深海のとある姫サマ   作:エンゼ

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急展開かもしれません。いつも通り力を抜いて読んでください。


来宅の刻

「……」

 

 本日も少女の様子は変わらない。いつものように部屋の中心の椅子へと座り、黙って本を読み続けている。その表情もやはり無のまま。何も変わっていないいつもの景色であった。

 

 ただ、今日に限ってはどこか違っていた。それは少女自身ではなく───

 

 

 

「オォ……ヤッパリ、コーショーノ部屋スゴイ…!!」

 

 

 

 ───少女の部屋にお邪魔していた、一人の女の子がいることであった。

 少女よりも背丈が小さくどこか子供らしい一面も備えている女の子も、少女のように白い肌をしており頭に二本の小さな角が生えていた。服装も殆ど白で統一されている。

 

 しかしそんな可愛らしい見た目をしていながらも、この女の子はリ級やレ級に並ぶ…いや、それより遥かに高い実力を持つ深海棲艦の一人である。

 

 そう、彼女は深海棲艦の姫級の一人の『北方棲姫』である。姉に同じく姫級の『港湾棲姫』や『飛行場姫』がいて、普段は名前にもある通り北方の海域を本拠地として生活をしている。

 

 どうやら今日は少女の基地へ遊びに来たみたいだ。実力者ではあるものの、感性は子どものそれに近いようで、目を輝かせながら飾られている装備達を見ている。特に艦載機や戦闘機系がお好みなようだ。

 

「ゼロモアル…!! トッテモキレイナノ…!!」

 

 無意識なのかそれらに手を伸ばし触れそうになった瞬間…北方棲姫はハッと少女の方を見て手を引っ込めた。

 

「ア、アブナイ…コーショーニ怒ラレルノハモウイヤダ…」

 

 北方棲姫が言外に語ったが、彼女は一度少女に怒られている。とはいってもあの怒った顔つきでギロッと睨まれただけであるのだが。

 

 そうなった理由は本当に単純で、過去に一度北方棲姫が少女の装備コレクションに無造作に触れてしまったからである。それがトラウマになったのか幼い精神ながら少女は怒らせてはいけないと学んだのだ。

 

 昔、北方棲姫からそういったことをされたのにもかかわらず少女のほうは北方棲姫を追い出したりなどはする気配はない。ただ無関心なのか、はたまた装備コレクションが褒められるのが嬉しいのか…おそらく前者だろう。

 

 そんな最中、外から二人分の足音がして部屋の戸が三回ほどノックされた。

 

『姫サマ。リ級デス』

『レ級デース…』

『コラ! シッカリ挨拶シナサイ! 姫サマノ部屋ナノデスヨ!』

『メンドーダナ…』

 

 挨拶がされ、入ってきたのはリ級とレ級の二人だった。珍しい組み合わせかもしれないが、ここの二人は意外と一緒にいることが多い。割と息が合っているかもしれない二人であった。

 

 部屋に入るやいなや、何故かお互いに見つめ合うレ級と北方棲姫。そのあとすぐ北方棲姫がレ級に指をさした。

 

「ア、飛行場姫オネーチャンノトコノレ級! 久シブリ!」

「ゲッ、北方棲姫サマジャン…」

 

 北方棲姫の反応に対して嫌そうな反応を示したレ級。それにため息をつきながらリ級がレ級の頭を軽く叩いた。

 

「レ級。オ客サマガ来ルコトハ伝エマシタヨネ?」

「イヤ、マサカ北方棲姫サマダトハ…」

「ハァ…トコロデ何デソンナニ嫌ソウナンデス?」

「ナンカ苦手ナンダヨ…ソレヨリ、報告ハイイノカ?」

「ッ! モ、申シ訳アリマセン姫サマ! 早速報告シマス!」

 

 レ級に言われ軽く焦って少女へ本日の報告を行うリ級。だがやはり少女はそれに怒ることはなく本を読み続けていた。

 

「マタレ級ト遊ビタイケド、今日ハコーショーノコレクションヲ見ニ来タダケダカラマタ今度ネ!」

「勘弁シテクレヨ…」

 

 また装備コレクションを見始めた北方棲姫のその言葉にレ級は遠い目をしてしまう。何かトラウマでもあったのだろうか…

 

「ネェネェレ級。ココノ装備達スゴイヨネ!」

「…マァ確カニナ。ヨクヨク見レバ全部手入レサレテルンノカ」

「デモ───

 

 

 

 

 

 

 

 ───『レップウ』、ナイ…」

 

 すると突然、今まで何事にも無関心であった少女がピクリとその言葉に反応し、北方棲姫をじっと見つめた。

 

「…姫サマ?」

 

 リ級のことなどお構い無しに席を立ち、早足で北方棲姫の元へと向かう。いきなりの行動に驚いたのか、その場の全員が呆気にとられていた。

 

「………」

「…アッ!」

 

 北方棲姫があるものを見つけたのか、少女の持ってた本を奪い取り、少女の読んでいたページの次を開き少女に見せる。

 

「コレ、レップウ!!」

「………」

 

 少女は示されたページをじっと見つめる。表情は一切変わらないため周りが少女がどう反応するかを窺っていると……少女は本を奪い返したかと思えば突然艤装の展開を行い、どこからか手提げバッグのようなものを取り出す。それで準備完了と言わんばかりに部屋の外へスタスタと歩き出してしまった。

 

「───マ、待ッテ下サイ姫サマー!!」

 

 少し遅れて、リ級が追いかける形で部屋を出ていってしまう。少女の部屋には未だに驚いている北方棲姫とレ級だけが残ってしまった。

 

「…行ッチャッタ」

「…ソウ、ダナ」

 

 展開が急すぎてそれ以外に言葉が出てこないみたいだ。

 

 また少しして、北方棲姫とレ級は目を見合わせる。

 

「…ワタシタチモ行クカ?」

「ウン!」




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