ハイスクールD×D×R 転生者たちはイレギュラーズ   作:グレン×グレン

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 前回の補足で説明が足りなかったので、ディーザと曹操の星辰光について追記を。

 といっても、能力説明ではなく名称についてです。

 二人ともあえて神話系統から話したネーミングにしています。

 ディーザの場合はクレーリア・ベリアルの眷属悪魔から櫛橋幸希の眷属悪魔に移ったこともあり、それに由来する形ですね。皇居はディハウザー・ベリアルが皇帝と呼ばれているところから、ブルーは櫛橋がつかさどる清流と、上級悪魔が事実上貴族―いわゆるブルーブラッド―であることに由来します。

 逆に曹操の場合は、意訳すると「フェイディビデスは勝利と言い残した」とでもいうべきですね。
 フェイディビデスとは、マラソンという概念のある意味で原型となった人物。マラソンの語源であるマラトンの戦いで勝利したことを伝えるため、全く舗装されてない道をなん十キロも走り、勝利したことを王に伝えて息絶えた伝令兵です。
 曹操はイッセート最初にあったときも「蒼天の元、弱っちい人間がどこまでいけるか試したい」といっていますし、のちの話でも「前から登ってみた山を登ったとき、さらにその先の向こうに山がある景色をみて、その先を見たい」というモノローグがあるので、たぶんそれが原風景なんだろうなぁと思っております。

 そこから発展して「命尽きるまで進んだその先で、自分達が勝ち進んできたことを宣言する」といったイメージで作りました。








 あと感想で「なんでいきなり戦争? 普通に要求してからでいいじゃん」といった感じの南洋同盟の行動に対する疑問が出てましたが、これに関しては「ほぼ確実に却下されることをわざわざ言ったら、行動を起こす前に警戒されるだけ」という観点ですね。
 異形や異能を一般社会に広めないのが異形社会の不文律で、世界各国もそれに歩調を合わせて対応しているのがD×D世界であると、原作を読んで自分は判断しました。実際CIAやMI6に異形担当部署があるそうですし、これはほぼ確実かと。
 なら国家にすらその辺のごまかしを担当する部署があるでしょうし、そんな暗黙の了解がある状況下でそんな危険思想扱いされるだろうことを言いだしたら、間違いなく警戒されるでしょう。
 戦争をしてでも広めるつもりな側からすれば、断られるとわかっていることをわざわざ言うのはデメリットが多いです。国際条約をぶっ飛ばせるような国家連合体で戦争を仕掛けるつもりなら、わかるやつにはわかるぐらいの宣戦布告を一時間以上前に行う程度で仕掛けた方が効率がいいでしょう。

 あと南洋同盟の戦略的には「禍の団は勝っても負けても問題ない」というスタンスだといっておきます。禍の団に協力しているのは異形の積極的介入に対する対策でしかなく、本命はもっとこう「大人を自覚的に武器にする」戦略的なプランで仕掛ける予定です。



停止教室のヴァンパイア16 正一「まさかロボットそのものはチート関係なかったとは」幸希「てっきりアルドノ〇とかそういう「さらに異能もあるよ!」だとばっかり」

 一方そのころ、地球表面から約1,000kmの低軌道にて、一人の女性がカメラの映像を確認していた。

 

 その映像を地球にいる同僚たちに送ってから約十分。そろそろ返事が欲しいころではある。

 

「……というより、確認及び警戒のために、本来の再突入時間を五分も超えてるから不安になって来たわね。一応、カタログスペックだと三時間は持つ予定だけれど」

 

 そう言いながらもゼリー飲料を飲んで一服しているあたり、この女性がいかに豪胆な神経をしているかがわかるというものである。

 

 そしてその視線の先、モニターに存在する映像は、いうなれば台風の要素を衛星写真から見るのに近い映像だった。

 

 そして問題は二つ。

 

 この台風の位置が、自分が二十分間行ったテストの間、場所を移動する余地がかけらもなかったこと。

 

 そしてもう一つ。その場所が駒王町という、つい先日自分達がいて、そしていま三大勢力の会談が行われている場所だということ。

 

 気になる上に胸騒ぎがするのも当然。なので当たり前のように連絡を入れ、更に一分単位で映像を送っているのだが……。

 

「……大丈夫かしら、総督」

 

 何があったのかはわからない。だが一つ言えることがある。

 

 ……何かが起きている。それだけは確実だ。

 

 胸騒ぎを覚えるとともに、足に痛みを覚える。

 

 それに気づいた時、女性は苦笑した。

 

 最近痛みを覚えたのは、コカビエルが行方をくらましたあげくエクスカリバーを強奪したときだ。

 

「……こういう時、ろくなことが起きたためしがないのよね」

 

 その在りえない痛みが起きた時を思い返し、女性は軽く舌打ちをした。

 

 そして同時に、通信が届く。

 

 それをつないだその途端、騒がしい喧騒をBGMに、相方ともいえる堕天使の声が響く。

 

『リースリア! 緊急事態だ、降下ポイントを駒王町に設定してすぐ再突入してくれ!!』

 

「ちょ、ちょっとディーフォール。そんなことしたら大騒ぎよ? 総督が何をやらかしたの!?」

 

 相方である堕天使、ディーフォールの慌てぶりに、リースリアと呼ばれた女性は詳しく聞くべく問い返す。

 

 彼女の脳内では「アザゼルが余計なことを言って相手側がキレた」という、仮にも自勢力のトップに対して思うべきでない推測が浮かんでいたが―

 

『教会の和平反対派に、空蝉機関がらみでつかんでた組織が会談場所に仕掛けてやがる! 挙句の果てに旧魔王派閥もバックアップメンバーに入るっぽいぞ!?』

 

 三秒考え、聞き間違いにしたくなった。

 

「……あ、ごめんなさい。通信機の調子が―」

 

 ついそう言ってしまうが、しかし即座に返答が飛んでくる。

 

『真実! 聞き間違いでも通信機の故障でもなく真実! お前人の作った最高傑作馬鹿にするの!?』

 

「どこにショック受けてるのよ。それにこれは試作型なんだから、故障があってもおかしくないでしょうに」

 

 そう返答するが、しかし真実なら仕方がない。

 

 即座に操作を行い、大気圏突入準備に入る。

 

 目標地点は台風の目。そこにあるだろう駒王学園高等部。

 

「……待っててください総督。いま、助けてくださった恩を返します!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 腹部に、まるで熱い棒が入っているかのような感覚を武流は覚えた。

 

 そして、力が抜けてから激痛を感じる。

 

「……あ……っ」

 

 撃たれた。それに気づいた時には、すでに体に力が入らない。

 

「あれは助からない。おとりにする必要はないから頭を狙え」

 

「させるかぁ!」

 

 即座に冷徹な判断を出したエリンドの指示が聞こえ、それとほぼ同時に匙の叫びとともに強引に引っ張られる。

 

 彼の神器がこういった使い方ができることは知っていたが、自分が引っ張られる側になるとは思っていなかった。

 

 そのまま匙は雑木林の中でも大きく育っている木の内側に武流を引き入れる。さらにそれを援護するように、弱弱しくもしっかりと狙った手裏剣型の魔剣が投擲される。

 

「おおおおい! ど、どうすりゃいいんだこれ!?」

 

「…まずいわ……ね。ディーザと、も連絡が取れない。これじゃぁ……援護も……っ」

 

 自分以上に顔を真っ青にさせている匙の慌てふためく声と、自分以上に弱っているように見えるトレイヤの歯ぎしりがよく聞こえる。

 

 エリンドたちとの戦闘は、最初は拮抗状態だった。

 

 「ガンシップと戦車を足して二で割らない戦法」「魔剣創造の使い方が、理にはかなっているけどひねくれている」と称されるトレイヤの連続投擲によって、エリンドたちが接近できなかったことが幸いだった。くわえて匙のラインで力をバイパスできるので、武流と匙の力をトレイヤに流すことで、耐久力と攻撃力を増大化させて押し込んでいた。

 

 たまに飛んでくるロケットランチャー以外はトレイヤの魔剣装甲を突破できず、ロケットランチャーも素早く投擲で撃ち落とすので、二人そろってやることがろくになかった。

 

 だがしかし、突如としてトレイヤの体調が劣悪になって倒れたことで状況が一変する。

 

 トレイヤの猛攻を何とか無傷でしのいでいたエリンド達は素早く反撃を開始。幸い体調が悪くなっただけで力は消えてなかったので、当人の指示を受けて彼女を盾にしながらしのいでいたのだが、ここにきて撃たれてしまった。

 

 なぜかすでに熱さも痛さも和らいでいるが、回復の当てがない状況下なので命の危険しか感じない。

 

「くそが! てめえらこれ見て本気で何も思ってないのかよ!?」

 

 ダメもとで止血を試みながら、匙は大声で絶叫を上げる。

 

「こんな子供を撃って! 死なせて! それでこれが戦争だからだって言い訳するのか!? それが大人の、国のすることかよ! テロリストと同じじゃねえか!!」

 

 散発的に動きを止めるための射撃音を聞きながら、それでも匙は声を張り上げる。

 

 武流の眼には、エリンドは話は十分通じる立場だと思えるところがあった。それに関しては匙も同意見のようだ。

 

 だからこそ、言葉をもって止めれるのならそうしたいし、どちらにしても言わずにはいられない。

 

 未成年の子供たちを前にして、大人が寄ってたかって銃で追い立ててキツネ狩りのような真似をしでかして―

 

「それで正義の味方だと、あんたら本気で言えるのかよ!?」

 

「―誰がいつ、正義の味方なんて言ったかね?」

 

 ―即答に、匙と武流は絶句する。

 

 狂気としか思えない、正気を疑うまごうことなき正気の言葉。

 

 自棄を起こしているわけでもなければ、まともに相手をする気がないわけでもない。

 

 匙の言葉を受けて、自分達の今の状況を見て、正義でないと確信していて、大したことじゃないと言い切ったのだ。

 

 あまりの言い草に唖然となり、武流は完全に痛みを忘れた。

 

 しかし逆に、射撃体勢に入っているエリンドたちは小首をかしげたり肩をすくめたりする。

 

 何を言っているのかわからない。または、まあ若い時はそういうことがあるなぁ。そういう、未熟者に対する人生の先達がよくとる対応をしてのけた。

 

 そしてエリンドが真っ先に口を開く。

 

「戦争とは武力で強引に要求を押し通す外交手段か、それを武力で跳ね除けること。そして軍隊とは国家が公務員という形で保有するそれらやテロリストに……大規模なデモなどを武力でどうにかするための暴力装置だ」

 

 そう前置きしたうえで、エリンドは続ける。

 

 ほかのだれにも語らせない。大半が同意見だと思ってはいるが、その説明からくるヘイトはできる限り自分が背負うべきだという、そういう思いが見て取れる。

 

 そしてその上で、エリンドははっきりと断言した。

 

「時としてそれは確かに必要だが、どこまで行っても必要()より上等になるわけがない。そしてそんな外交手段、基本的には悪手だろう。汚れ役をあえて受け入れることを誇りこそすれ、軍隊という職業そのものは本来、絶賛や賞賛ではなく容認と労りの視線で見られるべきものだ。正義の味方などであってはいけない」

 

 自分達をそんな汚れ仕事だと断言する。

 

 しないで済むならそれでいい。()だけど認めるほかないという、賞賛は不本意にされるべき存在だと、自分達のことをそう言い切った。

 

 それに気圧される匙に対して、エリンドはさらに続ける。

 

「戦争で先手を取るのとテロの違いなど、極論「やったのが正規国家の軍がやったか否か」でしかない。この手の行動は目的のために有効ならどんな悪辣な手段でもやらない方が間抜けであり、国家がテロリストのような立ち回りをしないのは、ひとえに「国際条約を違反すると戦争に勝っても大損する」からに他ならないさ」

 

 そう、はっきりと言い切る。

 

 自分達軍人とテロリストには大差がないと、はっきりと言い切った。

 

「むしろそこがテロリストの強みだよ。彼らは集団で思想がほぼ統一されているから非人道的な手段も組織の目的のためなら反感を抱きにくいから、そういうことができる。逆に国家はいやでも十人十色を認めざるを得ないから、どれだけ勝利に必要でも国民が文句を言うだろうことは躊躇せざるを得ない」

 

 そう言って、エリンドは静かに首を横に振る。

 

 まるで、その行動がおろかだと言わんばかりに。その手の国民の行動がばかげていると言いたげに。

 

「戦争をした時点で、どれだけ相手を選んでも相手国の民間人に不利益は生まれる。まして軍人も家族を探れば民間人はいるのだから、間接的込みなら民間人を巻き込まずに戦争をすることは不可能なのだ」

 

 そして、エリンドは不快なことを思い出したのか眉をしかめて歯を食いしばる。

 

「世界中至るどころで分単位で理不尽に死んでいく子供がいても誕生日や昇進祝いの贅沢を楽しめるというのに、自国がそれにかけらでも関われば、それがどれだけ自国の兵士を死なせないためだろうと、そうしなければ巡り巡って自分達にしわ寄せが来ようとも、大声で文句をわめいて死に物狂いでできる限りのことをした兵士たちに石を投げることすらある。それも、「軍隊」というくくりだけで指示を出したわけでも作戦に参加してもいないものにまで投げることすらある」

 

 やれやれと言いたげに額に手を当てながら、然しエリンドは言い切る。

 

「それが軍人だ。一度入ったのなら国家の判断で命を懸け、国益のためならば大人に洗脳された少年兵だろうと殺すことを前提とするどうしようもない職業だ」

 

 そして、まっすぐにこちらを見る。

 

「同族殺しという最上級の禁忌を職務の大前提とし、正義ではなく国家の()()を守り得るためなら、明らかに騙されて銃をとった少年兵すら殺す覚悟を持たねばならないのが我々だ。国家と国民が利益を得るために学生すら殺すことを仕事とする我々は、職業という金を得るための方法にしている分、ある意味で理想のために生活を削るテロリスト以上に下劣ともいえるとも」

 

 それは、挑発でもなければ欺瞞でもない。

 

 心の底から、軍人はテロリスト以下の側面があると断言したのだ。

 

「……正気かよ。ナチスに抵抗したレジスタンスぐらいには誇れよな」

 

「ありえないな。さっきも言っただろう「テロリスト以上に下劣」とね」

 

 匙のその反論に、エリンドはそう返す。

 

「テロリストとレジスタンスの違いなど、「戦勝国側についたか否か」だよ。テロリストでも民間人は極力狙わないものもいれば、敵国の民間人をターゲットにして殺すレジスタンスもいる。軍隊でも状況次第では民間人を殺すことも選択する以上、それらは民間人が思うほど大差があるわけではないさ」

 

 平然と、特に感慨を浮かべずに彼はそう返す。

 

 自分達もテロリストもレジスタンスも、やっていることに大差はない。あるとするならそれは「そういう仕事か」と「勝つことができたか」でしかないと。

 

「テロで世界は変わらない? 変えられないから彼らはテロリストどまりで、国家であってもテロ国家といわれるのだよ。だからこそ、負けるつもりで仕掛ける軍隊はいないさ」

 

 その眼には、欺瞞もなければ陶酔もない。

 

「まして戦闘中という極限状況が今だ。常に百点の選択肢を選択するには時間も判断材料も足りないし、そも自分達に命令を下すものが、そういうことができるものであることすら稀だろう。常に理不尽がこちらの都合を無視して襲い掛かってることが、どんな選択をしても襲い掛かってくる者だ。相手も最善を尽くそうとするのだから当然だろう」

 

 自分達が負けられないように、相手もまた負けられないと考えるべき。そしてそれゆえに、自分達にとって最高の結果が得られるなど普通はあり得ない。

 

 そういう、子供たちが真っ先に考え付く「愛と正義が勝つ物語」は普通は起きない。

 

 それが戦争だと、エリンドははっきり告げる。

 

「百点以外はみな論外で、予想外なんて認めない? そんなふざけたことを言って次善策で済ませられない糞餓鬼など、あいにくこの部隊(私たち)には一人もいない」

 

 静かに銃口を向けなおし、エリンドは強い視線を向ける。

 

 それは間違いなく大人のそれだ。

 

 理想を望み、そのためなら死んでも惜しくない。どんな時でも最高の結果だけを信じ、頑張ればつかめる可能性は必ずひとかけらはある。そんな子供が読む物語など、彼らは最初から求めていない。

 

「悪いが、ゲリラの掃討で少年兵を何十人も殺したこともある。諸問題の解決が不可能ゆえに、怨恨で紛争が再発しないように、武器すら持たない子供を殺したこともある。中隊の中でも私の小隊は、そういう者たちばかりを選んでいる」

 

 そんな、泥臭く血まみれの道を進み続けたことのあるものだけが持つ凄みを、彼らは放っている。

 

 誰もがエリンドの言うように、不条理と理不尽に出会い振るったこともあるのだと、匙もトレイヤも武流も確信するほかない。

 

「そういう不条理に折り合いをつけ、無理のない範囲でましな選択を探し出し、そんな現実と付き合っていく。それが"大人"というものだ」

 

 だから、この程度の不条理がどうしたというのだ。

 

 匙や武流が義憤に吠えるようなことすら、彼らにとっては日常茶飯事なのだ。

 

 間違いなく汚れ仕事であり、子供を殺すという胸糞悪い戦いになる。そして現実にキツネ狩りのようにじわじわと確実に追い込むような、堅実だがえげつない戦い方すらしている。

 

 そんな、だれがどう見ても少年漫画の悪党のような汚れ仕事だが―

 

「わかるか少年。我々は軍属(プロ)で、経験者(ベテラン)で、先遣部隊(スペシャリスト)で、そして君たちの敵なのだよ」

 

 選んで決めた軍人という立場と、そこから背を背けずに進み続けてきた経緯。

 

 今更いやだと喚き散らし、恥も知らずに任務を放棄するなど論外だと、矜持すら込めてそう告げた。

 

「そういう不満は後回しだ。作戦が終了した後にでも、部下と酒を飲んで上官の悪口でもいいながら発散するさ。辞表は受けた仕事を済ませてから書くものだろう?」

 

 それが大人というものだと、エリンドははっきりといった。

 

 正義がどちらかなどどうでもいい。自分達が褒めたたえらえるべき存在ではないなどわかりきっている。

 

 それで飯を食い、それで誰かに与えることができ、そしてそれを今まで成し遂げてきた自分達の道がある。

 

 なら今の自分の正誤など、考えるべき時ではない。

 

 それが大人の義務と責任なのだと、彼ははっきりと告げていた。

 

「……くそ、マジで戦争をしようってのかよ」

 

 その態度に、匙は呻き、その気持ちをいやというほど武流も理解した。

 

 ああ、この男相手に論戦なんて無意味だ。

 

 今はそんなときじゃないと割り切っている以上、どういっても暖簾に腕押し。それはそれとして割り切って、やるべきことを終えるまでは後回しにすることが目に見えている。

 

 そして、よしんば話をする時が来ても意味がないとすら思える。

 

 見たところ三十代前半であり、しかし同時に凄みがある。確か少佐というのは、歩兵でなるには相応の実績か年月が必要だったはずだ。

 

 それだけの凄みを持っていると、そういうことなのだろう。

 

 そして、匙も武流も、体調不良で動きが鈍いトレイヤもそれに気圧され―

 

「……だから、こんなところで逐一説明する理由など、時間稼ぎだ」

 

 ―その言葉は、くぐもった音とともに放たれる。

 

「「「……っ!?」」」

 

 三人が三人とも、戦慄するのは当然だ。

 

 タイミングが良すぎる。そして戦闘中だと考えるのなら、必然的に敵が何かしてきたと考えるべきで―

 

「まあ本音は言ったさ。冥途の土産としておいてくれ」

 

 そういうと同時、エリンドたちは一斉に自分達に見えないような形で木に隠れる。

 

 そしてその一瞬、比較的若い年代の兵士たちは上を気にしていた。

 

 その意味がよくわからなかったのは匙と武流。そして分かったのはトレイヤ。

 

 武流たちは知らないが、トレイヤはこの手の音がする兵器について多少の知識がある。

 

 ゆえに、彼女は自分達が致命的な状況に追い込まれていることに気づく。

 

 判断と決断は一瞬。トレイヤは匙を引き倒し、その上で武流と匙の上に覆いかぶさって魔剣を展開する。

 

「……迫撃砲よ! 直撃しないことを祈って!!」

 

「……はくげきほう?」

 

 迫撃砲。60度以上の仰角で使用する火力支援兵器。

 

 射程距離は短めだが軌道が非常に山なりであるため、塹壕などを飛び越えて使用できる強みが存在。さらに単純な構造で反動も少ないことから、大型なら車両で運搬するものまで、歩兵でも最悪一人で運用できるものなど多種多様な装備が存在する。

 

 比較的軽量にで使用できることもあり、空てい部隊などでも使われることがあるのだが、まさにそれを使用されたということだ。

 

 そして武流はあおむけだったことからそれに気づく。

 

 上空から落ちてくる、流線型のまさに空爆の爆弾を思わせる弾頭。

 

 80mm程度のそれは、質の悪いことに七発襲い掛かり、更に最悪なことにほとんどが自分達のほぼ真上から落下してくる。

 

「……これって直撃―」

 

 思わずひきつった声が浮かぶのは当然であり―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うぉおおおおお! 俺イッセー! 頑張って逃げてます!!

 

 なんか10メートル近くあるロボットや、18メートルぐらいあるロボットや、あと何十人もの兵士や魔法使いに襲い掛かられて、マジで死ぬ気で逃げてます!!

 

 っていうか痛い痛い痛い! さっきから後ろで魔法や弾丸が当たって痛い!

 

 禁手になったうえで更に戦車に昇格してるのに痛い! 結構威力あるんじゃねえのこれ!

 

 でも頑張るしかないし、頑張ってれば何とかなる。なぜかって?

 

「う、うぅ……っ」

 

「あーもう! 全然ギャスパー治らないし! あ、イッセーは治せてるから頑張って! ボクは盾以外カバーできないから!!」

 

 後輩のギャスパーがダウンしてて、同僚の桃華が頑張ってサポートしてくれるからさ!

 

 そう、俺たちはえっちらおっちらギャスパーを運びながら逃げてるんだ。

 

 ティンベーとかいう盾を持っている桃華が、それを背負ってギャスパーや俺を治療してる。そして俺はそんな二人を抱えながら走ってる!

 

 幸い、桃華は普通に悪魔の翼で飛べるから、俺はギャスパーを抱えていればいい。ただし桃華は後ろを向いて俺とギャスパーを治療してるから、俺が抱えて走る形になった。

 

 ぶっちゃけすごくキツイ! どこの新体操だよこれ!

 

 ちなみに俺は大絶賛けがをしまくってるけど、ギャスパーの体調不良とは違ってそっちはすぐに治ってる。

 

 桃華がいろいろ仕込んでたペットボトルから出した水を、手に触れてから術で俺たちに飛ばしているんだ。

 

 それに触れた瞬間、ギャスパーの体調不良は治らないけど俺のけがは治ってる。

 

 めっちゃ便利! 助かる!

 

「すげえなそれ! 五代宗家の秘術ってやつ?」

 

「ううん! 神器神器! 手に触れた水に癒しの力を与えらえるの!」

 

 そう答える桃華は、ちょっと自慢げだった。

 

「わきたての天然水が最善で泥水とかだと全然なんだけど、混ざりものでダメになったり失敗作のフェニックスの涙を混ぜると効果抜群なんだ! おかげでヒーラーやってます!!」

 

 えっへんと胸を張る桃華はかわいい! ムラっと来るのとは別の感じですごいぜこれは!

 

 でも、こんな緊急事態じゃ余裕がね―

 

 その瞬間、俺たちに衝撃が走った。

 

 具体的には、なんか横斜め上からたたきつけらえてクレーターを作っちまった。

 

「「「ぎゃふん!?」」」

 

 グロッキーのギャスパー以外が悲鳴を上げる。

 

 んでもって思わず起き上がると、そこにいたのは―

 

「あ、アザゼル! 何がどうなってんだよ!?」

 

「痛てててて……。おぉ、悪い悪い。ちょっと身内の裏切りにあってな」

 

 アザゼルも痛そうに頭をさすりながらそう謝ってくる。

 

 あ、裏切りにあったんだ。大変だったなぁ……―

 

「って裏切りぃ!?」

 

 俺は絶叫だよ。

 

 え、まさかあの会議室に裏切り者いたの!?

 

 ってだれだよ! まさか悪魔側とか、ないよね。

 

「……イッセー。白龍皇っぽいよ。めちゃくちゃ悪役ムーブでこっちに来てる」

 

 いつの間にか、盾を構えて桃華が空をにらんでいる。

 

 それにつられてみてみれば、そこには確かに白い鎧が―ヴァーリがいた。

 

「悪いなアザゼル。そういうことなんだ」

 

 余裕しゃくしゃくの態度でいうヴァーリ。

 

 んでもってそんなこと言っているってことは……マジで?

 

「ちょ、どういうことだよアザゼル! 馬鹿な俺でもわかるように言ってくれ!」

 

「馬鹿があつまったテロリストが今襲撃してるやつらで、ヴァーリはそっちに鞍替えした。ま、そこのハーフヴァンパイアのことをヴァーリが伝えて、それを利用して一網打尽にできないかと目論んだからあの襲撃があったってことだろうな」

 

 アザゼルもアザゼルで余裕の表情で告げてきやがった!

 

 え、マジで! 俺たちが襲われたのもこいつのせいかよ!!

 

「てめえ! 和平が結ばれるって時に裏切るとか、どういうつもりだ!!」

 

「和平が結ばれるからさ。俺は俺より強い奴と戦えないつまらない世界なんていらないのに、宿命のライバルたる赤龍帝と戦えない和平なんかが結ばれたのなら、当然こうするだろう?」

 

 れ、レディッドさんと戦いたいからそんなことを?

 

「それに、オーフィス達からコカビエルを倒した帰りにオファーを受けてね。「アースガルズと戦ってみないか?」などと言われたら、俺には断りようがないさ。特にアザゼルは、そんなことを認めないだろう?」

 

「……俺は、お前に世界を滅ぼす要因にだけはなるなって言ったはずなんだがな」

 

 アザゼルがそう静かに問いただすけど、ヴァーリは特に気にした風がなかった。

 

「関係ないさ。龍とは本来そういうものさ」

 

 そんな返答に、アザゼルは頭をぼりぼりと掻くとため息をついた。

 

「ったく。欲望に忠実な悪魔の王族に、自由気ままをモットーとする龍のトップクラスがくっついたらこうなるか。もうちょっと教育や監視をしとくべきだったかねぇ」

 

 アザゼルのやつ、なんかちょっと寂しそうだ。

 

 結構ヴァーリのことを気に入ってたのか。ちょっとかわいそう。

 

 しかし悪魔の王族に天龍がくっつくとこうなるのか。俺も悪魔でドラゴンだし気をつけよ……ん?

 

 いま、なんて言いました、か?

 

「あのアザゼル総督? いま、なんかすっごいこと言ってなかったですか?」

 

 冷や汗をかきながら、桃華が俺の疑問を代弁してくれてる。

 

 あ、ありがと。俺、ちょっとわけわからなかった。

 

 そしてアザゼルはふと気づくと、ぽんと手を打った。

 

「お、言ってなかったな。……あいつは前ルシファーのひ孫だ。人間とのハーフだから神滅具持ちなんだよ」

 

 ………。

 

 俺と桃華は目を目を合わせて、息を吸い込んだ。

 

 うん。さん、はい。

 

「「ぇええええええええええ!?」」

 

 ちょっと待てよおい。冗談だろ?

 

 魔王のひ孫で人間のハーフで、しかも神滅具?

 

「マジで!?」

 

「ああまじだ」

 

 桃華にアザゼルがそう答える。

 

 俺なんてもう、声もなくなってきたよ。マジで。

 

 魔王で天龍って、チートじゃねえか!

 

『……まあ、こちらとしてもできすぎだと思うさ』

 

 そんな俺たちに声が届く。

 

 見れば、こっちに突入してきた四本爪の巨人が全機集まってる。

 

 そしてそこについているスピーカーから、一斉に声が届いていた。

 

『通信越しで失礼。私は南洋同盟第二技術研究室室長のウォタラ・イエンタジーだ』

 

「へぇ~。その手の連中ってのは、研究室にこもりっきりだと思ったがアグレッシブじゃねえか」

 

 アザゼルがそういうけど、通信越しの声はなんかため息をついた。

 

『現場の視点や使い手の気持ちがわからない数式のみでは、真の意味で優れた兵器は作れないからね。なので動かし方も学んでテストパイロットもできる腕はあるんだが、これはあくまで通信だよ。私は本国の研究室にいる』

 

 あ、いないんだ。

 

 っていうか、めっちゃくちゃ残念そうだな、オイ。

 

『初実戦だからこそ今後のためになるデータがとれるんだが、初実戦だからこそ「何かあっては困る」と言われてね。何分初期ロットの最終調整はこの戦闘のデータを使うから、動員数もそこまで多くできないんだよ』

 

 すっごい残念そうだなぁ。どんだけ実戦で動かしたいんだよ。

 

 俺が呆れたらいいのか感心したらいいのかわからないでいると、そのウォタラとかいう人は、苦笑したいみたいな音を漏らす。

 

『だがしかし。そちらも手抜かりではないかね? これだけ力を持っている手合いに、自制心を教えられてないのに監視をしていないのはどうだろうか? すでに死んでいるから仕方がないが、神器という技術はもっと広く知らしめるべき突然変異だよ。運用にしろ管理にしろ、世界的に表明するべきだと思わないか?』

 

「おいおい。俺が聖書の神で唯一褒めてるジャンルを否定するのかよ?」

 

『便利なのは認めるさ。おかげでこちらも動く準備ができたが、然し技術とは流通させることができてこそ意味がある。……我々の装備のようにね』

 

 なんだろう。アザゼル先生に言い返すウォタラが、両手を広げて自慢げな表情を浮かべてる気がする。

 

 っていうか、この歩兵とか十メートルちょっととか二十メートルぐらいのロボットのことだよな?

 

『歩兵用装備であるFES(ファンタズム・エグゾ・スケルトン)。対異業用兵器であるSW(サイエンス・ウィザード)は、神器のように個々で能力が千差万別すぎる異能ではない。「安定性と高性能を両立して安定した数を供給できる」をコンセプトにしたものだ。……どういう理屈でやったか、わかるかね?』

 

 えっと、どういう理屈?

 

「わかるか?」

 

「わかんない」

 

 俺と桃華が首をひねっていると、アザゼルだけは普通の表情だった。

 

「なるほどな。こっちが「個人の異能」として再現するのにこだわって苦労している間に、そっちは「じゃあ最初から本体は車両サイズ以上にした、兵器として作ればいい」ってわけか。歩兵用のFESってのは、あくまで子機で本体はもっとでかいな?」

 

 ……あ!

 

 そういえば、こいつらってSFっぽいでかい乗り物に乗ってたっけ。

 

 それが本体か。

 

『まあそういうわけだ。悪いけど、こっちも初実戦でケチが付くのは困るんでね。……死んでくれると嬉しいかな?』

 

「それは困るな。俺は弱い者いじめをする気はないが、強い奴と戦いたいからこそ禍の団(こっち)についた―」

 

 その瞬間。俺たちは見た。

 

 具体的に言うと、俺と桃華とアザゼルは見た。

 

「いや、できればこれで終わってくれよ」

 

『トレースライズ』

 

 ―左腕にでかい腕、そして右腕に小さなドラゴンを乗せたアサルトライフルっぽい武器を持った、レディッドさんを。

 




 エリンドのキャラ設計は「良くも悪くも大人を武器にしている人物」といったイメージですね。

 子供と違って挫折経験も後悔経験も失敗経験もあり、少年兵相手の殲滅戦など、汚れ仕事同然の胸糞悪い任務を潜り抜けてきた経験も豊富。なので嫌な任務だろうと想定していなかった胸糞悪い状況も「任務は任務、それはそれ」で飲み込み、敵は敵と判断して冷徹な対応ができる人物。かといって自分達のことを過度に正当化せず、あくまで現場の軍人としての裁量の範囲内で行動する人物です。個人的なイメージにおける「現実の軍人、それも特殊部隊に選ばれたベテラン」を形にした感じですね。

 なので匙たちが善良であることは認めつつ、現場の軍人として任務は任務と割り切ります。個人の意思で判断することも忘れませんが、それは「現場の視点での任務遂行」かつ「立社会における一部隊長」の範囲を逸脱した行動はしない人物。

 つまり説得が通用しないわけです。どれだけ感銘を受けようとそれはそれ。作戦から生還した後で考えたり意見具申することで、現場で作戦遂行中に勝手に命令を放棄するといった真似は「それが許される立場でない」として一切考えません。あくまで「任務の遂行に支障をきたさない」か「そもそも任務遂行が不可能」でなければ、その手の判断は一切挟まない、きれいすっぱり公私を分ける手合いです。

 良くも悪くもそういうスタンスなので、胸糞悪い手段だと思っていても、目的のために有効だと判断すれば遂行する手合いです。匙に長々と持論を述べたのも、「決定的な攻撃を叩き込むためのおとり作戦」ついでに「未熟な子供に現実を諭す」といった対応ですね。スパロボに出たら主人公陣営の子供だらけにしっかり非難しながら、「だけど敵だから」と遠慮なく殺しに行きます。

 要は勧善懲悪の少年漫画的ヒーローものに、ヒロイック要素が碌にない戦争の悲劇や悲惨さを描いた作品の人物を叩き込んだ形です。やはり敵には相対的な要素が必須ですので、彼が大人が生きる現実をたたきつけてきたうえで、「それでも」より良い未来を目指す形にしたいと思っています。

 逆に研究室長のウォタラ・イエンタジーは、それとは別の形でD×D原作に対するアンチテーゼを叩き込んできた形です。
 というよりケイオスワールド2の事実上とん挫もあったので、ぜひやりたかった「機械演算による魔法発動」を盛り込んだ形です。ちなみに彼は転生王者でも落伍者でもありません。
 彼は割とロマン大好きですが、現実もきちんと理解しているのである程度はおとなしくしています。ですがロマン寄りの人物なので、次は直接激突します。……たぶん初戦闘回から続くバトルは、この作品でも屈指の頭痛い展開でしょう。
 そしてそんなロマンを介しながらも現実を生きている人物として、これまた現実的な兵器運用メソッドに仕立て直した新規技術の流用を行い、できたのが各種兵器。
 コンセプトはアザゼルが語った通り「兵器として仕立て直すことで、対異形・異能戦闘に十分耐えうる人工的な神器」です。
 揚陸用のユニットを本体として、子機を持つ歩兵が戦闘を行うというのは割と考えていたものです。これによって身体能力を強化したうえ、突撃銃に代表される部隊運用する主武装を事実上無限弾倉で使えるため、装備の軽量化と身体能力向上でめっちゃ動きが機敏です。現実の歩兵は現実的な限界重量をオーバーした装備を背負って戦うそうなので、この辺めっちゃ評判いいと思っています。

 そして人型起動兵器群も、実は「神器を再現した結果人型が一番都合がいい」というリアルロボット風味なシステムで、かつ魔法や異能を利用しているためファンタジー 自作品でいうなら、イレギュラーズの防人一式を、より話に積極的に組み込めるようにしたものです。ただし使うのは敵。
 ちなみに異形のほとんどが人型なので、大型の異形よりでかいグラヴィトルは本来非効率的です。が、でかい分出力を増大化できるので、大型異形戦闘及び、視覚的インパクトによる士気向上と敵の威圧を考慮したモデルです。いうなればOGシリーズにおける特機構想が近いですね。

 そして盛大に裏切ったヴァーリ。この段階ではヴぁーりは和平になったら裏切りに向かうと判断しましたし、ヴァーリチームがらみの整合性を整えるにはヴァーリひっすなのでこうしました。

 そしてレディッドが突入。

 申し訳ありませんが、個人的にヴァーリの評価は曹操より下なので、曹操が活躍しているところ悪いけどヴァーリはまずボコらるのじゃよ。
 だけど原作は立てる主義だから、ヴァーリもきちんと暴れるのじゃよ。たぶん想定外の事態が起きるかもしれないけど、そこは了承してほしいのじゃよ。まで混じっています。

オリジナル(ゼロワン風)ドライバー、どうしよう

  • 剣+鞘型でいいよ?
  • 銃+ホルスターでもよくね?
  • あきらめるな! 完全オリジナルだ!
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