現代日本に転生したと思ったら、ペルソナ5だった。   作:ずばば

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これからのこと

やっと指導が終わり、次は自分のクラスの教室へと向かう。

もう既に授業が始まっているのか、廊下には誰もいない。やや急ぎ足で教室へと向かい、ドアを開けた。

クラスメイト達はこちらを見てひそひそと話をしている。

...この数ヶ月で、この空気にも慣れてしまった。知らん顔でそのまま自分の席に着く。

俺の席は雨宮から見て右隣だ。先に席に着いていた雨宮に軽く会釈して、前で話をしている川上先生の方を向く。

一つ溜息をついて、川上先生が話を続け始めた。小言の一つでも言われるかな、と思っていたが、流石は面倒事を嫌う川上先生と言うべきか、ここで注意して話が長引くのを嫌ったのだろう。

 

「...じゃ、授業を続けます。ここは...」

 

俺も鞄から教科書やノートを取り出して、授業に耳を傾けようとしていたが、ひそひそと話す声が耳に入る。

内容としては、俺の遅刻やら、高巻と雨宮の関係やら、雨宮の前科の話やら、そんな所だ。この頃の高巻は確か、鴨志田と関係を持っている、という噂が立っていたはずだ。

クォーターでやや日本人離れしている容姿と、その噂が原因で学校でもやや浮いてしまっている、そんな感じだったと記憶している。

 

そんなことを考えている間に授業が終わり、それぞれが帰り支度を始めた。これが今日最後の授業だったようだ。

雨宮の方を見ると、この後どうするか迷っている様子だ。特に何もしなくてもこの後竜司と合流すると思うが、一応声をかけておく。

 

「誰かと帰る約束とか無いなら、一緒に行かないか?竜司も今日のことを話したいだろうし。」

 

そう言うと雨宮はそれを承諾して、帰り支度を済ませて教室を出る。

すると、雨宮が突然頭を抑える。声をかけようとすると、

 

「ん?どうしたの?」

 

と、丁度教室を出た川上先生が先に声をかけた。

 

「ここは城...か?」

 

雨宮が確認するように呟いた。恐らく、城の景色と学校の景色が混ざってしまったのだろう。

川上先生は呆れたように言った。

 

「ハァ...ちょっと君...大丈夫? あと、もう噂になってるみたいだけど、言ったの私じゃないから。...ホント勘弁してほしいわ。なんで私がこんな目に...ただでさえ問題児が1人いるって言うのに...」

 

最後の方は小声で言った。川上先生には同情するが、俺が何か問題を起こしたことは無かったと思う。...まぁ、問題児がクラスに居る、というだけで心労が酷いのかもしれないが。

 

「寄り道しないで真っ直ぐ帰りなさい。佐倉さん怒ってたわよ。...あぁあと坂本君。出来るだけあの子とは関わら...」

 

そこまで言いかけると、竜司がやってきた。

 

「噂をすれば...何の用?今日補導されたんだって?」

 

ハァ、と川上先生が溜息がちに言う。

 

「すんませんっす。」

 

特に噛み付いたりせずに、竜司は素直に謝った。

その後は竜司が屋上で待っていると言い残して去って行き、雨宮の転入への不満を口にする鴨志田を見かけたりしながら、雨宮と屋上へ向かった。

 

屋上の扉には立入禁止と書いてあるが、構わずドアを開けて屋上に出る。

 

「お、来たか。悪かったな、転校生。呼び出して。」

 

こちらに気づいた竜司が、もう使われていないであろうパイプ椅子に腰かけながら言った。

 

「川上先生にも言われたんだろ?俺やこいつと関わるなって。」

 

「俺のことは言われなかったけどな。」

 

竜司の言葉に俺が思わず呟く。

 

「...え、なんで?」

 

「さぁ。日頃の行いじゃないか?」

 

竜司の疑問に答える。これでも授業やら行事には真面目に参加してるからな。

 

「それ、どういう意味だよ...まぁ、いいか。俺らもお前らも、学校じゃ問題児扱いだろ。 前歴があるとかなんとかで、噂になってるぜ。どうりで肝が太てぇわけだぜ。」

 

雨宮に向けて言う。

話が長くなることを察したのか、主人公が無造作に置いてある机に腰かけた。

 

「...あれ、何だったんだ?城で殺されそうになったやつ...夢...じゃねぇよな?お前も、海人もそうだよな?」

 

「そうだ。」

 

「俺もそうだな。」

 

竜司の疑問に雨宮、俺の順に答える。

 

「そうだよな...3人とも同じ夢見るなんて、有り得ねぇよな。 つか、夢とはいえ、鴨志田から助けてくれたよな? とりあえず礼を言っておくぜ、蓮。」

 

「別にいい。」

 

竜司の礼に、何でもないように答える雨宮。俺は見ていなかったが、どうやら原作通りの流れでペルソナに目覚められていたようだ。

 

「けど、あそこであった鴨志田...ちょっと引っかかってな。少し調べて見たらよ...」

 

「鴨志田の悪い噂の話か。」

 

「あぁ。」

 

竜司の話に割り込んで俺が答えた。やはりそうだったか。

鴨志田には現時点で2つの噂がある。女子生徒と関係を持っているということ、そしてバレー部への行き過ぎた体罰の噂。後者の噂は恐らく鴨志田自身が手を回しているのだろう、あまり耳には入ってこない。

 

「バレー部の顧問だが、元メダリストで、部も全国行ってっから、誰も何も言えねぇ...あの城の『鴨志田が王様』とか、そこが妙にリアルっつうか...あの城...また、行けんのかな...?」

 

竜司が雨宮に鴨志田について話し、城での事について考え始める。

 

が、しばらくして、考えがまとまらなかったようで、

 

「あ〜夢だ夢!夢に決まってら!...付き合わして悪かったな、話は終わりだ。」

 

と、強引に話を終わらせた。

その後、竜司が自己紹介をして、雨宮とはそこで別れ、下校した。

 

帰り道を歩きながら、竜司と話す。

 

「...なぁ、あの場では夢っつって切り上げちまったけどさ。お前も夢だと思うか?」

 

竜司がふと、尋ねてきた。

 

「...分からん。気になるなら、もう1回あの城に行ってみるしかないんじゃないか?」

 

と、それとなく俺は提案した。

 

「...やっぱそうなるか。明日あいつにも声かけて、行き方探してみるしかねーかもな。...そうなると、海人、この後時間あるか?」

 

竜司がこちらに聞いてくる。

 

「あるにはあるが...何か用でもあるのか?」

 

「俺、お前らみたいにあの変な力はねーからさ。せめて威嚇出来るような物でも持っておきてーと思ってよ。...そういうのが売ってる店に行きてーんだ。」

 

俺の質問に、竜司がそう答えた。だが確か、この時点で竜司はハンドガンのモデルガンを持っているんじゃなかったか?

 

「別にいいけど、竜司はもうモデルガンとか持ってなかったか?新しく買う必要あるのか?」

 

「そうだけど、あの城だと俺以外は皆戦えんだろ?しょぼい武器じゃ、相手もビビんねーと思うからよ。 それに、海人も持っておいた方がいいんじゃねーかなと思うし。」

 

確かに考えてみると、俺と雨宮は銃を持ってなかったな。竜司は...ペルソナが覚醒した時に何故か持ってるからいいが。そう考えてみると、俺用の銃があった方が戦闘でも楽だろう。

 

「そういうことなら、早く行こう。」

 

「おう!」

 

そんな訳で、俺は竜司に着いていき、渋谷セントラル街の路地裏にあるミリタリーショップの前へと来た。

 

「これがその店だ。海人は初めてだったよな、 結構本格的だろ?」

 

「こういう店に来たことは無いな。ミリタリー系の趣味に詳しい訳でもないし。」

 

その店はなんというか、アングラな雰囲気というか、立地もあって人が寄り付かなさそうな暗い外装の店だった。...こういう店って、店を運営するだけの利益を出せているんだろうか。

 

「やっぱ、海人も詳しくねーよな。俺もわかんねーから、とりあえず中入ってオススメとか聞いてみるか。」

 

そう言って竜司が中に入って行く。続いて俺も入る。

店の中にはモデルガンがショーケースや壁に所狭しと並べられてあり、店の奥にはその銃の入っていたであろう箱が散乱している。正直あまり綺麗とは言えない。

まぁ銃が買えれば構わないので、その辺りは気にしない。しばらくは竜司とそれぞれ自分で銃を見ていたが、

 

「うーん...どれがいいのか、よく分かんねーな。本物っぽくて、敵が見たらビビるようなやつがいいと思うんだが...やっぱ、店員に話聞いてみるしかねーか。」

 

そう言って、竜司が店員に声をかけた。すると、

 

「買うもん決まったのか?」

 

と無愛想な様子でこちらに尋ねた。竜司がオススメの銃を聞くと、

 

「オススメだ?...てめぇで気に入ったモン持ってきゃいいだろうが。」

 

と、ぶっきらぼうに言った。

 

「不親切じゃね?」

 

竜司が思わず言う。

その言葉に反応したのか、店主が一応色々と聞いてはくれるが、その質問もマニア向けで、竜司はあまり良く分かっていない様子だ。俺も銃には詳しくないので、よく分かっていない。店主からのビギナー扱いも相まって、竜司はやや苛立ってきたようだ。

 

そうこうしていると、店主がこちらに話を振ってきた。

 

「お前は?なんか欲しいモンでもあんの?」

 

それを聞いて考え込む。ここで良い銃を買えれば、今後のパレス探索はグンと楽になると思う。ゲームだとどの銃が良かったんだったか...

 

「...じゃあ、R.I.ピストルっていうのが欲しいんですけど。」

 

そう言うと、店主の目の色が変わる。

 

「...へぇ。他には?」

 

「えっと...ノックボレーカノンに、ナイフとかが売ってるなら、ミゼリコルデ。鈍器とかも売ってるなら、グランドプレッサーなんかが欲しいんですけど。」

 

とりあえず、覚えていた名前を挙げてみる。

 

「相当詳しいみたいだな。だが、その辺のやつは今品切れだ。第一高すぎて学生には払えねぇだろ。」

 

心なしか嬉しそうに店主が言う。一応バイト代を出せば買えなくはないが...まぁ、そもそも品切れじゃ考えても仕方ないか。少し落胆していると、

 

「そう残念そうにするな。...ビギナー向けのやつならある。そいつを見ていくか?」

 

店主が言った。俺はビギナーどころかモデルガンを買った事すらないんだが。とりあえず頷いておくと、店主が銃を取りに奥に入っていった。

すると、竜司が驚いたようにこちらに声をかける。

 

「海人お前、めちゃくちゃ詳しいじゃねーか!こういう店に来たことねぇって嘘だろ!?」

 

「いや、たまたま名前を知ってただけで...」

 

そんな言い訳をしていると、

 

「たまたま知ってるってんで出るような名前じゃねぇよ。マニアでもそう知ってるもんじゃねぇ。」

 

店主が話に入ってきた。

 

「いや、だから...」

 

「わざわざ隠す必要もねぇだろ。」

 

そう遮られてしまった。お前、マニアだったのか...という竜司の呟きが聞こえてくる。酷い誤解だ。

 

とりあえず、店主の見せてくれた物を見る。名前を確認するが、ゲームの知識から考えると全体的に竜司の家にある銃と性能にそこまで変わりはないようだ。

竜司にそう伝えると、とりあえず買わなくていいと判断したようで、俺の銃を選ぶことになった。

正直な所、性能に大差がないならどれでもいい。そう思ったが、並べられた銃の中に1つゲームで見た事のない物があった。それをまじまじと見つめていると、

 

「そいつはマシンピストルだな。それにするのか?」

 

と、店主が聞いてくる。...まぁ、ここに並べられているなら大して性能は変わらないのだろう。それに決めて、店主に金を払い、店を出る。

...とりあえず、武器を揃えることが出来て良かった。

 

「それにしても、海人にそんな趣味があるなんてな。意外だったぜ。」

 

「だから誤解だって。たまたま名前知ってただけだよ。」

 

帰り道を歩きながら、竜司の言葉を食い気味に訂正する。ホントか?と竜司が聞いてくるものの、それ以上詮索する気はないようで、

 

「ま、とりあえず今日はこれで解散にしようぜ。またな!」

 

そう言って、それぞれ家に帰ることにした。

家に戻ったあとは親に学校での事を聞かれると思ったが、あまり深く聞く気もないようだ。何らかの事情があったことを察してくれているのだろう。ありがたい。

 

自室のベッドへと向かい、寄りかかりながら今後のことを考える。今日は月曜日だ。原作で事件らしい事件が起きるのは、確か金曜日。その日に、高巻杏の友達である鈴井という女子生徒が屋上から飛び下りる。その理由はやはりと言うべきか、鴨志田だ。鴨志田に関係を迫られた鈴井はそれを拒否しようとするが、バレー部のスタメンから外すことを盾に脅される。それに耐えきれなくなった鈴井が屋上から飛び降りてしまう...そういう話だったはずだ。

 

...この事件のあとに、鴨志田は怪盗団によって改心させられ、丸く収まるものの...それでいい、とは思えない。俺はこの後起きることを知っている。そして、それを止められるだけの力も今日手に入れた。それなのに見なかった振りをするのは...どうしても出来そうにない。

 

鈴井は、原作の中では前歴持ちの主人公にも分け隔てなく接することの出来る善人だ。そんなやつを、知らん振りして見殺しにするなんて...俺が鴨志田と同じ、悪人のように思えて仕方がない。

 

以前の俺なら、それでも言い訳が出来た。俺には何も出来ない、主人公達がやってくれると。だが、俺自身が助けられるだけの力を手にしてしまった。なら、もはや言い訳など出来るはずもないだろう。俺が見殺しにした。その事実だけが俺の心に残る。

 

それだけは嫌だ。考えるだけで手が震えてくる。...落ち着け。見捨てるわけじゃない。だからこうやって考えているんだ。

深呼吸して、考える。金曜日まで、あと3日間ある。金曜日のその日に鈴井の自殺未遂を止めただけでは根本的には解決しない。原作にはその後のことが存在していない。理想は、その前に鴨志田を改心させることだが...ハッキリ言って時間がまるで足りない。パレスの下見に最低でも1日、侵入して鴨志田のオタカラを盗むのに1日かかる。そもそも主人公達は改心の事などまるで知らないし、金曜日までに終わらせるのは現実的とは言えないだろう。

 

となれば、鈴井に自殺を踏みとどまってもらうしかないが...俺に説得できる気がしない。そもそも赤の他人に説得されて踏みとどまるようならそこまで思い詰めたりはしないだろう。

であればやはり仲の良い友人に説得してもらうしかないが...俺は高巻と喋ったことは無い。竜司は中学の同級生だったはずだから、そこから話をすることが出来れば...いや、だがそれで鈴井と話しても確実では...

計画がまとまらない。どう考えても鈴井を確実に助けられる方法が思いつかない。スマホの時計を見るともう12時を過ぎていた。どうする、どうすればいい。

 

...焦っても仕方がない。まずは明日、高巻と話をする。出来ればその後鈴井と話して...そこから、なんとかするしかないか。

明日のためにも、今日はこれで寝よう。焦る気持ちを何とか抑え、自室の照明を消して目を閉じた。

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