深海のとある姫サマ   作:エンゼ

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遅くなりました(いつもの)
頭のなかでは出来てるのに文章化できないこのもどかしさなんなんでしょうね…
ではどうぞ。


演習の刻

 先日、深海棲艦の敵の本部である大本営へと足を運び、主力部隊をほぼ壊滅させ自身は無傷のまま烈風を買い取り帰宅した少女であるが、その様子はいつも通りで変わらない。今日も今日とて自分の部屋の中心の椅子に座り、本を読んでいる。

 

 変わったところといえばこの部屋の状態であろう。少女の装備コレクションの中に買い取った烈風が追加されたのだが、特に少女は烈風を気に入ったようで、烈風単体専用のショーケースに入れ保管され、正面から見て美しい角度で飾られていた。

 

 ───ペラッ。

 

 ページを開く。すべてのページを気に入っているのかどのページも何分もかけてじっくりと味わうようにしてその世界にのめり込んでいた。

 

 途端、少女の部屋の外からタッタッタッタッと足音が聞こえてきた。乱雑な歩き方で、丁寧に歩いてくるリ級やこれよりも軽い足音なヲ級、ヲ級よりも軽い北方棲姫やゆったりと歩くレ級の誰でもない足音であった。

 

 そのまま足音の持ち主はノックをすることなく扉をバーンッと開けた。

 

「失礼スルゾ。姫」

「………」

 

 やってきたのは戦艦ル級。身長はヲ級よりもほんの少しだけ小さめで、黒髪。やはり深海棲艦であるため肌は白く、黒い服のようなものを上下に着ていた。

 

 少女の反応はやはり無視。チラ見することもなくずっと本を読み続けていた。

 

「姫、レ級ヤリ級ニ聞イタノダガドウヤラ大本営ニ行ッテ戦闘ヲシタソウジャナイカ」

「………」

「一体何故…何故───

 

 

 

 

 

 ────何故、私ヲ連レテ行カナカッタ!!??

 

 

 このル級の性格は勇敢で、少女に対して敬語を使うことはない。そこだけを見ればどこかの長門型一番艦と同じのように感じてしまうのだが………彼女は、『戦闘狂』であるのだ。

 

 日々基地の演習用の空間にてそこらにいる深海棲艦を誘い演習をし続け、その練度を高めている。

 

 だがそれでは飽きたらず出撃させろと何回か少女に直談判しているのだが、その度に声がうるさいという理由で殴り飛ばされている。

 

 それらをル級は少女を認めさせれば出撃が出来ると認識。ある程度訓練や演習をし、自信がついたら演習を申し込むようになった。

 

 その際はちゃんと対価として資源や資材を用意しているため、少女はちゃんと応じてくれている。ただし殆ど瞬殺で終わるのだが。

 

「姫ニ演習デ勝ッテスライナイリ級ヤレ級マデ出撃ヲシタトイウデハナイカ!!」

「………」

「私ハコンナニ頑張ッテイルトイウノニ…!!!」

 

 見た目からはおしとやかで美人というイメージを持たせてくるが、性格がコレである。当初リ級が基地運営に協力してもらおうと話しかけて即止めたということは有名な話である。

 

「教エテクレ! ドンナ強敵ト対峙シタノダ!? ドンナ戦イヲシテキタノダ?! ナァ姫!?!」

「………」

 

 流石に目の前で叫ばれるのに耐えきれなくなったのは少女の顔があの表情をつくりル級を睨む。今にも少女はル級を殴り飛ばしちゃいそうな勢いだ。

 

「ットト、スマナイ。今ノハ煩カッタナ。反省スル」

「……」

「トイウワケデダ! 私ト演習ヲシロ! 姫ハストレス発散ガシタイ! 私ハコノ渇キヲ満タシタイ! 対価ハ今回ハイラナイダロウ!!」

「………」

 

 表情を怒ったもののまま変えずに本を閉じて艤装を展開、そのままスタスタと部屋から出る。向かっている先は…演習空間だ。

 

 

 

 

 

 ────────────────────

 

 

 

 

 

 唐突に使用が開始された演習空間には二人の深海棲艦が対峙していた。

 

 片方は戦艦ル級。やっと強者と戦うことができるということから全身で喜びを表現しており、相手を前にしても笑顔を絶やさないでいる。

 

 もう片方は我らが少女。その表情は怒のままであり、拳をベキバキボキィと鳴らしている。その佇まいは最早ラスボスで、無言でル級をボロボロにすると告げているようであった。

 

 ──演習開始のピストルが鳴る。同時に少女は猛スピードでル級に接近、右拳でル級を艤装ごと粉砕しようと拳を振るうが……間一髪のところで避けられてしまった。

 

「危ナイィ…流石、姫ダナ。ダカラコソ、楽シイ!!!」

 

 ル級の笑顔が増していく。そしてル級は天に向かって大声を張り上げていく。

 

 

「『改flagship』覚醒ッ!!!」

 

 

 瞬間、ル級が黒い嵐によって包まれていく。嵐が晴れるとそこには、狂気を感じる黒と黄のオーラ、左目からも青いオーラを出している『戦艦ル級改flagship』が出現した。

 

「……」

「アハハハハ!!!! 楽シイナァ、楽シイナァ!!!」

 

 戦況はル級の防戦一方。いくらル級が最上位態になったとはいえ少女には及ばない。時々少女に砲撃を食らわせる程度だ。

 

 だがル級は笑い続けていた。ル級は少女には及ばないというだけで、この基地の深海棲艦の中ではトップクラスの実力の誇っており、そこらの駆逐艦や軽巡洋艦では勝負にはならない。

 

 対等に勝負ができるのはリ級やレ級といった者たち。北方棲姫とも戦いたいようだがそれに関してはリ級から必死に止められているそうだ。

 

 つまり現状この基地でル級の圧倒してくるのは少女のみ。誰から見ても勝ち目のない一方的な演習。だがル級は逆境に立たされているからこそ燃えていた。勝とうともがき続けていた。

 

「グフゥッ…!」

 

 クリーンヒット。少女の左拳がル級の腹へと突き刺さる。あまりの重さにフラつくもすぐに体勢を立て直し再び攻撃を仕掛け始めた。

 

「ハッ、マダマダァァァ!!!!」

 

 少女には0ダメージ。さらに拳や脚の追撃。ル級はほぼ大破寸前にまで追い込まれる……だが、笑顔を止めない。

 

「ハァァァァッ!!!」

「………」

 

 最後の力を振り絞って少女へ攻撃───しかし0ダメージ。無傷であった。そのままル級へ無慈悲に少女の拳が振るわれ────ル級、轟沈判定。演習はそこで終わってしまった。

 

「………」

 

 気を失ったのかル級はその場に倒れてしまっている。少女はル級を放置してそのまま部屋へと戻っていってしまった。

 

 流石に今回のことでル級は少女に演習を申し込むことはなくなるだろう。演習を眺めていた者たちは誰もがそう感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「姫! マタ演習ヲシヨウ! 次ハ負ケヌ!!」

「………」

「今回ハ対価ヲ用意シタゾ!! サァ、マタアノ熱イ演習ヲシヨウジャナイカ!!」

 

 …もしかしたらル級はM体質だったりするのかもしれない。

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