リアルで盲目な私でもできるゲームを始めたらデスゲームでした。   作:橘 雪華

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3.プレイヤーとの共闘クエスト

「ん、んー…はぁぁ…」

 

安全な《圏内》エリアになんとか無事にたどり着けて、ぐぐーっ、と腕を頭上に伸ばしながら息を吐く。

 

はい、そんな訳でエコーです。

あのデスゲームのチュートリアルから暫く経って、今現在私は《ホルンカ》と呼ばれる村にいます。

 

……うん。今までゲームやったことないような私がなんで最初の街から別の村まで来ちゃってるのかだよね、わかってる。

 

実はあれからフィールドに出てその辺に湧いたモンスターを倒したり、《ソードスキル》を出す練習―をしたりしながら地道に経験値とお金(コル)を稼いでいたんだけど…

何度目かの戦闘の後剣を見てみたら刃の部分が妙にぼろぼろになっていて、まさかと思い武器の耐久度を確認してみたら、壊れる寸前。

段々モンスターも手強くなってきて、これはまずいかも…なんて思って一度戻ろうかと思ったところ、ふと安全な時になんとなく眺めていたスキル一覧に《隠蔽(ハイディング)》というスキルがある事を思い出した私は、すぐさまそれを習得。

空いていたスキルスロットにセットして、こそこそしながら剣が壊れない程度に時々不意打ちとかして進み続けた。

 

……あ、これ、いいかも。でも片手直剣だと振り被ってるときにバレそうになったりでひやひやする…

短剣とかも考えておこうかなぁ。

 

で、今私どこにいるんだろう…と思いながらマップ画面を開いて現在地を確認してみたら、はじまりの街よりも近い場所に村がある事に気がついて、そうしてやってきたのがここ、《圏内エリア》のホルンカ村。

 

そんなところです。ちょっと長くなっちゃった…

 

《ソードスキル》に関しては、キリトさん達に色々教えてもらってた時に二人が何回かやってたのを見てたので、何かしらの始動動作がいるんだな、と思いながら色々試してたらできるようになってた。

身体が勝手に動くから変な感じだったけどね…

 

 

「さて、と…まずは武器をどうにかしないと」

 

装備画面の、もはや耐久度が無になる寸前の剣を見ながらそう呟く。

という訳で、まずは武器を調達するところから始まった。

 

 

 


 

 

 

「よし、こんなところかな…」

 

村に来るまでに倒したモンスターからの戦利品を売って、新しく剣を二本と防具を購入し、武器屋を後にする。

本当は耐久度が減った武器は鍛冶屋に行けば耐久度を回復できるらしいのだけど、この村には鍛冶屋らしいところはなかったため、取り敢えずの剣とその予備を買った、という感じ。

 

ちなみにはじまりの街で買ったものは《ブロンズソード》、今回買ったのは《アイアンソード》と予備の《ブロンズソード》。

 

残ったお金で近くの道具屋から薬と、そう言えばお腹が空いたな、と思いパンを購入。

それから適当に座れそうな場所を探して、アイテムストレージから買ったばかりのパンを取り出す。

 

「ゲームでお腹が空くなんて、変なの」

 

水色の光を帯びて出てきたパンを眺めながら思ったことを口にしつつ、小声で「いただきます」と呟いてからパンを齧る。

 

「……うーん…」

 

この世界で初めて口にした食事は、お世辞にも美味しいとは言えないものだった。

はぁ、病院食の方が美味しかったよ…

…そういえば、料理スキルなんてものもあったっけ。いつか余裕が出来たら覚えてみようかな。

 

「……ねぇ、君」

「…?」

 

味気ないパンを黙々と食べていると、不意に声がかかる。

声に反応して顔を上げると、いつの間にか目の前に男の人が立っていた。

その人の頭上を見る――緑のマーカー…つまり、プレイヤー。

この世界に囚われてしまった人の、一人。

 

「…えっと…なんでしょうか…?」

「あ、あぁ、用というか……君も、元ベータテスター?」

 

オンラインゲームなんだから他に人がいるのは当然だけど、見知らぬ男性に突然声をかけられて不審がらないはずもなく。

警戒しながらそう言うと、男の人は少しおろおろとしつつ、そう聞いてきた。

そんな質問をするからには、この人はベータテスター…なんだろう。

 

「いえ、違いますけど…」

「…元ベータテスターでもないのに、もうこんなところまで…?」

 

質問に答えると、男の人は驚いた様子でそう言いながら、なにやら右手の指を右目辺りに持って行って、すぐにバツが悪そうに手を下ろす。

その行動の意味がよくわからず首を傾げていると、男の人はある提案をしてきた。

 

「ね、ねぇ…この村に良いクエストがあるんだけど……よかったら一緒にどうかな?」

 

 

 


 

 

 

男の人……元ベーターテスターの《コペル》と名乗ったその人の提案は、こういうものだった。

 

……この村のとある民家の中に、《森の秘薬》という名前のクエストがあって、そのクエストの内容というのが、

娘が重病にかかってしまって、市販の薬草じゃ一向に治る気配がないから、西の森に生息する捕食植物の胚珠――《リトルネペントの胚珠》から取れる薬を飲ませたい。けど、その植物がとても危険な上、胚珠を持っているという花付きの個体が滅多に現れないから、それを取ってきてほしい。

……というもの。

 

これをクリアすると《アニールブレード》という名前の片手用直剣が手に入るらしく、それが序盤ではなかなか強いんだとか。

 

もちろん、私も片手直剣を使っているからうれしい情報だし、ついさっき殆どお金を使いきっちゃったから助かるかも…と思ったけど、それでもなんか釈然としない。

 

「…でも、今回この村に来れたのは偶々ですし…私なんかが一緒に行っても足手まといになるんじゃ…」

 

不審がりながら私がそう言うと、コペルさんは頭を掻きながら申し訳なさそうな顔をした。

 

「あ、あはは……実を言うと、僕は君のその()()に肖りたいんだ」

「私の…?」

「うん。実はね――」

 

 

 

あれから少しして、

今私はそのクエスト目標の胚珠を持っている捕食植物がいるという西の森に、コペルさんと二人でやってきている。

 

「…いた、あれ…ですか?」

「そうだね…あれが《リトルネペント》。ほら、あいつの上にあるカーソルの縁が黄色くなってるでしょ?」

「……あ、ホントだ」

 

相手に察知されないようにしながら観察すると、リトルネペントの頭上に光る紫がかったカーソルの縁が黄色くなっているのが分かる。

 

「あれが今受注してるクエストのターゲットMobの証」

「ふむふむ…なんていうか、気持ち悪い敵ですね…」

 

正直な感想を口にすると、隣でコペルさんが苦笑いを浮かべていた。

だって…ウツボカズラ、って言うんだっけ? の形に口があるだけでも気持ち悪いのに、その下で触手がうねうねうねうねしてて…うぇ。

 

「…は、はやく倒しましょう」

「……そうだね」

 

ぐっと剣を握りしめながら、嫌悪感を堪えつつも足を前へと踏み出す。

 

――その時、ちらっと視界の隅に映ったコペルさんの、無表情だけどどこか哀しげで、何かに葛藤したような表情が見えた気がした。

 

 

 

コペルさんが私を誘った理由……というのは、このクエスト《森の秘薬》の内容が関係していた。

胚珠を持ったリトルペネントを倒して、落とした(ドロップ)胚珠を回収して戻るだけなら、どうってことのない、簡単なクエストだけど、《森の秘薬》はそうもいかないらしくて。

なんでも胚珠を持つリトルネペントはあの大きな口の上に大きな花を咲かせている個体からしか落ちないらしくて、その花つきの出現率がかなり低いんだとか。コペルさん曰く、1パーセント以下。

「そんなの本当に出るの?」って聞いたけど、流石にそこは救済というかそういうのがあるみたいで、普通の個体を狩り続けていると花つきの出現率が上がるから、別に普通の個体を倒す必要が無いというわけではないそう。

 

で、それでも人間は楽をしたいものなのか。

コペルさんは私の《(リアルラック)》にすがって来た…って感じらしい。

 

最初から利用されてるのが丸わかりなのになんで手伝うかっていうと…単純に経験者のアドバイスの下戦った方が効率が良さそうっていうか。それにその普通のを狩るだけでも経験値は溜まる訳だし。

 

 

「やぁっ!」

 

リトルネペントの振るうツタをひょいひょい、と避けつつ、剣の一撃を加えていく。

小ぶりで地味な攻撃が鬱陶しくなったのか、リトルネペントが「キシュゥゥゥ!」という感じの奇声を上げながらツタでの強撃を繰り出してくる。

 

「やっ、と…」

 

でもわたしはそれ(大振り)を待っていた訳で。

容易くその一撃を躱して側面に回り込み、コペルさんに教わった通りの場所――ウツボ部分と太い茎の接合部分に向かって鋭い突きを放つ。

 

よし、いい感じ…

ふっと視線を上に向けると、リトルネペントの体力がぐぐっと減るのが見えた。

反撃を予想して後ろに飛び退くと、怒ったような声を上げてペネントはぷくっとウツボ部分を膨らませた。

 

「エコーちゃん! 腐蝕液来るよ!」

「っ…はい!」

 

別のリトルペネントと戦っているコペルさんがそれを見て、注意を促してくる。

その言葉に一言返事をすると、私はすっと目を細めて相手の動きを捉える。

 

――まだ……まだ来ない…ギリギリまで……

 

じっと見据えたままでいると、ウツボ部分の膨張が止まる。

 

――今!

 

その瞬間、私は地面を蹴って左側に大きく跳ぶ。

すると、私の元居た場所目掛けてぶしゅっ! と薄緑色の液体が発射され、それは地面に落ちるとシュゥゥ…と音を立てた。

回避は成功…ここから…!

 

「ッ…はぁっ!」

 

跳んだ先にあった木に一度両足で着地、剣を頭上に構えながらすぐに思いきり木を蹴ってその勢いでネペントの、さっき突いた弱点目掛けて飛ぶ。

飛ぶ前からの剣の構えでソードスキルが起動して、剣の刃が薄緑色に輝く。

 

「せやあああッ!!」

 

そしてその勢いに乗ったまま剣を振り下ろす――ソードスキル《スラント》でネペントを一閃して、着地。

 

「…っはぁ、はぁ…」

 

緊張が途切れ、剣を地面に立てながら息を荒げると、背後からバキン、と何かが割れる音。

それと同時に、私の目の前にリザルト画面が表示された。

 

「え、エコーちゃん…君本当に初心者?」

 

息を吐きながら敵がいないか辺りを見回していると、どうやらあっちも倒したみたいでコペルさんが驚いた表情でこっちに歩いてきていた。

 

「は、はい…ゲームは今日が初めて…です」

「初めてって…ま、まさかゲーム自体が!?」

 

コペルさんの言葉にこくこくと頷いて答える。

いくらなんでもちょっと無茶したかなぁ、なんて思いながら息を整えた。

横ではコペルさんが「だから用語とかも…」とかなんとかぶつぶつ呟いてるけど…

 

「げ、ゲームなのに、疲れるんですね…」

「え? あ、ま、まぁね。さっきのエコーちゃんみたいな無茶な事したら、そりゃスタミナもすぐ切れちゃうよ」

「そ、そうなんですか? 私、無我夢中で…」

「回避先の木で勢いをつけるって発想もだけど…空中でソードスキルなんて、実際は相当慣れないと簡単にはできないんだよ。姿勢が崩れるとキャンセルされちゃうし…」

「は、はぁ…」

 

なんかよくわからないけど、とりあえず私は何か驚かれるような事をしてたらしい。

…うーん??

 

「ま、まぁいいや…とにかく、あんまり激しい動きとかすると、複数相手にする時が大変だから…」

「わかりました…ん、よし。もう大丈夫です」

 

今だぶつぶつ何かを呟いてるコペルさんが少し気になりつつも、剣を持ってそう言った。

 

まだまだ、狩りは始まったばかりだ――

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