現代日本に転生したと思ったら、ペルソナ5だった。 作:ずばば
多分、俺は1度死んで、生まれ変わったのだろう。
多分というのは、自分の死因や、死ぬ前のことがあまり鮮明に思い出せないからだ。一人っ子で趣味はテレビゲーム、学生時代は友達と家に集まりゲームをして遊び、社会人になってからも月に1本はゲームを買い、家に帰ってからゆっくり遊んでいた...その程度の記憶は残っているものの、家族や自分の名前、友達は何人いたのか、恋人はいたのか。そんな事が思い出せない。
昔は何とか思い出そうと毎日のように悩んでいたが、時が経つにつれその執念も冷めていき、今ではあまり気にしないことにしている。
そんなこんなで今は16歳。先程言った通り大した記憶も残っておらず、学力や運動能力で周りと大きな差がつくこともなく、平凡に高校生活を送っている。
...送っている、のだが。
1つ、大きな問題を抱えている。
それは、この世界が恐らく「ペルソナ5」というゲームの世界だという事だ。
ペルソナ5。それは、世の中の理不尽に悩まされる高校生の主人公とその仲間が、ペルソナという不思議な力に目覚め、「怪盗団」として心の世界に入り込み、悪い大人達を改心させて行く。ざっくり言えばそんなゲームだったはずだ。
これに気づいたのは、中学時代に親と担任教師から勧められた高校が「秀尽学園高校」だった時だ。
あまりにもインパクトのある学校名だったためか、自分の記憶にも残っていた。
秀尽学園高校、通称「秀尽」は主人公達が通う学校であり、ペルソナ5において様々な事件に関わる場所でもある。
そんな場所に通うことに好奇心が湧かないでも無かったが、それ以上に事件に巻き込まれたくないという思いが強く、最初は別の高校にしたい、と希望した。が、家から近いことや、親と学校の勧めを断れるほどの理由も思いつかず、結局秀尽に通うことになってしまった。
とはいえ、大人しくしていれば主人公達と関わることもないだろうし、別に問題ないか。と、割と楽観的に考えてもいた。
そしてそのまま入学。入学式を終え、クラス内での簡単な自己紹介も終わり、今日は簡単な説明を受けてさぁ帰るか、という時のことだった。
「なぁ。」
と、前の席から声がかかった。声をかけられた方を向くと、髪を金色に染めた、短髪の少年がいた。
「悪い、明日持ってかなきゃなんねー物聞いてなかった。知ってたら教えてくんね?」
頼む!と言いながら手を合わせてこちらに頭を下げる。
特に教えたくない理由も無かったので、
「あぁ、いいよ。確か、明日必要なのは...」
そう言って、覚えていることを教えてあげた。
そして教え終わると、
「なるほど、おっけー分かった!教えてくれてサンキューな!」
と言い、
「もし良かったらさ、連絡先交換しとかねーか?今後もこういうことあったらさ、教えて欲しいんだよな。」
教えてもらうの前提かよ。と思わないでもなかったが、折角の交友を広げるチャンスだと思い、頷いて承諾した。
そして連絡先を交換して、登録された名前は
坂本竜司、だった。
坂本竜司。それはペルソナ5の世界における、主人公の相棒的キャラクターだったはずだ。ヤンキーのような見た目で敬遠されたりもするものの、根は優しく正義感もあり、怪盗団のムードメーカー的役割を担う人物。
巻き込まれないように、と思っていたのに。先に名前を聞いておけばよかった。そういえば俺の名前 司馬 海人《しば かいと》でさ行だし、警戒しておけばよかった。などと後悔してる間に、坂本はじゃ、また明日な!と言って教室を去っていった。
...とりあえず、帰ってから考えよう。
現実逃避をして、とりあえず俺も帰ることにした。