そして多分短いです…ではどうぞ。
「アッハハハハハハ!!!」
北側戦線。戦闘開始から笑いを止めることはなくル級は戦い続けていた。表情は喜びを表していつつも、狙いは殆ど必中である。
しかも『改flagship』へと成っているためル級の攻撃の一つひとつが重い。当たってしまった艦娘は大破や中破…よくて小破にやられてしまっている。
だが、やられているだけの艦娘側ではなかった。艦娘側からしてしまえば北側の敵はこのル級のみ。よって的はル級だけであるため、ル級は集中攻撃を回避しつつ攻撃をするという厳しい状況下にいた。
「グゥッ!! …アハハ。ヤルジャナイカァ!!」
ル級も機械ではない。ある程度はかわせてはいるものの、必ずどこかで被弾をしてしまう。その何度目かの被弾によって現在中破にまで追い込まれてしまっているのだが、ル級は笑顔を絶やさない。
「ダガ……姫ニハ及バナイナ!!」
目標のあの少女と目の前の異常な数の敵。ル級は前者との戦闘のほうが厳しいと思っていたためか、それに比べればまだいけると感じていた。そのモチベーションのおかげなのか、ル級の近くの敵は大破撤退をしていき段々と数が少なくなっていっていた。
「ハァァァァッ!!!」
自分の付近にいた最後の戦艦に向かって砲撃。それを大破に追い込んだのを確認し、ル級はよしと一息をついた。油断なのか、だけその場に立ち止まってしまい、水中への注意を疎かにしてしまう。
その一瞬を見逃す敵ではなかった。
「──!?」
わずか一瞬を狙われた雷撃。完全に落ち着いていたル級はこれにより大破に追いやられ、そこから笑顔が消えてしまった。
「シマッ……ッ!!」
直ぐ様回避行動に移ろうとするのだが……艤装の当たりどころが悪かったのか、上手く動くことが出来ない。
「クッ…! …ハッ」
何度も何度も動かそうと試してみるが、全快状態よりも上手く動かせない。その内に二回雷撃がやってくるが、なんとかギリギリ回避。だが本当にギリギリで、次当たってしまえば沈んでしまうだろう。
「……ココマデ、カァ…?」
あのル級が弱音を吐いてしまうほど、絶体絶命な状況に追い込まれていた。
───
「ヲッ…!!」
西側戦線。こちらも戦況は悪い方向に傾き続けており、既に随伴の駆逐艦は全艦沈められてしまっているためヲ級単体になっている。
しかも艦娘側の戦闘機が追加されたため、なんとか拮抗していたのに航空劣勢へと追いやられてしまっている。弱り目に祟り目とはこの事だろう。
「ヲ……」
現在ヲ級は砲撃や雷撃、爆撃の回避をしつつ艦載機や戦闘機の着艦を行っていた。だが空母という性質上、接近されるとどうしようもなくなってしまう。艦載機からの攻撃を潜り抜けてきた艦娘の砲撃雷撃にはどうしようもなかった。
「ッ!!!」
中破。これによりヲ級はこれから艦載機の着艦を行うことが出来ない。これはすなわち…戦闘へと参加が出来ないということだ。
「ヲォ…!!」
悔しそうに拳を握るヲ級。だが撤退は許されない。回避行動をとり続けるしか、なかった。
「ヲ…!」
このままならばヲ級が沈んでしまうのも時間の問題であった。
──
東側戦線。ここはある程度戦況は拮抗していた。大破に追い込まれて撤退した艦娘も数多く、他の戦線に比べ少しだけ、ほんの少しだけ深海棲艦側に戦況が傾きつつある状況ではあった。
「……」
しかし、肝心の要であったレ級はもう既に満身創痍一歩手前であった。
まだ中破であったため戦えないわけではない。だが、かなりの燃料弾薬を消費してしまっていたのだ。
「…マダ、クルノカヨ」
大破撤退したとしても次々に別の戦力を補充して再攻撃を仕掛けてくる艦娘たち。しかしこちらはやはり撤退出来ないためずっと戦い続けている。有利なのはどちらか、最早言うまでもないだろう。
「……ハハッ」
気でも狂ったのか、こんな状況にもかかわらず乾いた笑いが出るレ級。いや、こんな状況だからかもしれない。
「諦メナイツモリダナ…」
ニィ…と笑みを浮かべて改めて戦闘モードへとスイッチを入れる。まだ、負けていない。
「諦メナイナラ…諦メルマデ付キ合ッテヤルヨォ!!」
思い切り叫んで艦娘たちのほうへと進みだす。
しかし…レ級の撃沈も時間の問題であった。
─
「ハァ……ハァ……」
南側戦線。ここでは……現在、敵主力艦隊に対してギリギリで持ちこたえている状況であった。
少し前からここのリ級は大破に追いやられ、火力や速度が落とされたものの、運がよかったのか敵の主力の悪いところにあたり中破にさせたり、奇跡的に砲撃雷撃等を回避することが出来たりしたため、戦線維持をなんとかこなせていたのだ。
「姫サマノ、モト…ヘハ……行カセ、マセン…!!」
リ級目は死んでいなかった。絶対にここを通すまいという目を敵艦たちへと向け続けていた。
けれどもそれに身体がついていっていなかった。激しい戦闘にて艤装は悲鳴を上げており、手や足はダランと下に垂れている。精神以外は満身創痍そのものであった。
「……あなたのその姿、この大和が見届けました」
目の前のリ級にそう語りかけるかのように、『第一迎撃部隊』旗艦大和が言う。キリキリキリと艤装の砲口をリ級へと向け、これから撃つと暗に予告している。
「ですが、私たちは進まねばならないのです。ここで散ってもらいます」
「ハァ……ハァ……」
「第一、第二主砲……斉射、はじ────」
ドシン
──途端、その場にいる全員の動きが止まる。南側戦線の者だけではない。北側、西側、東側。全ての者がこの音によって動きを止め、音のした方向───基地のほうを見た。
「あれは……!?」
基地の上に何かがいる。どす黒い純粋な漆黒のオーラを……いや、あれはオーラというには生ぬるい。言うなら…炎。炎を纏ったある人型の生命体がいた。
顔までもが黒く染められていて、目は獣のように鋭くなっている。そこから感じる感情は──『怒り』のみ。
一部艦娘と深海棲艦にはとても見覚えのある艤装を身に付けており、それらもまたそれに連動するかのように黒く染められ、黒い炎を纏っていた。
そう、それの正体とは────
「姫、サマ…?」
「工廠、棲姫…!!」
「───────────!!!!!」
声にもならぬ雄叫びをあげる少女───『工廠棲姫─壊』が姿を現した。