現代日本に転生したと思ったら、ペルソナ5だった。   作:ずばば

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迫るタイムリミット

次の日の朝。目を覚ました俺はベッドに寝転がりながら今日やることを考える。...昨日は焦りすぎて、色々と見落としてしまっていた。

 

鈴井志帆...鈴井の自殺の直接的な原因は、作中では明言されていない。しかし、パレス内の状況や、現実での鈴井の変化を見る限り...鴨志田と何かがあった、ということは間違いない。口にするのもはばかられるような何かが。

少なくともそれは自殺の前日、もしくは更に前日...つまり、明日か明後日には起きてしまっている。

ようは、自殺する日までが本当のタイムリミットではない。どんなに遅くとも明後日までには鈴井を説得するか、鴨志田を止める必要がある。

だが鴨志田を止めるのは不可能に近い。と、なると鈴井を止めるしかないが...

必死で練習してレギュラーにまでなった人間に、赤の他人から練習に行くな、なんて言われても応じるはずもない。これから起きることを話しても、それは鈴井にとって俺の妄想でしかないだろう。どうにかして、鈴井にこれから起きてしまうことを伝えられれば...と思うのだが。

 

そう頭を悩ませている中でも、時間は過ぎて行き、登校する時間になってしまった。

途中で竜司と合流したものの、そのことが頭から離れず会話が続かない。

 

「おいどうしたんだよ。今日はあの城みてーなとこにまた行く予定なんだぜ?そんなんで大丈夫かよ?」

 

竜司が心配するように聞いてくる。そうだ、今日もパレスに行く予定だった。しかし時間に余裕が無い今、俺はパレスに行く余裕はない。竜司には申し訳ないが、ここは断って...。

...まてよ?パレス...そうか、その手があったか。いやしかし、それだと鈴井に危険が...だが、これ以外に方法は...

 

「...? 何考え込んでんだ?」

 

竜司が不思議そうに尋ねてくる。そこで、竜司に今考えている内容について話した。

 

 

 

「はぁぁぁぁ!? 鈴井をあの城に連れて行く!?」

 

竜司はかなり驚いたようで、思わず大声で叫んでいた。

 

「ちょっと待てよ、鈴井って高巻のダチのやつだろ?どうしてそんな話になんだよ。」

 

聞かずには居られない、という様子でこちらに詰め寄る。

 

「...バレー部が鴨志田から体罰を受けている、って噂は知ってるよな?」

 

「あ...? あぁ、昨日聞いたから知ってるけどよ。ってまさか、鈴井も体罰を受けてんのか!?」

 

俺の問いかけに竜司鬼気迫る様子でが答える。

 

「今体罰を受けてるのかどうかは分からない。だが問題は体罰よりも...言いたくないが、更に酷いことを鴨志田にされるかもしれない。」

 

話の後半を濁すように俺は言った。

 

「更に酷いこと...って、なんだよ?」

 

訝しげに竜司が俺に質問した。

 

「...。」

 

正直、口に出すのも嫌だ。思わず沈黙した俺を見て竜司は察したようで、

 

「...まさか。鴨志田のヤロウ...!」

 

竜司が歯を食いしばり、激しい怒りを顔に出す。

 

「さっきはかもしれない、といったが。俺はほぼ間違いなく実行されると確信している。それも近日中にだ。だからどうにかして止める必要がある。」

 

俺は話を続けた。本来鴨志田のすることを確信している事、その時期を理解していることは不自然だ。しかし、そんなことを気にしていられる余裕が今は無い。

 

「...だったらよ。バレー部の体罰の件も含めて、警察にでもなんでも突き出せばいいんじゃねぇのか?」

 

竜司が怒りを抑えながら、俺に言った。

 

「...鴨志田の学校側からの信頼は相当なものだ。間違いなく揉み消されるだろう。そもそもバレー部のやつがまともに証言してくれるとは思えない。」

 

竜司に向けて言った。原作でも実際に体罰を受けたバレー部は鴨志田を恐れて証言をしようとはしなかった。正攻法で解決するのは不可能だ。

俺は続けて、

 

「だから、鴨志田がどんな人間なのか、それを鈴井に認知してもらってバレー部に行くのを一時的に辞めてもらうのが1番だと思ったんだ。」

 

そう言った。

 

「要はあの城の鴨志田や捕まってるバレー部のヤツらを見せて、鴨志田が汚ねー人間だってことを分からせるってことか。」

 

竜司は少し考えてからそう言った。

俺はその言葉に頷く。そこまで話した所で、学校まで着いてしまった。

 

「...正直、言いてーことは山ほどあるけどよ。 お前がなんかを言い出して、自分からやろうとするなんて見たことねーし。」

 

こちらを見て、竜司が言う。

 

「けど、お前はそれしかねーと思ったんだろ?ならそれでやるっきゃねーだろ。」

 

俺の背中を強めに叩いて、続ける。

 

「そんな心配そうな顔すんなって!俺も協力するからよ! そうと決まれば、昼休みに屋上な。あいつも呼んどけよ!」

 

そう言って竜司は校舎の中に入って行った。心の中で竜司に感謝しつつ、俺も教室へ向かう。雨宮は席に既に着いていて、スマホの画面を見ていた。

軽く挨拶をして、昼休みに屋上に来て欲しい旨を伝えた。

雨宮はその場で了承し、それを聞いて俺も自分の席に戻る。

その後は特に何事も無く、昼休みまでの時間が過ぎて行った。

そして昼休み、約束通り主人公と屋上へ向かう。

 

「おう、来たみたいだな。」

 

竜司がこちらを見て言った。既に屋上に着いていたようだ。

 

「海人はもうこいつに話はしたのか?」

 

「いや、屋上に行ってから話そうと思ってな。」

 

竜司の疑問に言葉を返す。雨宮の方へと向き直り、

 

「雨宮、実はだな...」

 

そう言って、今朝の話をし始めた。

 

 

 

「危険すぎる。」

 

一連の話を聞いて、雨宮が最初に言った感想がそれだった。

 

「今朝のこと考えてたけどよ、俺もそう思うぜ。お前らみたいに変な力が使えるわけでもねーし、城のヤツらは俺らのことを殺そうとしてた。そんなとこに連れてっていいのかよ?」

 

竜司も賛同するように言う。竜司が続ける。

 

「それに。鈴井はどうやって誘うんだよ。女バレは今日も練習だろ?練習サボって不良の俺らに着いて来てくださいって、無理ありすぎんだろ。」

 

そう言ってこちらを見る。

 

「...昨日の敵を見るに、雨宮や猫の力でもそれなりに戦えるように見えた。俺1人でも鈴井を守れるくらいの力はあると思う。...鈴井を誘う方法は...正直、考えてなかった。」

 

「って、考えてねーのかよ!」

 

俺の発言に思わず竜司が突っ込む。

 

「そもそも、城にはどうやって行くんだ?」

 

雨宮が聞く。

 

「それは考えてある。昨日、雨宮のスマホから機械的な声がしてただろ? ナビみたいな。スマホにそれっぽいの無いか?」

 

そう聞かれた雨宮がスマホを操作し始める。しばらくして、こちらに画面を見せてくる。

 

「多分これだ。」

 

そう言って見せられた画面には、昨日の操作履歴が残っていて、

 

そう言って見せてきた画面には、何かの操作履歴や、何らかのナビらしい情報が羅列されていた。

 

「おぉ...なんだこれ。これ使えばまたあの城に行けんのか?」

 

「多分。」

 

竜司の問いに、雨宮が短く答えた。

 

「...ってなると、やっぱ問題は鈴井をどう誘うかだよなぁ。俺らが誘っても、都合良く付き合ってくれるとは思えねーし。」

 

竜司がうんうんと唸り出す。やはりそこが問題だ。そもそも鈴井を誘えないことには始まらない。とはいえ、上手く誘える理由も思いつかない。

 

「案外、普通に頼めば来てくれるかもしれない。」

 

しばらく竜司と悩んでいると、雨宮がポツリとそんなことを言った。

 

竜司が思わず言う。

 

「...いや、お前なぁ。普通のやつならともかく、俺らに誘われて素直について来てくれる女子なんている訳ねーだろ。」

 

 

 

「うん、いいよ。」

 

場面は移り変わり、校舎内の廊下。結局いい案が思いつかず、放課後になってしまった俺達は、とりあえず竜司が高巻に話を通し、鈴井に用があるということで鈴井のもとへ案内してもらった。そこで、鈴井本人に直接用があるので来て欲しい、という旨を伝えると、先程の返事が返ってきた。

 

...俺たちの苦労は何だったのか。そういえば、鈴井は原作でも前歴持ちの主人公に分け隔てなく接することが出来るくらいのお人好しだったな。などと考えていると、

 

「ちょ、ちょっと!志帆何言ってんの!」

 

二つ返事で了承した鈴井に、一緒に話を聞いていた高巻が思わず叫んだ。

 

「でも、坂本君も司馬君も凄い真剣だし...大事な用事だと思って。」

 

いたって普通な様子で鈴井が高巻に返す。

 

「だからって...っていうか竜司、用事ってなんなの? 変な用事じゃないなら、今ここで言いなよ。」

 

高巻が竜司に向かって言う。

 

「...言ってもわかんねーよ。」

 

ボソッと、竜司が小声で呟いた。が、その呟きは高巻には聞こえていたようで、

 

「はぁ!?言っても分かんない用事って何!? あんた、志帆に変なことするつもりじゃないでしょうね?」

 

「ばっ、んなわけねーだろ! お前に用事があるわけじゃねーんだからどっか行ってろよ!」

 

などと、高巻と竜司の間で言い合いが始まってしまった。

 

「なんかごめんね。杏、私のこと心配してくれてるみたいで。」

 

鈴井が申し訳無さそうに言う。鈴井に非がある訳では無いし、友達を思う高巻の気持ちも決して間違っていない。

 

「いや、こっちこそすまん。事情があって曖昧な説明しか出来なくて。高巻が怒るのももっともだ。」

 

俺もそう言って鈴井に謝る。とはいえ、どうしたものか。パレスのことを言っても奇人変人扱いされるだけだろう。どうにかして、高巻を説得したいが...

 

「鴨志田の噂のことだ。」

 

それまで蚊帳の外だった雨宮が、口を開いた。

 

「え?鴨志田の...?」

 

それまで言い合いをしていた杏がピタリと止まり、雨宮の方に顔を向ける。

それを見て、俺が話を始める。

 

「俺たちの用って言うのは、鴨志田の悪い噂の証拠を見せることなんだよ。ただ、その証拠っていうのが写真とかそういうのじゃなくて、ちょっと特殊でな。実際にそこに行かないと見せられないんだよ。 鴨志田はバレー部の顧問だろ?鈴井に関係があると思って、見せようと思ってな。」

 

パレスの内容をぼかしながら、高巻にそう言った。

 

「鴨志田先生の悪い噂...」

 

鈴井も心当たりがあるようで、考え込んでいる。高巻も心当たりが...というより、悪い噂に巻き込まれている立場のため、ほぼ何の話か理解しているのだろう。

鈴井と高巻はしばらく考え込んでいたが、

 

「...分かった。じゃあ私が行く。それで納得がいったら、志帆にもそのことを伝える。それじゃ駄目?」

 

覚悟を決めたように、高巻が俺に向かってそう言う。...原作だと高巻がパレスに入るのはもっと後だが...いや、原作の事なんて今更か。鈴井に危険が及ばず、ペルソナに目覚める素養のある高巻がパレスに行くならその方がいい。

 

「分かった、それでいい。」

 

俺も考えをまとめ、高巻にそう言った。

 

「志帆は部活行ってて。終わったら伝えるから。」

 

「うん。」

 

そう言って高巻は鈴井と別れる。俺たちは高巻を連れて、そのまま学校を後にした。

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