ハイスクールD×D×R 転生者たちはイレギュラーズ   作:グレン×グレン

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事後処理の残りとちょっとした後日談といった感じになります。


停止教室のヴァンパイア 24 アザゼル「そりゃ、こんなこと真剣に考慮するの俺ぐらいだけどよぉ」

 

 そしてその戦闘の事後処理の中、朱雀院武流は、自分の体を確認していた。

 

「……やっぱり、傷一つなくなってるな」

 

「……どうかしたの、武流君」

 

 小猫が首を傾げながらいぶかしむが、それに応えるのは事後処理を手伝っていた匙だった。

 

「ああ。そういやお前、腹を撃たれてたはずなのに動けるようになってたな。てっきり神器かと思ってたんだけど」

 

 匙がそう考えるのも当然だろう。

 

 常人なら致命傷、もしくは再起不能の一撃だった。あくまでも治療を受けなければ命に係わる負傷だと、匙もなんとなくだが納得できている。

 

 あの戦いでは命がけだったから流していたが、冷静に考えると傷が治っているのには理由がいるはずだ。

 

 なので、匙は武流について詳しくなかったので神器か何かだと判断していた。そう考えるのが自然である。

 

 だが、武流は静かに首を振った。

 

「いえ、俺は神器は持っていません。だから不思議なんです」

 

「不思議なのにすぐ戦えたの? 凄いね武流」

 

 小猫が休憩用の菓子を食べる手を止めて告げる言葉に、武流も首を傾げる。

 

 正直に言えば、自分でもこうも即座に動けるかどうかについて分からない事が多い。

 

 何せ初の実戦なのだ。まともに動けてたことがまず凄いのに、致命傷と言ってもいい怪我を受けた後ですら、戦闘ができるというのは根性ありすぎだろう。

 

 我ながら呆れるやら感心するやらだが、問題はそこではない。

 

 傷の治りが速すぎるのは、全く別の問題だ。

 

 本当にすぐに治ったのだ。撃たれた時は激痛以上に力が抜けて動けなかったのだが、迫撃砲弾を見つけた時ぐらいには、既に痛みは完全になくなっていた。

 

 おかげで気合で動くことができたが、しかしそれにしても負傷の回復速度が速すぎる。

 

 先輩であるアーシアでもいなければこれだけの回復は見込めないことを考えると、匙と小猫が首を傾げている気持ちも分かる。

 

 だがそれ以上に、武流は寒気を感じていた。

 

 先日アザゼルと会った時に、自分の体調回復の理由について神器の観点から説明を受けた。

 

 少なくとも、神滅具やその下位互換を使えば、自分にほぼ適合する内蔵を用立てることはできる。あの時はそれで納得し、その内臓を奪われた者への罪悪感も、兵藤一誠のおかげである程度前向きに捉えられるようになった。

 

 だが、今のこの状況を見ると寒気すら覚える。

 

 自分が回復したのは、本当にそれだけなのだろうか。

 

 その違和感に、武流は寒気を覚え―

 

『あら、そっちは肉体労働系統の事後処理が残ってたのね。力仕事なら手伝うわよ?』

 

 ―そのスピーカー越しに聞こえた声に、振り返ってそれどころではなくなった。

 

 具体的には、いつの間にか近づいていた機械の巨人に面食らった。

 

 仕方がないだろう。何せ敵勢力の主力はロボット兵器だったのだ。

 

 そんな人型ロボット兵器が不意打ちで目の前に現れれば、慌ててもおかしくないことだ。少なくとも、命がけで戦った後なら普通はビビる。

 

 なので、匙も小猫ももちろん武流も飛び退って警戒態勢をとるが、少し離れたところで作業をしていた堕天使が、それに待ったをかける。

 

「あ、そいつは堕天使(こっち)側。安心していいぞー」

 

「リースリア、それだと悪魔と天使が警戒するからストップ。っていうかお前は休憩していいぞ」

 

 と、軽い調子で堕天使側が告げてくるので、武流達も警戒が微妙に解ける。

 

 そしてロボット兵器からは、首を傾げている感じの搭乗者の声が響く。

 

『あらいいの? 私は後半で割って入っただけなのだけれど』

 

「別にいいって。お前、蒼穹二型(それ)の低軌道テストで最近ハードワークだろ? おかげで総督は助かったけど、むしろ休むべきなのはお前だって」

 

「そうそう。事後処理は仕事で来てるやつの仕事。助っ人はちゃんと助っ人やったんだから、休んどけ休んどけ」

 

 そう返してくる堕天使達の言葉に、リースリアと呼ばれた搭乗者は納得したらしい。

 

 ロボット兵器は股間部に折りたたんでいたユニットを展開し、そのまま少し浮かんでいた体勢から着陸する。

 

 三脚になった下半身からそれぞれ着陸脚(ランディングギア)を展開して降り立ったロボット。そのバックパックの上部が、蓋のように開く。

 

 そして展開した内部構造。そこにショックアブソーバーで繋がっている箱から、気密扉のようになっているハッチが更に開く。

 

 そして縁に手が置かれ、そのまま懸垂倒立のように現れたその姿に、武流達は息を呑んだ。

 

 ゆるくウェーブが入った黒髪にではない。

 

 その控えめに言っても美人というほかない風貌にでもない。

 

 膝の部分までまくったカーゴパンツを主体とする、芸術美よりの彼女自身とはミスマッチな格好にでもない。

 

 武流達が目を見張ったのは、その両足。

 

 リースリアと呼ばれた彼女の足は、膝から下が存在しなかった。

 

 特殊な魔法的処置と思われる入れ墨のような刻印が、切断面を包む皮膚に刻み込まれているのが目を引いてしまう。

 

 そして、それが映っていたのは一瞬。

 

 刻印が薄く光ったかと思うと、そこから義足が展開される。

 

 まるでどこかの漫画の機械的な義足のような、明らかに人間のそれに近づけない外見の義足が展開され、接合部がしっかりと接続された時に、タイミングよく彼女は地面へと降り立った。

 

「……ふぅ。やっぱり0.2Gの人工重力は違和感あるわね。どの環境でも対応できるように常にそうなってるのは面倒だわ」

 

 そう少しわずらわしげに呟いたリースリアと呼ばれた女性は、それでもなお美しかった。

 

 まるで荒れ地に植えられた花。過酷な環境でもなお生き残るそれは、然し野草のそれとは明確に違う美しさを併せ持つ。店売りの花という美しくて当然の花が、しかしその美しさを荒れ地でも維持し続ける類の美しさ。

 

 そんな、矛盾した美しさを強く残すそれに、武流達は目を見張った。

 

 それに気づいたリースリアは、苦笑するとカーゴパンツのポケットから、エナジーバーを取り出した。

 

「まあ、過酷な戦いで疲れたでしょう? 良ければ少し分けてあげるけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは、一つの明確な出会いだった。

 

 朱雀院武流とリースリア。

 

 本来の赤龍帝である兵藤一誠。この世界の最強の異物である転生極帝、無想和正。

 

 天然物でも異物でもない、二つのぶつかり合いによる余波が生んだ変化の結晶。

 

 その結晶が集まっていくのも、また大いなる流れの一つなのか。

 

 それは、櫛橋幸希も無想和正も分からないことである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その少し後。具体的には次の日の朝、幸希は想定内だが少し不安だった原作の流れが確立したので、昼休みに彼に接触する。

 

 朝ではなく昼に接触した理由は、大したことではない。

 

 朝いきなり呼び出すには、職員室の朝礼後の時間に余裕はなかっただけである。

 

 なにせ自分は授業の特性上、教科書を主体とするほかの教師達よりやることが多い。ノウハウがないので効率化や適度な省力化はまだできないのだ。朝礼前の時間は、可能な限りその日に授業の準備に当てるべきであり、それが非常勤とはいえ教師として赴任している自分がするべき責任である。

 

 それに相手も赴任当日。流石に少しは忙しいだろうし、一息つく時間は与えるべきだろう。

 

 なので、昼休みになった時、ようやく幸希は彼に声をかけて、時間を作った。

 

「……それではアザゼル先生……総督と呼ぶべきですか?」

 

「先生でいいぜ? 駒王学園(ここ)じゃ同僚なんだし、タメグチでも結構だ」

 

 そう言いながら缶コーヒーをあおるアザゼルに、幸希は苦笑する。

 

 実訃フランクかつリベラルなこの男は、ある意味組織人に向いていない。

 

 悪魔の重鎮は殆どがリベラルか老害の二択ではあるが、しかしリベラル筆頭のアジュカ達と相性が良すぎるぐらいリベラルである。

 

 むしろ更にその上すぎて、組織人として向いていない気もする。それでも組織のトップとしてカリスマ性すら持っているのは、傑物と言うほかない。

 

 そう苦笑しながらディーザが味と栄養バランスをしっかりと考慮してレシピを考えた弁当を食べながら、幸希は苦笑する。

 

 何せアザゼルが食べているのは、普通に購買部で買ったパンだからだ。

 

 しかもコロッケパンと焼きそばパン。炭水化物だらけにもほどがある。

 

「……お昼、良ければディーザに用意させるわよ? 流石にいい歳して、その栄養バランスを投げ飛ばした食生活は危険よ」

 

「おいおい、堕天使なめるなよ。たまにはこういう健康を度外視した飯が食べたくなる時ってもんがあるんだよ」

 

「常に食べそうな印象を持たせといてよく言うわ」

 

 そう軽口を言い合いながら、二人は昼食を食べながら会話を続ける。

 

 幸希は既に功績で最上級悪魔になっており、アザゼルは腐っても堕天使勢力のトップである。会話をするにあたって、相応に組織の趨勢に関わる話も出てくるものだ。

 

 そんな中、幸希はある程度話をしたうえで本命の話を開始する。

 

 彼がオカルト研究部の顧問に立候補していることも知っている。だからこそ、確認しなければならないところがある。

 

「……紅真について、どう思います?」

 

 それは、本命だ。

 

 紅真正一は危険因子だ。少なくとも、自分が知る限りの転生王者においてトップクラスの警戒対象だ。

 

 なまじ自分達と同じ立場だからこそ、その危険度は高いと言ってもいい。

 

 優秀な敵より無能な味方の方が厄介とはよく言ったものだ。しかもこの場合、能力は非常に優れているため、もし最悪の方向に転べばどれだけの被害が出てくるか分かったものではない。

 

 しかも人が使っているガイアメモリが、惹かれあって勝手に飛び出して生体コネクタもなしに適合するという始末。冗談抜きで主人公とか主要ボスクラスのパターンである。何かあった時の脅威度はこれまでの比ではない。

 

 そのガイアメモリ絡みのデータに関しても、コカビエル達が持っていたこともあって三大勢力合同で調べている状態だ。コカビエルという三大勢力の大物が持っていた為、堕天使側は多少人員が少ないが、それでも把握できている者は数多いはずだ。

 

 アジュカも興味をもって調べているが、やはり目の前にいる人物からとりあえず聞いてみたいと持っている。

 

 あの紅真正一が、ガイアメモリの毒素の影響を受ければどうなるか。

 

 流石に正一も警戒していると思いたいが、どうもあの男は自分に都合がいい展開は全て自分の為になると思っている節がある。

 

 変な油断をしないでほしいのだが、そこは大丈夫なのだろうか?

 

 そんな不安を押し隠した幸希に対して、アザゼルも少し困り顔で答える。

 

「まあ、ある程度回収することができたんで、その辺の調整はやってるところだ。どうもあのガイアメモリ、使用者の心身を刺激しやすい傾向があるみたいでなぁ」

 

 どうやら、そこまでは掴んでいるらしい。

 

「具体的にはどれぐらい? アジュカさんにはまだ聞いてないのよ」

 

「ああ。俺は直接関わってないが、使用者の負の欲望……つまり「やると犯罪者になるリスクがあるけどしたいこと」っつー、リミッターかけてる欲望をブーストさせたり、精神的リミッターを緩める作用がある。ま、そんなもんは強大な力ならどんなもんでも持ってるけどな」

 

 そう答えるアザゼルは、幸希が持っている箸を見つめた。

 

「その箸だって、先端をちょっと削るなり、目玉をピンポイントで狙ったうえで差し込む方向を考えれば人を殺す程度のことはできる。それに気づいた連中はもちろん、拳銃とかもっと楽に人を殺せるものを人を殺したいほど憎んでるやつが持てば、「殺す」って選択肢を選びやすくなっちまうもんだ」

 

「そうね。選択肢が「有る」っていうのは、あるか分からなかったりそもそもない時より、選ぶ可能性はあるものよね」

 

 アザゼルの言葉に、幸希は素直に頷く。

 

 自分とて、転生者になれるという可能性を知らないのはもちろん、チートという力がもらえるという前提条件でなければ、このインフレバトル世界に転生することを選ぶ可能性は低かっただろう。

 

 選択肢があるというのは、良い事ばかりでは断じてない。

 

 「出来ないと分かっている」「出来るか分からない」「出来るかもしれない」は、同じようでいて全然違う。少なくとも当事者にとって、それを選んでもいいと考えやすいかどうかでは明確に異なっているのだ。

 

 そして「やれば絶対に出来る」が、明確な根拠や方法と共に提示されれば、それを選んでしまう人間はかなり増える。

 

 ガイアメモリはそういう意味でも危険なのだ。ただでさえそういう願望を加速させる代物な上、実際に使用するとそういう悪影響が発生する。幹部用に至っては、その弊害を避ける為の装備まで開発されているほどだ。

 

 もちろんその上で乗り超える手合いも何人もWの原作には出ているが、それはあくまで少数の特例。誰もができるという風に扱っていいものではない。

 

 だからこそ、紅真という男がガイアメモリを持つことは不安なのだ。

 

 強い精神で自己を律することができれば、安全ではあるだろう。だがそれが困難な代物な上に、あの独善という概念が服を着て歩いている男なら、最初から正義と思っていることには躊躇しないだろう。実際人死にが出るほどのことも、平然と行い正義と確信して呵責を感じない男である。

 

 それがガイアメモリで余計な暴走をする可能性は大きいのだ。彼自身危険性を理解していても「正義に生きる自分が汚染されるものか」と思っていそうだし、暴走したとしても自分が正義だと思っているから自覚症状がないだろう。

 

 その懸念を、アザゼルも持っていたのだろう。

 

 苦笑すると同時に、ふと空を見上げる。

 

「紅真はあれを使った後の感想を「正義を貫こうとするがゆえに、常に意識するほかない悪の可能性。それが増幅しそうになる感覚を覚えた」つってたよ」

 

 それに意外な気持ちになる幸希の前で、それに気づかないアザゼルは続けていた。

 

「だからまあ、その辺の研究は進めている。いうなればフィルター装置があればどうにかなると踏んでるから、紅真にガイアメモリを返すのはテストが済んでからだ」

 

「そうね。彼に力を与えるのなら、それぐらいの保険はセットで渡すべきだわ」

 

 そうほっとする幸希は、アザゼルの視点に気づかない。

 

(……アジュカのやつが俺に送ってきた秘匿論文。荒唐無稽な可能性だが、該当者として考えるべきは紅真以外のこっち側だと、こいつと無想だよなぁ)

 

 幸希は知らない。

 

 アジュカは今後に備えた布石として、それとなく納得しそうな手合いに「神様転生という二次創作ジャンルについて」という論文を送っていたことを。

 

 その論文は「世界五分前仮説」という思考実験と絡め「もしこの世界がとある小説を元にした世界五分前仮説じみた世界だとしたら」という仮定の下、「仮にこの世界に神様転生をした者がいたとしたら」という独自の論文が書かれていたことも。

 

 その過程において神様転生におけるチートのパターンとして「当代の神滅具使いになり替わる可能性」や「不快な神滅具使いが複数いた場合の、アンチ系読者が転生した場合の傾向パターン」等というニッチな論文が書かれていたことも。

 

 それら全てが「もし自分が殺されたり、封印されたら」という、幸希から聞いた原作の流れとは真逆のパターンを懸念した、アジュカなりの対策の布石だということも知らない。

 

 そしてその過程において、幸希から聞いた原作及び自分が知る知識から、最もその時の後援者に相応しい男。そんな男を見込まれたアザゼルにはいざという時に知っていてほしいことや、感づいてほしいことをいくつも仕込んだ論文を提出したことも。

 

 この論文が、アザゼルは幸希、和正や正一にとってどんな影響を与えるのか。

 

 それは、神すらも知ることがない出来事である。

 




 武流の回復力に関しては、詳細が明かされるのはアザゼル杯に入ってからになる予定です。

 そして両足義足のリースリア。彼女がらみで深く入るのもアザゼル杯に入ってからの予定です。が、彼女や相方として出てきた堕天使ディーフォールは「アザゼル杯に入ってからの、駒王町堕天使陣営スタッフ」として設計したキャラなので、これからも準レギュラー的な立ち位置で動く予定です。








 そしてアジュカはアジュカである程度の行動を進めているわけですよ。

 まあ現実的な話、今後を考えると事情をある程度はわかっている者がいるに越したことはない。そして信用しそうな人物で、自分より駒王町に深く関われそうな男がいれば、そりゃそれとなく情報を流します。

 まあ、この時点においてはそこからどう派生するかを考えてない「伏線未満」ではありますけどね。









 さて、結局ゼロワン系列変身アイテムは自力で考えないといけない感じです。

 幸いアイディアはある程度に詰まりましたので、何とか出せそうだと思っております。
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