ただ加筆しただけなのでほぼ中身変わってないのは許してヒヤシンス。
「──『深海棲艦ハ兵器デ沈メバ、ソノ兵器ノ攻撃耐性ガ付ク』……?」
『ソウヨォ。ソレガ深海棲艦ノ特徴ノ
電話口にて戸惑った口調の彼女と、冷静な向こう。どこかこういう反応も仕方ないかという雰囲気を漂わせている。圧倒的で衝撃的な事実。それを聞かされ一瞬頭が真っ白になってしまったが、その後とある疑問が彼女に浮かぶ。
「──ジャア、何デ未ダニ戦争ガ続イテルンダ? 記憶ガ無クナルッテイッテモ、本能デ人間ヘノ敵意ハアルダロ? 練度ハ確カニ痛イカモシレナイガ、耐性ガ付クナラソレダケデモウ強イジャナイカ」
深海棲艦の一部は理性を持たず本能で動いてる者もいる。どこの基地にも所属してないはぐれ艦隊だったり、海上(もしくは海中、海底)に突発的に誕生した深海棲艦だったりがその部類に入る。彼らは不思議なことに人間側か深海棲艦側かを明確に見極めて攻撃対象を定めている。こういった存在が実際にいる以上、記憶がなくなってもどう行動すべきなのかは深海棲艦ならば分かる可能性はありそうだ。
戦争勃発から七年以上は経過している。現状確かに人類側が不利な方に傾いてはいるところもあるものの、一応拮抗している形である。もし仮にこの耐性が付くということが事実ならば、人類を壊滅、もしくはそれに近しい形に出来ていたはずだ。
聞いている限り彼女の語る『姫』以外に戦争に非常に消極的な存在はいなそうだ。であるならばこのような疑問が浮かぶことも不自然ではないだろう。
『ソコデ、《艦娘》──正確ニハ《艦娘》ト《妖精》ガ絡ンデ来ルノヨ』
「! ヘェ……。ッテ、妖精? 妖精ッテナンダ?」
『空母ノ艦娘ガ艦載機ヲ飛バスデショウ? アレノ操縦者ダッタリ、ソノ艦載機ヤ魚雷ナンカヲ開発シテル謎ノ存在ヨ』
「……ソンナノガイルノカヨ」
『コレモコーショガ気ガ付イタ事ナノヨネェ』
ドウナッテンダウチノ『姫』と別方向の疑問は尽きることは知らないが、変わらず耳を傾け続ける。
『《妖精》ガ開発シタ武器ヲ《艦娘》ガ扱ッテ深海棲艦ヲ沈メタ時……ソノ時初メテ、兵器ヘノ耐性ガ付カナクナルラシイワ』
「ナルホドナァ、ダカラ私ラノ相手ハ艦娘ナンダナ。マタ戻ッテキタトシテモ確実ニ沈メルタメニ」
自身のことであるにもかかわらず初めて知ったことに関心を寄せる彼女。しかし、話の本筋がズレ出していることを悟り始めた。そのことを伝える。
「──ナァ、ツマリハドウイウ事ナンダ? マサカダトハ思ウガ……『姫』ハ沈ンデ記憶ヤラ練度ガリセットサレタダナンテ言ワナイヨナ?」
『ソレハアリ得ナイト思ウワァ』
話している内に早口になってしまった。そんなことはないとは思いつつも先ほど『姫』でさえも沈むと断定されてしまったことからその可能性だってある。少し震えている様子も見受けられた。彼女にとってはその程度に『姫』は悪くない存在であったのかもしれない。
しかし即刻否定。少し気持ちが軽くなったような様子になるものの、今度はじゃあ一体どういうことなんだという疑問が湧き止まない。関係がないのならばこの話をする必要はないのだから。
『私ハ正確ニハ今ノコーショハ知ラナイノダケレド……』
一拍置いて、続けられる。
『少ナクトモ、コーショハドンナ攻撃デ沈ンデモソノ攻撃耐性ガ付クシ、記憶モ練度モ失ワナイ。ソウイウ風ニ自分ヲ改造シタカラネェ』
──────
「■◼◼■◼■◼◼■■────!!!!!」
壁を破壊し、嵐の中からその姿を現して雄たけびを上げる。その怒りが高純度の黒い炎となって溢れ出しており、周囲の物を呑み込み溶かす。
その様は、まさに化物。『敵』と認定した
「──ッかハァッ! ハァッ、ハァッ……!」
ショックからしばらく呼吸を忘れていた男、なんとか取り戻し呼吸を再開。
「(な、なぜッ?! こ、いつがッ、ここにッ!?!)」
混乱、そして恐怖。それのみが今の男を支配している。本来、工廠棲姫は海の底に沈んでいったはずなのだから。三つに分解されたそれらが墜ちていく様を目の前で見ているのだから。
それが今『工廠棲姫』として目の前に存在している。この事実は男にとって受け入れ難いものであった。
「提督! 何事です、か……」
爆音に誘われやってくる艦娘たち。口調から男の心配の様子はなく、ただの現状確認のために来たようであった。
しかし、工廠棲姫にとってそれは関係ない。目の前に、加えて男の付近に現れた。それだけで『敵』なのだから。
「! よく来たお前ら! 行け!」
「え?! あ、はい!?」
艦娘たちに気が付いた男は即座に言葉を掛け、すぐに艦娘たちの後ろへ回る。
前に出された艦娘達は困惑と怒りが混じったが、自身の使命を思い出し工廠棲姫へ向き合う──
ク゛シ゛ャ゛リ゛
──その瞬間に、破壊される。それなりの練度を誇るものの、全艦同時に一撃大破。ここが海上ならば轟沈──いや、それ以上といってもいいような損傷。ここが陸上であったが故に未だ生きているというべきだろう。
ここまで一瞬。しかし男は時間が稼げるとは微塵も感じてなかった。仮に出来ても僅か数秒だろう、と。しかしその時間で冷静に近づくことはできる。これを男は狙ったのだ。
身体の震えは止まないものの、ある程度思考が許されるようになってきた。過呼吸もまだマシになってきはした。
「(考えろ! これをどうすれば打開出来る?!)」
だからといって、この先の手が思いついたわけではない。相手はあの工廠棲姫。こちらに視線が向いていることからすぐにでも殺しにきてもおかしくない状況。
生死がかかった故に普段以上に思考は捗る。そして、先ほどの自分の思考を思い出した。
──復活してきたとしても、また沈めてしまえばいい。
反射的に男は手をポケットへと突っ込む。
あった。レーザー銃。
「は、ははははハハハハハ!!!」
自身を鼓舞するため、笑う。ぎこちないが、震えを静まらせるには十分すぎた。
「そうだッ! 俺にはこいつがあるッ! お前を一度沈めたッ! この銃がッ!!」
最初からこうすればよかったと思いながら銃口を工廠棲姫へ。対象は動かない。避けようともしない。
「海を彷徨う亡霊がッ! 沈めェ!!!」
トリガーを引く。放たれる光線。一度は少女の肌を溶かし、身体を貫いた攻撃。今回も同様に工廠棲姫へ致命的損傷を与え────
「──は?」
──る、わけがない。
光線は工廠棲姫の胸元に放たれている。男の想定では胸元を貫通させ、そのまま全身を真っ二つに分断するつもりであった。しかし、現実はどうだろうか。
光線は確かに当たっている。それは誰の目から見ても明らか。だが、貫通などしておらず、ダメージを食らっている様子がない。つまり、0ダメージなのだ。
「────」
言葉が出ない。男の持つ知恵、技術の結晶。それがいとも容易く無効化されてしまったのだから。
「■◼■◼■■────!!!!!」
工廠棲姫の叫びが響く。激しく揺れ出す鎮守府。
その勢いのまま、工廠棲姫は男の方へ──────。
前あった最後の箇所は一旦なかったことにしてちょ。