──ペラッ。
「………」
今日も少女は部屋の中心の椅子に腰を掛け、本を読みながら過ごしている。昨日爆発により一冊が粉々にされたため新たな本を引っ張りだしそれ読んでいるようだ。
さらに壁際の装備たち全てが昨日よりも輝いて飾られており、どれほど大事にしているのかが窺える。
新たなページを開いてから少しした後、部屋の戸が割と雑に三回叩かれた。少女からの返事を待つことはなくそのまま戸は開かれ、少女よりも背が高めな一人の女の人が入ってきた。
「…ヲ」
「………」
入って早々、軽く手を挙げ声を掛けるその人。少女は一瞬目を向けた後、本を読むのを再開した。
彼女は空母ヲ級。空母というところからも分かるとおり、艦載機や戦闘機を飛ばしたりたりして戦闘を行う艦である。
ヲ級の特徴といえば、深海棲艦特有の白い肌なども挙げられるだろうが、一番はやはり頭に付いている生き物のような艤装だろう。艤装の口のような場所から艦載機を出し、持っている杖状の物でそれらを操作していくようだ。
戦闘の後だったりするのだろうか。頭の上の艤装はボロボロになっており、煙のようなものが出てきていた。
「ヲ…」
「……」
あと、何故かここのヲ級は『ヲ』しか話さない。しかし少女はヲ級の言わんとしていることを理解しているようで、本に栞を挟み置き場にしまいこんでヲ級の方を見た。
それを確認したヲ級が少女に何かを差し出した。
「ヲ!」
まさしくそれらは資源であった。燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイト。各資源の数を表すならば、おおよそ400程度であろうか。
「…」
少女はそれら資源をじっっと見つめる。表情こそは変わらないものの、何かを見定めるかのような目付きであった。
しばらくすると少女は資源から目を離し、ヲ級の頭の艤装を片手で掴み外した。同時に少女自身のクレーンやアームなどが付いた艤装を展開。どうやらこれからヲ級の艤装の修理を始めるようだ。
「…」
「ヲ!」
掌を広げてヲ級に見せる少女。意味を理解したのかヲ級は返事をし、艤装を外したまま部屋から出ていってしまい、少女は本格的に修理を開始した。
一応告げておくならば、この基地に少女に頼る以外に艤装の修理手段がないのかと問われればそうではない。自動で修理できるところは一応存在はしている。
だが、圧倒的にそれらに任せるよりも少女に任せる方がとても丁寧に整備してくれる。寧ろ修理に出す前よりも綺麗になって帰ってくるとまである。だから少女に任せるほうが絶対によいのだ。
しかし、それは少女の時間を潰してしまうことに他ならない。読書、装備コレクションの手入れなど少女のやることは結構ある。そのため少女へ修理や整備を頼むのならば、それ相応の対価を用意せねばならない。
そこでヲ級が用意してきたのが各資源である。いくら少女と言えど、深海棲艦である以上燃料が尽きれば動くことは出来ないだろう。
更に艤装は弾薬や鋼材も必要とするため必須。ボーキサイトは装備コレクションの艦載機系類が破損した場合の修理に必須。
これら全てにある程度の貯蓄はあるものの、あればあるだけ困らないものなのだ。
ヲ級は艤装の修理を、少女は資源の獲得とお互いに利害が一致している。そのため少女は艤装の修理を引き受けたのだ。心なしか、ヲ級の艤装も少女に丁寧に修理されていて嬉しそうだ。
「…」
修理開始から五時間ほど経過した。修理作業事態は終わったようで、自身の艤装にヲ級の持ってきた燃料と弾薬を補給させた後収納した。同時に部屋の戸がまた雑に三回ノックされてヲ級が入ってくる。
「ヲォ!」
「……」
ヲ級は自身の艤装を見て驚きの声をあげた。ボロボロで煙も出ていた自分の艤装がたった五時間程度で元通りの綺麗な状態でそこにあったからである。装着してみると、フィット具合も良さげな様子。ヲ級、御満悦である。
「ヲ~♪」
「……」
さて修理をした少女はというと、もうそれに興味を失っているのか、それに目もくれていない。修理前のようにまた本を読んでいた。
「ヲ!」
ヲ級は少女に頭を下げ、軽くスキップを歩みながら部屋から出ていく。部屋にはまた少女一人だけとなった。
──ペラッ。
少女の読書はまだ終わらない。
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「オ、ヲ級ジャン。ナンカ嬉シソウダナ」
「ヲ、ヲ~♪」
「ヘェ、アノ姫ニ艤装直シテモラッタノカ。工作艦ラシイトコロモアルジャナイカ。ワタシモ見テモラウカナァ」
「ヲー?」
「資源ガ必要? 何デダ? 別ニイラナイダロ。ジャア、行ッテクルナー」
「ヲ…」
多分これからも今回みたく短くて本当にサクッと読める感じのやつになります。
シリアスとかも多分ないです。