空虚しく、雲は無し
とても長い階段を一歩一歩踏みしめながら登る。
空は虚しく、雲一つ無い快晴だった。
いつの間にかだった。
いつも通り何も喋らず学校での生活を送っていたがある日、僕は彼女に恋してるのだと分かった。
僕が好きになった理由は、一目惚れでも無いし何かキッカケがあった訳でもない。それに、彼女はいつも誰にも相手にされないので、喋ってる事すら見た事が無かった。
なのに、いつの間にか好きになっていた。
彼女特有のふんわりとした雰囲気が特別好きな訳でも無いし、彼女の顔が好みな訳でもない。
彼女が好きな理由が明白では無いが恋という感情だけがあるのは分かった。
何故だろうか?
この恋を一目惚れと言うのだろうか?
いつもずっと彼女を見ていたいが、目が合ってしまうと目を逸らしてしまう。
彼女と話そうと勇気を出した時に限って、いつも緊張して声が出ない。
会話すら出来ない僕らを紡ぐキッカケは、彼女の言葉だった。
[私、雲の住人なの。]
とても不思議か言葉だった。
意味さえ理解が出来ない言葉だった。けれど、僕は何かを感じ何かを理解できそうだった。言葉が矛盾しているな。
とにかく、彼女の言葉は不思議だった。
その言葉に僕は[凄いね。]と言った。
彼女は笑ってけれど少し暗い影のある表情でありがとうと言った。
彼女はとても不思議だったのだ。
それからいつも話すようになり、僕の告白で僕らは恋人同士となった。
彼女が、いつも笑うと僕は、少し悲しくなる。
この感情を何と言えばいいのだろうか?哀愁?自傷?虚しさ?どれも違う。この世界で表せる言葉の限界は多分、矛盾。だろう。
彼女との思い出は沢山出来た。
遊園地に行ったり、本屋に行って好きな本を紹介し合ったり、家でゲームをして笑いあったり。この楽しい時間は、現実であり空想では無い。とても心が満たされた。
ある日、彼女は突然姿を消した。
街中を探し回り、日本中を探し回った。(そのおかげで、今は少し金欠だ。)
日本中を探し回ったが彼女の情報、手がかりは何も無かった。
彼女がこの世にいなかったように、彼女は突然消えた。
ニュース番組では平和なニュースばかりで、彼女の行方不明のニュースは全く聞かない。スマホアプリのニュースも同様だ。
彼女との幸せの時間は突然フッと雲のように消えた。
彼女の初めて言った言葉の意味が今更ながら分かったかも知らない。
今思い出した。
そう言えば昔。
僕は[死んだらどこに行くの?]と母に聞いたことがある。
母は[死んだら雲の国に行くんだよと言った。]
母が説明した雲の国はとても現実味があり、当時の僕は深く考えてしまって良く寝付けなかった。
そうか。
今更ながら分かった。
彼女と僕の関係を。
空には虚しく、"雲一つも無かった。"
終
この短編書いたキッカケは空を友達と眺めに行った長いキッカケとなっています。空って良いですよね。そんな思いが感じ取れたかわかりませんが、皆さんがこの小説を読み、考察して楽しんでくれたのなら嬉しい限りです。