深海のとある姫サマ   作:エンゼ

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遅くなりました(いつもの)

今回もまた読みづらくなっております。お気をつけを。

ではどうぞ。


迎撃の刻

 その日の夜。夜偵をしていたもの達からリ級へとある報告が突然入った。

 

「───今マデニ見タコトガナイ規模ノ大艦隊ガココに向カッテキテイル…?!」

 

 その報告にリ級は驚きを隠せない。今までに人間や艦娘達が海域奪還のために大規模な作戦を組んで連合艦隊で攻めてきていたことはあった。

 

 だが今回の襲撃はまさに数の暴力。ここの基地の位置が特定されていたことも驚いていたのだが、それ以上に数に注目していた。捕捉されているだけでおおよそ二百。この基地にいる深海棲艦の二倍以上の数であったという。

 

「何故…何故ココニ……ッ!」

 

 悟る。ここには自身の尊敬している最強の上司───姫サマがいるということを。とするならば向こうの狙いは恐らく姫サマ。だとしたら……姫サマにこの事を伝えるべきではないのではないかとリ級は感じた。

 

「姫サマニ負担ハカケタクアリマセン……デスカラ」

 

 リ級は少女の部屋以外の基地内全てのスピーカーに館内放送を開始した。

 

「──緊急事態発生。全員、出撃準備ヲ即座ニ行イ集合シテクダサイ。繰リ返シマス──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──以上ガ現在確認サレテイルコトデス」

 

 基地に所属する少女を除いた全深海棲艦にそのまま今の状況を短く伝えていく。それに対しての反応は様々で、ザワつく者、悟る者、受け入れる者、寧ろ早く戦わせろと急かす者など沢山いた。

 

 そこには姫級や鬼級などの上位深海棲艦は存在しない。全員が一応eliteやflagshipなどに覚醒は出来るものの、彼らはどうしても上位深海棲艦には劣ってしまう。

 

 普通なら怯えて逃げ出そうと試みるものがいてもおかしくはない。だが……決して誰も逃げ出そうとはしなかった。ザワついていた者も少し落ち着くと、覚悟を決めたかのような目付きになっている。

 

「──アリガトウゴザイマス」

 

 自身と共に散ってくれる同志全員に感謝を捧げるリ級。その姿は既に、『重巡リ級改flagship』のものへと変貌していた。

 

「コチラモ出シ惜シミ等ハシテイラレマセン。ナノデ、全員出撃トシマス」

『!』

「深海棲艦ノ底力…見セツケテヤリマショウ」

 

 全員にここから退避するという選択肢はない。というか既に基地を囲むように包囲されている状態であるためそもそも逃げることすら困難である。深海棲艦として生まれた彼らにとって敵に無様にやられることは望んでいなかったのだ。

 

「サァ───深淵ノ海ヨリ恐怖ヲ刻ミコムノデス」

 

 

 

 

 

 

 

 ───────────────────

 

 

 

 

 

 

 

「──コノ感覚、コノ空気…久シイモノダ」

 

 戦艦ル級。彼女はほぼ単独で基地を北側戦線の防衛を務めいた。既に『改flagship』への覚醒は済ませ本気の状態へと成っている。

 

「アァ、待チ遠シイ……早ク艦娘共ハコナイダロウカ」

 

 おそらくこの戦闘を楽しみにしているのは彼女のみであろう。その表情はもうそれはうっとりとしたものになっており、彼女の異常性を引き立てている。

 

 だが、同時に彼女はここが死地になるであろうとも察していた。

 

 自分のこれまで遭遇してきた艦隊の何倍もの戦力がこれから自分の前に現れてくる。きっと自分の想像よりもはるかに多いであろう。

 

 どれだけ訓練や演習を積んできた自分でも、数の暴力に抗うことは難しいと分かっているのだから……

 

「──ダガ、マダ沈ムツモリハナイ」

 

 ネガティブになってきた思考を振り払うように宣言。口調は真剣そのもの。本気で言っていることが窺えた。

 

「マダ、姫ニ勝利ヲシテナイカラナ」

 

 あるあの少女に勝利すること。それが現在のル級の目標である。自分が真剣に取り組んでいる目標を艦娘に邪魔されることは許せないと感じているみたいだ。

 

 出撃をして艦娘たちと戦うために少女に勝負を挑んでいるはずなのだが…どうやらどこかで目的が入れ替わってしまったのかもしれない。

 

「ソノタメニハ、コノ基地ヲ……コノ戦線ハ死守シナクテハナ」

 

 ル級は生き延びる理由が見つかったとでも言うように振る舞う。そういう言い方をして自分を励ましているかのようにも見えた。

 

 すると、艦娘たちがやってくるのが視認できた。やはり、多い。ざっと五十はいる。ル級は唾を飲み込むと同時に、心がたぎっていくのを感じた。

 

「アッハハ……アハハハハハ!!!!」

 

 あぁ止まらない。止められない。これだけの数を自分は相手に出来るのかと感謝すら覚えていた。笑いが止まらない。楽しみで、嬉しくて、たまらないのだから。

 

「行クゾ艦娘共……コノ私ヲ止メラレルナラバ止メテ見セロォォォォォ!!!!!」

 

 ル級先制での砲撃。その瞬間から、辺りには戦争の音が鳴り響き始めた。

 

 

 

 ────

 

 

 

 西側戦線。ここで既に戦闘は開始されていた。

 

「ヲッ…!!」

 

 戦線に立つのは空母ヲ級改flagship。その護と援護して数隻の駆逐艦が随伴についてくれていた。

 

 しかし、戦況はあまりよろしくない。制空権は拮抗しておりなかなか取れず、さらに潜水艦がいることも確認されているため、上も下も警戒しながら動かなくてはならない状況であるからだ。

 

「……」

 

 ヲ級が一瞬自身の艤装を見つめる。少女が手入れしてくれて以来、なんとなく使うのが勿体なくて綺麗にし続けたもののようで、未だ美しさを保っている。

 

「……ヲ」

 

 自分の基地を──もっと言えば、少女の部屋の方向を向き一言呟いたかと思えばまた相手に向き合うヲ級。先ほどよりも決意を決めたかのような顔つきになっている。

 

「──ヲ!!」

 

 その目に沈む気、負ける気などは一切見えない。ここからヲ級の本番が始まっていく──

 

 

 

 ───

 

 

 

 

「チィッ!」

 

 東側戦線。ここでも戦闘は始まっており、ここを任された者、戦艦レ級eliteは小破に追い込まれていた。

 

「ハッ、コノ程度カヨォ…」

 

 少しボロボロになった自身の身体を見るレ級。少しだけその目に乱れが生じていた。だが攻撃をやめることはなく、その砲撃をきちんと艦娘たちに当てていく。絶対にここを通さないと言わんばかりに…

 

 ふと、ここでレ級は気がつく。自分がここを維持していることに思った以上に本気になっていることに。

 

「……ソウカヨ、クソッタレ。何ダカンダ楽シンデタノカヨワタシ」

 

 配属されて時間も少なく、少女に殴られたりリ級に叱られたりル級に演習に付き合わされたことがあったりと、良い思い出など皆無なこの基地であったのだが…それでも少しだけ楽しんでいる自分がいたことにレ級は気がつく。

 

 そしてそれらが無くなることを考えてみると……少しだけ、少しだけつまらなく感じてしまっていた。

 

「…チッ」

 

 ため息をつき、改めて敵を見据えるレ級。きちんとした目標を定めきったからか、そこに迷いはない。

 

「コレカラノ退屈シノギノタメニ…沈ンデクレヤ、艦娘共」

 

 

 

 

 ──

 

 

 

 

 南側戦線。ここでも既に戦闘は開始されていた。ただ他の戦線と異なる部分は───主力艦が南に集中していたのとである。

 

 大本営最強の『第一迎撃部隊』を中心とした練度の高い艦娘たちが集中していたということだ。

 

 その戦線に立ち向かったのは、この基地で最も練度の高い重巡リ級。『改flagship』への覚醒は完了しており、大和達相手になんとか拮抗をしていた。

 

 練度を常に極めていたのはル級ではあるのだが、それよりも生きていることが長いリ級にはそれ以上の戦闘経験があった。だから自らここへと向かってきたのだ。

 

「グッ……」

 

 しかし、それでも中破へと追い込まれてしまっていた。単艦ではないものの、圧倒的に戦力が相手が上回っていたのだ。

 

「マダ…マダヤレマス…!!!」

 

 中破へと追いやられたとはいえどそこは改flagship。まだその力は削られておらず、次々に艦娘を中破、大破へとしていった。

 

「(ココデ沈ムワケニハイカナイ…!!)」

 

 ここでもし自分が沈んでしまえば、南側戦線はがら空きになってしまう。そしたら本格的にあの方が狙われてしまう。そうなるのは…絶対に許せない。

 

 引けないし、沈めないのだ。

 

「絶対ニ…負ケラレナイノデス!!」

 

 決意がさらに固まったの感じる。ここからは、意地の勝負になるだろう。

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