって感じだったから、私はあんまり馴染めなくてさ。まあ、おかげで毒ガスを加護を与える系の魔剣でどうにかできるって気づいて、わき目も降らずに逃げたんだけどね」
そう言って寂しげに苦笑するトレイヤは、そのまま天井を見上げる。
「……今にして思うと「助けられなかったのか」と「助けようがなかった」って思うけど、幸希さんに拾われるまでは、生きていくのも大変だったから、そんな風に思えなかった」
そう言いながら、トレイヤは祐斗に顔を向ける。
「どうだった? 君達は、勝ち組を目指してた?」
「………いいや」
静かに、祐斗は首を横に振った。
「少なくとも、聖剣使いにしてくれなかった事で、恨んだりするような子達じゃなかったよ」
「そっか。じゃ、もう帰るよ」
と、トレイヤは立ち上がる。
きちんとトレイも持っているが、トレイの上に飲食物は欠片もない。
……何時の間にそんなに食べてたのだろう。一周回って寒気すら感じてきた。
そして祐斗に、トレイヤは寂しげな笑みを浮かべた。
「悪いけど、上昇志向がないなら縁がないね。仲間意識はないでもないけど、たぶん感性が違うから、あまり一緒にいると返って揉め事になりそうだから」
「……そっか。うん、そうだね」
確かに、その通りだ。
聖剣エクスカリバーに選ばれる存在になる為に頑張っていたトレイヤと、幸せな日常を得る為に耐えてきた祐斗達。
決定的な断絶をトレイヤは感じ、それを祐斗は否定できない。
だから、これからは深く付き合う事はないだろう。
精々だが、主同士が付き合いを持った時に付き合うといった程度だ。それぐらいにしかなりようがない。その程度の関係性しか、築き上げる事が出来そうにない。
だけど―
「……冥界に、彼らの墓を作ったんだ」
「……そっか。一度だけ行ってもいいかな。お線香とか、必要?」
その言葉に、祐斗は苦笑した。
「ああ。確かに聖書の教え式よりこっちのほうが良さそうだね」
―それでも、なにかはきっとある。
「あ、それとね、なんか自然とHなこと好きになってるし、ハニートラップって女だからこそできるコネ作りの方法だと思うんだよね。よければ、次期七十二柱本家当主との縁作りにどうかな?」
「……そういうのはしない主義だから。あと、正一くんは本気で怒るから、あまり彼の前で言わないようにね」
―あっていいのかと、一瞬本気で思ってしまった。
「……童貞卒業、いいよな」
「いいよなぁ、まったくだ」
俺とイッセーは、幸希の家の風呂でまったりしていた。
豪邸すら一夜で作れる悪魔パワーで修復された風呂。そこで、俺達はまったりしていた。
イッセーのいきなりの禁手もあって、とりあえず時間をおいてから悪魔関係の説明や、俺がイッセーを助けた事も説明。
あと天野夕麻ことレイナーレの正体や行動の理由、んでもって既にくたばってる事も説明した。
イッセーも流石に動揺してたけど、それもすぐに終わる。
そして終わった理由は簡単だった。
「ん~っ! 折角童貞食べるの一番だったのに、結局半端で終わったからね! これで雪辱戦、終了っと!」
と、さっきまでシャワー浴びてたこのポニテの少女だ。
身長は小猫と同レベルだが、れっきとした俺達と同年代。すなわち高二に相当する十七歳。
その名も、
……可愛かったです。あともぐもぐ下半身で食べられたとです。
そして別の意味で気持ち良さそうにお湯につかる姿を見て、湯船の中のちょっとぼやけた下半身を見て、俺はイッセーと顔を見合わせる。
「……お風呂に入った女の子を、同じお風呂の中で見る」
「……最高だな。仲良くやろうぜ、兄弟!」
俺達は腕を組んで、友情を誓い合った。
「お! だったらもう一回やる? お風呂でやってたから、そこまでやってからリベンジだよね」
……すいません。ちょっとそうなると理性が持たないです。
っていうか。
「性に奔放だよな、幸希にしろ桃華達にしろ。……なんで?」
俺、そこがすっごい気になるんだが。
と、そこで桃華は指を顎に当てて上を見上げ―
「そだねー。僕達色々遭ってストレス溜まってた時期あってさー。幸希さんもディーザさんもストレス溜まってたけど、幸希さんが上級悪魔になったのは特例だから、余計なトラブルを起こさないように実績作るまでは質素な生活してたんだって」
ああ、そういや特例で上級悪魔にいきなりなったんだよな。
やっぱり色々言ってくるやからはいるか。……上級悪魔社会の闇か。ストレス、溜まりそ~。
で、それが何で?
「だからこう、金をかけないストレス発散を追求してね? 同じようにボクやトレイヤが来た直後もボク達ストレス溜まるから……発散しないと、ね?」
………。
ああ、つまり―
「―金をかけずに快楽むさぼって発散しようとして、いつの間にやら染まったと?」
「うん。ダメ?」
俺の確認に、小首を傾げるのは卑怯ですよ桃華さん。
「むしろエッチな女の子もお姉さまも大好きだぜ!! っていうか、つまり幸希さんともあとで……うぇへへへへへ」
イッセーが妄想の世界に飛んで行った。
「あ、それはそれで面白いかも。最近幸希さんとはご無沙汰だったしね。イッセー、ダシになってくれる?」
その言葉に、イッセーは桃華と無言で通じ合い……右手を握り合った。
「おぬしも悪よの~」
「いやいや~。お代官様なイッセーほどでは~」
………
「俺も混ぜてください!!」
俺も欲に負けました
そしてこの日の夜、事態は急展開を迎える事となる。
っていうか、そもそも夜ににゃんにゃんしてる場合じゃなかったしな!!
幸希視点で「正一にもメリットはある」と思わせて、正一視点で「やっぱこいつだめだ」にさせる二段構え。
正一の名前の由来は当人の視点の通り。「転生できる以上、自分が紅にふさわしくないイッセー以上の正しく一を関するに値する主人公になる!」という自己認識が原因です。
なので、彼は常に「兵藤一誠より正しい主人公でいる」という行動パターンをとっており、それゆえに「正しい人は兵藤一誠より自分を肯定する」という方程式を脳内で常にとっております。
その大前提ゆえに彼が破滅するまで、脳内プロットの予定で半年前後。
そして祐斗はそんな半年ぐらいに自覚する勘違いに、祐斗はトレイヤとの会話で気づき始めております。
トレイヤは普通レベルの生活からどん底に落ちたこともあり、割と上昇志向が強いキャラです。さすがに外道手段で強くなる気はありませんが、正攻法で成長できるなら高みを目指すタイプ。
なので聖剣計画の被験者たちとは壁を感じるキャラ造形であり、それゆえに祐斗に自覚を促させるにはふさわしいと思ったので、あえてこんな感じにしました。
あと彼女の戦闘スタイルを思いついた時に「あ、これ最近知った特異体質向きじゃね?」と思ったので、大喰キャラになりました。
そして主人公ズのエロ相手として、現幸希眷属最後の1人が判明。まあ詳細事情はアトですが、とりあえず幸希眷属がエロくなった理由は判明しました。
「金もなくストレスフルな生活を発散するには」を追求したことがきっかけでこんな感じです。すべて幸希が悪いが、キモオタヒッキーがエロで自家発電するのは珍しくないと思う(偏見)なので、こんな感じです。