上手くいってます様に……
~~秋春視点開始~~
「箒、ISの事教えてくれ」
入学式翌日の朝食の時間、一年生寮の食堂で幼馴染みを見付けたぼくは、早速これからの為に箒に声を掛けた。
知識が確かなら、屑がISについて教えて貰おうと箒に声を掛けるのは専用機の話が出た後。ここで先手を取る。
幸いな事に同室の筈の屑はおらず、代わりにのほほんさん含む三人が箒の対面に同席している。
「うわ、織斑くん?」
箒の隣、驚きの声を挙げる……谷本さん? の正面に座る。三人共嫌がる素振りは見せず、のほほんさんともう一人に至っては小さくガッツポーズしてる。当然だね、ぼくは神童だ。
「織斑くんって、篠ノ之さんと仲良いの?」
恐る恐るといった風に訊ねてくるので、ぼくは「うん、ぼく達幼馴染みなんだ」と答える。
「なら、篠ノ之さんを何とかして!!」
「昨日の夕食からこっち、「一夏を獲られた」を繰り返してばかりなの!!」
「一夏って確か、織斑くんのお兄さんの名前だったよね?」
よくよく観れば、箒は生気の無い瞳で虚空を見詰め、姿勢だけは折り目正しく食事をしている。ただ口に物が入ってない時はうわ言の様に「一夏を獲られた」と繰り返しながら。まるで機械人形だ。
「ほ、箒!?」
ぼくの箒をこんな目に遇わせるなんて……赦せない。箒の為にも、屑にはきっちり制裁を加えなくては!! そうして箒にぼくのカッコいい所を魅せれば、相手はゲージカンストの幼馴染み、確実に堕ちてゲットできる!!
「箒、しっかりして!! く……一夏の目を覚まさえる為にも、君の協力が必要なんだ」
「………………一夏の…………為……」
「そうだよ箒。もう一つの家族だか何だか知らないけど、一夏をあんな訳判んない奴らに、これ以上好き勝手させちゃ駄目だ」
危うく何時もの癖で屑と呼ぶ所だった。屑の名前を出した所で、箒が僅かに反応する。ぼくが畳み掛ける様に訴えると、箒の瞳に徐々に光が灯る。少し思い返してみてもはホンと、訳判んない奴らだよ。
例えば箒と鈴の幼馴染み二人にモブ友の妹である蘭を加えた三人。この三人は物語開始前に、時期は違えど小中時代に知り合った仲と言う事もあって、事前にある程度の好感度を稼げるいわゆるボーナスキャラだ。
そこで前世知識と大人の余裕で好感度を稼ぎ、ついでに屑の居場所を亡くしてやろうとぼくが手を回せば、あの五人は失意の屑を慰めたり傷心の屑に助言したり……原作をぶち壊しにしてくれて!! 挙句、真の主人公を選ばず屑に股拓くなんて……。
「そう……だな……。ああ、そうだ、その通りだ。秋春、私に出来る事があれば何でも言ってくれ。一夏の為なら協力は惜しまん」
屑の為と言うのは気に入らないけど、箒攻略の為と思って我慢してあげよう。神童は腹芸も熟すのだ。屑の特訓も妨害出来て良いこと尽くめだしね。
これでクラス代表決定戦まで放課後は、ISについて教えて貰う名目で箒と二人っきり。そうすれば後は、真の主人公であるぼくの魅力で……。
~~秋春視点終了~~
~~恵斗視点開始~~
「ところで織斑兄弟、お前達のISだが準備まで時間がかかる」
「へ? ……あ、はい」
「予備機が無い。だから、少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」
「それなら俺の分は不要です。今日の放課後、伊吹製作所から俺の専用機が届く事に成ってるんで」
「「「何?」」」
二日目の授業の1コマ、原作では主人公ワンサマに専用機が用意されると告げられる場面。当然だがオリむーこと弟君も存在するこの世界線では、秋春の分も併せて二人分だ。
だがここで、以外な人物から待ったがかかる。何とワンサマ、全漢の夢専用機を不要だと申しおる。何故? と、三者三様に驚く俺と秋春と織斑先生。
「事前に申請して知らせてましたよね? 入学書類と一緒に」
「ああ、あれか。あれなら私の方で不受理にしておいた。お前は私の弟だ」
「理由に成ってません。大体、不受理だというなら、そう決まった時点で書類なり電話なりで返事を寄越して下さい。そもそも、俺や秋春に学園では教師と生徒の関係である事を強要するなら、貴女も俺や秋春が自分の弟なのを口実に束縛と過干渉と依怙贔屓するのは止めなさい」
怒りも露のワンサマ。確かに専用機の申請が受理して貰えない、だけならまだしもその連絡無し。しかも不受理の理由が弟だから、では怒りたくもなる。
ワンサマに白式以外の専用機が在る事については、もう突っ込まない。何が来ようと、最強で無敵な俺の前には無力だ。
「貴様……教師に逆らうのか?」
「俺は理不尽と不誠実に対して抗議しているんです。教師だから生徒相手に何をしても構わない。そんな横暴に敬意は払えません」
公衆の面前で姉弟喧嘩するなよ……。クラスの一同が心を一つにしていると、まあまあとワンサマを宥める紅葉の声が。
「一夏、その辺にしておけ。爺ちゃん曰く、もし政府から回される機体があったら、そっちを選んで貰って構わないそうだ」
「お祖父様がおっしゃるには、お前の意思と選択を尊重する……だそうですよ、一夏さん」
そして続く紫織の伝言。以外な所からの援護に一瞬驚きながらも、納得いかなそうな表情の千冬先生。だがワンサマの方も黙ってはいない。
「では織斑織斑先生、その政府が用意したっていう機体の仕様書を昼休みまでに取り寄せて下さい。それを観て決めます」
「織斑兄、お前の専用機は既に決まっている。これは政府の決定事項だ、異論は認められん。それ以前に仕様書の取り寄せは不可能だ。完成していない機体のスペックなど、測り様が無いからな」
「造り掛けの機体に出来てからで無いと判らないそういった所までは求めてませんよ。ただ……機体のコンセプトとか、搭載している武装とか……まさか、この段階でそれすら決まってないとか言うんですか?」
「…………そう言う事なら、私の方から掛け合ってみよう。昼休みに職員室まで来る様に」
~~恵斗視点終了~~
~~一夏視点開始~~
「兄貴ー、ご飯いこー」
昼休みになって早々、綾花が弁当片手に俺の元に足早に駆け寄って来た。教室の出入口に目をやると、苦笑を浮かべた吹雪と葉月が同じく弁当の入った包みを片手に入ってきた所だ。この三人は俺達一組とは別クラスの筈なのに、もうやってきたのか……。
「悪いけど俺は、これから職員室にいかなきゃだからパスだ。政府が用意したっていう専用機の仕様書貰って来る」
「そう言う訳なら仕方無いか……。先に行ってるよ兄ちゃん、早く用事済ませて食堂に来てね」
「儂も待ってますよ、兄さんの造ったお弁当を皆さんに自慢しながら」
そう言いながら葉月の掲げる包みの中身は、全て俺の手作りだ。葉月に限った話では無いけど、五人の弁当のサイズがおかしいのはもう慣れた。教室を軽く観た限り何人か弁当の娘もいたけど、それらと比べて常人の三倍近い。
あれだけの量を平然と平らげるもみ姉達がIS操縦者とはこういうものと判断基準に成ってた俺としては、クラスの皆の量が競技選手の卵としては少食過ぎないかと驚かされたものだ。
そしてIS学園職員室。政府が用意した俺の専用機(名前は
「ついでにだが、お前に訊きたい事がある」
「俺に答えられる事ですか?
勿論、呼び方を合わせてやるいわれは無い。大体、「織斑先生と呼べ」とチョップ付きで強要してきたのは当の本人だ。お望み通りだというのに、何が不満なのか?
「…………。山田先生が昨日の晩、お前と篠ノ之の部屋を分ける様に言ってきてな。何があった。折角寮長の立場と権限を使って二人きりに様成れる様に計らってやったのに」
「篠ノ之に殺され掛けただけです。二回程」
「お前と言う奴は……初日から騒ぎを起こすな」
「それだけなら、俺はもう行きますよ織斑先生。昼がまだだし、何より人を待たせてるんで」
「お前の方こそ他に無いのか? おおよその顛末は山田先生の方から聴いたが、何故自分ばかりが……とか」
「そんな事言ったところで、貴女に何が出来るって言うんです? 人の心がわからない貴女に出来るのは、不満を覚える事すら赦さないと、俺を殴って壊すだけだ」
~~一夏視点終了~~
~~千冬視点開始~~
弟の消えた扉を暫く見詰めていたが、それも止めて仕事の続きを始める。
一夏がISについて学ぶ事に積極的なのは良い。あの、私の弟を掠め取った小娘どもに触発されてと言うのは気に食わんが……だが、何故こうも上手く事が運ばない!?
一夏の奴、私が人の心がわからないだと!? 人は集団の中で生きなくてはいけない。そんな中での事故を起こさない為に規則があり、規則は覚えて守るものだ。理解も納得も必要無い。
それを解らせるのに、殴って痛め付けるのは正しい遣り方だ。束の時も……あいつは中学高校と周囲に……親にすら無関心を極めた人畜有害の問題児だったが、この遣り方で巧くいった。訊かれたら答える程度には。
だというのに、何だあの私を見る一夏の諦めた目は。
伊吹の小娘共にはよく懐き、笑顔は勿論の事、泣き言を隠さず、怒った所も魅せると言うのに。何が姉だ! 何が妹だ! あんな偽りの家族等。
私には、何も望んでいないと言うのか…………。
~~千冬視点終了~~
~~???視点開始~~
今日一日の終わりを告げるHRの挨拶を、クラス代表の仕事の一つ号令を済ませた私は、手早く荷物を纏めて一年四組の教室を出た後、脇目も振らずにIS整備室へと向かう。
本来なら二年生から始まる『整備科』の為の設備に昨日入学して一年生に成ったばかりの私が向かうのは、私がいわゆる専用機持ちで自分の機体を整備する為……と言えればカッコ良かったんだけど、私の専用機は未完のままだ。
世にも珍しい男のIS操縦者が三人も見付かり、その内二人の……元日本代表の弟達(双子)の専用機を造る事に成ったから、と言うのが開発元の倉持技研の弁明だったけど、自分でISを完成させたあの人に追い付きたかった私には丁度良い機会だ。
「?」
自分の専用機のもとへ向かった私は、そこで私の専用機を見つめる先客を見付けた。事実上の女子校であるここIS学園では有り得る筈の無かった男子の制服を着た男子生徒……にしては一瞬女の人かと思う程に綺麗で美人で、仮に本当に女の人で男装の麗人だとするなら男の人みたいに体躯に恵まれたガタイの良い、チグハグだけど綺麗に混ざった人だった。
「!? 会長さん……じゃあ無いな? 俺と同じ一年って事は妹さんか?」
声色から類推するに男の人みたいだ。どうやら姉さんを知ってるみたいだけど、寄りにも寄って姉さんと間違えるなんて……。
「そこで、何してたの? 私の専用機の……打鉄弐式の前で」
「打鉄弐式って言うのかコイツ、良い名前だな。俺は織斑一夏。伊吹製作所からの専用機の到着を待ってる所……何だけど、ちょっと早く来すぎたみたいでな。折角だから整備室の見学してたらコイツを見付けたんだ」
「伊吹製作所からの専用機の到着を待ってる? 待ってるのは倉持技研からじゃ無くて?」
「何で政府が用意した方の専用機の開発元の名前が出てくるのかは置いといて、話が見えないんだが……」
「貴方と貴方の弟の専用機を造る為に人員を取られて、打鉄弐式の完成は無期限延期。事実上の凍結に成ったから、個人的事情もあって自分で残りを造ってる」
自分でも不思議だった。初対面の人相手に、それも男の子にここまで饒舌に話すなんて……。同年代の男の子云々以前に、異性と話す機会なんて、家族か先生か代表候補生の仕事関係以外、今までの十五年間で一度も無か…………。
そんな私の思考を、殴打音が破壊する。音源はIS整備室の床と織斑一夏の額。気付けば織斑くんが、床に大穴を開けんばかりの勢いで土下座していた。
ええ……と目の前で展開される事態を処理出来ず困惑していると、発育豊か過ぎる三人の生徒が次々と姿を表し、足下の織斑くんを目にして一様に驚きの表情を浮かべる。
「えっと……兄ちゃん? 何で女の子の足下で土下座なんか……」
「あ……兄貴、何があったんだよ……?」
「こちらの方が困ってますよ兄さん」
どうやら三人共、織斑くんの妹さんらしい。リボンの色を見るに私や織斑くんと同じ一年生……とは思えない程に胸の膨らみは大きい。寧ろ破壊的だ。同い年の癖に二カップもバストサイズの大きい本音はもとより、ひょっとしなくても一つ歳上の姉さんよりも、もしかしなくても二つ歳上の虚さんより確実に大きいのでは?
それと同時に、私の中にあれ? と疑問が湧く。その稀少さと特異性故に嫌でも入ってくる情報に由れば、織斑くんのとこって男の子二人の双子にここIS学園の教員をしているお姉さんの三人きょうだいで、妹はいなかった筈。
「済まん会長の妹さん。知らなかったとはいえ、妹さんの大事な相棒が俺のせいで……」
「簪」
「は?」
「私の名前。更識簪。更識だと姉さんも居るから簪で」
「じゃあ俺も一夏で」
それから話を進めていくと、一夏くんと弟さんの二人が専用機を用意して貰えると知ったのは今日の午前の授業中で、でも一夏くんは入学前から伊吹製作所謹製の専用機の申請をしていて、だけどその伊吹製作所の機体は不受理に成ったそうなのだけど、不受理を知らされたのは先の授業中での話の最中との事。
「よっぽどの理由が無いと専用機の申請は通る筈だけど……どうあっても一夏くんに自分達の用意した専用機に乗って欲しいのかな、日本政府は?」
「どうあってもってのは確かだろうけど、乗って欲しいのは日本政府より織斑先生の方だろうな。どちらかと言えば」
ほれ……と一夏くんが見せてくれた政府が用意した方の専用機の仕様書には、特殊兵器の欄に「零落白夜」の文字。
「これって確か、織斑先生が現役の時に使ってた
「ああ……あの人は俺に、かつて自分が使っていた機体と同じ剣と力を使わせたいらしい」
一夏くんの言うあの人とは、おそらく織斑先生の事だろう。
一夏くんのとの処も、私の家と同じなのかな……? もしかして、姉弟仲悪い?
公私を別けるの範疇を超えた他人扱いに私が訝しんでいると、一夏くんは静かに重々しく、だけど不思議とハッキリと聞こえる声で告げた。
「俺の大切な人達を殺しそうに成った力だ」
「え? 生身の人間相手にでもIS使ったの!? あの織斑先生が!!」
「否、相手も……と言うかアタシ達もIS使ってたよ」
「私達、兄ちゃんを誘拐した犯人と勘違いされてね」
「…………」
一夏くんが誘拐!? と聞いた瞬間こそ驚いた私だけど、これはあれだ、深く追及しちゃいけない類いの奴。と血筋的に本能と経験から察した私は、話題を無理矢理変えるべく同時に湧いたもう一つの疑問を口にする。
「確かに零落白夜ならISのシールドエネルギーを斬り裂いて本体を直接斬れるけど、でもISにはエネルギーの大量消費と引き換えに操縦者を守ってくれる絶対防御があるから、相手もISなら殺しそうに何て事には……」
「絶対防御が守ってくれるのは、操縦者の命に関わる怪我だけだ。逆に言えば、腕や脚が失くなったりとか眼が潰れたりとか、操縦者の命に関わらない怪我からは守ってくれない。そしてエネルギーが切れたらISは強制解除される、どんなに高い空中にいても……だ」
「あら兄さん、儂ら誰も教えて無いのにその結論に至り零落白夜の危険性に気付くなんて流石です」
「…………よく今まで試合で死人出なかったね、現役時代の織斑先生の試合」
一夏くんの回答は物騒なものばかりだったけど、ISの特性を理論的に考えてみれば普通に起こり得る事だ。長身ピンク髪の妹さんは、出来の良い教え子を褒めるかの様な笑みを魅せる。それに対して私に出来たのは、苦笑を浮かべる事だけだった。
~~簪視点終了~~
~~一夏視点開始~~
「悪いな簪。俺のせいでお前の専用機の開発を凍結させちまったって言うのに、そればかりかISの事教えて貰って……」
「打鉄弐式の事は貴方のせい……じゃあ無いけど、不可抗力。だから気に病まないで」
伊吹製作所から届いた俺の専用機『空』の
「それより良かったの? 私が一夏を教えて?」
「ああ、考え方や動き方が偏らない様に、クラスや学年、国籍に囚われず色んな奴と触れて学園中の皆から学んで来いってさ」
「そうじゃ無くて……私、四組の代表だよ? 私達近々互いにクラス代表として対抗戦で闘うのに、その……スパイされる心配とかしないの?」
あ……! そっちの話か。確かにクラス代表決定戦で闘う予定のもみ姉としお姉も、「ただでさえ実力差が在るのに、動きや思考の癖を憶えたら更に勝負に成らなくなる」とか言って俺のコーチを辞退していたな。より正確には二人は座学を担当、残る妹分三人が実技を教える役割分担だ。
「何で俺が既に一組代表みたいな物言いなんだよ? 期待を裏切る様で悪いけど、俺はクラス代表なんて……」
「私は期待している」
「お……話が解るね、簪。私もだよ、兄ちゃん」
「試合頑張ってね、兄貴。一組のクラス代表決定戦も、クラス対抗戦も」
「ふふ……仮にも対戦相手に応援される何て、何とも兄さんらしいですね。因みに儂も兄さん推しです」
俺に期待の眼差しを向ける簪に続き同意するのは、つい先程まで俺にISバトルを魅せると、彩花と葉月を相手に三つ巴の闘いを繰り広げていた吹雪だ。それに続いて彩花はガッツポーズと共に俺に激を飛ばし、そして葉月は笑みと身体の両方から母性が溢れてる。
余談ではあるが、簪が言うには二年生にも関わらず生徒会の会長で更に某国の現役代表やってる簪のお姉さんが、生徒の枠内では実技最強だとか。二年生の時点で国の現役代表ってのも凄いけど、いっこ先輩の三年生より強いとか、専用機ってそれだけアドバンテージが在るのか……こりゃ皆が羨ましがる訳だ。
それより、俺に味方は居ないのか!?
~~一夏視点終了~~
~~秋春視点開始~~
さて、本日は待ちに待った最初の戦闘イベント、一年一組クラス代表決定戦の日である。ぼくの待機しているピットに居るのは、ぼくの応援に来てくれた箒と担任の千冬姉、そしてぼくの専用機「白式」を持ってきてくれた山田先生。
この原作通りのメンツに加え、勿体無い話だけどぼくと同じ所に専用機を造って貰った屑と、その屑を選んだ物好き女の一人紫織、更に日本代表候補生兼一年四組代表の更識簪。
……………………は? いやいや可怪しい。君、二学期からでしょ、お姉ちゃん会長の後でしょ、登場は? 何で居るの!? ちゃんと原作守ってよね、真の主人公であるぼくの活躍の為に!!
「何だ貴様は? ここは関係者以外立入禁止だ」
「一夏くんのセコンド?」
「何故疑問形」
「部外者というならお前の方だぞ、篠ノ之。それと織斑兄、セコンドを付けたいと言うから承諾したが、流石に他所のクラスの人間、しかもクラス代表は却下だ」
眉尻を釣り上げ問い詰める箒に対して、首を傾げ問い返す簪と、そこに突っ込む屑。そんな漫才染みた遣り取りをする三人に、頭を抱えた千冬姉が1つ1つ告げる。
名残惜しそうにしながらも、「織斑先生がそう言うなら……」と素直にピットを去ろうとする簪に対して、箒は「私は部外者ではありません! 私は一夏と秋春の幼馴染み……関係者です!!」と食らい付く。
直後、箒の脳天に「駄目に決まってるだろ!!」と千冬姉の雷(出席簿)が落ちた。
そんな中、紫織が「もし……」と簪を呼び止め、ニコニコ笑みを簪に向ける。良くも悪くも普通な簪に対して、ドコとは言わないがその戦力差は圧倒的だった。
「伊吹紫織です。確か……更識簪くん、でしたか? 弟が御世話に成ってます」
「お……弟!?」
「俺の事だよ。まあしお姉だけじゃ無くて、反対側のピットにいるもみ姉もだけど……姉みたいな存在というか……」
「…………確か一夏って、妹分も三人いたよね?」
クソ! 箒に酷い事したばかりか、女を五人も侍らせるのに飽き足らず、ぼくが二学期に成るのを待ってるのを良いことに簪にまで手を出すとか……。
このいけ好かない屑を、千冬姉と同じ力で公然とぼっこぼこに出来るのかと思うと、今から楽しみで成らない。
そしてぼくのヒロインの一人セシリアを今日の試合で二重の意味で堕とすのは勿論決定事項して、屑の女二人もぼくの魅力で堕として寝取ってやる。
そんなお楽しみイベントを控える本日の対戦カードは…………
紫織対紅葉5
ぼく対セシリア10
屑対恵斗15
紫織対セシリア5
ぼく対恵斗15
屑対紅葉10
紅葉対恵斗10
紫織対ぼく10
屑対セシリア10
紫織対恵斗10
紅葉対セシリア5
屑対ぼく15
以上の計12試合。参加人数が人数なだけに中々に過密スケジュールだ。それと、女子同士は5分間、男子対女子は10分間、男子同士は15分間の時間制限付きになった。二人だけだった原作とは数が違うからね、仕方無いね。
またぼく(とついでに屑)の専用機、「白式」と「黒式」の到着が試合開始直前のつい今し方とか色々とあったけど、そこは原作通りというか予定調和。当然主人公機「白式」は真の主人公であるぼくのものだ。そして色違いのパチモン「黒式」が、大口叩きには勿体無い話だけど屑の専用機だ。
そして原作と違ってぼくに向けてだけど、原作通りに「フォーマットとフィッティングを実戦でやれ」と言う千冬姉。ここは千冬姉の弟として、何より真の主人公としてかっこ良く決めてやると意気込んでると、千冬姉に対して早速屑が噛みつく。
「何を言ってやがりますか、ファーストシフトはISの内部データを初期化して操縦者に適合する様に最適化する……言わば双方を『繋ぐ』一番大事な時でしょ! それを実戦でやれとか……戦闘で壊れた状態がデフォルトとして設定されたらどうするんですか!? 山田先生も止めなさい、副担任仕事して」
「す……済みません」
「もみ姉としお姉の試合が終わったら、次のオルコットさんとの試合は俺が出ます。『空』でな」
勝手に試合の順番を変える屑に「何!?」と眉を顰める千冬姉だったけど、それも一瞬の事、屑の隣で得意気にしている紫織を目の当たりにしてそれも直ぐに消える。
「そこに気付けるなんて、あたくしも鼻が高いです」
そして千冬姉はやや考え込んだ後、セシリアと恵斗と紅葉の三人が待機する反対側のピットに通信を送る。…………あ、猛烈に嫌な予感してる。
「試合順の予定を変更する。第二試合はオルコットと織斑兄、お前達に行ってもらう。第三試合は伊吹紫織と神野だ。いけるか?」
『俺は大丈夫ですよ』
『私も構いませんが、何かそちらで問題でも?』
『裾直しの最中なんだろ? 漸く届いた専用機の』
モニターに映る反対側のピットにいる三人は、三者三様の反応をみせる。それにしてもファーストシフトを裾直しに例えるなんて、中々に洒落てるじゃないか紅葉も。
そんな事より! 原作で脳足りんの屑に出来た事をさせて貰えないなんて、こんな屈辱あって堪るか! ぼくは神に選ばれた神童なんだ!! このままじゃあぼくの活躍が! セシリア攻略が!!
「ぼくは大丈夫じゃ無いし、問題無いよ。織斑先生、屑の言う事何か聞く必要ありませんよ。フォーマットとフィッティング位、実戦でしてみせます。ぼくは神童なんだ」
『…………織斑さん。貴方がIS初心者だと言う事を差し引いたとしても、貴方のその発言はISを侮りすぎです』
「そうですよ。織斑くんと織斑くんの専用機の今後の為にも……」
ぼくが意気込んでるとモニター越しとこっちと、双方からセシリアと山田先生の二人に叱られた。何故だ。
『何なら俺の出る試合、先に全部済ませましょうか?』
「あらあら、秋春さんの一次移行の時間稼ぎですか? 神野さんって、友達想いなんですね」
『誰と誰が友達かは兎も角として、初期設定相手に勝っても格好が付かないからな』
「正直姉としては有難い申し出だが、教師としてはそこまで無理をさせるつもりは無い」
そんなこんなで改めて、本日の対戦カード。
紫織対紅葉5
屑対セシリア10
紫織対恵斗10
小休止(紅葉移動)10
紫織対セシリア5
紫織移動
紅葉対恵斗10
屑移動
ぼく対紫織10
紅葉対屑10
ぼく対恵斗15
小休止(恵斗移動)20
ぼく対セシリア10
恵斗対屑15
紅葉対セシリア5
ぼく対屑15
横に分単位の予定所要時間を書いてみたけど、予定だけで合計二時間半。しかもここに試合毎の入れ替えの時間が加わるから、下手したら三時間超えるかも……。
~~秋春視点終了~~
~~恵斗視点開始~~
一年一組クラス代表決定戦。その第一試合は、原作にはいなかった二人の謎の爆乳美少女の激闘だった。否、マヂで。
姉妹機なのか両者共に似通ったデザインのISとしてはシンプルな造りだが、伊吹紅葉のIS「
試合開始の合図と共に二人の姿がブレる様に消え、と同時に銃弾がアリーナを埋めるかの様に飛び交い、まるで虚空から現れたかの様に投射されたグレードが次々と地面にクレーターを刻む。射手の剰りの速さから、無人のアリーナが勝手に破壊されてるかのようだ。
「は…………」
そう漏らしたのは、セシリアの口か。それとも俺か。
姿を捉えたと思えばそれも一瞬の事。半秒と間を措かず再び人の眼には捕捉不可能な速さで移動しながら互いに銃撃の嵐を生み出し、またそれに逆らいながら相手に接近……したのだろう。
アリーナ中央の低空に姿を見せた二人の手には近接武器。紫織は両の手に小刀二振りの二刀流、紅葉は身の丈を超える斧剣を両手で担いで。
先手を取ったのは紫織の連撃だが、紅葉は斧剣を盾代わりに斬撃を防ぎ、返す刀で紫織の得物をまとめて弾く。対する紫織も負けじと重量のある得物を降りきった処への蹴りで紅葉の体勢を崩し、隙を視てサブマシンガンを呼び出し密接距離での銃撃を、紅葉は柄でサブマシンガンを殴り反らす事で回避。
勢いのまま斧剣を投げ捨てた紅葉は自らもショットガンを呼び出し紫織の顔面に撃ち込むも、紫織は上半身を捻ってこれを躱し、同時にサブマシンガンを持たない方の手を拳に変えて紅葉を殴りショットガンを弾き飛ばす。
距離を開けた両者は
砲撃が、斬撃が、刺突が、銃撃が、拳が、蹴りが飛び交い、だが有効打が相手を捕らえる事は無い。
「なあお嬢、二人のシールドエネルギーが殆ど減って無いみたいなんだが……俺の眼がおかしく成ったのか?」
「ご安心ください神野さん、私の眼にも同じものが映ってますわ。あの分ですと、受けたダメージは爆風の余波と近接格闘戦の反動のみですわね……まさかあのお二人、あれだけの激しい攻防を的確に防いで避けてますの!?」
セシリアはこう言うけど、後半聞いたら全然安心出来ねえよ!
俺、聞いてない!!
~~恵斗視点終了~~
作中で一夏の言っている「絶対防御が守ってくれるのは、操縦者の命に関わる怪我だけだ」は原作に登場する公式設定です
こんな危険物が競技用として認められるISって…………