似合うと思うんです。

アークナイツも書いていきたいですね。

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ただ彼女の望み

 雑なノックだ。執務室には呼び鈴もついているのに、ドアを殴るみたいに音を立てる。

 最悪の事態、そんなことも少し考えながらドアの向こうにその正体を問うた。

「やあ、ドクター。ボクだよ、ラップランドだ」

 安心した。そして、不思議に思った。みんなと一緒に戦闘に出たはずなのにラップランドひとりだけなのか。いくら彼女が奔放と言っても、同僚を置いてひとり先走って帰ってくるなんてほとんどありえない。

 ドアのロックを解除して、そのまま開けてやった。

「悪いね、ひとりだけ先に帰ってきてしまって」

 鍵はかけた方がいいか?

 ただならぬ雰囲気を感じたからというわけではないけれど、ふたりきりのプライベートな空間にしてみても面白いと思った。

「そうだね、それがいいね」

 彼女は数瞬、間を置いてからそう答えて、それからソファに身を預けた。なんだかいつもより小さく見える。

 彼女の感情は外から見てわかりやすい。尻尾も耳も、ピンと立って主張をしている。ポジティブなのかネガティブなのかわからないが、昂っているのだろう。クールダウンするためにここに? いや、それだけのために来るはずはやはりない。

 どうしてひとりで?

 ラップランドはすぐには答えなかった。彼女は深く呼吸をしながら中空を見ている。

「どうだろうね……ドクターに会いたかったから、とかかな」

 これはまた不思議な動機だ。会いにくるためだけで? ラップランドの雰囲気やら口調やらで言われるとキザにも思えるセリフを消化できない。

 何かあったの?

 まるで尋問だ。短い質問とそれに対する返答。

「ああ、あったよ」

 彼女はそれだけ答えて、立ち上がった。

「悪いけど、クラクラしてしょうがないんだよ。ボクはこれをドクターに見せたくて」

 目がキマっている。元から、と言われればそうかもしれないけれど、今の彼女は明らかに普通ではない。

 固く閉じられた彼女の上着、持ち主が鷲づかみにして、開かれる。

 あまりにもモノクロームすぎるキャンバスに、絢爛に咲いた真っ赤な花。

「ごめんよ。驚かせちゃったかな」

 彼女は、か細く笑った。それから、奥の奥から絞り出すみたいに高く笑った。

「それじゃあ、ボクはケルシーにでもみてもらうよ」

 これだけ? 視界がモノクロームに戻って、彼女は向こうを向いた。

「鍵を」

 鍵? ああ、開けてやらないと。

「じゃあね、嬉しかったよ。ああそうだ、テキサスには言わないでおいてよ」

 興奮が抜けない口でそう言い残して彼女は去った。

 赤い残像が目の奥にこびりついて何もかもを邪魔する。目を閉じたくない。この赤は、ラップランドの美しい、陰鬱な叫びだ!

 もうすぐみんなが帰ってくるだろう。俺はどんな顔をすればいい? なあ、ラップランド、キミがくれた赤い花はあまりにも不吉すぎる。


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