深海のとある姫サマ   作:エンゼ

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『参』。
またの名を、『少女 in 艦これ始めたて提督の鎮守府』編。

なお、メタ視点はなしの現地人提督であるとする。



過去の始まり


 夜。この基地のほとんどの深海棲艦が寝静まり明日へ備えていたり、一部は遠征や哨戒などに出ていたり、事務作業をしていたり(ただしリ級のみ)する時間。もちろん、基地のトップである少女も例外ではない。

 

「……」

 

 日課である装備の手入れが終了。それぞれの装備を定位置へと置き直し、輝く装備たちを眺める。その様子に満足したようで、そこから目を外し就寝の準備をしようとしたとき──ある一つの装備に目を引かれた。

 

 15.5cm三連装副砲。少女が装備というものに興味を持ったかなり初期の段階でコレクションしたもの。他の装備と同じようにきらきらと輝いている。ただ、他の装備に比べ、若干使われた形跡が多く残っている。

 

 少女はそれを見つめていたが、少しすると興味を失ったように当初やろうとしていた就寝の準備を開始。ベッドに入って布団を被り、そのまま目を瞑っていく。同時に、部屋の電気も消えほぼ真っ暗の状態になった。

 

「……」

 

 普段、少女は夢を見ない。ただ寝て起きて、いつもの趣味の時間を始めるだけ。たまに起きる面倒なことを殴り飛ばしてしまうだけ。

 

 しかし、今日の少女は違った。たまたま就寝前に見てしまった15.5cm三連装副砲。これがきっかけで、少女は夢という形で昔を思い出す。少女がまだ基地を持つ前──まだ見ぬ装備を求め色々と彷徨っていた時期。そしてその中でたどり着いた、新人提督の鎮守府での日々を。

 

 目に入ったのは、偶然。過去を思い出したのは、いつもの気まぐれ。それらから目覚めた少女は一瞬程度であろうが、こう思うのであろう。

 

 ──懐かしい夢を見た、と。

 

 

 

 

 ────────

 

 

 

 

 大本営から装備を頂戴し、自身の拠点に持ち帰り装備たちをある程度(装備たちが輝きだす程度)をした後、壊れないような場所に設置して一先ず満足した少女の次の行動は、新たな装備の獲得であった。

 

 少女は今「装備これくしょん」という新たな趣味に目覚めたのだ。自身には殆ど不要なこの装備というのは一体どれだけ存在するのだろうという興味、全ての装備を集めてここに並べたいという収集欲などが少女を支配していた。

 

 また、当時の少女には部下がいなかった。そんなのいるくらいなら殴り飛ばせばいいし、いたら邪魔なだけ──と考えたのかどうかは不明だが、孤高の姫として存在していた。

 

 加えて海域を支配する、人間を殲滅するなどの深海棲艦特有の思考は装備これくしょんに目覚めた瞬間どっか行った。つまり、この時の少女は本当に自由そのものであった。

 

 色んな海域を巡った。色んな装備を見た。そして奪ってきた。奪った装備は丁寧に手入れをし、飾り付ける。コレクションは順調に増えていっていた。

 

「……?」

 

 そんなことを繰り返してきた少女は、ある時自身の不調を覚え始める。上手い具合に航行できず、いつもみたいに機敏に動けないのだ。これには少女はすぐに思い当たったらしい。そう、燃料不足だ。

 

「……」

 

 少女の燃費は驚くほどいい。補給無しで長時間活動できる程度には。

 

 しかし、それはあくまで燃費がいいというだけであって、補給しなくてもよいというわけではない。そのため暇さえあれば装備手入れ、強奪、持ち帰りの繰り返しをしていた少女の身体は、段々と万全ではなくなっていたのだ。

 

 それでもなお少女の趣味への欲はとどまらなかった。自身のこと以上に趣味を優先し続けた。結果、コレクションは増えていき手入れ技術も向上したが、段々と動きがぎこちないものになっていた。

 

 深海棲艦の本部に帰れば補給は可能であろう。しかし少女はそこが好きではない。理由は単純、命令されるからだ。加えて装備これくしょんは一人で楽しみたいという思いもあったのだろう。とにかく少女には本部に帰るという選択肢はないも同然だった。

 

 ある日、ふと一つの基地が目に入る。深海側ではなく人間側、いわゆる鎮守府と呼ばれる場所。認識した後、少女はそこに向かいだす。燃料含め色々と貰って行こうという算段だろう。

 

 向かっている最中──ある叫び声が少女の耳に入った。

 

「た、たすけてくれぇ!!」

 

 当然、少女は無視。その方向に振り向くことすらなく先へ先へ進む。

 

「だれかぁ! 俺泳げないんだぁ!!」

 

 無視。声の発生源に近くなってきたのか、段々声は大きくなり続ける。

 

「たすけてくれぇぇ!!!」

 

 ……流石に少女もイライラしてきたようだ。何かが切れるような音こそしてないものの、瞳孔が開き眉間にしわを寄せ始めている。この間も、絶えず叫び声は響き続けていた。

 

 ただ、少女がイライラすることも分からなくはない。何せこの叫び声の主である男がいる場所は、少女の位置よりも遥かに陸に近い場所──超浅瀬であるのだから。

 

「しにたくねぇんだぁぁ!!」

 

 加えて言うと、今少女がいる場所も言ってしまえば艤装を展開せずにいても普通に立てるような場所。浅瀬の部類に入る。言ってしまえばその場所で溺れ死ぬなど、頑張らないとできないのだ。

 

 これでもっと海の方で溺れていた、というならば少女は完全に無視をしていたのだろう。放っておけば勝手に死に、静かになるから。だが近くにいる男はそうではない。

 

 どう見ても死にそうにはない。何かしなければこの騒音は永遠に鳴り響き続けるだろう。少女は渋々そうに──本ッッッ当に渋々そうに男の方へ向かった。

 

 むんず

 

 首根っこをがしっと掴んで浅瀬から救出。そのまま陸地へと運ぶ。男は脱出できたことに気が付いたのか息を切らしつつほっとした表情。しかし、すぐに少女に気が付き目を見開く。

 

 当然のことであろう。自身を助けたのは、敵である深海棲艦の、さらに言えばその中でもかなり危険視されている姫級深海棲艦なのだから。辺りに唯一の対抗手段ともいえる艦娘がいない時点でかなり"詰み"に近い。

 

 普通なら死を恐れ命乞いをするか、手榴弾などで自分諸共爆発して殲滅を図るかとかだろう。

 

 そう、「普通なら」だ。

 

「助けてくれたんだよな? ありがとう。それでえぇと君は……俺と一緒に着任してくれる艦娘……で、いいんだよな?」

「……???」

 

 少女は浮かべる。「こいつなにいってんだ」という無表情を。あっけに取られてついその場に落としてしまった。

 

「わっ! っと。ふぅ、ともかく、これで挨拶できるな」

 

 未だ混乱状態の少女に向かい、男はその場に立ち、告げた

 

「えっと、今日から──だな。この鎮守府に着任することになった。正直ド素人で分からないことの方が多いが、勉強しながら進んで行きたいと思う。これから、よろしくな」

「……」

 

 当初はすぐにここを去る予定であったであろう。しかしこの出会いから始まる日々が、意外と長く続いてしまうのだということを──この時の少女は知らなかった。




出来る限りシリアスをなくして天上天下唯我独尊させたい。

いつも通り、不定期更新で進んでいきます。
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