──まだ、力を隠していたとは……
──…幸い、工廠棲姫は艦娘たちを沈めるつもりはないらしい…援軍を要請し、撤退させよう。
──げ、元帥方……これから、工廠棲姫への対応は……
──……非常に不服ではあるが…放置するしかあるまいよ。
──そうだな。これより、工廠棲姫、そしてその基地への一切の手出しを無期限に禁じる……異論は?
──ない。それでいくしか……ないだろう。
キュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッ────
今日の少女は、いつもとは違い真剣な表情で…いや、訂正。あのキレた表情で一つ一つの装備を何度も何度も磨いていった。
どこからか取り出していたあのフキンがどんな素材で、磨き方にどんな拘りがあるのかは不明であるが、見る見る内に装備の傷が無くなっていき、元の綺麗で美しい姿を取り戻していった。キランッと輝いている。
ある程度整備し終わった装備は左側に並べて置いている。今ので五個目であった。そしてまた右側に並べてある整備待ちの装備たちは軽く数えても数十個は確認できる。少女はそれに対して無言でひたすらコレクションの手入れを続けていくのだった。
場所を移して基地全体。現在ここでは基地の修理を行っていた。先日の戦闘で基地がもうそれは悲惨な状態になってしまったためであり、三日連続で作業は少しずつ進んでいた。
ちなみに、少女の部屋に関しては一番最初に終わっている。というか少女が一人で修復を行ったのだ。
「ソレハアッチニヤッテクダサイ。ア、アレハアソコデス」
現場指揮を任されたのは重巡リ級。艤装の修理と自分の疲れを癒し終えた頃、少女がリ級の前にやってきてとある大きな紙を渡していった。
その紙というのが、今回の基地の修理計画である。
どこにどういう素材を使いどのような組み立て方をしていくのか、特にここはこうしておくように、等という指示が詰め込められたもので、一ヵ所一ヵ所丁寧に記載されていた。
リ級といえば、指揮を任されたということはそれなりに信頼されているのだ、ということに気が付いたのか、紙を貰った際には歓喜のあまり涙したという。
この基地にまともな者があんまりいないため消去法で選ばれた可能性もあるが……まぁ、ここでは触れないでおこう。
「…ヨシ皆サン、一旦休憩ヲ入レマショウ!」
基地の修復というこれからの生活に関わることだからなのか、戦闘狂のル級やあのレ級でさえサボることなくきちんと役割をこなしていた。レ級のほうは面倒くさがってはいたが…
リ級は近くの椅子に腰を下ろし、一息ついていた。
「フゥ……チョット疲レマシタネ……」
着々と元通りになっていく基地を見つめて笑みを浮かべるリ級。色々と大変だったなぁと背伸びをする。
「…アンナ姫サマ見タコトナカッタデスネェ……」
味方のはずなのに、思い出すと全身が震え上がるほど恐怖してしまう。首を振って、忘れようと努めて、少女を絶対に怒らせないようにしようと改めて決意する。
「──ソウイエバ、艦娘タチハドウナッタノデショウ?」
途中から疲労や負傷の影響で意識を失っていたためそのあとどうなったのかがリ級には分からない。後で全員にそれとなく聞いてみたみたいだが、残念ながら誰も記憶には残っていなかったようだ。
沈んでしまったのか、それとも撤退をしたのか。撤退したのならまた来られると正直困る。今の練度では敵わなかったのだから。
自分も鍛練を積んでいかないとなと強く感じつつ、時間も来たみたいで再び立ち全員に声かけを行う。
「サテ、再開デス! 早ク修理作業ヲ終ワラセテシマイマショウ!!」
今日もこの基地は平和みたいだ。
キュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッキュッ─────
「……ヨシ」