異世界から問題児と寂しがり屋が来るようですよ    作:三代目盲打ちテイク

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 それは、何もない地の底だった。かつては、神社として人々が参拝していた神域は今やその影もない。元々は神仏習合の時代に第六天魔王を祀る神社として創建されたものであるが、明治の神仏分離の際、多くの第六天神社がその社名から神世七代の第6代に祭神を変更した。

 つまりは、ここは捨てられた神社、その祭神のなれの果ての行き着いた先。そもそも外の理により討ち果たされ、ただ因子のみ存在した第六天という概念が箱庭において創造されるにあたり、現実に沿う形で現れた結果がこれだった。そして、その渇望によって当然のように零落した。

 ふつうならば、さぞ哀れと思うだろうが、されどその神に恨みはない。そもそも認識においては神ですらないのだが、その存在にある感情はただの喜びだけだった。

 何もない暗闇であり、そこにはあるべきものがなにひとつない。命の温かみであったり、あるいは何もない冷たさであったり。そんなものがあるはずだが、ここにはなにもない。己以外なにもない。

 自然ではない不自然であるが、ここではそれが正常だった。人にとっては確かにこれは異形だろう。奇形だろう。

 しかし、ここにいる存在にとっては、これが望みであり、これが当然であるのだ。いかに奇形であろうが、それが最適であるならばその者にとっては当然なのだ。

 己。我。個。究極、極限の自己愛。あるいは極大の偏重。

 ただ唯一無二。ここにいるのは己だけである。己だけがあればいい。その他なんぞ、知らぬ、存ぜぬ。我だけあればいいだろう。それこそが望みであり、それこそが当然であるのだ。

 だが、ああ、なんだこれは。

 一人で心地が良い。何もない、ただ唯一一人の己で満ちていたそこに何かが落ちてきていた。初めて、己以外を認識した瞬間、

 

――いかないで、いかないで、私を、ひとりにしないで。

 

 泣き声を聞いた。感じたのは不快感だけだった。

 ああ、うるさいうるさいうるさい。なんだ、これは気色が悪いぞ。誰かといたい? 私を一人にしないで?

 極限まで一人を嫌う渇望(祈り)が、急速に極限まで一人を好む渇望を成長させる。

 なんだこれは気持ちが悪いぞ。他者を己と同じく扱うなど狂っている。白痴か、我の考える最高に、他人(おまえら)平伏し従うがいい。

 お前らの言う覇道(これ)とはそういうものなのだろう。

 覇道にしろ求道にしろ、どれもが自愛の気を多分に含んでいるのが常だ。己を愛し、自他の関係を確立することで、そこに対し祈り合いなり譲れぬ渇望を生じさせるのが人というものだろう。

 それを泣きながら懇願? 極限の阿呆か。そんなもので他者がついてくるなどあるはずもない。

 いや、そもそも、

 

『俺に触れるもの全て、消えてなくなれ』

 

 人型でしかなかった極限の唯我が外へと流れ出す。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 ペルセウス。それは神話の時代、メデューサと呼ばれた怪物を討伐した功績により箱庭へと招かれたとされるコミュニティだった。

 複数のギフトを繰り、メデューサを討伐した彼の功績は今、ギフトゲームとして体験することができる。

 つまりは、ペルセウスの本拠である白亜の美しき屋敷、その最深部まで見つからずに忍び込み打倒する。

 そのためノーネームの屋敷が霞むほどに荘厳で神聖そのものでペルセウスの本拠地はまさに圧巻だった。

 

「ここが奴らの本拠地か」

 

 だが、今やそれは見る影もない。いや、いいや、違う。見た目という意味合いにおいては、以前と変わらない。

 だが、雰囲気というか。ともかく、この場に満ちた気というものがありえないほど変質している。ありていにたとえるとするならば腐敗しているとでも言おうか。

 

「ですが、見る影もありませんね。なにか起きたみたいです」

「まあ、行くだけだ」

 

 掲げられた契約書類によれば、このギフトゲームに参加できるのは十六夜、飛鳥、耀、椿姫、そしてコミュニティの旗印の代わりのジンだけであった。ルールなどなくただルイオスを打倒せよとだけが書かれている。

 ペルセウスのゲームにしてはありえないことではあったが、屋敷の変質からしてこれは当然なのだろう。

 

「私が戦うことはできませんが、審判権限(ジャッジマスター)として、同行いたします」

「ああ、準備はいいか?」

「ええ、いつでも」

「大丈夫」

「問題、ない」

「大丈夫です、行きましょう」

 

 ノーネームが屋敷へと足を踏み入れた。

 刹那、

 

「おらあああああああ!!!」

 

 十六夜が渾身の力で屋敷の床に拳を叩き付けた。仮にも山ほどの蛇神を殴り飛ばせるほどの威力で殴りつけられた床は、凄まじい衝撃でありえないことながらも反発と衝撃を順に伝え破砕する。

 

『うおおおおおお!?』

 

 誰もいないはずの広間に声が響いた。それはノーネーム勢の声ではなく、ペルセウス側の兵士の声。

 

「はっ、やっぱりな。ハデスの兜っていやあ、透明になれる兜だ。挑戦状叩き付けて来た時点でそれつかって伏撃するくらい予想してんだよ。お嬢様!」

「わかってるわよ。水樹よ、薙ぎ払いなさい!」

 

 持ってきた水樹から勢いよく水が放出され、刹那、打ち上げられた兵士たちを薙ぎ払う。激流に吹き飛ばされ壁に叩き付けられたペルセウスの面々であったが、流石はというべきなのか、立ち上がる。

 

「どうやらそう簡単に行かせてはくれないみたいね」

「そうらしいな」

「じゃあ、ここは私がやるわ。多対一なら私でしょう」

 

 水樹の苗を抱えた飛鳥が前に出て言う。

 

「じゃあ、任せた」

「頑張って」

「無理はしないでくださいね」

「…………」

「御武運を」

 

 十六夜は任せたとさっさと先へ進み、耀は小さな声援を送り、ジンは無理をしないように言って、椿姫は無言で抱きしめて、黒ウサギはその椿姫を引きずって、先へと進んだ。その扉の前に飛鳥は立ち、

 

「さて、来なさい。まとめて吹き飛ばしてあげるわ」

 

 水樹が猛る。

 飛鳥のギフトによってその()を増した水樹の激流が全てを押し流す。押し流されていく骨董品など貴重なものを惜しいと思いながらも飛鳥は気を抜かない。

 なにせ、相手は空を飛べば透明にもなれる。今の飛鳥にはそれらをどうにかする術などない。故に、全てを力任せに薙ぎ払う。

 

「もう一度よ!」

 

 その瞬間、上空から剣が降り注ぐ。

 

「防ぎなさい!」

 

 すかさず水樹が剣を吹き飛ばす。その隙に吹き飛ばされていたはずの兵士たちが水樹の水の網を掻い潜り飛鳥へと接近する。

 

「全員、そこで座ってなさい!」

 

 水樹が間に合わないと見るや、すかさず命令を下す。それは絶対遵守される飛鳥のギフト。相手を支配する忌むべきもの。

 だからこそ封じた己の異能。相手のギフトを操るものにしようとした。だが、今はそれどころではない。

 死ぬことなどあってはならないのだ。己が死んでは椿姫が悲しむ。どういうわけかそれだけはしては駄目だと思うのだ。どのみち、仲間が悲しむことは必至だ。ならば忌むべき力だろうが使う気だった。

 だが、

 

「え――――」

 

 通じない。

 今までこんなことなどなかった。それがどういうわけか通じない。

 

「っ――!」

 

 だが、それでも相手は止まらない。咄嗟に横に跳ぶことで剣戟を躱し、再び水樹で相手を吹き飛ばす。水樹には効いている。

 しかし相手には通用しない。格が違うから。本来であるならば彼女の格でも効いただろう。だが、今の(・・)彼らの格と飛鳥の格は隔絶していた。ゆえに、効かない。今の水樹があってギリギリというレベルだった。

 いや、そもそも、己の資質を生のままに飲み干せぬ者のギフトなど誰にも効かないだろう。

 

「くそ」

 

 だが、それでもやるしかないのだ。

 と、その瞬間、全てが石となった。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

――駆ける。

 廊下を縦横無尽に駆け巡りながら春日部耀が疾走する。その姿はまさに獣の如し。迫る正面の敵を出会いがしらに昏倒させていく。

 鼻も利けば耳も良く、それでいて超音波すら感知する春日部耀にとって、透明になったくらいでは意味を成さない。

 そのうちに中庭へと出る。ある程度の広さではあるものの、一直線に突っ切れば問題はないような場所であるが、ここで耀の足が止まる。

 

「どうした?」

「いる」

 

 十六夜が目を凝らすが相変わらず透明になっては目には見えない。だが、耀の目にははっきりと見えていた。

 

「ほう、気が付いたか」

 

 虚空から声がする。兜をはずして、それは現れる。翼をもつ白馬に乗る黄金の剣を持つ者。すなわちペガサスとクリューサーオール。ペルセウスがメドゥーサの首をはねた際に、その流血が大地にしたたり、ペガサスと共に産まれた双子の兄弟。

 

「その小娘は鼻も利けば耳も良いらしいな。ふむ、ならばお相手願おうか」

「わかった。みんなは先に行って」

「ま、待ってください、さすがにクリューサーオールは!」

「春日部がやれる言ってんだ、今は先に行くぞおチビ」

「で、でも」

「行くぞ」

 

 十六夜が渋るジンを抱えて無理矢理連れて行き、渋る椿姫を黒ウサギが抱えて中庭を越える。クリューサーオールは彼らを追わなかった。すぐに追えるからという自負か、あるいはこの先に待ち受ける者たちで十分だと悟ったのか。

 どちらにせよ舐められていることに変わりはない。ゆえに、まずはこちらを向かせるのが肝要だろう。

 耀は姿勢を下げる。ご丁寧に天馬で空を飛ばすに地に足をつけている。ならばまずはその余裕を取り去ろう。

 幸いにも相手は鎧を着ている。重武装だ。動きはまず間違いなく耀の方が速い。ゆえに、突撃しフェイントをかけて左から攻める。

 それを実行しようとして、

 

「え――――!!」

 

 クリューサーオールが目の前にいることに驚愕する。重装歩兵にもにた重武装のくせになんてスピードと思う前に、本能が身体を後ろへと跳躍させる。

 走る黄金の軌跡。黄金の剣が大気を斬り裂く。一瞬でも遅れていれば上半身と下半身はお別れをしていたところだろう。

 無論、それで安心させるほどクリューサーオールは甘くなどない。跳躍した分を一歩で0にし、返す剣で黄金の剣を振るう。流れるような連撃が襲う。

 まさにそれは完成された剣戟であった。どれほどの年月剣を振るってきたのかは知らないが、その剣の一振り一振りがまさに完全。完成していた。

 だが、それを脅威の反射神経と本能だけで耀はそれを躱しきった。

 

「やるな。躱されるとは、思わなかった」

 

 感心したように言うが、そこには感心の感情など感じられない。あるのはただ喜びだけだ。良い相手を見つけたという殺戮の喜びだけだった。

 ゆえに彼女の超感覚は違和感を出力する。普通であれば、喜びの中でも意識あるものであるならば何かしらの感情がその裏には存在する。

 だが、彼にはそんなものが全然ない。純粋と言えば聞こえは良いかもしれないが、それは自然ではない。

 水に例えればわかるだろうか。自然界に存在する水は大抵が何かしら不純物が混じっている。大気中の塵であったり、川であれば砂の粒子であったり。

 純水とは不純物を取り除いたうえで作られる人工物だ。ゆえに自然界の中に純粋な水つまるところの純水は存在しえない。

 それと同じように人でもそれは同じ。何も知らない子供でもなければ感情が1つしかない純粋状態などありえないのだ。

 だが、耀の感覚ではそれ以外が感じられない。不自然に、まるで本当にそれ一つしかないかのように。それだけを固めて作られたかのように感じられた。

 

「戦いの中で考え事とは余裕だな!」

「――――!」

 

 その言葉に反応して、耀は跳躍する。それと同時にペガサスが疾走してくる。突っ込んでくるペガサスに合わせて耀はなんとかその背にまたがる。

 その瞬間、己のギフトの中にある動物種の中で最も重量のある動物へと切り替える。刹那、その超重量にペガサスが耐え切れず落ちる。

 そこに突っ込んでくるのはクリューサーオール。満面の笑みを張り付けて、黄金の剣を振るう。それを躱し、蹴りを放つ。

 初めての反撃。超重量から放たれた蹴り。だが、クリューサーオールにはまるで効いていない。そもそも、まるで重量が違うかのようで、再度、蹴りを放つその瞬間、石化の閃光が降り注いだ。

 




今回は外道がいないので全然筆がのりませんでした。

戦闘はやはり難しいですね。文才が欲しい。戦闘なんかよりよくわからない理屈こねてた方が非常に楽ということがよくわかります。

その上、飛鳥の戦闘が一番面倒くさい。支配のギフトというかなんというかですから、トリッキーにならざるえないんですよね。はやくディーンが欲しいところです。
そして、耀のギフトについて考えていたら聖十郎の急段のようになってました。
耀が友達になりたいと思い、相手が耀に対して正の感情を抱けばギフトは発動します。聖十郎の等価交換とは違い、友情によるギフトのシェアということになりますかね。

そして、テキトーに考えた現在箱庭にいる奴らの太極値です、公式とは異なっていたりしますが、それはこの小説内での設定だと思っていてください。
だいたい30くらいの差だったらまだなんとかなるレベルと設定しています。
何かご意見などありましたら気軽にどうぞ。あくまでもテキトーなのでジョークとして見ていてください。

太極値(初伝)
波旬:測定不能
水銀:90
椿姫:85
覇吐:65
甘粕:55~80(ノリで変動)
セージ:40(69)
白夜叉:30(50)
レティシア:25(0)
白雪姫:20
ルイオス:8(69)
黒ウサギ:10
十六夜:10
飛鳥:5
耀:4
空亡:0
神野:0

では、また次回。
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