実力=握力=花山最強   作:たーなひ

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は じ め ま し て(久しぶりとも言う)
なんか……もう長い間更新してないのに感想まで頂けて、流石の俺も夜しか眠れない程度には泣きました。流石にモチベ高まって来たんで、ちょくちょく更新出来たらなと思います。


二十の拳

上半身を大きく、大きく逸らし、およそボーリングとは思えないような構えをとる花山。

 

そしてそれを固唾を飲んで見守るギャラリーの生徒達。

 

 

当時の様子を、Dクラス、本堂遼太郎から聞くことが出来た。

 

「……まぁ、あの花山薫ですからね」

 

「俺も噂しか聞いたことないですけど、見た目だけでも相当ヤベー奴ってことぐらいは分かります」

 

「どんな構えか?そうですね……こう、後ろにある物を取るみたいに上半身を後ろに捻って、逸らして……あ、そうそう、砲丸投げみたいな!」

 

「まぁ、あくまで例えるなら…ですからね。少し砲丸投げとは違ってたんですけど」

 

「何処が?えーっと……普通砲丸投げって、球を掴んでというより、掌に乗せて構えるじゃないですか。でもね、あの花山はボーリングの弾を鷲掴みしてるんですわ」

 

「勿論指を穴に通さずにですし、しかもアレ一番重たい球ですよ?野球ボールじゃあるまいし……」

 

「みーんな固唾を飲んで見守ってましたよ」

 

「ちょうどざわめきが無くなって静寂に包まれたところで、花山が動き出しました」

 

「いや、動き出したというより、気付いたら動き終わっていたという感じでしたね」

 

「ぶん投げたんですわ。それこそ、野球ボールでも投げるみたいに」

 

「信じられます?一直線ですよ、一直線。軽く140キロは出てましたね」

 

「え?ピンはどうなったかって?」

 

「いや〜……まぁ、結果から言えば全部倒れてましたよ」

 

「そりゃあんな勢いでボーリングの球が飛んでくれば倒れるに決まってはいるんですけどね」

 

「いや、誰も『お〜!』とはならなかったですよ」

 

「そりゃそうでしょうよ。あんなことになったんだから」

 

 

花山の投球は、真っ直ぐに先頭のピンを捉えた。

加えて、野球ボール並みの勢いなのだから、誰もストライクを取った事を伺いはしなかった。

 

だが、次に響く音により、ストライクの衝撃など掻き消されることになる。

 

 

ドガァァァァァン!!!ギギギギ…バチバチバチ……プシュー!ガガ……ガガガガ………ガシャーン!!

 

 

そう。花山の投げたボーリングの球はピンを倒した程度で減速するはずも無く、そのまま機械の中枢へと着弾。

 

ボーリングの球の重さが災いし、花山の投げた球……いや、“弾”は機械の中枢を破壊。

音だけでも、どれだけの破壊がもたらされたのか想像に難く無い。

 

 

そして響く拍手のパチパチという音。

 

誰もが口を呆然と開けて半ば放心状態にあり、静寂に包まれたフロアに居ようとも、周りの様子など構わずに拍手が出来る生徒……うん、そうだね。椎名ひよりだね。

 

「凄いです、花山くん!ストライクですね!」

 

グッと握り拳を作る花山。

少しは嬉しいらしい。

 

「あ、あの……花山さん?」

 

「…なんだ?」

 

石崎は大量の冷や汗をかきながらも花山に話しかける。

 

「いえ、その……なんて言うんでしょう……こう……いや、凄いは凄いんスけど……こう……あの……ちょっと違うと言いますか……」

 

「なにがだ」

 

「えっ…」

 

「どう違う」

 

「いや!えっと……その……あ、そう!下投げ!ボーリングっていうのな下投げでやるもんなので、ハイ。投げ方を変えないといけないかな〜と……」

 

「……なるほど」

 

花山としても心当たりが無いわけではない。石崎や椎名は勿論のこと、どの生徒も下投げで投げている。

確かに誰もしていない(できない)上手投げはルール違反だったか、と花山は納得した。

 

「あ、あと……ちょっと、手加減した方がいいかな〜って「あ、あの〜」…?」

 

かけられた声に振り向くと、ボーリング場のスタッフがぎこちない笑みを張り付けながら立っていた。

心なしかガクガク震えているようだ。

 

「レ、レ〜ンの方が故障いたしまひたので、ば、、場所を移動していただけまふと……」

 

流石にボーリング場の機構全壊とはなっていないものの、両隣のレーンまで影響が出ており、それらに作動する様子は無い。

出禁にしたいのは山々だが、まさかわざとやったわけでは無いだろうし……というか怖すぎて出禁を言い渡すことなど出来ない。

 

 

故障したレーンでボーリングが出来る訳もないので、スタッフの指示に従いレーンを移し再開。

 

 

二週目。

石崎の第一投は先頭のピンに当たったものの、一番奥の右端のピンが残ってしまったが、安定した投球で残した1ピンを倒し、サクっとスペアを獲得。

 

他の二人に比べれば些かインパクトに欠けるが、仕方の無いことだろう。

 

 

続く椎名の第一投。

 

先程と同じように投げられたボールだったが、残念ながら先程と同じような軌道を描く事はなく、左端の3ピンを倒すだけにとどまった。

 

「む……」

 

首を傾げながら下投げの素振りをして調子を確かめる椎名。

両手を股下から上に振り上げる素振りを見て、誰かがボソリと「大きな逸物を下さい〜♪」と言ったのが聞こえて、石崎は思わず吹き出したそうだ。

 

続いて第二投。

 

素振りの効果が出たのか、今度は先程ほどズレる事もなく、僅かに右に逸れるのみ。

残念ながら2ピンが残る結果となったが、椎名の素の運動神経を考えると、ガーターにならなかっただけマシかもしれない。

 

 

さてさて、ついに花山の順番となった。

 

先程のように誰もが花山に注目している。

先程と違うところを挙げるとすれば、花山の構えが下投げの構えであること、そしてスタッフがいつでも動けるようにスタンバイしていることだ。

とは言え、体を半身にしてボールを鷲掴みにしているその構えは、普通のボーリングの構えとは言い難い。

 

厳戒態勢の中迎えた花山の第一投。

 

誰もが、今回こそは安心だと思った事だろう。

構えこそおかしいものの、流石に上手く転がすだろうと誰もが思った事だろう。

事実、石崎も多少の不安はあったものの声を掛けたりはしなかった。

 

 

未だ測りかねていたのだ。

他クラスは勿論、これまで一緒に過ごしてきた石崎すらも。

 

 

花山の投げた“弾”は豪快な風切り音を立てながら、地面に着くこと無く低い弾道で進んでいく。

 

 

そして、先程と同じように響く機械の破壊音。

 

言うまでもなく、花山の弾は内部の機械を破壊しつつも、2連続ストライクを勝ち取った。

 

 

嬉しそうに僅かばかり頬を緩ませる花山に、スタッフが声をかける。

 

 

「あの………出禁でお願いします」

 

 

 

 

「……すまねぇ」

 

ボーリング場から追い出されてしまった花山一行。

責任を感じた花山が謝罪の言葉を口にする。

 

「いえいえ、全然気にしないで良いですよ」

 

「…………」

 

椎名は軽く言葉を返すが、石崎の顔は晴れない。

止められなかった事を悔やんでいるのだろう。

 

あの後、最初は抗議しようとしていたものの、スタッフ総出で目に涙を浮かべながら土下座をせんばかりの勢いで懇願してきたので、流石に潔く引き下がったのだった。

 

 

『これより、当学校が所有する孤島に上陸いたします。生徒たちは30分後、全員ジャージに着替え、所定の鞄と荷物をしっかりと確認した後、携帯を忘れず持ちデッキに集合してください。それ以外の私物は全て部屋に置いてくるようお願いします。また暫くお手洗いに行けない可能性がありますので、キチンと済ませておいてください』

 

沈んだ空気の三人の元に、館内放送によって連絡が通達された。

 

「もうすぐ着くみたいですね」

 

「着替えねえといけねぇのか。ダルいな……」

 

「……少し変ですよね」

 

「何がだよ?」

 

石崎が聞くと、椎名は思案顔で考え込んでいる。

確実な疑問があるのではなく、どこか引っ掛かりはするものの、どこに引っかかるのかは分かっていないといった感じに思える。

 

「……いえ、やっぱりなんでもないです」

 

結局答えは出なかったようで、かぶりをふる。

 

「…?そうか?」

 

「はい。気のせいだったみたいです」

 

「んじゃあ、準備するか」

 

「はい。それじゃあ、また後で」

 

そう言って、各々の部屋に戻って行った。

 

 

 

 

 

「……やっぱり変です」

 

「んぁ?何がだ?」

 

準備を済ませて合流し、順番待ちで並んでいる間に、椎名が口を開いた。

“順番待ち”というのも、今それぞれのクラスは私物のチェックを個別に受けており、携帯の回収を行なっているのだ。

 

「あまりにもチェックが厳重過ぎます。ただのバカンスなのに、こんなに厳重に私物のチェックをしたりする必要なんて無いですし、携帯を没収する必要だって無いはずです」

 

「…そりゃ、そうだな。でもよ、危険物とかの持ち込みとか、ゴミとかを出させねえ為とかってことじゃねぇの?」

 

「それだと、携帯を没収する必要がありません。…それに、見て下さい」

 

椎名が見ている方向に視線を飛ばすと、学校の関係者によってテントやら大量の何かの機材やら、ヘリまでもが用意されていた。およそほのぼのバカンスには似つかわしくないであろう用意。

 

「ただのバカンスに、あんなに大掛かりな用意が必要でしょうか?」

 

テントはまだ分かる。生徒の休憩所であったり、医療班が待機していたりするだろうからだ。しかし、あれだけの機材やヘリに関しては些か不自然過ぎる。

 

「じゃあ聞くがよ、今から何があるってんだ?」

 

「それは分かりませんけど、ただのバカンスじゃないことだけは分かります」

 

「……だな」

 

言われてみれば、石崎の目から見てもバカンスというには不自然過ぎるとは感じる。

 

「まさかサバイバルをやらされるなんてことはねぇだろうな……」

 

「流石にそれは……無いと思いたいです」

 

「まぁ、椎名はそうだろうな」

 

生粋のインドア派である椎名からすれば、野宿をやらされるなんてのは地獄に他ならないだろう。しかも季節は夏。立っているだけでも汗を掻く。体力も無い椎名はすぐにギブアップしてしまうだろうことは想像に難く無い。

 

「流石に無いとは思うけどな」

 

「はい。流石にサバイバルは無いと思いますね。ホントに」

 

完全にフラグを立てたことに気づかない石崎と椎名。もちろん、立てずとも待ち受ける現実が変わる事は無かったのだが…。

 

切実な椎名の願いは、全クラスが私物チェックを終え、砂浜に降り立った所で絶たれることとなる。

 

 

「ではこれよりーーー本年度最初の『特別試験』を行いたいと思う」

 

その言葉を聞いた瞬間、全てのクラスから疑問の声が巻き起こる。

 

Aクラスの担任である真嶋先生は、淡々と説明を続ける。

 

「期間は今から1週間。8月7日の正午に終了となる。君たちはこれからの1週間、この無人島で集団生活を行い過ごすことが試験となる。なお、この特別試験は実在する企業研修を参考にして作られた実践的、かつ現実的なものであることを最初に言っておく」

 

「無人島で生活って……船じゃなくて、この島で寝泊まりするってことですか?」

 

隣のBクラスから質問が投げられる。

 

「そうだ。試験中の乗船は正当な理由無く認められていない。この島での生活は眠る場所から食事の用意まで、その全てを君たち自身で考える必要がある。スタート時点で、クラス毎にテントを2つ。懐中電灯を2つ。マッチを一箱支給する。それから日焼け止めは制限なく、歯ブラシに関しては各自一つずつ配布することとする。特例として女子の場合に限り生理用品は無制限で許可している

 

「嘘だろ……」「信じらんない……」

 

数人のクラスメイトがぼやく声が聞こえる。

 

「サバイバルってことか……」

 

石崎はそうポツリと漏らしたところで、椎名の方をチラリと伺う。

 

懸念されていた中でも最悪の状況だ。1週間という期間が良くない。本の虫である椎名に禁断症状が出るかも知れない上に、体調面が特に心配だ。

 

その当の椎名はというと……。

 

「……………」

 

目を虚にしながら、死んだような表情で突っ立っていたのだった。




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