深海のとある姫サマ   作:エンゼ

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ちょっと遅くなりました。ゆっくり見てってください。
本日あんまりほのぼのしてないかもです。


分断の刻

 空気が急に切り替わった。立ち入るべきでない場所に立ち入ってしまった。少女を除く三人はそれらを感じとり身震いをしてしまう。先ほどまで晴れていた空が暗く重いものに変わってしまったかと錯覚してしまうほどにだ。

 

「コレハ…」

「…嫌ナ予感的中カヨ…」

「…」

 

 うっすら進行方向から偵察機が見え、撤退していった。もちろん自分たち深海棲艦側のものでなく、艦娘側…もとい人類側のもの。いつ戦闘が始まってもおかしくはない状況下にあっていた。

 

「…敵艦載機ガモウスグ来ルデショウ…北方棲姫サマ、レ級、対空準備ハ出来マスカ?」

「ゴメン…対空アンマリ積ンデナイ…」

「コッチモダ…ドウダ、白旗デモ挙ゲルカイ?」

「フフッ、ソレデモイイカモシレマセンネ……来マス!!」

 

 ──瞬間、空一面が鉄の群れによって覆われた。それらは規則正しい配列を組み、もう絶対にこちらを逃がさないとでもいうかのように辺りを飛び続けている。

 

 三人は同時に別方向へと散り回避行動を取り始めた。しかし残り燃料は数少ない。動ける時間は本当に限られてしまっている───だからこそ、

 

 

「ダカラコソ、出シ惜シミナンテ出来マセン!! 『改flagship』覚醒…!!!」

 

 

 詠唱と同時にリ級の全身が黒い嵐に包み込まれる。直ぐ様それらは振り払われ、中から禍々しい黒と黄が織り混ざったオーラを、左目からも青く凄まじいオーラを放つリ級が現れた。

 

 レ級や北方棲姫並に艦娘側から厄介視されているほどの実力を持つ重巡リ級の頂点、『重巡リ級改flagship』の降臨である。

 

「ヒュゥ、ヤルナァリ級。ダッタラ…ワタシモイッテモイイヨナァ!! 『elite』覚醒!!!」

 

 リ級を横目に見ていたレ級も詠唱を行う。レ級もまた黒い嵐のように包まれていき、それが過ぎ去ったかと思えば、赤黒くおどろおどろしいオーラを纏ったレ級、『戦艦レ級elite』が姿を現した。

 

「カエレッ…!!」

 

 北方棲姫のほうは、丸型の猫の耳のように角を生やした『深海猫艦戦』にてやってくる艦載機に応戦。着実に落としてはいるものの、数の差もあり徐々に北方棲姫の艦戦の数も減りつつあった。

 

「チッ、シブトイナァ!!」

「数ガ、多過ギマス…!!」

 

 覚醒を果たした二人とはいえ、北方棲姫同様戦況は悪くなっているの一言。耐久、火力等々能力自体は上々しているものの、数の暴力には流石に苦戦せざるを得ないようだ。

 

 

 一方、少女の方はどうなっているかというと───

 

「………」

 

 そんな彼女らのことなどお構い無しに航海を止めることなく一直線に進み続けていた。しかしさっきからずっと艦載機からの攻撃はどこからどう見ても受けている。直撃している。けれども無傷。本当に当たっているのか疑ってしまうのだが、そこはきちんと直撃している。だがしかし0ダメージである。

 

「……」

 

 少女は無表情のまま何も声を発することはない。その目の先には一体何が映っているのだろうか…

 

 

 

 

 

 

 ─────────────────────

 

 

 

 

 

 

「──分断、成功ですね」

「えぇ、皆さん優秀な子達ですから」

 

 第一迎撃部隊所属、一航戦『赤城』と『加賀』。旗艦の大和達から一つ離れた場所にて艦載機を飛ばし戦闘に参加していた。

 

 目的は、先ほども彼女らが言ったように戦力の分断。戦艦レ級eliteに北方棲姫、そして予想外の重巡リ級改flagshipに…工廠棲姫。個々で強い深海棲艦が一つに固まって行動していたとすれば厄介極まりない。戦力を分断させ、確実に倒しにいく方針に定めていた。

 

 そして、戦力分断の目的はもう一つ存在していた。

 

「工廠棲姫──現在こちらに速度を変えず向かってきています」

「あの子たちの攻撃を当たり前のように耐えているのは驚きました…流石、現段階の第一目標ですね」

 

 最も危険視されている工廠棲姫の撃破。そのために赤城と加賀以外は工廠棲姫の進路先の場所にて艤装をフル展開して待ち構えていた。

 

「最初資料を見たときは驚きましたが…彼女達なら」

「えぇ、何かしら打撃を加えてくれるでしょう。その間私達のやるべきことは…」

「…そうね、加賀さん。他三隻の足止め、可能ならば撃沈させること。一航戦の誇り、汚させはさせません!!」

「この場だけは、譲れません…!!」

 

 そうして彼女らは矢を放つ。絶対に深海棲艦との戦争の終止符の王手をつくために。

 

 

 

 

 

 ───

 

 

 

 

 

 

「…この辺り、ですね。工廠棲姫の進路予想先は」

「赤城や加賀からの報告では、進路方向は変えることなく進んでいるとあった。間違いはないだろう」

 

 第一迎撃部隊旗艦であり大和型戦艦一番艦大和、同じく二番艦武蔵。共に現存する艦娘の中で最高レベルの火力を持ち、数多の深海棲艦をその砲撃により沈めてきた歴戦の戦士である。

 

「…少々、戦力が過剰ではないかと思ってしまうな」

「そうねぇ、私達の全力を一身に受けるだなんて…工廠棲姫が逆に可哀想よね」

 

 長門型戦艦一番艦長門。二番艦陸奥。彼女らは大和型には劣るもののそれに食らい付くほどの火力を有し、幾多の戦場を駆け巡り多数の強敵と対峙し、その力で沈めてきたこれまた歴戦の戦士である。

 

 大和、武蔵、長門、陸奥、赤城、加賀。この六隻が大本営最後の防衛線の一つである第一迎撃部隊だ。

 

「…まさか長門に陸奥、慢心しているわけではないな?」

「それはない。工廠棲姫の恐ろしさは資料越しではあるが理解をしている」

「それでもちょっと思っただけよ? 武蔵も『改二』の実装が許可されたのよね?」

「あぁ…ただ、気持ちは分からなくもないがな」

 

 ちょっとした軽い雑談にて少しだけ気を落ち着かせる。しかしその体制は戦闘モードに完全に入っていた。

 

「──赤城さん加賀さんから報告です。工廠棲姫と私達の接触までおよそ残り五分!」

「…いよいよ、か」

「最初から全力でやるぞ…陸奥、武蔵!」

「オッケー。じゃあ……いくわよっ!!」

 

 刹那。武蔵、長門、陸奥の三人が特殊な嵐によってつつまれる。しかしリ級やレ級のような禍々しいそれではなく、むしろ神々しさに近いものであった。

 

 吹き去った後に現れたのは───大和をも上回る火力と装甲を兼ね備えた『武蔵改二』、世界のビッグ7『長門改二』、自信を備え本領発揮『陸奥改二』。日本が…いや、世界が誇る最強の艦娘が今ここに爆誕した。

 

「皆さん、砲撃の準備をお願いします!」

 

 しかし彼女らにも劣ることは決してない大和。じっと工廠棲姫の来るであろう先を見つめている。その言葉に従い、全員が砲を構えてその時を待った。

 

 

 

 少女と彼女らが接触するまで───残り三分。

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