7つの銀弾   作:りんごとみかんと餃子と寿司

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セプテム難産だったよ……





セプテムの不穏
セプテムー1


今世も、前世も、順風満帆なものだとはとてもいえない。

 

幸せであると胸を張って言えるような人生を歩んだことなど、一度たりともありはしない。

 

けれど、それは決して自分以外の誰かのせいなんかではなくて、自分のせいだった。

 

なんの問題もない健康な体で生まれ、衣食住に不自由なく、教育をきちんと受けられる環境で育った。優しく愛にあふれた家族と共に暮らし、信頼できる友人だっていた。

 

けれど、オレは。そうした恵まれた境遇というのものを理解できない人間だった。大切にできないバカだった。

 

健康な体も衣食住も教育も、当たり前のものだと勘違いし。家族の愛ゆえの心配を束縛だと邪険にし。友人というものを自分のステータスか何かのように扱っている。

 

そうしていつも、オレはかけがえのないものを取りこぼして、すべてが泡沫と消えた時にやっと気づくのだ。

 

 

 

──ああ、自分はきっと。生まれてくるべきではなかったのだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「此度は大儀であった! その疲れを客間にてしっかりと癒すがいい」

 

 

 

ローマの宮殿、豪華絢爛な宴の席にて。薔薇のような少女から発せられたねぎらいの言葉に、俺はほっと息をついた。少女──皇帝ネロは外見こそ愛らしいが、皇帝としてのカリスマや威厳はしっかりと兼ね備えている。こうして目の前に立つと、いまだに少し緊張してしまうくらいには。

 

ガリア奪還は無事に完了し、敵方とこちらの戦力は拮抗とは言わないまでも、盛り返したといえるぐらいには回復していた。ネロの判断で一度ローマに帰還した俺たちは、いま戦勝の宴を終えたところだ。

 

特異点攻略は順調に進んでいる──と、思われる。もちろん、フランスに負けず劣らずの混迷した状況ではあるが、一歩一歩前に進んでいる実感はあった。

 

俺もハズムも、オルレアン後にそれぞれで励んだ訓練の成果があったのか、フランスの頃よりは良い動きができていると思う。俺は以前よりサポート魔術の出力が上がったし、ハズムは自分の回路を疲弊させない加減を覚えたようだった。

 

もちろんサーヴァントたちの働きに比べれば、俺たちマスターの成果は微々たるものだが、それでも自分がすこしずつ()()()()()ではなく()()に数えられるようになっていく感覚は嬉しいものだ。

 

「じゃあ、客間に行って眠ろう。少し疲れたね」

 

「ええ、特にマスターとハズムさんはお疲れでしょうから、早めの就寝を推奨します」

 

あくびをしながらつぶやくと、マシュは俺たちをねぎらうように言った。俺とマシュはネロに挨拶をすると、祝いの席から立ちあがり、回廊を結ぶ大扉へむけ歩き出そうとする──のだが。

 

「──ハズム?」

 

ひとり、立ち上がらないハズムを不思議に思って呼びかけると、彼は目の前のテーブルに身を預け寝息を立てていた。宴でともにご馳走を食べ歌い、喜びを分かち合い、そうしているうちに気が抜けてしまったのだろうか。

 

枕にするために組まれた彼の両腕。その隙間からうかがえる彼の横顔は、普段の険のあるものではなくて、安らかなものになっていた。

 

彼は非常に珍しく──本当にリラックスしているように見える。起こすのも忍びないほどだ。が、さすがにこの部屋で放っておくというわけにはいかない。起こすなり抱えて運ぶなりして、客間のベッドに入ってもらわなくては。

 

連れていきますね、とネロに言い、ハズムを抱えようとする。しかし、ネロは「待つがよい」と俺を止めた。

 

「──置いて行って構わぬ。戦で功を成した者がこうして安息に微睡んでいるのだ。無理に運ばずともよいであろう」

 

「だけど」

 

「余はまだ飲みたい気分であったが故な。満足するまではついでに見守っておく。それで起きれば自分で客間に行くだろう。でなければ、余が世話役に命じて運ばせよう」

 

「……すみません。お願いします」

 

「よい。また明日から働いてもらう故、そなたたちもしっかりと休養を取るように」

 

はい、とその言葉に返事をして、俺とマシュは客間に向かった。

 

 

 

 

 

 

ネロ・クラウディウスは、自分の審美眼というものを信じている。もう少し詳しく言うとすれば、その眼が正しいか正しくないかはあまり問題ではなく、単純に自分の眼に“美しい”と映ったものを贔屓することが皇帝ネロ──自分の生き方ということだ。

 

 

馳走が所狭しと並んだテーブルにだらしなく肘をつき、ゴブレットに注がれた酒を口に含みながら、ここ数日のことに思いを巡らせる。

 

自身が統治したローマが、()()()()()()()()()()()に襲われ始めてからどのくらい過ぎただろうか。奴らが現れてからずっと、自分の愛した都を守るためにがむしゃらに戦ってきたが、勝機が薄いと感じていたのは逃れようのない事実だ。

 

だが、数日前に思いがけない救援があった。カルデアと名乗るその者たちは、こちらの陣営に加勢し、様々な戦場でその力をふるってくれた。彼ら無しでは今頃この都は陥落していたかもしれない。

 

「リツカ、マシュ──尊い精神、美しい心を持つ者たちよな」

 

そう、口に残った酒の匂いとともに吐き出す。自分の審美眼()は彼らをそのように見た。

 

リツカは戦闘才能や芸術などあらゆる才能が平均的ではあるが、一つ人間としての善性(あるいは寛容)を極めたような存在だ。そして、マシュは汚すことをためらうくらいに純白と無垢を宿した存在だ。どちらも自分にとって、愛でて贔屓するに値する存在であった。

 

 

では翻って──目の前で眠っている少年はといえば。

 

「……愚か者、と一概には言えぬか」

 

濡れ羽色の髪が、寝息に合わせてゆらりと揺れている。そんなハズムの様子を見ながら、ゴブレットを傾けた。ブドウの酸味と苦みが舌を撫でる。

 

美しいとは、とても思えない人間だった。見立てでは、彼の精神や人間性は本来なら凡人にすぎない。ローマの街で日々を暮らす市民たちと何も変わらぬ、喜ぶべきことを喜び、悲しむべきことを悲しみ、恐怖に弱く、流されやすく──そうした当たり前の市民。

 

そのはずであるのに、彼の人間性はきっと──英雄と言えるほどにまで成り果てている。たとえ死を迎えても、突き通すべきと思う信念を、この男は捨てないだろう。

 

それは尊いことではある。賞賛すべきことでも。けれどそんな彼を自分の眼は美しいととらえることができなかった。

 

なぜならば。彼のその信念が、彼自身のものではないことを見抜いてしまったからだ。彼が信念を捨てないのは、「捨てたくない」からではなく、「捨てるべきではない」と思っているからだ。一種の強迫観念に近い。

 

「他人に与えられた役割、贖罪、義務感──そうしたものに命を懸けるというのは、いささか美に欠ける」

 

自分の見立てでは、彼の心というのは彼自身のものではない。こうあるべきという思いに突き動かされる傀儡に過ぎない。そうした思いによって動く者の末路は、けっして幸福なものにはならないだろうに。

 

だから、まあ。彼が起きれば、少しばかり助言をしてやろうと。らしくもない考えに至った。

 

 

 

「……う……」

 

うめき声が聞こえる。もぞもぞと動いて心地よい眠りからの覚醒を遅らせる様子は、年相応の少年だ。人間味にあふれたしぐさ。こうしていれば愛い者であるのだが。

 

「あ、れ──」

 

しばらくして起き上がった彼は、寝ぼけ眼で周りをきょろきょろと見渡している。

 

「起きたか」

 

「……ああ、俺、宴の途中で寝て……」

 

「よほど疲れていたのだろう。幼子のように安心した顔で眠るものだから、それを肴に一献傾けてしまったぞ」

 

「えっと、はい。ご迷惑おかけしました」

 

「かまわぬ」

 

ごしごしと目元をこすって眠気を覚まし、彼は立ち上がろうとする。それをやんわりと制した。

 

「まあ、待つがよい。少し余の話に付き合え。すぐ終わる」

 

「……?、ええ、構いませんけど」

 

彼は頷き、座りなおす。控えていた世話係に命令し、彼のゴブレットに冷水を注がせた。眠気を落ち着かせるにはぴったりだろう。

 

「さて、まあ話したいことといってもな、大したことではない。まずは、そなたにもう一度礼を。そのように疲れ果てるまで、良く戦線に尽くしてくれた」

 

「いえ、礼なんて。当然のこと、というか。自分は()()()()()()()やっただけで」

 

そう告げる表情はまるで自然だが──そうしたいから、というのはきっと偽りだ。いや、本人に嘘の気持ちはないだろう。それゆえに質が悪いのだ。

 

「──そうか。ならばこの話はひとまず置こう。そして次は、余の問いに嘘偽りなく答えるがよい」

 

そう言って、彼のもとに近づく。座ったまま不思議そうにしている顔、その顎先を右の指先でつまんで目を強制的に合わせさせた。蒼玉(サファイア)のような輝きの瞳が困惑に揺れている。

 

 

「そなたは、なんのために戦っている?」

 

 

そう告げた時、彼の左手はそっと胸元に伸びた。そのままそこにある何かを握りしめようとする彼の手を、空いていた左手でつかんだ。

 

「すがるな」

 

「──っ」

 

「そなた自身のためにならん。この際、答えることができなくてもよい。だが、今この時、胸元の()()にすがることは許さぬ」

 

その胸元に具体的に何があるのかは知らないが、不安に駆られた時の逃げ先であるのは容易に想像できた。今まで彼は、重要な決断を迫られた時、自分の信念が揺らいだ時、こうして胸元に手を伸ばしてすがっていたに違いないのだ。

 

それではだめだ。そこにあるのが何にせよ、自分以外の何かに突き動かされるのは、良いことではない。美しくない。

 

「──お、れは。人類を救うために、戦っています。だって、それは()()()()()だと思うから。誰に恥じることもない、胸を張れる行いだと思うから」

 

そう告げる彼の様子には、噓偽りなど微塵も感じられなかった。それがまた悲しく、やりきれない気持ちになる。彼は聖人でもないくせに、聖人のような清らかな意志を語る。それがどれだけ歪んだ精神であることか。

 

──結局のところ、ネロ・クラウディウスではこれが限界なのだろう。この男のひび割れた心を修復できるのは自分のような邂逅したばかりの存在ではなく、もっと彼に近しい者なのだ。

 

 

 

あきらめて両手を放した。そして、すまぬな、と声をかける。

 

何にせよ、ローマを救ってくれた者に対して追い詰めるような真似をしたのは事実だ。

 

「これで余の話は終わりだ。苦労をかけたな。もう休むが良い」

 

はい、と返事をすると、彼はふらふらとおぼつかない足取りで扉に向かい、手をかける。そしてその時、彼はふと思い出したように尋ねた。

 

彼の碧眼とこちらの目線がぶつかり合う。眠気で潤んだ碧眼と端正な顔立ちの組み合わせは好みではあるが──などと考えながら、彼の真剣な様子にその思考を中断する。

 

「皇帝陛下、自分からも、一つだけ質問を許していただけますか」

 

「よいぞ、ゆるす」

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()、という魔術師について、なにかご存じのことは無いでしょうか。緑の衣服で、男性にしては長い髪を持った糸目の男です。変装していなければですが」

 

「──いや、余はその男を知らんし、そのような人物が現れたという報告も聞いてはいないな」

 

「そうですよね。すみません、変なことを聞きました」

 

そうして彼は、部屋を辞した。

 

 

 

思い出す。そういえば、彼を美しいと感じられない理由は、もう一つあった。

 

彼はネロ・クラウディウスと目を合わせる時、まるで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

あの、一歩俯瞰したところからこちらを見る彼の青い眼が──尊敬や親愛を向けておきながら、一枚壁を隔てたように見てくるその視線が──自分には、どうにも苦手でならないのだ。

 

 

 

 

 

 

破壊の波動が、戦場を貫いた。マシュの盾の陰に隠れてやり過ごそうとするも、爆発的な衝撃は堅牢な盾を隔ててでさえ足を踏ん張るので精一杯なほどだった。

 

周りを見渡せば、地図を書き直す必要があるほどに地形がえぐれている。そしてその破壊跡に沿って目線を上げていけば、そこには長い白髪と褐色の肌をした女性が立っていた。その手には虹色の剣が握られて、また今にも振り下ろされようとしている。

 

「な、にが起こった!?」

 

ネロ・クラウディウスが息も絶え絶えに立ち上がり、理解不能といった風に告げる。事実この女性の襲来は突然であった。神祖ロムルスを打倒して一行が安心しきったところに、隕石のごとく直上から奇襲をかけてきたのだ。ハズムの「なにかくる!」という一言がなければ、その攻撃で皆死んでいたかもしれない。

 

『ありえないほどの魔力反応よ──あれはサーヴァント、それも神霊クラスの! 気を引き締めなさい。一瞬の油断で命を持っていかれるわ!』

 

悲鳴を上げるように所長が告げる。気を引き締めてと言われても! いきなりの襲撃で戦線はぼろぼろだ! 立て直せるだろうか──

 

「リツカ、令呪を使うぞ、全部だ!」

 

「ハズム──血が!」

 

砂埃の向こう側から聞こえた声に振り返ると、額、胸など、あちこちから流血した状態のハズムの姿が見えた。思わず声を上げてしまうくらいには、そのケガはひどかった。襲撃の際にマシュの近くにいた俺と違って、彼はもろにその攻撃の余波を食らってしまったようだ。

 

このままではハズムが死んでしまうかもしれない──そう考えてしまって体が冷え切ったように動かなくなる。そんな俺に彼は近づくと──動くだけでもつらいだろうに──俺の肩を強く握ってまくしたてた。

 

「オレのケガなんて、()()()()()()()()()! 令呪だ。お前はエミヤに、俺はセイバーに! あいつを宝具で消し飛ばすんだ、そうじゃなきゃ終わりだ!」

 

必死に訴える彼に、覚悟を決める。そうだ、ここで倒さなきゃどのみち終わりだ。戦線の立て直しなんて考えている暇はない。最大火力で押しつぶす!

 

「っ、わかった! アーチャー、エミヤに令呪をもって命ずる──っ!」

 

 

 

令呪3画の重ねられた二人の宝具は、天変地異かのような轟音と衝撃、発光を伴って繰り出された。

 

装備している礼装の防護を貫いて伝わってくるそれらの現象に、五感が悲鳴を上げめまいがする。

 

そうして宝具が終了し、かすんだ視界がようやく正常に戻ると、俺はあのサーヴァントがいた方角を確認した。

 

「──うそ、だろ」

 

そこには大ダメージを受けてはいるものの、まだ消滅する様子を見せずに彼女が立っていた。そんな馬鹿な。あれだけの攻撃を受けて、まだ立てるのか!?

 

「──ぶん、め、いを粉砕する。このアルテラは、身体、動く、限り──」

 

かすれた声でそんなことを言いながら、彼女は動き始める。エミヤとアルトリアが向かっていくが、彼女は攻撃を受け止め、あるいはよけながら、しぶとく生き残っていた。

 

「仕方ない、か」

 

「ハズム?」

 

隣でマシュに支えられながら座っていたハズムが、何かを決断したようにして、立ち上がった。

 

指先を銃のように構えて、サーヴァント──アルテラを狙っている。いつもの射撃魔術かと思ったが、よく見ると魔術回路が励起していない。それなのに、彼の指先は白銀色に輝き、銃弾のようなものが形作られている。

 

白銀の(シルバー・)

 

 

 

 

「やあぁぁ──!!」

 

突如、二人のサーヴァントと対峙していたアルテラの胸を、薔薇色の剣が貫いた。

 

「余の、戦いだ。なにが攻めてこようとだ。余は逃げてはならぬし、また立ち向かわねばならぬ」

 

「あ、あ──」

 

「故に、余はそなたを殺せた。そなたのほうが万倍強かろうと、余はローマ帝国の皇帝であるが故な」

 

アルテラは今度こそ、光の粒子となって消滅していった。

 

 

 

そうして第二特異点の戦いは終わりを告げた。ローマ帝国の未来をかけた戦いは、ほかでもない、ローマ皇帝(ネロ・クラウディウス)自身の手によって最後を迎えることとなった。

 

 

 

 

 

 

「ふむ、セプテムも修復、と。全く、フン族の王を送り込んだにも関わらず、このざまとは」

 

男は遠見の魔術に浮かび上がった光景を見ながら、失望したようにつぶやいた。カルデアという生きぎたない連中は、もう勝負がついたにも関わらず、ちょろちょろと動き回り、無駄なあがきをしている。

 

愚かな人間め、と男はせせら笑った。

 

「しかし──あの男だけは、注意せねばならない」

 

彼の眼に映るのは人類最後のマスターの片割れ。シロガネハズムだ。男──レフ・ライノールは、彼を見ると苦々しげに表情をゆがめた。

 

「あいつの身にはわれらが王ですら把握できない力が宿っている」

 

そう、カルデアで殺すつもりであったオルガマリー・アニムスフィアを殺せなかったのは、彼の力のせいだ。

 

オルガマリーはそもそも、何があろうと殺すつもりだったのだ。それが魔術王のご命令であったがゆえに。

 

だから、爆弾は彼女に最も近い位置で起爆された。それで彼女の肉体は完璧に葬り去れる予定であったし、もし彼女の魂がなにがしかの形で残ることがあれば、それも追いかけて殺す用意は整っていた。

 

さらに、仮にすべてがうまくいかずに、万が一の確率で彼女が生き残ったとしても、それを殺すサブのプランはいくつか用意していたのだ。

 

それを、完璧に邪魔したのがあの男だ。

 

「シロガネハズムゥ……愚かな人間の分際でぇ……」

 

管制室爆破の際、なぜか彼とオルガマリーの二人は生き残った。爆破の中心にいたにもかかわらず、まったく身体の欠損や後遺症はなく、あるとすればやけどくらいのものだったようだ。

 

それを知ったレフ・ライノールがオルガマリーを殺すサブプランを実行しても、なぜか、そのことごとくは失敗に終わった。

 

今では、オルガマリー・アニムスフィアを殺す手段は一つたりとも残っていない。彼女を消し去ることをあきらめざるをえない状況になっていた。

 

これは普通ではない。シロガネハズムは才能こそ一級品であるが、魔術師として凄腕というわけではない。そんな存在が魔術王に連なる魔神である自分の仕掛けた罠、そのことごとくを看破するなどということは考えられない。

 

まるでオルガマリーは()()()()()に護られたかのように、こちらからの一切の攻撃を受け付けていない。シロガネハズムがそんな防護をオルガマリーに授けることは──少なくとも魔術などの既知の手段を用いては──不可能だ。

 

ならば奴は、()()()()()。カルデアの中で唯一、われらが王に牙をむく可能性を有している。

 

故に──奴を完膚なきまでに叩きのめさなければならない。

 

 

 

「幸い、奴の持つ()()()()()は、今回の戦いで垣間見れたな」

 

こちらから召喚した英霊、アルテラとの闘い。その最終盤でシロガネハズムは、魔術回路を励起させない──つまり魔術ではない手段によって、アルテラを打倒しようとしていた。

 

レフ・ライノールとしては不幸なことに、それが発動される前にネロ・クラウディウスがアルテラにとどめを刺したことによって、全容を把握することはできなかったが──あるていど予想ができる情報が集まったのは、まちがいなく利益である。

 

「銃弾の形をしていたな。あれを撃ち込むことによって発動するのか──それも、神霊クラスのサーヴァントを殺せる、と確信をもてるほどの効果のものが。だがなぜすぐに使わない? 発動に時間がかかるのか、それとも回数制限があるのか?」

 

情報が少なすぎて、あらゆる可能性が浮かんでは消える。だが一つ確実なことは──あの力は自動的(オートマチック)なものではなく、使い手の意思によって発動するものであるということだ。

 

つまりは──

 

「いくら武器が強かろうと、それを使うものが愚かであれば、無意味になる。奴を陥れ、心を折ればよい」

 

 

 

レフ・ライノール。またの名を情報局フラウロス。

 

人間を見下した彼は、しかし最大限の警戒を持ってシロガネハズムを観察する。

 

観察し、検証し、彼という人間の弱点を暴き立て──そうして最後に、レフ・ライノールは彼の人間性を殺すだろう。

 

それは今すぐのことではない。ただし、きっとそれほど遠い未来のことでもないのは事実だ。

 

 

 

 






【銀弾】

7.青年期(19歳)、意識使用。オルガマリーを救出できないという問題を解決。

シロガネハズムは7つの銀弾のうち1発目をオルガマリー・アニムスフィアに使用した。彼の実力ではオルガマリーの完全な救出は不可能であったために、銀弾の力を借りてそれを成し遂げた。

銀弾に込められた願いは「オルガマリー・アニムスフィアに降りかかるあらゆる脅威を振り払うこと」

故に、(ハズムはそれを把握していないが)オルガマリーはレフ・ライノールからの再三にわたる暗殺から護られている。

銀の弾丸は、問題に対する特効薬である以前に、()()()()ものである。

故に、銀弾によって救われた()()()()命は魔の性質を持つものによって奪われたり、あるいは汚されたりするようなことはない。





最後まで読んでくれてありがとう!

ちょっと最近忙しくてモチベ低下気味だから、感想いっぱいほしいな(乞食)

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