せっかくバンドリの世界に転生したので全力で百合百合を眺めようと思ったら全員がノンケで絶望しました。   作:月白猫屋(つきしろねこや)

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幕間劇はオリキャラ回となっております。

こういう妄想キャラ好きなんす……。


14.【幕間】瑠璃さんのゆりゆり観察記、二杯目(瑠璃視点)

 

 

「ねぇ瑠璃(るり)、週末って暇してない? サークルの先輩がさぁ美月(みづき)を飲み会に連れて来いって煩いんだよね」

 

 

 暖かな春陽(しゅんよう)に照らされながら大学の構内へと向かう通路を一緒に歩く我が親友こと『蒲田 音羽(かまた おとは)』は、ほとほと困ったという風に頭を掻きながら呟いた。

 170cm近い身長と切れ長で綺麗な瞳、身長と反比例しているとしか思えない程のコンパクトな顔に桃花色のショートカットが良く似合っている。

 プロポーションも長い手足に細身の身体とはいえ出ている部分は過不足なく綺麗なシルエットを描いていて、アルバイトで読者モデルをしているというのも納得する程の美人な女の子。

 性格も気さくで男女を分け隔たりなく扱うので性別を超えて人気が高く、既に学内ではモテモテとの噂は半ば常識化していた。

 私にとっては出来過ぎた友達、まぁ(ひね)くれた見方をすれば美人な彼女の引き立て役といったところかな。

 

 

「私がお酒が苦手な事くらい知っているでしょ」

 

「まぁそれは知っているけど」

 

 

 私だってお酒を(たしな)んだ事くらいはある。

 ちょうど二十歳を迎えた日に音羽の家でお酒を試し飲みした時に、音羽は平気そうだったのに私は直ぐに気分が悪くなってしまって、結局はずっと介抱されっ放しになってしまった。

 あんな苦くて気分が悪くなる飲み物にはなるべくなら関わり合いにはなりたくありません、それにしてもあの時は翌朝に起きたら何故か音羽のベッドで二人とも下着姿で眠っていたのには思わず笑ってしまったっけ。

 

 

「たーのーむーよー、うちの大学の『孤高の黒薔薇』が来てくれたら私が英雄(ヒーロー)になれるんだからさー」

 

 

 横から縋り付かれてお願いをされたけれど、気にしないようにして音羽を引き摺るように構わず歩き続ける。

 

 

「音羽が居れば事足りるでしょ、私達の『咲き誇る赤薔薇』さん」

 

「だうぅ、しかし変な称号を付けたがるよね、うちの連中」

 

「本当にね、音羽は美人だからいいけど私はねぇ」

 

 

 いくら音羽が美人だからといっても、オマケである私にまで称号を付けなくてもいいと思うのよね。

 

 

「わかってないなぁ瑠璃は魅力的だよ、それもとびきりの」

 

「何処がなの? 地味だし愛想も無いし」

 

 

 音羽は縋り付いていた身体を離してまた横に並んで歩き出した。モデルをしている時とは違って普段は薄化粧とはいえ、それでも道行く男の人達が無意識に足を止めてしまう程の雰囲気がある。

 

 

「慈愛に満ちた優しそうな瞳に優雅な立ち振る舞い、それに何と言ってもね」

 

「はぁ……いったい何をしているのかしら?」

 

「えぇと、胸を触っていますが」

 

「変わらないわね、音羽は」

 

 

 音羽のやたらと胸を触る癖は私達が知り合った母校である羽丘女子学園時代から変わっていない、彼女が言うには得難い感触との事だけどお互いにもういい大人なのでこういう行為は卒業して欲しいのだけれど。

 

 

「この魔力のせいか、男共には瑠璃の方が圧倒的に人気があるんだよね」

 

「言いたい事はわかるけれど、あまり喜べる話じゃないわね」

 

「男なんてそんなものでしょ、頭の中はエロで埋まっているみたいだし」

 

「胸から手を離さない音羽には説得力が無いわよ」

 

「まぁ私もこの魔力の虜である事は否定しないね」

 

 

 手のひらを指先で強く(つね)って胸から手を引き剥がす。これもいつもの事で音羽が抓られた所をふー、ふー、と息を吹き掛けるまでが一連の流れになっていた。

 

 講義の時間まではまだ余裕がありそうなのでベンチに座って話を続ける事にした。少し前の時季までは人々が行き交うアスファルトの道路が桜のカーペットで明るく彩られていたのに、今はもうその痕跡すらなく路面は無機質な冷たさを感じる色に染まってしまっている。

 季節は移ろい変わっていくのに、相変わらず何も変わらない私達の関係はとても有り難くもあり、こそばゆい青春の残像でもあるのかもしれない。

 

 

「それで最近どうなの? 優璃(ゆり)ちゃんの様子は」

 

 

 脚を組み、空を見上げながら音羽は落ち着いた声色で訊いてきた。皆は知らないけれど明るくて社交的な音羽は仮の姿で、素の彼女は結構ぶっきらぼうでズボラな男の子っぽい性格をしている。

 

 

「優璃? 相変わらず可愛いよ、いやむしろ最近は可愛さに磨きがかかってきたというか」

 

「いやそういう事じゃなくてさ」

 

 

 また頭をポリポリと掻き始める、これも変わらない音羽の癖で男の子みたいだから止めた方が良いと何度となく言っても、瑠璃の前だけだから許してと訳のわからない言い訳でいつも逃げられてしまっている。

 

 

「日常生活に支障は無いみたい、高校で新しい友達も出来ているみたいだから心配しなくても大丈夫だよ」

 

「その割には未だに優璃ちゃんにべったり過ぎじゃないの? 最近は私が誘っても全然遊びに出て来ないし」

 

「きっとまだ記憶を失って不安だと思うからね、優璃には私が付いていてあげないと」

 

「本当にそうなのかな? 私には瑠璃が優璃ちゃんの方に少し依存しているように思えるよ」

 

 

 胸の中で少し薄暗くて黒い感情が渦巻いた。あんな事故に遭って記憶まで失ってしまった優璃の辛さが音羽にわかる訳が無い、私が、私だけが優璃を支えられるのに。

 

 

「音羽にはわからないよ」

 

「別に嫌味じゃないよ、唯一の家族である優璃ちゃんが大変な目に遭って心配なのもわかる。だけど生活の全てを優璃ちゃんに捧げて瑠璃の人生はどうなの? この先に彼女が独り立ちをした時に瑠璃が抜け殻になってしまいそうなのが私は心配だな」

 

「そんな事……」

 

 

 何も反論をする事が出来ない。今の私には自分の身よりも優璃の方が大切かもしれない、いつか優璃が大人になって巣立っていった時に私はいったい何を思い、この手には何が残るのだろう。

 

 

「まぁそうならないように私が時々はこうやって注意していくし、何時でも親友である音羽さんを頼ってくれても良いからさ」

 

「昔からこういうところは音羽の方がしっかりしているのよね」

 

「私が家事だけは壊滅的なように誰だって得手不得手はあるじゃない、私達はお互いが足りないところを補えるからずっと親友でいられていると思うんだ」

 

 

 こちらを向いて屈託の無い笑顔を見せる音羽がやたらと頼もしく見える。

 全部が納得出来る訳じゃないけれど、自分の事をわかってくれている人が居てくれるというのはきっと幸せな事なんだろうな。

 

 

「という訳でこの親友の為に飲み会に行ってくれるよね?」

 

「飲み会には行きません」

 

 

 音羽を置いてベンチから立ち上がる、陽が差してきた路面は少し明るい色に染まりだして暖かさも増してきたみたい。

 

 

「だけど……」

 

 

 振り返って音羽の鼻頭に人差し指を添えた。

 

 

「また音羽の家に遊びに行くね、どうせ部屋は散らかり放題でしょう?」

 

「なる程ね、そちらの提案の方が余程に魅力的だわ」

 

 

 音羽の反応を確認して校舎へと歩きだした。少し歩いたところで再びベンチに座ったままの彼女の方へ振り返る。

 

 

 これは私の覚悟と宣言だ。

 

 

「でもまだまだ優璃を愛でるからね、だって世界で一番可愛い妹なんだもの」

 

 

 苦笑いをしながら片手を上げる音羽に別れを告げて再び歩き出す、頬を撫でる風は花の香りがしていてなんだかいつもより背筋が伸びて足が軽くなっている気がした。

 

 

⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

 

「はい、今日も妹は夜遊びでございますか」

 

 

 優璃からのメールを何度も見返しながら家のソファーで身悶える。

 高校に無事に入学をする事が出来て友達も順調に増えていっているみたい、それはきっと幼馴染みである香澄ちゃんの存在が大きくて色々と助かっているのだと思う。

 とても有り難く感じているし感謝もしている、だけど、だけどね香澄ちゃん……。

 

 優璃をもう少し可愛がらせてください!

 

 一緒にご飯を食べたいし、ショッピングとか行って着せ替えをして楽しみたいし、二人で旅行とかもしたいし、一緒にお風呂に入りたいし、なんなら毎晩おやすみのチューとかもしてあげたい。

 

 はあぁぁぁ妹成分が、優璃優璃エキスが最近は足りていないのよぉ。

 

 いや待って瑠璃一等兵、先日も遅くなったお詫びに一緒にお風呂に入るという至福の時が訪れた事を忘れちゃダメであります。

 ならばこのまま夜半に帰宅ともなれば、今度のお詫びも再び一緒にお風呂に!

 いやいやお待ちなさい瑠璃一等兵、それは勿論としてそろそろ次なる段階を要求しても(よろ)しいのではないでしょうか。

 こちらは妹成分不足という補給線が絶たれた状態で奮戦しているのであります、ならばもっと本陣には価値の高い要求をして(しか)るべきではないのでしょうか。

 それは納得なのであります、ならば求める物はひとつのみ、我ら『脳内優璃親衛隊(イモウトスキー)』は満場一致にて本陣への要求を宣言する。

 

 我らは優璃と一緒のオフトゥンで就寝する事を要求するのであります!

 

 くはっ、これが叶えられたら優璃の可愛い寝顔とか、優璃の優しい寝息とか、もしかしたら寝相で私にキュッとしがみ付いてきたりしてなんかして。

 いやそれと共におやすみとおはようのチューというボーナスまで付属とかありえる話ですよね、くはぁ、幸せが過ぎるでありますよ。

 

 早く帰って来て欲しいという心配と、遅くなってもそれはそれでという矛盾した気持ちが頭の中でせめぎ合う、いや出来れば遅い方が有難いのは偽り難い本音なのだけれど。

 

 

「ただいまー」

 

 

 優璃ちゃん意外と帰宅が早い! もう少し妄想していたかったのに。

 

 

「おかえり、今日は何か良い事があったの?」

 

「えへへ、やっぱりわかる?」

 

 

 リビングの床に鞄を置いた優璃はひとめ見ただけでわかる程に機嫌が良くてニコニコとしている。

 ま、まさか告白されたとか? まさかそれで彼氏が出来たとか?

 可愛いから男の子も放っては置かないだろうけれど、流石にまだ高校に入学してから日が浅いですよいくらなんでも早くないかな? いやそれ以前に私が合格を出さないと優璃の彼氏とは認められないのですよ?

 

 

「また友達が出来たんだ、とっても可愛くて優しい娘だよ」

 

 

 友達かいぃぃぃ、あぁ良かった。

 

 

「そうなんだ、優璃が高校に馴染めているみたいでお姉ちゃんも嬉しいよ」

 

「いつも心配かけてごめんね。今日は汗を掻いているから先にシャワーを浴びてくるね」

 

 

 鞄を手に取って部屋への階段を登って行ってしまった。あれれ優璃ちゃん、お風呂は夕食の後に一緒に入るとかじゃないのですか?

 

 

⭐︎ ⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

 

 

「いただきます」

 

 

 今日のメニューは煮込みハンバーグ、優璃がお風呂に先に、先に入ってしまったが為に温め直した自慢の逸品です。

 

 

「姉さん、おいひぃ」

 

「ふふ、ありがと」

 

 

 満面の笑顔が可愛い過ぎます。

 えっと神様、この可愛さ新種の生き物をホルマリン漬けにして部屋に飾って置いても良いですか?

 

 

「家事も出来て、落ち着いていて優しいなんて本当に姉さんは凄いなぁ、わたしはそんな大人になれそうな気がしないや」

 

「私と同じになる必要なんてないわ、優璃はきっと素敵な女性になると思うな」

 

「うーん、それでも姉さんはずっとわたしの憧れなんだろうなぁ」

 

 

 なんですか褒め殺しですか、いやもう優璃の可愛さにこちらはとっくに殺されているのだけれど。

 ちょっと神様、この愛しさ満点の生き物を蝋人形(ろうにんぎょう)にしてリビングに飾って置いても良いですか?

 

 優璃の褒め殺しを受けてご機嫌な気分のままに夕食を終えて一緒にお皿を洗う、この短いひと時も今や私にとっては大切な時間になっているのです。

 

 

「そういえば香澄がね、多分その内にバンドを始める事になると思うよ」

 

「バンドって音楽の? もしかして優璃もするの?」

 

「わたしはしないけど、香澄の事は応援していくつもり」

 

 

 香澄ちゃんがバンドをねぇ、活発な子だとは思っていたけれど部活じゃなくてバンドとは予想の斜め上の事をしてくるなぁ。

 

 

「だからこれからも帰りが遅くなる事もあるかも、ごめんね迷惑かけて」

 

「心配はするけれど、優璃の事は信用しているから香澄ちゃんをしっかり支えてあげなさい」

 

 

 お皿を洗い終わってタオルで手の水分を拭った優璃が、そっと両手で私に抱きついてきた。

 

 

「やっぱり姉さんはわたしの憧れだよ、大好き」

 

「もう、絶対に私の方が優璃の事を大好きに決まっているよ」

 

 

 顔を上げた優璃と微笑み合う、はぁもう、瑠璃一等兵の妹成分は充填完了でありますよ。

 

 

「それじゃそろそろ部屋で勉強してくるね」

 

「はいはい、無理しないようにね」

 

 

 私の身体から離れて優璃は階段を登って行ってしまった。

 私もリビングのソファーに座ってのんびりとする、しかしそれにしても幸せなひと時だったなぁ、やっぱり私の妹は世界で一番可愛いと思うのです。

 天井をぼんやりと眺めていたら、何か大事な事を忘れていた事に気付いた。

 

 あれっ? オフトゥンミッションどこいったのかな?

 

 あの、音羽上官殿……。

 瑠璃一等兵は泥沼の戦場からまだまだ離脱が出来そうもないのであります……。

 

 

 

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