ハイスクールD×D×R 転生者たちはイレギュラーズ   作:グレン×グレン

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 戦闘終了で事後処理編です。いろいろと話しを加えることになると思います。


停止教室のヴァンパイア23 幸希「個人的に仲はいいけど、TPO的には緊張感がいるのよね~」 ディーザ「プロの資格持ちを、なめないでください!」

 

 そして戦闘が終了したが、状況は恐ろしいほどに忙しいことになっていた。

 

 禍の団というテロ組織。その構成組織に旧魔王血族がいる可能性が高く、あろうことか教会から神聖十字軍という軍勢が大量に決起し、更には南洋同盟という複数の国家による連合体が、英雄派閥という特殊部隊込みで派遣した大組織。

 

 この時点で厄介という他なく、更に外周部にアジュカが派遣していた保険の部隊が足止めを食らうという念の入れよう。

 

 そしてその部隊に死者は片手で数えられる程度。四肢の欠損という重傷を負った者はいても、致命傷だけは何とか避けて生き延びたその敵手は、まごうことなく強敵であることの証明である。

 

 なにせアジュカが派遣した部隊は、冥界でも屈指の精鋭部隊。

 

 一眷属程度の人数ならば、質で超える者たちは数多くいる。個人でならそれこそ、()()を除いて現四大魔王やレーティングゲームトップスリーに勝てる者はいないだろう。

 

 だが数百人規模という条件下において、この部隊に勝る戦力は現魔王勢力圏内に存在しない。

 

 百人規模の人員を、自身の直下と縁者から集めての模擬戦。この条件下の戦いならば、この部隊に勝てる者は現魔王政権下には存在しない。

 

 その現実の前に拮抗した部隊がいる。その時点で、禍の団の脅威は明白であると断言できた。

 

「……グレイフィア。被害はどうかね?」

 

 その事実をかみしめながら、サーゼクスは自らの女王であるグレイフィアに静かに問う。

 

 和平を結ぶという決意を固めて挑んだこの会談。何かしらのテロが起きる可能性はあったが、ここまでの規模は想定外だった。

 

 しかも旧魔王の末裔がいる事が確実で、あろうことかルシファーの末裔は神滅具保有者という。

 

 事態は、間違いなく非常事態である。

 

 その第一弾ともいえるこの戦い、死傷者が相応数いる可能性は考慮していたのだが―

 

「ご安心を、サーゼクス様。奇跡的にも死者は数十人で済みました」

 

 ―そのグレイフィアの言葉に、瞑目しながらも意外に思う。

 

「重い犠牲だ。だが、同時に数だけで見れば少ないのは事実か」

 

 サーゼクスの性格上、人数が少なければいいと割り切れる人物では断じてない。

 

 だが同時に、この規模の戦闘にしてはあまりに低いという他ない状況だった。

 

「おそらく、相手はあくまで今回は示威行動だったのでしょう。ならばより多くの生存者を遺したうえで苦戦させた方が、「脅威」という情報を広められると判断したのかと」

 

「なるほどね。彼らも絶滅戦争を望んでいる者ばかりではないということか」

 

 少なくとも、南洋同盟は異形達を滅ぼすのが目的ではないようだ。

 

 神聖十字軍団も、こちらに来た仙人だけでなく、参加を表明した者の中には暗部に所属する形で教会と連携をとっていた悪魔がいるらしい。むしろこの場合、ミカエル達は想像以上に悪魔に対して優しい対応をとっていたというべきか。

 

 だがしかし―

 

「それにしても少なすぎないかね? 死者が少ないに越したことはないが、これはあまりに少なすぎる」

 

 ―そう、少なすぎる。

 

 あれだけの戦闘で死者がその程度など、普通はあり得ない。

 

 こと最初の混乱で相当数の死者が出ていることを含めれば尚更だ。

 

 だが、その驚きに対し、グレイフィアは何故か苦笑を返す。

 

「……驚いたのなら後で褒めた方がいいわよ、サーゼクス」

 

 そう、眷属ではなく妻としての顔を覗かせながら、グレイフィアは続ける。

 

「だいぶ頑張ってくれたもの。誰一人として、今までずっと休み続けるようなことはしなかったからこそ掴んだ結果よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 事態は十数分前、サーゼクス達が他の首脳陣と緊急連絡や情報交換をしていた頃に遡る。

 

「待ってくれ! 列強国を作り上げた男の、残された良心に応える為にもここで何もしないわけには―」

 

「はいはい下がってください! 幽世の聖杯(セフィロト・グラール)は乱用厳禁なんだから」

 

「精神に悪影響が出てないかの検査も必要不可欠だからなー」

 

 羽交い絞めにされて引っ張られていく正一を不安げに見つめながらも、アーシアは即座に決意を新たにする。

 

 自らを救い出し、強い決意の光を与えてくれた紅真に相応しくある為にも、ここで治すべき怪我人を放っておく選択肢などない。

 

「頑張ります! いえ、絶対にこれ以上の死人を増やしたりしません!」

 

 その決意と共に、手辺り次第に怪我人を治そうとしたその瞬間、首根っこを引っ掴まれた。

 

「―駄目です」

 

 振り返れば、そこにはディーザと名乗った櫛橋幸希の眷属がいた。

 

 確か戦闘中に限界がきて倒れたとのことだが、どうやらもう動ける程度には回復したらしい。

 

「……でも! 皆さん全員怪我をしていらして―」

 

「だからです。こういう怪我人が乱立した時こそ、しっかりとまず順序をつけなければ逆に死者や後遺症が多発することになります。トリアージというので覚えていてください」

 

 しっかりとそう言うと、ディーザはアーシアの肩を掴むと、方向を変える。

 

「ぬぉおおおおおお! 気合いだぁあああああ! あとギャスパー、そこの人は危ないから止めといて! イッセーは星辰光で譲渡やってサポート! ボクとギャスパーの分両方ね!」

 

「はいぃいいいいい! ダメもとで頑張りますぅうううううう!」

 

「頑張れギャスパー! でもダメ元とか言わない!」

 

 と、そこでは見るからに虫の息の人達を中心に、全力で治療(と手遅れにしない為の時間停止+譲渡によるサポート)を行っている、桃華にギャスパーにイッセーの姿があった。

 

「……あ」

 

「とりあえず、治療必須で一刻も争う人物はあちらにまとめておきました。こちらの人達は、基本的に「応急処置をすれば数時間は確実に持つ」範囲内なので、申し訳ありませんが後回しです」

 

 そう言うと共に、ディーザはアーシアから手を放して、その人達の下へと向かう。

 

 ―いつの間にか、袖をまくってウェットティッシュで手をキレイに拭って、アルコールをまんべんなくつけて消毒して、更にラテックスフリーの医療用手袋をつけていた。

 

 更にバンダナで髪がこぼれないように纏めていた事に気づき、アーシアは戦慄した。

 

 この女、ガチである。

 

 そして同時、ディーザが指を鳴らした瞬間に、事前に敷かれていたゴム製の板が不定形にうごめき、怪我人の下半身を覆い被さる。

 

「ショックパンツ処置は完了。ショック症状阻止の鎮痛剤はもちろん、リンパ液や生理食塩水も準備完了」

 

 見れば、腰に大量のパックが入っているポーチをつけていたりしている。

 

 もう一度言おう。

 

 この女、ガチである。

 

「……医大卒業生にして、悪魔稼業で自衛隊衛生科や救急救命士を相手にした仕事で対価を技術の指導で受け取った経験と技術の粋を尽くして、あなた方を誰一人として死なせはしません!!」

 

 三度目を言おう。

 

 この女は、ガチである。

 

 結果としてアーシアが我を忘れて戦慄したことで、全員の処置を終える頃に負担が多くなった桃華が新たに気絶する事になるが、これは余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで忙しい中、俺は俺で、忙しいことになっていた。

 

「ご……はん。おなか……減っ……た」

 

「和正! 急いでそのご飯をトレイによそいなさい! カレーはもう出来たわ! 私は頑張った!」

 

「いやレトルトカレーを湯煎しただけだろ!? っていうかなんでご飯だけ米なんだよ!?」

 

「配送先がアルファ化米と間違えたのよ!! 事業所にはあとで始末書を書いてもらうわ!」

 

 だからって普通、俺に炊かせるの手伝わせるか!?

 

 いや、炊き出しは重要だぞ? 幸希が色々気を使ってくれて、チート・セーフルームの入り口を設定し直したうえで大量にレトルトカレーやフリーズドライの味噌汁や、アルファ化米にフルーツの缶詰を詰め込んでいた。

 

 しかし発送を依頼した物の手違いで、米が普通の白米だった。

 

 結果として、学食コーナーに突入して米を炊く道具を用意して、こうして炊き出しを敢行していた。

 

 そして一生懸命頑張って、ようやくご飯を蒸らし終えたところだ。

 

「おなか……おなか……おなか……」

 

「和正急いで! トレイヤが死ぬ!」

 

「一日飯ぬいただけで死ぬか! っていうかフルーツの缶詰とフリーズドライの味噌汁はどうした!」

 

「「……あ」」

 

 ダメだ! 誰もが疲れすぎてて色々駄目だ!!

 

 ええいちょっと待て、とりあえずよそうから―

 

「ほいトレイヤ。旅団用のエナジーバー分けたげる」

 

 ―その前に、一本のエナジーバーが差し出された。

 

 差し出したのは、金髪をツインテールの一人の少女。

 

 外見年齢から異形の歳を図るのは危険だけど、感じとしては百年も生きてるような感じはしないな。

 

 そして俺がそこまで考えている間に、トレイヤは全部食べてた。

 

 ……とりあえずよそっておこう。あいつめっちゃ食べるからこの程度じゃ足りんだろうし。

 

「悪いわね、芳美。そっちも腕利きが仕掛けてきたみたいだけど、大丈夫なの?」

 

「……ごくん。そうね、芳美は結構仕事がハードな部類だし、かなり激戦だったんじゃないの?」

 

 フランクに話しかける幸希とトレイヤに、金髪美少女は「にゃははー」と苦笑しながらガッツポーズ。

 

「大丈ー夫! 天秤旅団の仕事に「ハードじゃない」なんて概念はないからねっと!」

 

 そんなことを軽く語り合う辺り、結構仲が良いようで。

 

 それはともかく。

 

「……とりあえず三人分よそったぞ~。トレイヤはもちろん大盛で」

 

「いただきます!」

 

 ―すいません。加速が強すぎて吹っ飛ばされるかと思ったんですが。

 

 まあいいか。とりあえずトレイヤ以外の分をさっさと渡して、次の準備を進めるとすっか。

 

「んじゃ、幸希はつもり話でもしときな。途中までは俺がやるから―」

 

「あ、だいじょぶだいじょぶ。後詰がちゃんと来てくれてるし、予備役の支援役も来てるから、あとの炊き出しはそっちに任せといていいよ」

 

 と、金髪の美少女が、俺が渡そうとしたカレーをこっちに押し付ける。

 

 そんでもって、こっちをまじまじと見つめるとふふ~とでもいうべき擬音が付くような笑顔を向ける。

 

「で、君が幸希っちのお気に入りか。いい目してるじゃん」

 

「え、あ、そりゃどうも……です?」

 

 年齢が分からんから、どう対応していいか分からないな。

 

 俺がちょっと戸惑っていると、それに気づいた幸希が苦笑しながらその美少女を指し示す。

 

「一応言っておくけど、あなたついさっき会ってるわよ?」

 

「……へ?」

 

 俺が一回見直すと、確かに覚えがあるような気がしないでもない。

 

 でも、なんか違う気がするんだけど………?

 

 俺が首を傾げていると、その姉ちゃんはごほんと咳払いをしてから、一気にきりっとした表情になる。

 

 あ、心当たりあった。

 

「冥界政府秩序維持部隊「天秤旅団」所属、特式上級悪魔の波柴芳美(はしば よしみ)だ。魔王様方が世話になったこと、礼を言わせてもらう」

 

 ……すいません。キャラが違いすぎてて本気で「誰だお前」状態なんですけど。

 

「ああ、キャラが違うのは気にするな。私は大王派側が幸希のカウンターウェイト用として任命した特式上級悪魔でな。仕事中ぐらいは硬い態度を維持しておかないと出世に響く」

 

「……まあ、TPOは大事だよなぁ」

 

 うん。そこは正論だとは思う。そこはな。

 

 と、一気に雰囲気が元に戻った。

 

「ま、幸希のお気に入りってのが見てみたかったのもあったからこっち来たんだよねー。トレイヤは燃費も悪けりゃ必要なカロリー多すぎだし、戦闘糧食(レーション)からエナジーバー持ってきといて正解だったって感じ?」

 

「確かに」

 

 毎食毎食、一人だけかなり割合多いからな。

 

 医師免許持ちな上に管理栄養士の資格を持っているだけあって、ディーザさんは健康管理には厳しい。

 

 心療内科の見識もあるから娯楽という観点も考えてるけど、それでも暴飲暴食や食事の栄養バランスの完全放棄は………こっちが死ぬ。

 

 そのディーザさんが毎度毎度の暴飲暴食を唯一認めているのがトレイヤだ。

 

 それぐらい、食事という燃料補給が必須ってわけだからなぁ。

 

「しっかし。あの白龍皇結局やらかしちゃったねほんと。牽制入れたのにあれっていうか、むしろ牽制したからやらかした?」

 

「大丈夫、絶対気にしてないわ、あいつ」

 

 幸希とそう話し合ってる芳美だけど、もしかしあの時の投擲はこの人か?

 

 と、気づけば何人もの悪魔がちゃっかり料理を開始している。

 

 ……カレー、食べるか―

 

「あ、幸希さん! 二人とも!」

 

 ―ん? イッセーか?

 

「あらイッセー。さっきまでディーザや桃華のサポートで、医療班の援護してなかったかしら?」

 

「そこは全部終わりました! 俺達が参加してからの死者ゼロで済みました!」

 

 幸希にそう元気よく、イッセーが答える。

 

 そりゃよかった。死人が少ないのに越したことはないからな。

 

 で、その割にイッセーはへばってない……わけじゃないな。

 

 どっちかっていうと、気合で無理やり動かしているって感じか?

 

「休まなくていいのか? あとカレーあるぞ?」

 

「そっちは後だよ無想! それで、実はミカエルさんを探してるんですけど……どこですか?」

 

 ミカエルさん? 天使長にいったい何の用……あぁ。

 

 幸希も俺と同じ事に気づいたんだろう。視線があった時、同じタイミングで少し笑っちまった。

 

 まったく。こいつは本当に……っ。

 

「……あっちで首脳陣で話してるわ。そろそろ帰ってもおかしくないし、ちょっと言ってきなさい」

 

「はい! ありがとうございます!」

 

 幸希に教えられて、イッセーはそのまま駆け出していく。

 

 全く、あいつはそういうところだよ、いい意味でな!

 

 こんだけへばっててもそういう事が出来る。そうだからこそ、兵藤一誠は兵藤一誠って男なんだろうな。

 

 ああ、そうでなくっちゃ。そうだからこそ、俺達はお前の味方がしたいんだ。

 

「……ほんと、ああいう奴だよな」

 

「ええ。だからこそ、救われる……!」

 

 俺と幸希は、本当になんか、救われた気持ちになる。

 

 転生王者や転生落伍者、更にはそのバタフライエフェクトか知らないが、ここまで状況が変わるとは思ってなかった。

 

 ああ、本当にお前ってやつは……っ

 

「ちょっとトレイヤ。あの二人、あの子のファンか何か?」

 

「あ、ちょっとね。お気に入りっていえばお気に入り……かな?」

 

 トレイヤや芳美がなんか言っているけど、そこは無視だ、無視!!

 

 




 ディーザによる事前処置と、超回復能力持ちのアーシア&桃華によって死者二けた止まり。戦闘中に死んだ者以外は回復が間に合ったのでほぼ死人ゼロです。がんばった。

 そしていろんな意味でガス欠なトレイヤに救いの手を差し伸べる、金髪女性の芳美。
 彼女は出番的にはサイラオーグレベルの準レギュラーになる予定です。基本的に頼れる味方として立ち回ってくださいますが、大王派にカウンターウェイトとして置いた徳子規上級悪魔という面倒な立ち位置なので、味方でいたいけど立ち回れないときもある苦労人キャラでもあります。
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