現代日本に転生したと思ったら、ペルソナ5だった。 作:ずばば
私自身ペルソナの2次創作を読むのは好きです。特に4は足立が好きなので、中心になって出てくる小説が好きですね。
未だにぎゃーぎゃーと言い争いを続ける竜司とモルガナを尻目に、先へと進んで行く。
橋を抜けてしばらく走っていると、ドアから兵士が出てきて鉢合わせてしまった。
「う、うわぁ!! やべぇ、きたぁー!!」
思わず竜司が腰を抜かす。
俺と主人公は、咄嗟にペルソナを出して構える。
「ちっ、飛んだ素人め! じっとしてろ!」
竜司に向かってモルガナが叫んだ。
「おい、オマエら!戦えるんだろ?やるぞ!!
...来い...ゾロッ!!」
こちらに向かって叫び、モルガナが自分のペルソナ、ゾロを出す。
これが生で見るペルソナか。自分以外のペルソナを見た事がなかったため、少し感動してしまった。
「お前もそれ、出んのかよっ!?」
驚いた様子で竜司が言った。
それを気にせず、
「速やかに黙らせてやる!」
モルガナが手を組んで、戦闘態勢に入る。
シャドウも兵士の姿から変わり、ピンクの悪魔のような見た目の生き物と、カボチャのお化けのような物に変わる。
「シャドウめ...迎撃態勢に入りやがったな!
ワガハイたちを殺すために、本気を出してきたってことだぜ!」
「支援してやるから死ぬ気で戦え!行くぞ!」
モルガナの言葉に、主人公と俺は覚悟を決めて構える。
まず、主人公がピンクの悪魔に向かって、
「エイハッ!」
っと叫んだ。赤黒く禍々しい弾のような物が敵に向かって飛んでいく。
動きはそれ程速くはないようで、その攻撃をマトモに受けたようだ。苦しそうに呻いていて、ダメージはあるようだが倒れはしなかった。
俺も続いてダメージのある悪魔に向かってステッキに仕込まれた剣で切りかかる。
「そらッ!」
先程の攻撃で弱っていたようで、ピンクの悪魔はそのまま断末魔を上げながら倒れた。
あまりいい気分ではないものの、この状況では仕方ない。切り替えてもう一方の敵に体を向けた。
「ふん、オマエらやっぱり素人だな。」
モルガナが言った。まぁ、その通りなんだが。
「戦いってのはこうやるんだよ! 意を示せゾロ!」
そうモルガナが叫ぶと、突然敵の居るところにだけ強風が吹き、その風が敵を襲う。
恐らく、モルガナはガルを唱えたのだろう。弱点だったようで、敵が態勢を崩した。
なるほど、その辺りはゲームと共通なのか。
「弱点に攻撃して敵をコカす!その隙をついて更に動く! 基本中の基本だ! 覚えとけ!」
モルガナがそう言って、続けざまに敵に切りかかった。弱点を突かれて弱っていた敵は、そのまま倒れた。
「オマエら、やるじゃねぇか。ペルソナの力も、中々のもんだ。」
モルガナがこちらを褒めた。
「ペルソナ...? お前らがブワーって出す、あれか?」
「呼び出す時、くせっ毛の方が、仮面を剥がすのを見たろ? 人は誰でも、仮面を被ってる。それを自覚し、自ら剥がすことで...」
と、そこまで説明した所で、俺と主人公の衣装が元に戻る。
「...また戻っちまった...」
竜司が呟いた。
「力の扱いが、まだ完全じゃないようだな...こんだけ騒がれてて、変身が解けるはずがない。」
「あの姿は本来...」
と、そこまで説明した所で、
「あー、もういい! さっきからワケわかんねぇし!」
頭を掻きながら、説明を遮って竜司が言った。
「話くらい、じっと聞けねぇのかキンパツ!」
遮られたことが不服だったのか、不満げにモルガナが言った。
また言い争いが始まりそうだったので、
「とりあえず、説明してる時間はないんじゃないか? 早い所、出口に行こう。」
と、俺が話に入った。
「...そうだな、出口までそう遠くない。急ぐぞ。」
モルガナもここで話していてもしょうがないと思ったのか、話を終えて走り出す。
しばらく着いていくと、牢屋の中に秀尽のジャージを着た生徒が這いつくばっていた。確か、バレー部の生徒だったと思う。パレスは鴨志田の認知上の世界だったはずで、バレー部の生徒を奴隷のように扱っている。だから、牢屋に入れられているという話だったはずだ。
「ちょっと待った!」
それを見た竜司が突然立ち止まる。
「これ、こいつの格好...どっかで見た気が...」
竜司が考え込みながら呟いた。
「バレー部じゃないか?秀尽の。」
俺は、悩む竜司にそう言った。
「おぉ!そうだ! パニクってて思い出せなかった!」
竜司が大声で言った。よほど気になっていたようだ。
「今は他人の心配してる場合じゃないだろ、行くぞ!」
モルガナが叫ぶように言う。
そうこうしている間に、前方からシャドウがやって来た。
「言わんこっちゃねぇ...!」
溜息がちにモルガナが言う。
「迎え撃とう。」
主人公の言葉に俺とモルガナも構える。
幸い敵はあまり強くなかったため、特に苦戦することも無く、素早く戦闘を終わらせることが出来た。
「よし、新手が来る前に行くぞ!」
モルガナが急かすように言った。
その後も竜司は牢屋の中の人間を気にしていたが、
「ついてこないなら、好きにしな!」
というモルガナの言葉に、渋々と言った様子で牢屋を後にした。
そのまま正面ホールへと抜け、モルガナの後を追う。小部屋に入ると、中には通気口がある。蓋を取ればそこから抜けられそうだ。
蓋を竜司が強引に外し、脱出の準備が整う。
「やっとだぜマジ...!」
疲れた様子で竜司が呟いた。
「喜ぶのは出てからにしておけ。」
モルガナが注意するように言う。
話によると、原作通りモルガナはこの後もしばらくパレスに残るようだ。
主人公がモルガナにお礼を言って、俺たちは通気口へと入って行った。
「あいつら、使えそうだな...ワガハイの見立てが確かなら、あのクセっ毛と、フツーのやつは特に...な。」
そうしてパレスから出ると、いつも通りの道の中に出た。いつも通り多くの人が歩いていて、パレスのような静けさはない。
「俺ら、どうなった?」
竜司が呼吸を荒くしながら言う。
すると、主人公のスマホから無機質な機械音声が流れた。
「現実世界に帰還しました。お疲れ様でした。」
「あ?帰還しました...?...逃げきれたってことか?」
思わず聞き返す竜司。
その後はパレスで会った猫の話、城の話、城の中の鴨志田の話など様々な事を話し合うものの、結論が出ることはなかった。
苛立つように叫んだ竜司の声に警官にサボりを疑われたり、竜司がパレスでの事を話して薬物を疑われたりしながらも、その場をやり過ごし学校へと向かう。
「あの警官、まるで俺たちの話信用してなかったな...。」
まだ不満があるようで竜司がぼやく。
「まぁ、城だと喋る猫だのの話、俺も経験してなかったら頭を疑うな。」
竜司に言った。
「そりゃそうだろうけどよ...結局、あれなんだったんだよ。」
そんなことを話していると、学校へと着いた。
当然、いつも通りの学校が目の前にはあった。
時間は既に昼休み頃になっていた。
警官から報告があったようで、指導教員が待ち構えていた。
パレスのことを話すも、反応は警官と似たり寄ったりだ。更に苛立ちがエスカレートする龍司の前に、校内から鴨志田が現れた。
「呑気だな、坂本。陸上の朝練やってた頃とは大違いだ。」
煽るように鴨志田が言う。
「...ちっ。てめぇが潰した癖によ...」
小声で竜司が言った。
確かにな。表情一つ変えずにこんなことを言えるのは、鴨志田の面の皮が厚いというかなんというか。
そんなことを考えていると、
「...司馬。お前もか。」
鴨志田が睨みつけるように言う。明らかに俺の方が竜司に比べて語気が強くなっている。顰める顔も取り繕えていないようだ。
「とにかくだ。お前らは前の事件の事もある。事情を聞くからな、来い!」
指導教員がこちらに向けて言った。竜司がそれに意義を申し立てそうな様子だったので、
「どうせあそこの事を言っても信じては貰えないだろ。とりあえず従っておこう。」
と、小さな声で言った。それで納得してくれたのか、竜司は溜息をつくだけで他に何もすることは無かった。
指導教員について行く前に、主人公に向けて、
「じゃ、後のことは教室で話そう。名前は...」
「雨宮蓮だ。」
「そうか。俺は司馬海人。また後で。」
そんな会話をして、竜司と俺は校内へと入って行った。
教員の指導を受けながら、1人考える。
俺にペルソナが宿った理由。そのペルソナがラウールである理由。
...はっきり言って、全く分からない。
ラウールは自分を貫く力を授ける。そう言っていた。自分を貫くとは、なんだろうか。基本的に厄介事を嫌う俺の考えからすると、降りかかる火の粉を払うための力...と、言う訳では流石に無いだろう。
と、なると...竜司の時のように、原作をねじ曲げてでも救える人を救う。そういう事だろうか。
...ペルソナ5では、救われなかった人間、或いは救いきれなかった人間は少なくない。それは被害者も、加害者もだ。
原作の知識と、俺の今の能力でそう言った人間を救う。それがラウールの言う自分を貫くということなのだろうか?
...そんなことが可能なのだろうか。第一、竜司の時とは事情が違う。あいつは俺の数少ない友達だ。友達だから、救おうとした。見逃せなかった。そういう気持ちは大きい。
だが、見ず知らずの赤の他人は?悪行を尽くしてきた相手なら?俺は、それでも手を差し伸べられるのか?
手を差し伸べて、どうすればいい。それが善人なら良い。救っても悪行を繰り返す悪人を救って、何になるのだろう。
...俺はどうすればいいのだろう。救える力の無かった、ペルソナが目覚めていない時の俺なら、こんなにも迷わずに済んだ。俺には何も出来ないから。何かをする力がないから。原作を変えてしまってはまずいから。そう言って幾らでも言い訳ができた。事に関わろうとしない、自分自身を許せただろう。
でも、今の俺は違う。目の前の人を救える力を持ってしまった。助けられるのに、手を差し伸べられるのに、それに関わろうとしないなんて。
まるで、俺が悪人みたいじゃないか。
...先の事を考えても、仕方が無い。まず、助けられそうな善人を助ける。原作はもう変えてしまっている、なら、やれることをやるしかないだろう。
と、なるとまずは...
そこまで考えていると、指導教員に頭を叩かれた。全く聞いていないことがバレていたようだ。
そのおかげで指導が長引いてしまった。...とりあえず、自分のことから何とかしないとな。