リアルで盲目な私でもできるゲームを始めたらデスゲームでした。   作:橘 雪華

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「そういえば《ラピッドバイト》ってどんな感じのモーションだったかな(原作やらゲーム引っ張り出し」
原作:短剣スキルの中級突進技
HF:突進しながら交差するような2HIT技
LS:突進して斬り上げる1HIT技
HR:素早く突進して一突きな1HIT技
AL:跳躍して標的の真上から急降下刺しの1HIT
メモデフ:突進、斬り上げの2HIT技
AB:横向きに切り抜け一閃

「?????」

とりあえず突進系(一つ空から急襲してるけど)というのはなんとなくわかりました……が、
SAOのソードスキルって媒体でモーションめっちゃぶれますよね……というお話でした。


4.姉妹

キリトさんが戦意喪失した人達と私が麻痺させた人達を回廊で牢屋(ジェイル)に送り、キリトさんはシリカを三十五層まで送りに、私は最前線のフロアで待ってる依頼主の人へ報告するために一度別れた。

《シルバーフラグス》のリーダーさんはあの日と同じ場所で待っていて、私がロザリアさん達《タイタンズハンド》を牢屋送りにした事を伝えると、お礼を告げながら泣き崩れてしまった。

 

……もしもお姉ちゃんが、他のプレイヤーにやられてたりしたら、その時の私はどうなっちゃうんだろう…なんて、縁起でもないことが頭を過る。

いいや、それはないか。だって──

 

リーダーの人がキリトさんにも直接お礼が言いたいと言い、キリトさんは別の用事が終わったら来ることを伝えてから彼に別れを告げて、一度人気のない裏路地に駆けこむ。

 

「……ふぅ、ふぅ、はぁ…」

 

そこで私は壁にもたれかかるようにしながら、荒く息を吐いた。

自分の手を見てみれば、ふるふると震えているのがわかる。

 

キリトさんやシリカ、人前ではずっと堪えていたけれど、流石に限界だったみたい。

 

「私、人を、刺した、んだよね……」

 

原因は、そう。《タイタンズハンド》のメンバーを刺した事。

殺した訳じゃないし、相手はオレンジマーカーのプレイヤー……それでも、このゲームに巻き込まれて、この世界で生きている人間を……私は刺したんだ。

 

 

 

『……あん? 何だお前?』

『おいおい、子供が一人でこんなところで何してんだ?』

『俺達はこれからお仕事なの。邪魔だからさっさと帰──』

『……ッ!』

 

背丈から私を子供と判断した男達五人が、標的ではないからと油断していたのを良い事に。

私は背に隠すように持っていた、麻痺毒ポーションが塗布された短剣で男の一人を突き刺した。

 

『ぁ…な…ッ!? 身体が、動か…ッ!』

『テメェ! 何を──』

『ッ!!』

 

突然の事に反応しきれない男達。

これ以上大声を上げられる前に、反撃される前に、逃げられる前に…!

 

『ハァッ、ハァッ、ハァ…ッ!』

『ク、ソ……』

『こんな……ガキ、にぃ…ッ』

 

無我夢中で全員を刺して……麻痺状態がしっかり効くように、何人かには数回刺して。

五人全員が地面に倒れ伏し、動けなくなったのを私は息を荒げながら見下ろしていた。

 

『……もう暫くしたら、あなた達は牢屋行きです。自分達の罪を、牢屋で償ってください』

 

倒れた男達にそれだけ告げると、少しでも気持ちを落ち着かせるために深呼吸を繰り返す。

大丈夫。殺した訳じゃない……この人達は人殺しで、あの子も標的にしていた……だから…。

 

そう、自分に言い聞かせるように。

 

それから少しして、茂みの向こうから誰かの話し声が聞こえてきて。

その声がキリトさん達や標的の人達だとわかると出ていくタイミングを見計らい、女性の怒鳴り声が聞こえてきたところでそれに合わせてキリトさん達と合流したのが、私が今回やったこと。

 

 

 

「……」

 

あの時のように深呼吸を繰り返して、漸く震えの治まってきた両手を見つめる。

 

──完全に本物とは言えなくても、あの時の人間を刺した感触は、当分忘れられそうになかった。

 

「……行かなきゃ」

 

気持ちが落ち着いてきたところで、私は転移門で別のフロアに移動する。

行き先は──三十五層、主街区《ミーシェ》。

別に忘れ物があるとか、そういうんじゃなく、もっと大事な目的でここに戻ってきていた。

 

《風見鶏亭》の前に立ち、さっきとは違う理由で深呼吸をしようとした所で、丁度宿から出て来るキリトさんに鉢合わせた。

 

「ん? エコー? 何か忘れ物か?」

「き、キリトさん。いえっ、そのっ、シリカ……さんに、少し用事が」

「そうなのか? シリカならまだ昨日の部屋にいるはずだぞ」

 

気持ちを落ち着かせようとしたところで出てこられるものだから変に声が上擦ってしまった。うぅ、恥ずかしい…。

と、とりあえずシリカの居場所が聞けたからいっか…。

 

「あ、ありがとうございますっ。キリトさんはこれから予定は? 無いんだったら、《シルバーフラグス》のリーダーさんが直接お礼を言いたいらしいので、行ってあげてください」

「そうなのか。それなら待たせるのも悪いし、行ってくるよ」

「はいっ、今日はお疲れ様でしたっ」

「エコーもお疲れ様」

 

リーダーさんが待ってることをキリトさんに伝えて彼が去っていくのを見送ると、改めて息を吐いてから中へ入る。

 

レストラン部分を抜けて、宿屋部分の二階に上がり、一つの部屋の前で立ち止まる。

 

「……」

 

そのまま部屋の扉をノックしようとするものの、緊張して手が震える。

うぅ、落ち着け、落ち着け私。きっと、っていうか私の中ではほぼ確定してるでしょ…! 何を躊躇ってるの…!

 

「すぅ、はぁ……」

 

深呼吸をして自分を落ち着かせて……意を決して、扉をノックした。

コン、コン。と、ノックの音が響く。

部屋の中から「はーい」と声が聞こえて、少しするとガチャリと扉が開く。

 

「あれ、エコーちゃん?」

「え、と……さっきぶり、です」

 

どうして私がここに、と言いたげなシリカの視線を受けながら、ぎこちなく挨拶する。

 

「えっと、ちょっとお話があって……お部屋に入れてもらえると」

「あ、はい。どうぞ!」

 

同性で、一応キリトさんと一緒に助けたのもあってか特に警戒した様子もなくて、私がそう頼むと快く部屋に招き入れてもらえた。

そして部屋に入ると…。

 

「きゅるるぅ!」

「わふっ!?」

 

水色の何かが飛び込んで来た。

な、なに、もふっとしてる…?!

 

「あ、もうピナってば! ダメでしょ!」

「きゅる~…」

「もう……ごめんなさい。ピナが初対面の人にこんなこと──」

 

驚きはしたものの、よく見てみれば可愛い…この子がピナなんだね。

そして彼女が《竜使い》たる所以……ってことかな。シリカの口ぶりからして誰にでも人懐っこい訳じゃないみたいだけど。

なんとなく頭を撫でてみると「きゅるぅ~♪」と心地よさそうな声で鳴いた。可愛い…。

 

って違う。ピナを可愛がるのは後にして……あれ、なんか凄く見られてる?

ピナに「ごめんね」と告げて離れて貰うと、シリカが私を見たまま固まっていた。

えっ、なになに、私何かやった…?

 

「……嘘」

 

シリカは何か、信じられないものでも見たように呟く。

……はっ! も、もしかして……そう思って自分の頭に手をやれば、被っていたはずのフードが脱げていた。

ど、どうして……心の整理がつかないから自分のタイミングで外そうとしてたのに……まさか今のピナが!?

 

「あ、あうぅ……」

 

計画してた流れの通りにならずにシリカに晒す事になった素顔。

ハプニングによってもたらさらたそれは、部屋の扉をノックするのすらあんなに躊躇していた私の頭を真っ白にするには十分で。今すぐ逃げ出したい気持ちに襲われる。

 

最初から聞き出しに行ける勇気があったなら、昨夜にでも駆け込んでたよ…! それが人違いだったら……なんて不安で出来なかったから結局今まで顔隠したままだったのに…!

 

いっそ本当に逃げ出してしまおうか──そう思いかけた時、シリカが口を開いた?

 

「──えーちゃん、なの?」

 

そして飛び出した言葉は私にとって懐かしく、ずっと探して求めていた、私を呼ぶ声。

その声で、その呼び方で、私を呼ぶ人を、私は一人しか知らない。

 

「お姉、ちゃん」

「…っ!!」

 

私を呼ぶ声にそう返せば、あっちも確信を得たようで。

ぎゅぅっ、と私の身体を抱きしめてきた。

 

「えーちゃん…! よかった…! ごめんね…ごめんね…!!」

「ど、どうして、お姉ちゃんが謝るの……」

「だって! あたしがえーちゃんを誘わなければ、こんな事にえーちゃんを巻き込むことなんてなかった…! だから、全部あたしが…!」

「お姉ちゃん……そんな事言わないで。もしもお姉ちゃんに誘ってもらわずに、お姉ちゃんだけ閉じ込められてたら……私、きっと耐えられなかった」

 

こんなデスゲームの世界でも、お姉ちゃんがいるって信じてたから、ずっとずっと頑張ってきたんだよ。

だから、だからね、お姉ちゃん──

 

「あいたかったよぉ……おねえちゃん…!!」

「あたしも、あたしもだよ……えーちゃん…っ!」

 

溢れる感情のままに、私も泣いて、お姉ちゃんも泣いて…。

 

このデスゲームが始まって1年と数ヶ月。

こうして私達姉妹は、漸く再会できたのでした。

 

 

 


 

 

 

念願のお姉ちゃんとの再会はお互いに無事であった事でお姉ちゃんも私もわんわん泣いてしまって、小竜のピナが困ったように鳴いていた。

 

どうにか落ち着き始めて来た所で、お姉ちゃんが私に質問してきた。

 

「……でも、よくあたしが分かったね? えーちゃん、あたしの顔とか分からなかったでしょ?」

「ああ、うん……そこはある人に手伝って貰ったりで。お姉ちゃんは《鼠のアルゴ》って知ってる?」

「うーん……あっ、そういえばそんな風に名乗る人とお話したかも。情報屋だよね?」

 

お姉ちゃんの言葉に、そうだよ。と頷いて答える。

実を言うとシリカがお姉ちゃんかもしれないっていうのは、昨日のキリトさんと合流する前くらいにアルゴさんから伝えられてた情報だったりする。

 

キリトさんとお姉ちゃんがあのロザリアさんに絡まれていた時より前くらいに、突然私の前に姿を見せたアルゴさん。

 

『キー坊共々お人好しだネ、エっちゃんはサ』

『うびゃああ! あ、アルゴさん!? びっくりした……』

『にゃははは。期待通りの反応でオネーサンは満足だヨ。満足ついでに、ずっと前から依頼されていた情報を伝えようカ。……エっちゃんのお姉さんに関する情報をネ』

『…!!』

 

そうして彼女から教えてもらった情報が「中層でアイドル的存在のプレイヤー、シリカがもしかしたら」と教えてもらい、しかもそのシリカがさっきキリトさんと一緒に歩いていた。とも教えてもらった。

 

「それで、キリトさんを探していたら……」

「あたし達がロザリアさんと話してる場面だった?」

「そうそう。お姉ちゃん達を助けるためにロザリアさんにぶつかったまでは良かったんだけど、そこからどう注意を引こうかってなっちゃって……それで咄嗟にオバサンって」

「あれはクリーンヒットだったね……でもあたしちょっとスッキリしちゃった」

「あ、あはは……」

 

余りにも効きすぎて硬直が解けた後が少し怖かったから、キリトさんとお姉ちゃんが逃げてから私もすぐ逃げちゃったんだよね。

二度目の時は……お姉ちゃんを怖がらせた分を込めての悪口?

 

「あとは声と……ピナかな」

「きゅ?」

「あー。ふふっ、確かにえーちゃんならピナでもピンと来るよね」

「それはそうだよ。だってピナって、お姉ちゃんが可愛がってる猫の名前だもん」

 

ピナ。それは綾野家で飼ってる猫の名前。もふもふのにゃー。

姿はわからないけど、それでももふもふだし鳴き声も可愛かったなぁ。

 

……そうだ。お姉ちゃんと再会できて終わりじゃない。

ここから2人とも生きて帰るんだ。

 

「……さて、お姉ちゃんの無事も確認できたし、そろそろ帰らないと」

「えっ? あ……そうだよね、攻略組のキリトさんと知り合いなら、えーちゃんも……」

 

ベッドから立ち上がりそう告げると、お姉ちゃんは戸惑い、けれど何か納得したように俯いてしまう。

 

「んー……確かにお姉ちゃんよりは上かもだけど、最前線では戦ってないよ。私、まだ60くらいだし……」

 

なんだか私まで攻略組みたいに思われてたから訂正しておく。

そう、私、今はもう最前線プレイヤーじゃないんだよね。

 

「ろ、60……」

「ずっと前は攻略組だったんだけど……色々あって、今は違うことしてるの」

「違うこと?」

「うん。お姉ちゃんさえよかったら、少し見に来る?」

 

私のホームとも言えるそれがあるのは圏内だし、見に来るだけなら安全だからね。

 

「見に…? えーちゃん、何してるの?」

「えへ、私ね──」

 

にへ、と笑顔を浮かべ、私が今やっている事をお姉ちゃんにも教えてあげた。

 

「──お店をやってるんだ!」




シリカちゃんの妹! ということでデスゲームですがほのぼのしたお話にしていきたいと思います(当社比)

あ、再開編最終話と同時にストック切れと相成りましたので。今後はタグ通りの不定期になります。流石にストック無しで2日に1本はつらい!
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