壊れた空の最果てへ   作:緒河雪

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早速筆が進まない……

今回はオリヒロイン達視点


1ー4

~~???視点開始~~

 

「紅葉さん!」

 

オレが分たれた自分(紫織)との試合(デモンストレーション)を終えてピットに戻ると、同じピットで待機していたセシリアがタオルとスポーツドリンクを両手に駆け寄って来た。

汗一つかいてないが、折角の好意、貰っておこう。こうして他人(ひと)を気遣う事が出来るセシリアは、うん良い女だ。

 

「お疲れ様です」

「おう、ありがとな」

「先程の試合、大変素晴らしかったですわ! これなら貴女方のお教えしたと言う一夏さんも期待出来ますわね」

「オレと紫織は知識担当だったから、技能がどれ程まで育ったかは知らないが……侮るな、中々に筋は良いらしいぜ」

「あらあら、それは……ふふ、わたくしもうかうかしてられませんわね」

 

さて次はいよいよ弟分で弟子で、そして恋人の一夏の初陣(デビュー戦)である。対戦相手は原作でも相対(あいたい)したセシリア。この闘いを越えてセシリアという恋敵(ライバル)が増えるかは判らないが、オレ達は自分の想いを伝えて、一夏の願いを受け止めるだけだ。

 

そこへもう一人、オレ達と同じピットで待機している人物……これからISバトルの試合をすると言うのに未だ制服姿の少年……神野恵斗が軽薄な笑みと共に近寄って来た。そしてオレの一点に集中する熱く(いや)らしい視線……ドコ観てる、オレ(コレ)は一夏の所有物(モノ)だ。

確かにオレ達の身体はたわわに実った三桁を超える二つの果実を始め、ムッチリした太股に安産型の臀部と、前世(かつて)の自分基準ではあるものの男の理想像を具現化したモノで、自画自賛ながら男心を魅了して止まない。

それに加えて、無条件とはいかないものの確実に強く成る肉体(転生の女神曰く全員へのサービス)を鍛え抜いた事で、細身で引き締まった薄く腹筋の割れた幹の様な胴、根や枝の如く力強くも過大な太さなど一切無い四肢と、先述の大きくたわわに実った二つの果実も併せ正に一つの樹木だ。

 

「やあ紅葉、凄かったねさっきの試合。俺なんか殆ど見えなかったよ」

「あの程度、初歩の初歩だ。それと、オレは君に名前呼び捨てを許した憶えは無い」

「そうつれない事言うなよ、俺とお前の仲だろ?」

「どういう仲だ!? オレ達の仲なんて、学友以上でも以下でもましてや以外でも無い」

 

なんて馴れ馴れしい奴。オレ達と神野との共通点なんて、世界の外から来た異物(転生者)という点しか無い。それを抜きにしても、入学して出逢って一週間足らず、積極的になる必要性を感じなかったのもあるが、特に交友を深めた訳でも無し。

加えて他の生徒達の間を飛び交う噂を統合すると、一夏の事を「偉大な姉におんぶに抱っこの軟弱野郎」「弱い癖に守ると口にするホラ吹き偽善者」「IS学園に来る覚悟の足りない脳足りん馬鹿」「優秀な弟の出涸らし屑」と、取り巻きの女子を介して悪し様に言い触らしてるとか。

 

…………篠ノ之一家程では無いにしろ織斑家の面々を旧くから知るオレ達に言わせると、偉大な姉こと千冬さんだって家事一切に関しては一夏におんぶに抱っこだし、弟くん(転生者)が優秀なのはどう観ても前世知識の恩恵だ。

更に言えば、一夏は代表候補生達と違ってある程度の経験値や事前の予備知識も無ければ、後の箒の様にIS開発者天災卯詐欺(篠ノ之束)謹製の最新最強最高な次世代ISを貰える訳でも無い。相対的に弱くて当然だ。

 

加えて言うなら、一夏は転生者共(自分達)と違って自ら望んでIS学園(ここ)に来た訳では無い。生きたまま解剖されたく無ければと、脅されてモルモットになる事を強要された結果だ。充分に覚悟足りてるだろ。

 

「紅葉さん、わたくしは参りますがお気をつけて」

「ああ」

 

オレが短く返すと、それを合図にセシリアは自身のISブルーティアーズを展開、アリーナへと飛び立つ。対戦相手はオレの弟分で、ISの弟子で、そして恋人の少年だ。

 

~~紅葉視点終了~~

 

 

 

 

 

 

 

 

~~???視点開始~~

 

第一試合の興奮冷めやらぬ中、分たれた自分達(紅葉と紫織)がピットに消えて数分後、第二試合を行う二人がアリーナに出てきたのは、ほぼ同時と言って良かった。

一方はイギリス代表候補生にして今年度の入試主席セシリア・オルコットと、同国イギリスが生み出した次世代特殊兵装(ブルー)(ティアーズ)搭載の第三世代機の試験一号機、その名もブルーティアーズ。名前の通り青い装甲の機体だが、青空の中でもその存在感を主張して止まない。

対するは、先程試合を行った二機と似通った意匠の……実際三機は姉妹機……蒼に白銀の機体、名を「(から)」。それを纏うは世界最初の男性IS操縦者、原作主人公の織斑一夏。家族同然の付き合いをしてる私の兄ちゃんであり、私達のISの弟子であり、そして恋人でもある少年だ。

 

 

 

兄ちゃんがISを動かせると判ってから、今日迄で凡そ二十日。入学前の事前の勉強を含め、色々あって実機訓練の出来なかった原作と違い、この世界線では私達がみっちりシゴイてあげた。

 

この時期の話題になると先ず槍玉に上がるのが、必読の参考書を旧い電話帳と間違えて捨てた事だが、アレは本当に間違えて捨てたのだろうか?

あまり識られてない事だが、織斑一夏はIS学園入学までISについて知ろうとする事を、もっと言うとISに関するものに触れる事を姉の千冬さんによって禁じられていた。それも、競技選手第一人者の姉の試合をテレビ観戦するのも禁止という徹底ぶりである。

…………否、禁じられていたと言うのは少し語弊があるだろうか。なにせ、ISについて知ろうとすると、理由の説明も無く有無を言わさず腕力に訴えて阻止するのである。

案件である。が、ISの世界では女性の権利は過保護に護られても、未来の礎である子供の権利は護られないらしい。

兎も角、そんな子供時代の経験(トラウマ)が彼の中で「ISの勉強をする」=「姉に殴られる」の方程式を生み出し、無意識に参考書を捨てさせたのでは? と言うのが自分の見解だ。

 

 

 

自分が私達として転生したこの世界線も、転生者の弟(秋春)が増えた以外は凡その処は同じだった。千冬さんの方の事情もあるのだろうが、なら言葉でもって伝えれば良いのに。何故虐待(暴力)に走るのか? ……やはり親を知らないからか?

 

さてそんな訳で、入学前の当時はまだ恋人ではなかったけど、私達の方から告白した相手のあからさまな問題点を放置する訳にもいかないので、前世からの個人的な興味もあって介入させてもらった。

勉強殆どして無い訓練出来て無い機体はその時初めて乗った上で初期設定。この状態から原作一夏はセシリアを追い詰め、後一歩で勝てるところまで来た。ならもしもだ、事前に勉強と訓練して多少なり慣れた機体に乗っていたら、どこまで化けたのだろうか?

 

 

 

『済まん待たせた』

『いえいえ。一夏さんは言うなれば挑戦者の側ですから、寧ろ学年主席のわたくしが待つのが筋でしたのに……』

『優しいなセシリアは……』

 

「セシリアさーん、頑張ってー! そんな奴ぼっこぼこにしてブッ飛ばしちゃってー!」

「男がISなんて生意気なのよ! 男なんか、IS学園(ここ)から居なくなれー!」

「お姉様の為にも消えなさい! 恥を曝す前に!」

 

「………………」

 

周囲から聞こえる兄ちゃんへのブーイングの嵐に、私は分たれた自分達(葉月と吹雪)や居合わせた兄ちゃんの学友達と共に顔を顰めていた。この世界が女尊男卑だとは知っていたし、転生してから今日までも幾度か目の当たりにしたが、ここまで露骨に蔑むとは。

 

「何と言うか一夏の奴、アウェイ感が半端ないな」

 

開いた口が塞がらないと言った感じに絶句するは、原作では幼馴染み権限か兄ちゃんのいるピットにいてそこで応援していた篠ノ之箒。そんな彼女に、一緒に観客席にやって来た更識簪が解説する。怒りを滲ませた淡々とした口調で。

 

「あの子達は、IS学園に入学出来た自分は男より優れた女の中でも特別だと思ってるところに自分以外の、自分達以上の特別が現れるのが我慢成らないんだと思う。特に見下してた男から」

「何と愚かな……。男の人の助力が無ければ、ISは心置き無く翔べないと言うのに……」

 

呆れた様子の分たれた自分(葉月)の物言いに、一段上の席で観戦している兄ちゃんのクラスメイトの一人、相川清香が「何々、どー言う事?」と興味を示す。

 

「先ず前提として、皆も知ってると思うけどISを動かせるのは……より正確にはISコアを起動出来るのは、兄貴達例外を別にすれば女の人だけだ。男の人には一切合切反応しない」

「ISコアは他の乗り物で言うところの言わばエンジンですが、車なり飛行機なりを構成するのはエンジンだけではありません。エンジン以外のボディ……ドアやタイヤやシートを造ってるのは誰か、それらを組み立てて形を与えるのは誰か」

「確かに……ISに限らず大きくて重い物を扱う工場で働いてるって言ったら、殆ど男の人だよね?」

「そうそう、伊吹製作所(うち)でも組み立て製造部門は、テストパイロット兼任を別にすれば九割近く男の人だよ。会社全体でも六割以上男……てか、女の人しか居ないのってISスーツをデザインしている部署だけ」

「私は何度か現役の日本代表……織斑先生の後任の人に逢った事あるけど、整備のおじ様達には完全に頭が上がらないって感じだった。ISの自己修復機能にも限度があるし」

 

私と葉月の解説に、これまた兄ちゃんのクラスメイト谷本癒子が成る程と頷けば、綾花が爺さんの会社を実態を引き合いに出し、簪も自身の実体験を挙げる。

 

「お……皆! そろそろ試合、始まるよ!」

 

『この先に待たせてる奴がいる。悪いが練習相手として胸貸して貰うぜ』

『良くってよ一夏さん! さあ先手は譲りますわ、このわたくしセシリア・オルコットがリードして差し上げましょう!!』

 

言うが早いか、兄ちゃんの「空」は肩と大腿部のウイングスラスター四基を同時に吹かし後退、セシリアのブルーティアーズから距離を開ける。併せて両手に連装グレネードランチャーを二丁拳銃で、更に背負い式のマイクロミサイルポッドを展開。一気呵成とばかりに榴弾と小型ミサイルを雨霰と降らせる。

 

『その様な雑な攻撃でわたくしを落とそう等、笑止ですわ!』

 

対するセシリアが指揮者よろしく左腕を振るうと、ブルーティアーズの両肩からフィン状のパーツが二つずつ外れ、四つそれぞれが個別に宙を舞う。迫り来るミサイルを撃墜すべく四基のビットに備え付けられた砲口からレーザーを撃ち、直進するグレネードを最小限の動きで回避。

直撃が無いのは流石入試主席と言った処か。だが、爆煙と土煙に包まれ視界を遮られるブルーティアーズ。

 

『これで代表候補生を倒せる何て、誰も思っちゃいねえよ!』

 

その爆煙と土煙を隠れ蓑に、右手を鉤爪に換えた「空」がブルーティアーズに肉薄。撃ち終わったミサイルポッドとグレネードランチャーは軽量化の為か、既にパージないし破棄した後だ。

 

『!』

 

セシリアから視れば、「空」が爆煙と土煙を破って突如と表れた事だろう。だがその奇襲にも電光石火の反応をみせ、反転させたレーザーライフル(スターライトマーク3)のストックで兄ちゃんの腕を狙いカウンターを見舞う。

だが刹那の瞬間、兄ちゃんは上体を反らして紙一重で直撃を回避。その勢いのままスライディング気味にセシリアの足下に回り込み、いつの間に保持していたのか、股下から左手に握るサブマシンガンでセシリアを狙う。

 

交差は一瞬。

 

だがセシリアは即座に身を捻って射線を切り、同時に兄ちゃんのサブマシンガンが火を吹くも、ブルーティアーズは間髪入れず瞬間(イグニッション)加速(ブースト)で上空へ退避、その加速に追従出来ず機銃弾は虚空を撃つ……。

 

『っ!!』

 

……かに思われたが、空中に爆発の華が一つ。そしてまた一つ咲く。

 

「まさか兄貴、最初からビット狙い?」

 

兄ちゃんと闘うセシリアも同じ結論に到達しのだろう。吹雪の驚愕の声を合図にブルーティアーズの持つスターライトマーク3から一条のレーザーが走り、兄ちゃんの持つサブマシンガンを破壊する。

仕切り直しとばかりに滞空する「空」とブルーティアーズ。セシリアが兄ちゃんに声を掛ける。

 

『初心者にしては悪くはありませんが……愚策ですわね』

『まだまだ……』

『では、こちらの番ですわね!』

 

言うが早いかブルーティアーズから分離したパーツが、加速して勢い良く兄ちゃんに向かう。危険を察知した兄ちゃんは当然逃げようとするも、生き残った二基のビットから射たれるレーザーが「空」を釘付けにして、更に追い討ちを掛けるかの様に眼前まで飛来したパーツが爆発。

どうやらアレはミサイルだったらしい。寸前のところでシールドを展開したから直撃は無い様だけど、「空」の動きは爆発に煽られ完全に止まった。

そんな兄ちゃんをブルーティアーズ本体と背後そして足下に回った二基のビットが取り囲み、三方から順次射撃。この時期のセシリアは同時制御を修得して無かった筈だから、高速(ラピッド)切替(スイッチ)の応用か? 或いは制御すべき端末の数が半減した事で負荷も減ったか?

通常なら有り得ない全方位からの射撃に曝される「空」は瞬く間に四基のスラスターを全て破壊され、先程の爆発の影響もあってシールドも崩壊寸前だ。

 

『それでもっ……!!』

 

だけど兄ちゃんは振り向きざま右手の鉤爪を投射、撃ち出された鉤爪が間近に迫っていた背後のビットを破壊。更に虚を突いてブルーティアーズに接近、シールドチャージを狙ったのだろうが、盾代わりにされたスターライトマーク3に阻まれ、結果双方が壊れる。

 

『中々やりますわね、一夏さん』

 

「一夏……」

「「一夏くん……」」

「おりむー」

 

心配そうに見守る箒に清香と癒子、そして本音。簪も心中は同じだろうに、その表情は代表候補生のそれだ。

 

「凄い一夏くん。初心者なのに学年主席のオルコットさんと互角に渡り合ってる」

「何!?」

「ええ。ですが兄さんは既に徒手空拳の筈です」

「そんな……。一夏くん、このまま負けちゃうの?」

「否、兄貴は十分良くやってるよ。初心者かつこれが初試合の身で国家代表候補生にここまで食らい付いたんだから」

「でもでも、セシリアさんはまだナイフ持ってるよ。実際、一夏くん攻めあぐねてるみたいだし……」

「だ……大丈夫だよおりむーなら。それに、試合の勝敗でクラス代表が決まる訳じゃ無いし……」

 

結局の処、兄ちゃんは試合終了まで終始回避を強要され、カウンター狙いの拳や蹴りを繰り出すも間合いの問題か、一度もセシリアに攻撃を成功させる事は無く……試合自体は兄ちゃんの敗北に終わった。

 

~~綾花視点終了~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~???視点開始~~

 

いや~試合中の兄貴、何時にも増してカッコ良かった! ISに触れて間もない素人の身で学年主席(セシリアちゃん)相手に互角に渡り合うなんて、流石アタシ達の弟子、そして恋人。結果は残念なものに終わったけど、後で皆して慰めてあげよう。

アタシや分かたれた自分達(葉月ちゃんと綾花ちゃん)、そして端から観るに箒ちゃんが惚れ直したのは言う間でも無く、どうやら一緒に観戦している兄貴のクラスメイト達も、兄貴の勇姿に心奪われたみたい。うんうん、良い傾向良い傾向。

 

そんな第二回戦を終えた兄貴達と入れ替わる形で、学園に配備された量産型ISラファール・リヴァイブを装着した分かたれた自分(紫織ちゃん)がアリーナに姿を表す。そしてそれに少し遅れる形で、対戦相手の少年、三人目の男性IS操縦者、神野恵斗がアリーナに姿を表した。ほぼ制服姿で。

 

「何アレ? 神野くんISは?」

「どうやら学園に提出された資料に由れば、神野さんの持つ専用ISは全身(フル)装甲(スキン)の様です。顔が見えないから操縦者(中身)が違うのではと男性を見下してる方達(ギャラリー)に疑惑を持たれない為の対策でしょう」

「それにしたって、ISスーツも無しで制服だなんて……」

「待て、腰に何か着けてるぞ。……ベルトか?」

 

これからISを扱う、況してや試合をする当事者とはとても思えない姿の神野さんに癒子ちゃんが当然とも言える疑問の声を挙げ、それに対して分かたれた自分(葉月ちゃん)が事前に調達した情報をもって答える。

清香ちゃんが呆れたと無謀と非常識を指摘し、箒ちゃんが目敏く腰のそれに気付く。そこには確かに、蛍光色の眼に痛い物体があった。

 

『さあ、始めましょうか。お前もISを展開なさい』

『まあそう慌てるなって。お前の運命は俺が変える』

 

そう紫織ちゃんに宣言する神野さんは(おもむろ)に懐から二つ、金と銀の何かを取り出し両手に掲げて起動する。

 

マキシマムマイティーX! ハイパー無敵!

 

そんな機械音声と共に、神野さんの背後にゲームのメニュー画面を連想させる巨大なスクリーンが投影される。併せてアリーナ全域に電子の波が拡がり、その一瞬ポリゴンかピクセルを連想させるモノへと変換され、通過した時には錯覚かと思わせる早さで元へと戻る。そして左手の銀を腰の何かに挿入、前面のレバーを開く。

 

マキシマムガシャット! ガッチャーン! レベルマーックス!

最大級のパワフルボディ! ダリラガーン! ダゴズバーン!

 

すると神野さんの全身が、痛々しい程に逆立った頭髪と顔の上半分を被う大きな眼が描かれたゴーグルが特徴的な、蛍光色な毒々しい赤紫(マゼンタ)に変わる。そして顔と胴が一体となったと言うべきか、顔から直接手足の生えた巨大な物体が上空に現れる。

 

『ハイパー大変身!!』

 

そんな掛け声と共に、マゼンタの人形(ヒトガタ)……もとい、神野さんは右手の金もベルトに挿入。否、『ドッキーング!』何て機械音声が言ってるから、先に挿入した銀に連結したと視るべきか? そして金と銀の上部を両手握り拳で叩き、スイッチを入れる。

 

パッカーン! ムー! テー! キー!

 

続く機械音声と共に上空を漂う巨大な手足が生えた顔の顎が、否顔の下半分が虫の如く左右に開き毒々し赤紫(神野さん)が丸ごと呑み込まれ、一拍おいて金色(こんじき)の閃光を伴い爆ぜる。そこにいたのは…………。

 

輝け! 流星の如く! 黄金の最強ゲーマー! ハイパームテキエグゼイド!

 

遠目にも判る程に大きな虹色の瞳が特徴的な頭部を始め、全身に星の意匠を散りばめた腰まで届く長髪を靡かせる、輝く金色(こんじき)人形(ヒトガタ)

 

うん。前世で観た特撮番組の一作、その主人公にして特撮ヒーローの一人、仮面ライダーエグゼイドの最終形態ハイパームテキ……だと思う。気のせいか違うのが交ざってる気もするけど。

先程葉月ちゃんが挙げた資料を閲覧した事で、神野さんが転生特典を使って持ち込んだ専用機が仮面ライダーエグゼイド関連なのは知っていたけど、そこには変身ベルトゲーマードライバーと初期から登場した10本のガシャットしか登録されて無かった。

その辺りはまあ、今回使った2本のガシャットはアタシ達が閲覧した後で開発登録したのだろうけど……。当たってもどうと言う事は無い(無敵になった)程度で企業代表(紫織ちゃん)に勝てるとでも思ってるのだろうか?

 

 

後はどんな転生特典が在るか知らないけど、呼ばれた転生者三人の中で最多となるその特典が正しく機能するかは、彼自身の言動と転生の際に女神に提出した仕様書の人物像(キャラ設定)に齟齬と乖離が無いか、様は神野さんが創った理想像(プロフィール)通りにどれだけ再現(演じる事が)出来たか? に掛かってる。転生の女神の言に嘘が無ければ……だが。

自分が特典の多い奴を選ばなかった理由は、一つにこの制約があったからだ。生前の自分には、自身を変えたいという願望も、成れないからこその理想像も確かにあったが、それを生涯演じ続け周囲を偽りきる自信は無かったし、出来なければ特典が不完全にしか機能しないとか、転生した意味が無い。

 

 

『ノーごっ!?』

 

格好付けようとして砲撃に吹き飛ばされのは、元より身体能力の向上が特典に無かったからか、或いは再現に失敗して恩恵を充分に得られなかったからか……。勿論、転生に気付いた時から折に触れては共にISの勉学に勤しみ、十を超えてからは互いに実機訓練に明け暮れて鍛え抜いた結果、紫織ちゃんの方が強く成ったからかも知れないが。

そこから槍を手に瞬間(イグニッション)加速(ブースト)を使った踏み込みからの刺突九連、剣に変えて滅多斬り、剣を捨てて素手で連続パンチからの後ろ回し蹴りで距離を開けて、実弾とレーザー二種類のライフルによる異種混合二丁拳銃で蜂の巣にして、最後は手榴弾の爆発。

まあ、吹き飛んだりよろめいたり怯んだりこそすれど、ダメージという観点からは全く利かないんだけど。知ってた。

 

『てめえこの野郎、何しやがる!? 他人(ひと)が折角決めてるところを……』

『試合は既に始まっている以上、特に待つ理由はありません。それと、野郎は男の方の事です。アタクシの様な女には、女郎(めろう)と言うんですよ?』

 

何とか体勢を立て直した神野さんが、仮面越しでも判る程に憤慨して抗議の声を挙げるも、対する紫織ちゃんは涼しい顔で心底不思議そうにしてる。ルールは破って無いからね、マナー的にはどうかと思うけど。

でもそれを言い出すと、無敵(あらゆる干渉を常時遮断する)なんていう代物を試合に持ち込んでるのは良いのか? って話になる。良いんだろうな、きっと。転生特典で認めさせたんじゃない?

 

「よ……容赦無いな、紫織の奴」

 

そして箒ちゃん始め、周囲の皆がドン引きしてるんですけど。アタシ達身内三人はと言えば、揃って苦笑するしか無かった。

 

『それにしても……砲撃、刺突、斬撃、打撃、銃撃、熱線、爆発、全て無効ですか。確かにその頑丈は偽りなしの様ですね。となると……』

『隙有りだ、今度はこっちから行かせてもらうぜ!!』

 

ガシャコンキースラッシャー!

 

言うが早いか、神野さんは手元が斧状に成った片刃剣をとりだし、空を蹴って三段跳びで上空の紫織ちゃんに斬り込む。対する紫織ちゃんは右手に剣、左手にサブマシンガンで応戦。神野さんは跳躍からの切り込みと着地を繰り返すも、流麗な体術で捌かれ、或いは不動の防御を崩せず、一撃も決められないでいる。幾らISに性能差が有ろうと、五年の経験が有ればこんなものだろう。

 

『クソ! だったら……!!』

 

ズキュキュキューン!

 

幾度かの攻撃に失敗し着地した神野さんは、悪態を吐いて鍔部分のパッドを三度叩き、銃でも持つかの様に切先を空に浮かぶラファールに向け、ビームを射つ。アレって銃剣でもあるのか……。

攻撃に晒された紫織ちゃんは即座に反応。上下左右と回避しながらも大きく回り込む様に徐々に接近、神野さんの直上に来た処で落雷を思わせる急降下。落下の威力を上乗せした左の一閃で得物を弾き飛ばし、その勢いのまま首に右の一閃を極……!!

 

『!!』

 

……めたかと思われた瞬間、神野さんが忽然と消え、離れた場所に現れる。何だ? 今の移動の仕方は……。一瞬とはいえ紫織ちゃんが反応出来てない事から、瞬間(イグニッション)加速(ブースト)含めた普通の移動では無さそうだけど……。

 

『ふう……危ねえ危ねえ。ハイパームテキに短距離ワープが無かったら首をヤられてたぜ』

 

あ、ワープなんだ。

それにしても……全身を被う装甲は無敵で、短距離とは言えワープ出来て回避も隙が無い無いとか、普通に考えて試合の流れは一方的なものに成りそうだけど……実際には借り物の量産機と良い勝負に成ってる。

端から観るだけでは判らないが、神野さんは昨今の転生者達の様に技量関係には転生特典を振って無かったのだろうか? それとも今はいわゆるレベル1で、これから成長するのか? 

とも思ったけど、今日まで神野さんがISの訓練している処を視た事無いからそれも望み薄かも知れない。この一週間彼が放課後にやってた事と言えば、ルームメイトの秋春さんが箒ちゃんと剣道して留守の間、毎日違う女の子を寮に連れ込む事だけだ。それも複数人。

 

確かにここIS学園は事実上の女子校で、友達作ろうと思ったら必然的に相手は女の子に成らざるをえないのは解る。そして誘われた女の子達しても、年頃な上に触れ合う機会の極端に少なかった「男子」と言う未知の存在と同じ学舎に通い同じ寮で暮らすのだ。興味を引かれるのも解る。

 

昨今の女尊男卑の風潮蔓延る世の中にあってISを専門に履修していると、それだけで以前の様に男女互いに敬い補い合い支え合う生き方をする世間一般からは、「男を労力としか見ない差別主義の筆頭」と敬遠される。パラダイムシフトの切っ掛けと成った「白騎士事件」はそれだけの傷痕を遺したのだ。

 

そんな中現れた同年の男子。それも高身長に均整の取れた肉体美、そして人懐っこい笑みの持ち主で、更には向こうからお近付きになってくれる。女の子達にしてみれば千載一遇の遇機にして好機、遅れを取り戻せと焦る気持ちも解る。

だけどいきなり初対面で、男子の部屋を訪ねたり、女の子を連れ込んだり、女の子も女の子で招かれたりする? 匂いと動きからナニも無かったのは判るけど、少しは自制と警戒心を……と言うのは、皆と共に兄貴の恋人と成った初日に、兄貴を皆と嫐りものにしたアタシが言えた台詞じゃ無いな。

 

確かに複数の可愛い女の子達に囲われるハーレムは男の夢だと聞き及んでる。事実自分も、転生すれば特典で理想の自作ヒロイン達を登場させて理想のハーレム創れると聞いた。そして、自分はその自作ヒロイン達に転生した(分かたれた)

囲われる中心と信じて転生してみれば囲う周囲達で、しかも前世を思い出した時には既に分かたれた皆と共に告白した後(プロローグは終わってた)。詐欺である。性の自覚と認識の基幹が「今」基準なのがせめてもの救いか。

そんな感じに前世を思い出した当初こそ皆と(元自分同士で)悶絶したが、開き直って一夏と友達以上恋人未満してる内に判った。一夏が家に半ば居候しだして兄貴と呼ぶ様に成って理解した。兄貴は、問題点も不満な処も多々あるが、それを補って有り余る高水準な大当たりの超優良物件だ。

それから物語が始まり(原作の時期となり)、想いが実を結んで皆と共にアタシは兄貴と恋人同士に成った。それでも相変わらずの頓珍漢だったので、恋人らしく身体で解らせてやった。当初の予定とは違うけどハーレム成立かな? 

それ以来、自宅通学する兄貴の護衛にカッコつけて、アタシ達も兄貴とは幾度か肌を重ねる関係持ってる身。そんなアタシが言えた義理じゃ無いけど、場所は考えようね神野さん。

 

とか思案と回想に(ふけ)っていると、神野さんは新たに斧を取り出し、紫織ちゃんはいつの間に回収したのか、先程神野さんが落とした例の複合武器を手に繁々(しげしげ)と眺めてる。

 

『何他人(ひと)のモンに手出してやがる、返せよ!』

 

言い終わるより前に斬り掛かる神野さんだったが、紫織ちゃんが『はい』と差し出した複合武器の柄に自ら突っ込む事に成る。刃物を渡す時は刃先を自分に、これ基本。

 

『ぴよっ!!』

 

そして一連の戦闘を観察して解った事だが、あの黄金の装甲、無敵を名乗るだけあってISが受けるダメージは……物理は元よりシールドエネルギーに関わるものまで……如何なる原理か無効化しても、操縦者が受ける衝撃までは相殺してくれない。

現に今も神野さんは一瞬ふらつき、その刹那の隙を突いて紫織ちゃんが投擲した(投げ返した)複合武器に対応出来ず、新たに出した武器を弾き飛ばされている。

 

ならばとばかりに神野さんは、今度はゲームエフェクトを思わせる刀身に鍔の形状がハンマーのヘッド型の剣を取り出し、例の短距離ワープを駆使して時に死角から紫織ちゃんを攻める。それに対する紫織ちゃんは、消えては現れる相手に反撃は元より回避もまま成らず防戦一辺倒を余儀無くされたものの、神速の反応速度で応戦。

弾き(さば)き剃らし()なし崩し……シールドエネルギーの残量と言う観点からは双方減少無しの膠着状態のまま、試合終了まであと僅かと成った。未だ一撃も当てられない苛立ちからか、神野さんの動きが単調なものになり、今や再び紫織ちゃんが攻めて神野さんは黄金の無敵装甲で何とか凌いでる状態だ。

 

『クッ! 何で当たらない!? 俺は無敵だぞ!?』

『道具の性能差に依存して渡り合えるとでも? お前も筋は良いのですから、体を造り、技を研き、心を鍛え、お前自身のレベルを上げなさい。負けないと勝てるは別ですよ』

『俺はレベルを超越した存在だ!!』

 

神野さんは何とかベルトなり武器なりを操作して状況の打開を試みようとしてる様だけど、その度に瞬間(イグニッション)加速(ブースト)で接近する紫織ちゃん繰り出す体術でもって体勢を崩され、遂には三度(みたび)武器を叩き落とされる。

その後も弓に剣や銃と言った新たな武器を次々と呼び出す神野さんだけども、その度に手にする刹那の握りの甘いうちに武器を叩き落とされ、試合終了まで残すは30秒と成った。

 

『卑怯だぞ、このアマ! こっちがフィニッシュ決めようと必殺技の準備している隙を突くなんて……正々堂々と闘え!!』

『そう言う戯言(たわごと)は、先ずその金色(こんじき)の鎧を脱いでからにしなさい』

 

紫織ちゃんがムテキゲーマーをISでは無く鎧と言い表したのは、先ず神野さんのISが後付ならぬ外付武装とでも言うべきガシャットを換える事で、外殻装甲そのものを換装し複数の形態を持つ……つまりは姿を変え、アレがその内の一つでしか無いからだ。

そしてきっとこの瞬間、試合を観戦している総ての人の心が一つに成った。と同時に引き分けをもって試合終了である。

 

~~吹雪視点終了~~

 

 

 

 

 

 

 

 

~~???視点開始~~

 

神野さんとアタクシの試合が終わり、最初の小休止を弟兼弟子……そして恋人でもある一夏さんの下でとっていると、この休憩時間にこちらのピットに移動する事に成っているアタクシの従姉妹で異母妹(本人は自分が姉だと言ってる)の分かたれた自分(紅葉)がやってきた。

 

「よ、一夏。お姉ちゃん居なくて寂しかったろ?」

「御安心なさい。姉ならここにも居ます」

 

一夏さんに向けたであろう紅葉の挨拶に、アタクシが自らを指してそう返すと、何故か怒り心頭の織斑先生が加わって来た。

まあアタクシ達も親を亡くした身。因果は違えど若くして親無しと成った織斑先生が、残された家族の一夏さんを奪われまいとするのは理解出来ますが、幼い頃から一夏さんの心情を無下にした言動(暴力)が目立つのを知ってるだけに、どうにも納得しかねます。

 

「貴様ら……それは一夏の実の姉で在る私に喧嘩売ってるのか?」

「貴女は俺達一年一組の担任でしょ? 織斑先生」

 

そして実の姉を容赦無く一刀両断する一夏さん。原作の姉弟仲の良い二人を知る身としては、過去の(わだかま)りもあって一夏さんの姉離れが早い処か千冬さんを最早「血の繋がった他人」扱いなのは、この世に転生した異物の身(ある意味元凶の一人)であるアタクシが言えた義理ではありませんが、中々に信じ難い光景です。

 

「そう言えば次はセシリアとしお姉か……俺は友達としお姉、どっちを応援すれば良いんだ」

「そこは友人で宜しいのでは? ええ、折角の出逢いですもの。恋人だからと囚われる事はありません」

「オレの時もセシリアで良いぜ。恋人が応援してくれないからって妬く程狭量じゃ無いつもりだし」

 

和気藹々(あいあい)と三人で話をしていると、横合いから「おいちょっと待てよ屑」と声を掛けられた。不快ではあるが無視すれば延々と続く事を経験的に知っていたので、アタクシ達は揃って声の主……少し離れた所で一夏さんと同様に自身の専用機の一次(ファースト)移行(シフト)をしている一夏さんの実弟……秋春さんの方を向く。

 

「何だよ今の? 恋人って言ったか? この屑が? それも紫織と紅葉の二人揃って? この女心の解らない唐変木と朴念仁が混ざった屑にそんな甲斐性あるか!?」

「二人じゃ無い、五人だ。それと甲斐性ならあるだろ、オレ達女子より女子力高い」

「あれ? 誉められてるのに嬉しく無い?」

 

口早に捲し立て問い詰める秋春さんに、紅葉が更なる追い討ちを掛ける。それを聞いた秋春さんに怨めしい視線を向けられ、凄く困った顔の一夏さん。ここは姉として援護すべきでしょう。

 

「その辺になさい二人共。他人を(おとし)めるものではありません」

「悪かったよ一夏……。秋春も、済まなかったな……」

「ぼくは悪く無い……」

 

素直に謝罪する紅葉に対して、一夏さんを声高に罵って置きながら不服そうな秋春さん。普段から一夏さんを愚弄する方にこの手は使いたくはありませんが、そうも言ってられませんか……。

 

「秋春さんも……良い男は、時に格下に勝ちを譲るもですよ」

「ふっ……今回はこの神童が退いて挙げるよ」

「「チョロ!!」」

 

一夏さんと紅葉も小さく声を揃えて言ってますが、秋春さんが単純な方で助かりました。

 

~~紫織視線終了~~

 

 

 

 

 

 

 

 

~~???視点開始~~

 

最初の小休止も終わり、続く第四回戦はセシリアさんと分かたれた自分(紫織さん)の組み合わせです。流石に今回は代表候補生相手と言う事もあり、前回初心者の神野さんを相手した時と違い分かたれた自分(紫織さん)も専用機「影」です。

 

『そんなに肩肘張らないで下さいな、セシリア君。折角の優美さが台無しですよ』

『先程二度に渡り試合開始と同時に強襲を仕掛けた方が、何眠たいこと仰ってますの!?』

『ふふ……通用する相手にしか仕掛けませんよ』

『そうですか……』

 

言外に強襲の通用しない実力者と認められ、嬉しさを滲ませるセシリアさん。それでも油断無く紫織さんの「影」を見据え、紫織さんも静かに試合開始の合図を待つ。

 

そしてその時は訪れた。

 

開始と同時にブルーティアーズが持つスターライトマーク3から走る閃光、そしてそれを難なく避ける「影」。反撃とばかりに「影」は左手にサブマシンガンを呼び出し掃射しながら接近するも、いつの間に射出したのか、「影」の背後と足下に回ったビットが仕掛ける攻撃に僅かながら回避と減速を余儀無くされ、そこへブルーティアーズ本体に頭部を狙撃される。

 

「セシリアの奴、ライフルと本体から離れて飛んでる奴の同時攻撃は出来なかったんじゃ無いのか? いつの間に同時に操れる様に成った!?」

「ううん、あの分だとまだ同時操作同時攻撃は修得出来て無いよセシリアちゃん」

「あれはアレだね、同時に出すビットの数を減らして操作の負担を軽減、それから高速(ラピッド)切替(スイッチ)を応用した早撃ちの併用」

「同時に見えてその実、凄まじい早さでライフルとビット? の二つを交互に切り替えてると?」

「はい。おそらく先程の兄さんとの試合で進化したのでしょうね」

 

箒さんの驚愕混じりの疑問に分かたれた自分達(吹雪さんと綾花さん)が答えると、清香さんも自身の解釈が正しいのかと確認を求めて来るので、儂の方で見解を出しておきました。

しかしこれは……想定外と言うか、この時点でセシリアさんが分かたれた自分(紫織さん)と渡り合えるのは嬉しい誤算ですね。そして鈴さん始め、これからIS学園に集い共に物語を紡ぐ方達にも期待したいです。

 

さて試合の方はと言えば、紫織さんはサブマシンガンの掃射で、或いは剣の投擲でビットを三つまで破壊した様ですが、その分セシリアさんに掛かる負担は目に見えて減り、対するセシリアさんも幾度か当ててはいるものの、身軽さを活かした「影」の動きに翻弄され直撃は先程きりで掠り傷ばかりです。

 

『ええい! チョコマカと……!』

『あらあら、そんなに声を荒げるものではありませんよ。セシリア君の方が優位なのですから、現状維持で時間切れ狙いすれば良いではありませんか?』

 

確かに紫織さんの指摘する様に、シールドエネルギーの残量はブルーティアーズの方がほぼ半分、対して「影」は三分の一近く。現状維持は戦術として正しい。しかし育ちの高貴なセシリアさんには受け入れがたい様で、咆哮にも似た声でもって紫織さんに返します。

 

矜持(プライド)の問題ですわ!! IS操縦者のイギリス代表候補生として、貴族のオルコット家九代目当主として、わたくしにはより高見をより完璧を目指す義務がありますの!』

『良い心掛けですセシリア君。一夏さんが話してた通りの素敵な方ですお前は』

『それは光栄ですわ……ね!』

 

心底嬉しそうにセシリアさんを称賛する紫織さん。それでも回避、防御、そして攻撃の手は緩めず、遂にはあと一歩で右手に保持する剣が届く間合いにまで接近。ブルーティアーズに斬撃を決めるべく、最後の踏み込みを……と言った所で試合終了の時間と成った。

 

~~葉月視点終了~~

 




オリヒロイン達は前世同一人物(三人目)

無敵対策? 時間制限を認めさせて攻撃を許さなければ引き分けに持ち込めるな

そして強化されるセシリア

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