深海のとある姫サマ   作:エンゼ

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多分続いてます。頭空っぽにして読んでください。


遠征の刻

「…困リマシタネ」

 

 ある日の午後。一人自分の部屋にてある資料と海図を読んでいたリ級はため息をつきながらそう呟いた。その資料には、『征遠』の二文字が刻まれていた。

 

 彼女はしっかりとした真面目な性格故、自らが進んでこの基地の運営に努めている。

 

 同僚の深海棲艦はある者は適当、ある者は戦闘のことしか考えてない戦闘狂、ある者は割と楽観的な性格であるため運営には向かないなど、まともな者があんまりいないためこうして彼女が殆ど一人で努めるしかないのだ。

 

 彼女の上司であるあの少女も基本運営に手を貸したりはしない。ただ本当に危機的状況に陥っている場合では少女自身の危機にも繋がるため、その時は動いてはくれるだろう。そんな時がくればの話ではあるが。

 

「最近ノ鋼材ノ収集量ガ明ラカニ少ナイ…マダアソコハ見ツケタバカリノ島デアルハズ…」

 

 深海棲艦の遠征とは主に島などから取れる資源を収集することである。燃料が取れるところ、鋼材が取れるところなど目星を付けてそこに燃費のいい水雷戦隊を派遣して資源を蓄えていくのだ。

 

「…報告通リ艦娘ガコノ辺リニモ目撃サレタカラデショウカ?」

 

 可能性はなくはないだろう。深海棲艦とは手段は多少異なるものの艦娘にも遠征という行為は存在するのだから、自分達が見つけた島で艦娘達も資源を取っているかもしれない。

 

 資源に余裕がないわけではないが、戦闘をさせ続ければ補給や修理で着々と消えていってしまう。だからリ級としてはあの場所への遠征はやめ、新たな場所に派遣をさせたい。出来れば効率のよいところを。

 

 しかしそんな簡単にどこでどこが多く取れるかなど分かれば苦労はしない。適当に派遣させそこに何も無ければ、資源をただ無駄にするだけであり、少女を怒らせてしまうだろう。故に頭を抱えていたのだ。

 

「…姫サマナラ分カルカモシレナイ」

 

 リ級の頭の片隅にその言葉が過る。少女は見た目に反して、実はこの基地の誰よりも昔から深海棲艦としてこの世に君臨している。長く生きている少女ならばこの辺りのことは詳しいかもしれない。

 

「イヤ、ダメデス。姫サマニ負担ヲ掛ケサセルナド…」

 

 だがリ級としては少女にはあまり苦労はさせたくないみたいだ。怒らせたくないというのも勿論あるだろうが、上司として慕っているところもあるのでそこからも来ているのだろう。

 

「デモ………シカシ………ヤッパリ………」

 

 脳内で議論を続け、オーバーフローしそうになってしまったリ級。最終的に彼女が出した結論は──

 

 

 

「…ヨシ、姫サマニオ尋ネシヨウ」

 

 

 

 迷う時間を無駄だと判断したようで、その目に覚悟を決めたような灯火が宿る。まるでそれは艦娘との決戦に向かう深海棲艦、または激しい戦へ死にに行く戦士のようだった。

 

 彼女はその役割上、何度か少女の部屋へと赴き色々と報告をすることがよくある。その際は自分からただその事柄を淡々と告げ、すぐに出ていけばよかった。

 

 だが、今回に関しては少女から意見を貰わなくてはならない。少女の大切な時間を割いてもらわなくてはならない。覚悟はしたリ級であったが、少女の部屋へと向かう足取りは重く、少し呼吸が荒くなってしまっていた。

 

 そしてもう気付けば目の前には少女の部屋。唾を飲み込み、いつもよりも遠慮がちに戸を三回ノックした。

 

「ヒ、姫サマ。リ級、デス」

 

 いつも通り、返事はない。ここまではいい。ここからが問題だ。またソッと優しく戸を開け、カクついた動きで少女のもとへと近づいた。

 

「……」

 

 やはり少女は昨日と変わらず同じ本を読んでいる。これから少女の時間を削ることへの心苦しさ、そして怒られるのに対する恐怖が入り交じった感情を持ちながら深呼吸をして、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。

 

「姫、サマ。実ハ────」

 

 現在がどういう状況なのか、そこで少女に何をしてほしいのかを短く告げる。全てをいい終えた時、咄嗟にリ級は目を瞑った。恐怖が上回ってしまい少女の顔を窺うことが出来なくなってしまったのだ。

 

 殴られるのを覚悟していた少女であったが、いつまでのその衝撃が来ない。恐る恐る目を開け、確認を行おうとすると────少女が目の前に立っていてリ級のことをじっと見つめていた。

 

「……」

「ヒ、姫サマ…?」

 

 いつの間にか本には栞が挟まれて置き場にしまいこまれてある。まさかこんな状態になるとは思ってなかったリ級は現実逃避からか「(ア、姫サマノ顔キレイ)」と呑気に考えてしまっていた。

 

「アッ…」

「……」

 

 持っていた海図と資料を取られ、リ級は変な声を出してしまう。そんなのを気にも掛けない少女はどこからかペンを取り出し、資料を眺めつつ海図のとある場所に丸印を三つササッとつけた。

 

「……」

「ワッ!」

 

 用が済んだのか少女は雑に資料と海図をリ級に返し、また椅子に座って本を読み始める。

 

 リ級はそれらをなんとかキャッチし、海図のほうを眺める。丸がつけられていたのは一つは基地の近くの島、後の二つは少し遠目の大きめな島で、それぞれまだ未探索な島々であった。

 

「ココハ………ハッ、失礼シマシタッ!!」

 

 その時、ここがまだ少女の部屋だということに気がつき、挨拶をしてから急いで退室をした。なんとか用事を済ませることが出来たという安堵をリ級が包み込んだ。

 

 自身の部屋に戻り、改めて海図を眺めてみる。何度確認しても行ったことがない島々だ。不安はあるけれども少女が示した場所でもある。試しに行ってみる価値は十分にあった。

 

「…トリアエズ、派遣シテミナクテハ分カリマセンネ」

 

 海図を持ち遠征部隊の場所へと赴き、概要を全員に伝える。その際あの少女が示した場所でもあると伝えることも忘れず、適当に行わないよう渇を入れてから準備をさせ、三部隊を島々に派遣させた。

 

 待つこと二時間程度、各部隊が帰還した。艦娘に遭遇することはなく、しかも求めていた鋼材が多く持ち帰られた。大成功だ。

 

「流石…姫サマデス!」

 

 自分だったらこの場所を思い付くことはなかっただろう。やはり頼って正解であった。リ級の少女に対する信頼や忠誠心が高まっていく。

 

 遠征部隊の全員に感謝の言葉を告げて休みを取らせ、潤った資源を見て更にリ級は少女への気持ちが増していくのを感じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「オ、ナンダヨ鋼材一杯アルジャナイカ。オイリ級、少シグライ食ベテモイイダロ?」

「エッ…」

「……オォ、結構旨イナ。上等ナ鋼材ダナコレ」

「ア、アァ……ナンテコトヲ………アッ!」

 

「………………」

 

「ナンダヨリ級。ヤッパリオ前モ食イタイノカ…………ヤベッ」

 

 

 ───ブチッ。




私はボーキが常に足りません。
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