ハイスクールD×D×R 転生者たちはイレギュラーズ   作:グレン×グレン

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 いや、本当にここだけは絶対に書きたかった。

 ……いつか、絶対に書きたかった、今でしょ!!


冥界合宿のヘルキャット5 幸希「……ちなみにこの作品で作者が一番書きたかった部分だったりします」

 

 

 櫛橋幸希は、最も警戒していることが一つあった。

 

 あの紅真正一の性格である。

 

 幸か不幸か、グラシャラボラス家の時期当主代理はゼファードルではなかった。

 

 単純な実力の前評判ではゼファードルがグラシャラボラスの若手で一番だったが、そこに対抗馬が一人いる。

 

 それがグマリオ・グラシャラボラス。レディッド・キャニアが仕えているグラシャラボラス家の少年だ。

 

 彼もいろいろと素行不良な人物だったようだが、婚約者であるペリア・アスタロトとの付き合いが深くなってからは素行が一気に改善されることとなる。そこに赤龍帝にして追加装備込みとはいえ、ルシファー+白龍皇のヴァーリを一時的にとはいえ圧倒したのだ。

 

 それゆえに候補としては一進一退であり、結果として非公式なレーティングゲームによって雌雄が決され、そして順当にレディッドの力もありグマリオ・グラシャラボラスが勝利した。

 

 それもあり、どうやら若手同士で会話したときはスムーズに進んだようだ。これに関しては好都合だろう。

 

 だが、問題はここからだ。

 

 今幸希は、アジュカ・ベルゼブブに仕える特式上級悪魔としてこの会合に参加している。

 

 いざという時の護衛役としてだが、同時に警戒するべきことがある。

 

 それが紅真と、そして芳美だ。

 

 完全に仕事モードの波柴芳美は、若手たちを挟んで幸希たちの反対側に眷属を連れて立っている。

 

 自分のカウンターとして、大王派がスカウトして転生した特式上級悪魔。

 

 むろん、大王派からすれば転生悪魔は目の上のたん瘤に近い。ゆえに彼女は能力を評価されているとはいえ、旧家のトップたちからすれば厚遇されているというわけではない。

 

 しかし彼女は、幸希より後に特式上級悪魔になったにもかかわらず最上級悪魔だ。

 

 これには絡繰りはないが、わけはある。

 

 もとより政治的な理由で用意した目の上のたん瘤であるため、とある部隊の直属としたのだ。

 

 その指揮官は、原作には影も形もなく、また部隊も目立ってなければおかしいはずなのに出ていなかったことから、転生王者か転生落伍者がかかわっていると幸希は判断している。

 

 ……徹底的な調査の結果、その部隊が結成される前に現代に近い価値観を持つ青年と接触していたことが契機になっているようであり、おそらく彼が転生落伍者だったのではないかと思っている。

 

 そして彼が率いる部隊を構成しているのは、九割九分九厘が二種類に分かれている。そしてそれが、大王派からすればそれなりに使える認識で支援している理由でもある。

 

 その二種類とは、下級中級の純血悪魔と、主を失った転生悪魔である。

 

 他種族からの転生悪魔を、利用価値を認めながらも昇格して権利を持つことに思うところがある大王派閥にとっては使える余地は十分ある。

 

 下級中級とはいえ純血悪魔が力をつければ、まがい物を取り込む意義を少しは薄めることができる。また主を失った転生悪魔に働き口や恩を与えることで、彼らの忠誠心を得る余地もあるだろう。

 

 少なくともゼクラム・バアルはそういう腹芸ができるだろうし、その部隊長も他種族からの転生悪魔を重宝する体制には批判的意見をよく言っていることで有名だ。

 

 曰く、悪魔の秩序と平和は純粋な悪魔が主導で保ってこそ悪魔の未来につながる。

 

 いわゆる民族自決の概念に近いのではないかと、幸希は思っている。そしてまあ、言いたいことはわかるし言っていることも決して見当違いではない。

 

 他種族を迎え入れることを否定しているわけではないが、かといって全肯定してより多く入れようという性分でもないのだろう。それでいて他種族の居場所がなくなりかけている悪魔に手を差し伸べるあたり、腹芸ができるのか優しいのか甘いのか、とにかく人間味……といういい方はあれかもしれないがあるのが嫌いになれない。

 

 根幹的に言えば中立派とでもいいのだろうが、立ち回りを考慮した結果大王派寄りなのだろう。というより、魔王派閥の過激派当たりからは嫌われ気味らしいので、まだ大王派の方が居心地がいいという可能性かもしれない。

 

 そして、この部隊がここにいることに対する問題が一つ。

 

 紅真正一が紅真正一としてこの会合で行動すれば、まず間違いなく()()が紅真を殺しに行くということだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……一つよろし―」

 

「ハイストップ」

 

 ―そして想定どうりに動こうとしてきたので、幸希はTPOをわきまえずに即座に声をかける。

 

 非常に不本意であり、そもそも危険視している相手ではある。だがしかし、今の彼は嫌いで面倒だが実力のある味方だ。

 

 扱いに困るのは事実だが、今この状況下で決定的な決裂をしているわけではないこの男を失うのはもったいない。

 

 死ぬのなら、一人でも多く禍の団を道連れにしてほしいのだ。だからこそ、ガイアメモリによる暴走を抑止するためにいろいろと手をまわして支援もしているのだから。

 

「……櫛橋先生。ここで正しきことを言ったものが愚弄されることを黙ってみていろと? 聖槍を宿し、暴君でありながら最後の良心で力を貸してくれたものに対して、そんな失礼な真似をしろと?」

 

「その辺の認識については言いたいことがあるけれど、本当にその辺にしなさい」

 

 幸希は紅真に対して、はっきりと告げねばならないことがある。

 

「……いい? ここであなたが「そのような愚かな観点で彼女を愚弄するのなら、世界から嘲笑されるのはお前たちだと知るがいい」とか言ったうえで「それでも愚弄するというのなら、この聖槍をもってして、冥界の癌を切除することすらいとわない」とか言って聖槍構えたら本気でまずいのよ」

 

「な、なんでわか―」

 

「命が惜しければシャラップ」

 

 本当に言うつもり満々であったことに頭痛を覚えるが、それは今はスルーする。

 

 やると思った。やると思ったが本当にやろうとしていたとは。

 

 確かに、これはアンチ・ヘイト作品でなくてもよくある展開だ。

 

 イッセーが強化されている作品や、どこか別の作品の者が来訪するクロスオーバー作品。その手の「原作味方勢力が大きく強化されている」タイプの場合、こういう展開になる作品は数多い。

 

 実際老害にイラつく手合いは多いからこそ、そういうスカッとする展開を書きたがる者は多いだろう。そしてそういうのに喝采する手合いは、アンチ・ヘイトよりはよっぽど好感が持てる。

 

 サーゼクスたちですら強くたしなめることができない手合いをやり込められるのは、実にスカッとする展開だろう。

 

 だが、相手は()()()()()()()()()()()()()()()()()()問題なのだ。

 

 数百年生きている超越者ですら苦労する問題を、ぽっと出の若者が力持っているだけでどうにかできるわけがない。

 

 この手の老害は権力も人材も持っているのだ。下手なことをした瞬間に主を含めて何かしらの妨害をしでかしてくることは自明の理である。少し考えればすぐわかることだ。

 

 世界の救世主と思い込んでいる紅真には理解できないだろう。だが、彼の暴走のつけをリアスたちに払わせるわけにはいかなかった。

 

「冗談抜きでそんなことをしたら、グレモリー本家が取り潰しすらあり得るわよ? 彼らはまごうことなきこの冥界悪魔側の有力者。権力も財力も持っているし、配下まで含めれば最上級悪魔クラスの精鋭だっていれば数千数百の手駒だっている。数人が組めば魔王様の命にすら異を唱えても処罰は受けないでしょうね。……ことサーゼクス様たちならなおさらよ」

 

 この世において悪が運びるのは、その方が楽だからだ。

 

 手段を択ばず己を縛らないというのは、明確なアドバンテージだ。これに対抗するには多くの無法を望まぬ者たちがあつまり、それらに対する多大なペナルティというリスクを用意する必要がある。悪とは、悪であるだけで脅威なのだ。

 

 ましてそんな者たちが徒党を組んで社会体制を作っている以上、彼らをうかつに打倒するのは危険すぎる。余計な犠牲が生まれることを望まない、サーゼクスたちのような善良な者たちならなおさらだ。

 

「……今この場において、あなたの言葉はリアス・グレモリーの言葉と心得なさい。うかつな害意はグレモリー時期当主による現政権への反乱宣言と受け取られるわ」

 

 そしてそうなれば、まず間違いなく紅真と()()の間で殺し合いが勃発する。

 

 この現魔王政権下において、彼らと殺し合いになるのはそれだけで致命的だ。監督責任でリアスも相応の処罰を受けるし、彼を盲信しているきらいのある今のリアスでは、勢い余って自分から紅真の後を追いかねない。

 

 それはまずい。さすがにまずい。

 

 そうなれば現グレモリー本家は衰退するだろう。それも、下手をすればサーゼクスが魔王を退くほどの事態になりかねない。

 

 それだけは、絶対に避けねばならず―

 

「―その通りだな。少年、櫛橋幸希に感謝するといい」

 

 ―まあ、黙っているわけがないとは思ってたわよ。

 

 うっへぇと内心で吐き捨てながら、幸希は紅真に彼のことを教えることにする。

 

 どうもこの男、原作知識が「ハイスクールD×Dの世界」のすべてだと思っている節がある。

 

 いい加減現実を教えてやるべきだろう。さすがに、リアスまで道連れにして死ぬのは見過ごせない。

 

「覚えておきなさい、紅真」

 

 正直な話、ここで彼がわざわざ動いてくれるのはありがたい。

 

「―あの男こそ悪魔の番人。彼を敵に回すということは、現魔王だろうと現大王であろうと、その場で立ち位置を「反逆者」にまで格下げされるということになるわよ」

 

 なにせ、自分は余計なことを言いそうになった紅真を止めることに集中すればいいのだから。

 

「彼は冥界現魔王政権の治安維持特殊部隊、天秤旅団の団長。名前をホロウテン・アガレス」

 

 その男は、畏怖とともに段を降りる。

 

 ここからも面倒だと思いながら、幸希は万が一に備えていつでも戦闘態勢に入れるようにしつつ告げる。

 

「レ―ティンゲームを一切経験せず、しかし模擬戦で皇帝(エンペラー)ベリアルことディハウザー・ベリアルを打倒した実力者。通称、無冠の覇王」

 

 ある意味この場で一番敵に回せないものが、本格的にかかわり始めた。

 

「法に背きし存在は、下民であろうと貴族であろうと、魔王であろうと切るべき時は切る。ゆえに我が前での発言は、一考してから放った方がいいと思え」

 

 この場において法を守れば問題なく、一番警戒しなければならない、そんな人物が介入する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 幸希は内心で舌打ちしつつ、周囲に軽く視線を巡らせる。

 

 ……気づくのが遅れたが、すでに天秤旅団の人員が紅真を包囲する形で回り込んでいた。

 

 手際の良さに舌を巻くが、幸希がわざわざご丁寧に問題点を指摘して止めることを見逃したあたり、最低限度は気を使ってくれたということか。

 

「―リアス嬢にソーナ嬢。下僕を連れてこのような場に出るのなら、最低限のしきたりをきちんと教えたまえ。このような場における狼藉は、未熟を言い訳に見逃されるようなものではないのだから」

 

「は。申し訳ありません」

 

「……申し訳ありません」

 

 ソーナは即座に、リアスも若干の間をおいて、静かに頭を下げて謝意を示す。

 

 それに対して匙も紅真も反感の意が顔に出るが―

 

「二人とも。この場において下級の下僕は「主の飼い犬」と同義だということをきちんと教えておくように。現状冥界の法律やあり方は、下級中級と貴族の間に超えることできぬ人権の一線を引いているのだからな」

 

 ―それが言葉に出るより早く、ホロウテンはソーナとリアスをたしなめる。

 

 当人も若干憮然とした物言いだが、個人的な感性で法律や秩序を破るような真似はしないと、その態度が示していた。

 

 そしてあえて紅真と匙ではなく、リアスとソーナに対していったことで、紅真も状況を察し始める。

 

 といっても答えは単純。ホロウテンが言ったとおりだ。

 

 今の貴族たちにおいて、紅真も匙も「能力のある軍用犬」程度の認識でしかない。ゆえにここでこれ以上動けば、その咎はリアスとソーナに向けられる。

 

 その事実を理解して、二人は奥歯をかみしめた。

 

 その態度でかろうじて事態は収まったと判断し、幸希は内心で胸をなでおろす。

 

「……まあ、堂々と"下級""中級""上級"ってくびきがあるのだから、そこに一線が引かれるのは当然といえば当然ね」

 

「そういうことだよ櫛橋幸希。読めているなら前もって指摘してほしかったのだが」

 

「いっても聞かない敵認定されてる相手がいるもので」

 

 ホロウテンにそう返しつつ、幸希はとりあえず一息つこうとし―

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあその通り。老人とは基本的に変化を求めないのだから、彼らを排斥したいならそれなりの地位につかなければならないだろうな」

 

「―面白いことを言うな、グラシャラボラスの代理は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―想定外の火種が叩き込まれる。

 

 

 

 




 いや、本当にこの部分は何としても書いてみたかったんだけど、なかなか書けない状態でした。

 ……魔王であるサーゼクスやセラフォルーですら改善ができていない根深い問題を、イッセーが原作を圧倒する強化されてたり、横合いから別勢力の偉くて強い奴がかかわってきた「程度」でどうにかできるわけがないだろうに。それこそ戦闘能力以外のあの手この手で報復も喰らうだろうし、下手したらその時点で反逆者としてとっ捕まることぐらい、考えるまでもなく気づきなさいな。その場で切れてるんじゃなくて書くんだから、気づきなさいよっての。

 ですが、そういう皮肉めいた作品を書くにおいては、裏を返すとそういうことをするやつを書かなければならないということ。

 自分の作風ではそれが難しく、アンチテーゼツッコミを入れるのも困難でした。

 ……開き直った神様転生作品であるこの作品だからこそかける展開。いやっほぅ!









 そして新たなる独自勢力。転生王者や転生落伍者などによって誕生した、イレギュラー部隊です。

 あの場で正一がいらんこと言ってたら、問答無用でぶった切り連中です。そしてリアスは洗脳されているから止めようとするので、これまたぶった切られます。下手するとサーゼクスとガチの殺し合いになりかねませんが、そうなったらサーゼクスを反逆者認定してその場で殺害も辞さない連中です。

 ただ敵かというとそれも違う。あくまで彼らは「冥界の法と秩序」の味方なので、融通を利かす気がないだけで人間的にはサーゼクスたち側よりですから、幸希が直接言わせないことであえて剣を抜かないことを決め、それとなく正一と匙の二人にも釘をさす人物です。








 そして次の話でレディッドが盛大にぶちかまします。ソーナ的視点だと「急所を避けて撃ち抜かれ、その弾丸で老害の急所が撃ち抜かれる」的な感じになります。
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