ハイスクールD×D×R 転生者たちはイレギュラーズ 作:グレン×グレン
ここで、事前に告げた和正の謎が明かされます。
と、とりあえず俺たちは昼飯を食べ終えた。
その後食器を軽く洗ってから、レディッドは冷蔵庫から牛乳とチョコレート、そしてウイスキーと天然水を取り出すと、更に冷凍庫からコンビニで買っていた氷を出し、そのままテーブルに広げる。
そして自分のコップにウイスキーと牛乳と氷を入れてかき混ぜながら、レディッドは俺達に目を向ける。
「酒の種類はあんまりなくてな、ロックにするか水割りにするかウイスキーにするかは自分でやってくれ。もちろん牛乳のみでもいいし、缶でいいならビールやコーヒーも少しはあるぞ?」
「ああ、じゃあ私は水割りで。和正は水割り? ロック? それともカウボーイ?」
「いや、カウボーイってのがよくわからねえし、そもそも俺は未成年だし」
未成年に酒を進めるなら大人ども。っていうか幸希は教師だろ?
俺は半目でそういう非難を向けてみるが、レディッドはため息を吐くと、いきなり自分がやったのより牛乳を多めに入れたウイスキーと牛乳の混ぜ物を作り、俺の目の前に置く。
「ほれ、これがカウボーイっていうウイスキーのカクテルだ。お前も転生者なら人生の総数は三十行くだろ? こっからインフレバトルが加速するってのに、酒の経験もないとか人生を三割ぐらい損するぜ?」
つっても、酒の経験がないやつがいきなりウイスキーとか、やばくね?
そんな風に俺が躊躇していると、レディッドはテーブルの隅にあった籠を俺の目の前に置く。
スティックの砂糖、ガムシロップ、更にメープルシロップの小袋が入っていた。
「別に、これを入れるってのも普通にありだ。とりあえず経験ぐらいしといた方がいい。いつ死ぬかわからない時代に突入するなら、経験して損はない経験は、しておいた方が人生に無念は少ないと思うぜ?」
そう言われて、まず俺はチロリとそのまま一口。
……やっぱちょっと苦みがきついな。とりあえずガムシロップを入れよう。
そんな風に俺が味を調整していると、幸希は意外なものを見るかのような目をレディッドに向ける。
「意外ね。主人公の力を持っているやつが死ぬわけない! とか言いそうだったけれど」
あ、確かに。
イッセーの力を奪い取ったんだから、自分が主人公だ―! とかそんなこと思ってるやつなんだろうなぁとは思ってた。
そんな俺達の偏見に、レディッドは半目を向けた。
「馬鹿じゃねえの? 主人公の力持ってれば死なないとか夢物語だろ。現実に生きるやつが考えていい価値観じゃないっての」
うんおっしゃる通り。俺もその辺は完全同意だし、幸希も今はそう心掛けているはずだ。
だけどまさか、
そんな感心というか困惑というか混ざり合った視線に、レディッドはため息をついた。
「さんざんな印象だな。ま、そう思われるのも無理ねえか」
そう切ると、レディッドは静かに一呼吸入れ。
「そもそも俺、こっちで同類に会うまではD×Dの知識もろくにねえからな? 赤龍帝の籠手が主人公の持つオンリーワンとか、知らなかったからな?」
ん?
ん?
ん~?
「「……はぁあああああああああ!?」」
なんでだよ!?
思わず俺と幸希の絶叫がハモったのは、言うまでもない。
「なるほどなぁ。おたくらは程度はともかく原作を読んだ事あるのか。やっぱ普通はそうだよなぁ」
うんうんと、俺達の転生時の概要を聞いたレディッドは、感心しながら頷いた。
いや、普通そうじゃなきゃおかしいだろ。
神様転生でハイスクールD×Dの世界に転生させられるんだぞ? 流石に最小限の知識ぐらいはあるだろ、普通。
俺は本気でそう思ったんだが、口にするよりより先にレディッドの行動に面食らう。
いきなり、レディッドはテーブルに両手をつくと、そのまま頭を下げる。
「とりあえず悪かったな転生極帝。俺達のあおりでその気もねえのに転生とか、いい迷惑だったろ?」
あ、謝られる理由が分からない。
なんでお前らのあおりで俺が転生? っていうか「ら」?
あと、そもそも転生極帝って何なんだよ。
俺がパニくっていると、幸希が我に返って鋭い視線を向ける。
「……とりあえず、教えてほしい事がいくつかあるわね。転生極帝ってなに? この世界に転生した者は転生王者とその落選した手合いだけじゃないの?」
「……あ~。あのゲームメーカーはそういう方向でも悪辣な事してたのかよ」
あ、転生落伍者は幸希が独自に名付けた名前だったから、レディッドは知らないか。
っていうか、「そういう方向でも」だと?
それ以外にどういう方向で下種な事してるんだよ、引いて良いか?
俺がそう思っていると、レディッドはカウボーイを一口飲んで、その上でため息をついた。
「……正直に語るぜ、オタクのチートが明らかに多いのは、ある意味で俺達の所為だ」
と、いうと?
首を傾げる俺の前で、レディッドは静かに告げる。
「お前は転生王者の頂点に立つ転生極帝。上位神滅具のそのまた頂点、
………はぁああああああああ!?
そう、俺が転生王者としてスカウトされたのは、体感時間で25年ほど前だ。ちなみに俺は二十四歳だ。
人生の始まりから詰んでいた俺は、まあ結局そのまま裏社会で身を立てる事になり、落ちぶれたまま逆恨みが三割ぐらい入っている殺され方をした。
自分でいうのもなんだがあれだからな。同情されるのは分かるが、かと言ってチートもらって転生するような生き方をした記憶がない。
なんで、俺は真っ先に質問したんだよ。「なんで、そんな事をするんだ?」ってな。
で、その答えが簡単だった。
「そういう人達が転生して、世界ごと右往左往するのが見たいんだよねー」だとよ。下種以外の何者でもないよな。
あと人数も神滅具の数だけとか言ってたけど、なんか詐欺一歩手前の「聞かれなかったから」って事を聞いたんで、「スカウトした奴全員、チート全部叶えて転生させるのか?」って聞いた。
これまた答えはきちんと言ったよ。
ただし「いや~? 断られる事も考えてるし、面白く出来なさそうなやつはそれっぽいのだけ与える程度しか気を使わないね~。ま、産まれさせてはあげるけど」とか不安な事言ってた。たぶんそいつら面白く出来なさそうなやつが落伍者なんだな。
なんでまあ、俺はどうしたらいいか考えたよ。
実をいうと俺、サブカル業界には全然明るくない。義務教育すらまともに通ってない。サブカル系の作品なんて、たまたまお得意様が置いて行った「フルメタル・パニック」とか「未〇日記」を読んだぐらいだ。
なんで、このとんでもない連中に巻き込まれてチート得ても上手く生き残れる自信もなかった。
そして記憶も継承できないなら尚更だ。折角二度目の人生を得られるんだから、やりたい事もあるし失敗はしたくないからな。
そこで俺は考えた。
「なら、知識のあるやつから教えてもらおう」って感じだ。
そしてゲームメーカーは少し考えて「俺と同じレベルで深入りした質問をしたやつだけ」って条件で、何人か集まって相談する事が出来た。
おかげでだいぶD×Dの知識をもらったよ。その時「なら赤龍帝の籠手をもらうといい」って教わって、他にもアドバイスをもらったんだ。
……ま、「転生情報の開示にペナルティがあるなら、宿っているドラゴンの意識は封じておけ」とか言ってたから、素直に聞いたのは失礼だったかねぇ。プライベートがちゃんと守られるのはラッキーだけど、ちょっとドライグってのには可哀想な事した気になってきたぜ。
ま、とりあえずその辺で色々と話し合った時に、一つの意見が出たんだよ。
「そもそも生き残ったり願いを叶えたいのなら。可能な限りチートは多い方がいい」
まあこれは正論だわな。チートなんて言う物は強力なのが基本だから、あればあるほどいいのは事実だ。
財力、武力、知力、権力。大抵「力」なんて文字がついている物は、あると面倒ごともついてくるが、欠片もないよりはあった方が良い事が多いもんだ。
なので「どうやって自分達のチートを増やすか」って方向で話が進んだ結果、こんな結論が出た。
「―――そうだ、俺達以上の絶大なチートを持っているやつを作れば、相対的に格下の俺達もチートが増えないか?」
……そんでもってゲームメーカーにそう告げた結果、通ったんだよ。
結果として「大半の転生王者のカウンターになるやつを見繕うよ!」とか言ってたんだが―
「まあ、転生に乗り気じゃないやつなら、転生に乗り気な奴のカウンターになりやすいけどなぁ」
遠い目をしたレディッドは、意を決すると勢いよく両手をテーブルにつき、頭をテーブルに激突させた。
「マジ悪かった! 詫びっちゃなんだが、何かあったら言ってくれ。ある程度は無理をしてでも優遇するから!」
「え、あ、どうもありがとうござい……ます?」
まさか本気で詫びられるとは思わなかった。
っていうかなるほど。そういう展開かよ。
……俺が転生王者になったのは、こいつらのチート増量のとばっちり……かぁ。
うん。
「殴っていいか」
「死なない程度で」
潔いな。
というより、そのメリケンサックどっから出した。
っていうか俺に渡すな。なんでだよ。
「急所さえ外してくれれば、そうそう死なないから大丈夫だ。何せ俺は戦車の駒二駒で転生してるからな」
そう言いながら真剣に言い切った。
曇りない瞳だ。まっすぐだった。
だから俺は―
「殴らねえよ」
―殴る必要を感じなかった。
「……いいのか?」
「ああ」
そう答えると、俺は座り直して、カウボーイを一口飲む。
ああ、まあ思ってた事は色々あるんだよ。
チートもらって転生した連中は、基本ろくでもなかった。
幸希だって、自分の過ちに気づくまでは似たような手合いだったわけだ。確かにゲームメーカーの言う通り、引っ掻き回しそうな手合いだな。
しかも俺の役目はカウンター。実に迷惑だって話だっての。
完璧にとばっちりだ。ゲームメーカーはぶん殴りたいと心から思っている。
だけど……。
「真剣に謝れるような相手をぶん殴る暇があるなら、もっとろくでもない連中を効果的に殴れるように鍛えるよ」
実際、こいつはましなんてもんじゃない。
少なくとも、きちんと自分がした事の責任を感じれる。そういう奴だ。
だからまあ、俺が言う事はただ一つ。
「何かあったら頼るから、その時は力を貸してくれ。それでちゃらだ」
「そうね。この状況下、他にどんなチート持ちが出てくるか分からないんだし、協力してくれる転生王者は多い方がいいわ。……アジュカさんにも紹介しましょうか?」
幸希も苦笑しながらそういうが、レディッドは静かに首を振った。
「あ、悪い。俺の立ち位置だと、現四大魔王と個人的かつ密接なつながりがあるとややこしいことになるんで、パス」
「あらそうなの? 確かにあなたが仕えるグマリオ・グラシャラボラスは、大王派よりではあるわね。大変ね、そちらも」
「ま、派閥のしがらみは無視できなくてね。その辺、リアルな問題は色々あるってことさ」
と、幸希とレディッドで何やら意気投合した。
あ~。確かに大王派よりの主を持ってると、現魔王ベルゼブブの懐刀的なイメージありそうな幸希と仲良くなりすぎるのはまずいなのか。
色々大変そうだな、悪魔って。
だけど、まあ。
……こういう奴が赤龍帝なら、少しは期待できるのかねぇ。
そして戻ってきたイッセーやディーザと共に二人は帰り、レディッドは静かに夕暮れを見る。
このホテルのある立地からは、いい夕焼け空が見れる。これが特に気に入っている。
前世の頃は楽しみも少なく、夕焼けを眺めるのが数少ない娯楽の一つだった。
そして、兵藤一誠という本来の赤龍帝がそれなりに幸せな環境にいるのには本心からほっとした。
主人公という人物は、いやがおう無く平凡からずれた物語を経験する存在だ。ましてインフレバトル作品で高校生とくれば、その手の作品をよく知らないレディッドでも、一年かそこらで死線を何度もくぐる事になるぐらいは想定できる。
もし神滅具を失えば、主人公は死ぬのではないだろうかとは思っていた。
ついてない事に他の上位神滅具担当は、どいつもこいつもD×Dに詳しかった。なので基礎知識はもらえてもキャラクター関係の知識はあえて告げられなかったので、その辺に関して知った時は文句を言いたくなった。そういう男だから言わないと判断したのだろうが、心の問題というものがある。
てっきり未来〇記で3rdみたいな「強力だが一話で退場する人物」の能力だと思っていたらこれである。文句の一つぐらいは言いたくなるものだ。
チートの一つに「本来赤龍帝の籠手を得るだろう人物に、埋め合わせで何か与えてほしい」とは言ったが、それがなければどうなっていた事か。
……むしろ堕天使に狙われる事もなかったのではないかと思い、苦笑する。
同情する資格など自分にはない。
兵藤一誠から力を奪った事ではない。そもそもの大前提として、「世界の敵」たる自分達が、そんな善意を敵対するだろう相手に向ける資格がない。
そう。レディッドは自分が悪だと思っているし、それを恥ずべき事だとも思っている。
前世のように「するしかない」状況でもないのに、わざわざやるなど愚かの極みだ。
蔑まれる。怒られるだろう。恨まれるだろう。間違いなく自分達が将来起こす事は億単位の命を奪う行動であり、今を生きている彼らが怒りを覚えないわけがない。
だが―
「―そんな世界だからこそ、正義の味方は現れる」
―そこまでしてまで見たいものに、レディッドは強い渇望を覚えている事を自覚している。
ああ、見てみたいのだ。
この「正義の味方が勧善懲悪を成す作品」だった世界。現実という、勧善懲悪など基本ありえない理不尽が横行し続ける世界。
そのどちらでもあるこの世界。そんな世界を、闇に包む存在から、守る事が出来る者は果たしているのだろうか。
いるとするのなら、そんな中で原作の主人公である兵藤一誠はどう出るのか。
見たい。
見てみたい。
目に焼き付けたい。
世界の理不尽をいやというほど知った自分だからこそ。そんな世界の理不尽の流れに流され、自らも理不尽となった自分だからこそ。現実に正義の味方なんて存在を見る事なく死んだ者だからこそ。
例え悪になってでも、正義の味方の輝きを真っ向から浴びてみたいというその欲に、彼は決して逆らえない。
「ああ、頼むぜ。
運命は本来の主人公を見捨てたりはしなかった。
そして
だから手を貸そう。
強くなれ、そして正義となってくれ。
決して、自分のような愚かな悪党になど敗けてくれるな。
勝って、世界に正義の光を示してみろ。
そんなどうしようもない渇望を内心で吠えながら、レディッド・キャニアはカウボーイをあおる。
腹の底から生まれる熱が、酒によるものか渇望によるものか、レディッドには判別しきれなかった。
のちに「赤龍魔帝」と称される男、歴代で最強で最悪でそして最も悲しい赤龍帝、レディッド・キャニア。
正義に焦がれるがゆえに悪であり続けなければ我慢できないこの男が、冥界の英雄の一人から、冥界最大の敵の一人となるまで、あと一年前後。
和正「俺のチートなんで多いの?」
レディッド「俺たちのチートを強化してもらうため」
ちなみに各種転生者のチートは
幸希たち普通の転生王者<レディッドたち上位神滅具相当<転生極天である和正……となります。ほかの転生王者の持つチート関係の高い適正は、和正の持つ特典ですね。
そして基本的に共闘可能……と見せかけて、最終的に敵になる男であるレディッド。ちなみにハンドルネームをわかりやすくしていた部類なので勘づいている人も多いでしょうが、あのチャット会話で赤龍はレディッドです。
あとあのチャット会話のメンバー全員が上位神滅具相当です。つまり全員が紅真やニーベルより強大なチートを持っており、それゆえに超がつくほど強敵です。
とはいえ、レディッドは他の四人とはちょっと毛色が違うタイプ。その辺に関しては、赤龍帝の籠手の本来の所有者がどんな人物かも知らないのに、埋め合わせを頼んでしまったことからもわかるかもしれないです。
しかし同時に最終的に敵確定です。彼は自分達の行動が悪であることを自覚し、それに後ろめたさを感じられる程度には善良さを持ち、サイコパスからは程遠い男です。
しかし同時に、それを自覚したうえで踏みにじることに前世で慣れております。さらに、今の彼はそうしないではいられない渇望を持ち合わせています。
他の四人とは異なる視点を持つ彼は、総合的にみて上位神滅具相当転生王者の中では、和正たちに対するライバルキャラに近く、同時に邪龍戦役まではトリックスターに近い立ち回りをします。
彼によって大きな変化が生まれてもおかしくない。そんなことにしたいと思っています。
あと、ドライグそのものは登場します。予想外か予想内になるかはわかりませんが、結構燃える展開になると思うのでお楽しみに。
イッセーの神器に宿る朱炎龍の名前ですが―
-
自分でつけてみたいから活動報告プリーズ
-
適当に考えていいよ?
-
興味ないからモブでいいっす