異世界から問題児と寂しがり屋が来るようですよ 作:三代目盲打ちテイク
『ギフトゲーム名 『造物主達の決闘』
・参加資格、及び概要
・参加者は創作系のギフトを所持。
・サポートとして、一名までの同伴を許可。
・決闘内容はその都度変化。
・ギフト保持者は創作系のギフト以外の使用を一部禁ず。
・授与される恩恵に関して
・“階層支配者”の火龍にプレイヤーが希望する恩恵を進言できる。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、両コミュニティはギフトゲームを開催します。
“サウザンドアイズ”印
“サラマンドラ”印』
春日部耀と桜茉椿姫は白夜叉によって薦められたギフトゲームに参加していた。
造物主達の決闘。製造者の存在する創作系ギフトを持つ者たちの祭典である。この北において過酷な環境に耐え忍ぶために恒久的に使える創作系のギフトが重宝されているのだ。
その技術や美術を競い合うためのゲームがしばし行われる。造物主達の決闘もその一つである。
耀の“
十分勝ち抜けるだろうと踏んでの参加であった。
また、桜茉椿姫も創作系のギフトを持っていた。それは彼女の左手にあるもの。ゴツイ篭手のような手袋に覆われた左手、そこには釘が突き刺さっている。
ノーネームの誰にも見せたことのない、生まれた時からそこにあるという釘は、製作者不明ながらも聖人の動きを止めることのできるほどに強大な恩恵である。
白夜叉にすすめれた二人は耀をメインに据えて、椿姫をサポートとしてギフトゲームに参加した。今行われている試合は、最後の決勝枠の争いであった。
相手は“ロックイーター”のコミュニティに属する自動人形《オートマター》、石垣の巨人であった。
「椿姫!」
「ん、とめ、る」
耀の掛け声とともに椿姫はその左手を向ける。手袋を外したそこには確かに白い釘が突き刺さっていた。耀はそれを一瞥して、彼女が力を行使するのを待つ。
その間、動かない二人に対して石垣の巨人がその巨大な腕を頭上へと振り上げる。そして、その体勢のまま動きが止まる。
耀はギフトによって跳躍力を兎へと変化させ、石垣の巨人の頭上へと跳躍し、その瞬間、瞬時に体重を象へと変化させ、落下の力と共に巨人を押し倒す。
轟音を轟かせて巨人が舞台へと倒れる。その瞬間、割れんばかりの歓声が巻き起こった。
『お嬢おおおおおおおおおおおおお!!!』
椿姫に抱えられていた三毛猫は耀の雄姿に雄叫びをあげていた。傍目にはニャーニャーと言っているだけだが、耀には聞き分けられたのだろう。彼女には聞き分けられたのだろう。目配せと片手をあげて微笑を見せた。
宮殿の上から見ていた白夜叉が
「最後の勝者は“ノーネーム”出身の春日部耀と桜茉椿姫に決定じゃ。これにて最後の決勝枠が用意された。決勝のゲームは明日以降の日取りとなっておる。亜遂行のゲームルールは……ふむ、ルールはもう一人の“
白夜叉がバルコニーの中央を譲る。現れたのは深紅の髪を頭上で結い、色彩鮮やかな衣装を幾重にも纏った幼い少女。
彼女こそが星海龍王の
炎の龍紋をと龍となり炎の如き情熱を燃やし続ける
華美装飾を身に纏った彼女は堂々と挨拶する。
「ご紹介に与りました、北のマスターたる・サンドラ=ドルトレイクです。東と北の共同祭典・火龍誕生祭の日程も、今日で中日を迎えることが出来ました。
然したる事故もなく、進行に協力してくださった東のコミュニティと北のコミュニティの皆様にはこの場を借りて御礼の言葉を申し上げます。
以降のゲームにつきましては、御手持ちの招待状をご覧下さい」
観衆が招待状を手に取る。書き記された文字が分解され、新しい別の文章を紡ぎだす。
『ギフトゲーム名 『造物主達の決闘』
・決勝参加コミュニティ
・ゲームマスター・“サラマンドラ”
・プレイヤー・“ウィル・オ・ウィスプ”
・プレイヤー・“べんぼう”
・プレイヤー・“ノーネーム”
・決勝ゲームルール
・お互いのコミュニティが創造したギフトを比べ合う。
・ギフトを十全に扱うため、一人まで補佐が許される。
・ゲームのクリアは登録されたギフト保持者の手で行う事。
・総当たり戦を行い勝ち星が多いコミュニティが優勝。
・優勝者はゲームマスターと対峙。
・授与される恩恵に関して
・“階層支配者”の火龍にプレイヤーが希望する恩恵を進言できる。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、両コミュニティはギフトゲームを開催します。
“サウザンドアイズ”印
“サラマンドラ”印』
此れにて本日の大祭は御開きとなった。
日も傾き始め、巨大な境界壁の影から街が包み始める。黄昏時を彷彿させる街の装いは宵闇に覆われ、昼の煌めきとは別の姿を見せ始める。
月明かりを遮る赤壁の街は、巨大なペンダントランプだけが唯一の標としてゆらゆらと灯りを燈している。
悪鬼羅刹が魍魎跋扈する北との境界壁は、夜の街に姿を変えて目覚め始めるのだった。
そんな時、耀と椿姫以外のノーネームの面々は飛鳥を捜索していた。彼女はここに来て十六夜と別れてから姿が見えないのだ。
「どこへ行ったのでしょうか。危ないことに巻き込まれていなければ良いのですが」
「ったく、どこに行ったんだ?」
「それもこれも、十六夜さんが逃げたせいなんですよ!」
うがー! と怒髪天な黒ウサギであるが、十六夜はそれをスルーしつつ捜索を続ける。この手の捜索は耀が居れば早い。あの優れた五感はこういう時に便利だ。
「わかってるって、だから真面目に探してるだろ」
「そうなんですが、彼女に何かあったら」
「あいつも力がないわけじゃねえ。今は、信じて探すぞ」
「はい」
屋根の上を跳び回り二人は飛鳥を探す。しかし、一向に飛鳥は見つからない。日も落ちつつある今、ここで見つからなければ厳しいことになる。
「くそ、見つからねえ」
「そろそろあちらも終わったはずです。ここは、いったん耀さんと椿姫さんと合流して――」
「おいあれを見ろ!」
「あれは!」
境界壁を掘り進んで作られた洞穴の展示会場の前に飛鳥が立っていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
『――つうわけで? オレら今、大変なわけよ。あの糞野郎がいる上に、面倒な奴まで入り込んでいやがる。このゴミ箱、そうとうやべぇんだぜ? しかも、あいつはもう限界だ』
声が響いている。男の声だ。頭の中でそれは響いている。
知らない声だった。知らない声だ。けれど、それは不快なものではない。不快な声色ではあれど、その声事態に邪悪な気配は感じられないのだ。
『だからこそ、あいつに幕を引いてやってくれ』
もう一つの男の声。低い、まるで重戦車のような声が響く。
それに答えることは何一つできない。どうこたえてよいのかも。そもそも、これは答えを返すようなものではないのだ。
これはただの残滓だ。飛鳥の眼にもそれは明らかだった。消えかけた幽鬼と。それが今、響いている声の主だ。両の面を持った鬼と黒の甲冑が何かを言っている。
だが、飛鳥には何も答えることはできない。神ならざる身では。黄金ならざる瞳では。
声が止み、静寂が全てを支配する。その時、
「飛鳥さん! 飛鳥さん!」
「――え、あえ?」
黒ウサギに揺さぶられ、飛鳥の意識は覚醒を果たす。
「え、黒ウサギ? あれ、私……」
「はあ、良かった。見つかってほっとしました。いったいここで何をしていたのです?」
「えと」
黒ウサギに言われて、考えるが何をしていたのかわからない。何やら、頼まれたような気もするが、わからない。
「まあ、無事でよかったぜ、お嬢様」
「あら、心配してくれていたの?」
「ああ、黒ウサギがな」
「Yes! とっても心配したのですよ」
「そうなの、ごめんさい」
「とりあえず、戻りましょう」
三人はサウザンドアイズ旧支店に戻ってきた。
「ただいまですよー!」
「黒ウサギ、飛鳥、見つかった!」
「よかった」
「ちょ、ちょっと」
ひしっ、っと抱き着く椿姫に耀。抱きすくめられた飛鳥は困り顔だ。そこに白夜叉がやってくる。
「おお、無事であったか。よかったよかった。全員そろっておるようじゃし丁度良い。皆、集まってくれ。おんしらを連れてきた理由を話そう」
「ようやくか、気になってたんだ」
「? なんの話でございますか?」
黒ウサギが何の話ですか? という風に首を傾げる。
「そう言えば、黒ウサギは追ってきただけじゃから知らんか」
「俺たちがこっちにくる条件として、白夜叉を手伝うことになってんだよ」
「また、勝手に」
だが、やってしまったものはどうしようもなく。一先ずは話を聞いてみることにして、ノーネームの面々は白夜叉の部屋へと集まった。
「さて、何から話したものか。まあ、まずはこれを見てもらった方が早いかのう」
白夜叉が一枚の封書を差し出してくる。代表としてジンが受け取る。
「――そんな……」
内容を確認したジンの表情が絶望の色に染まる。
「ジン坊ちゃん?」
「おい、御チビ、何が書いてあった」
十六夜がひったくるようにして封書をジンの手から奪い、それを全員の前で広げて見せる。そこにあったのはただ一文。
『火龍誕生祭にて、“魔王襲来”の兆しあり』
ただの一文。だが、“魔王”という存在の意味をしる者にとって、それはまさに死刑宣告にも等しかった。
誰も彼もが絶句する。魔王という存在の理不尽を知る黒ウサギは絶句し、調べていた十六夜もまたいつになく神妙な顔つきで黙っている。
飛鳥や耀も魔王という存在についての危険性は聞かされているため、暗い顔をしていた。椿姫だけがきょとんとした表情をしている。
十六夜が鋭い目つきのまま、白夜叉へと問い返す。
「魔王とは、意外だったぜ。マスターの跡目争いだとか思ってたぜ」
「ククッ、おんし、そんなこと思っておったのか。まあ、確かにそうだろうな。魔王など早々予想できるわけがない」
「なら、なんでわかったんだ?」
「“サウザンドアイズ”は特別な瞳を持つ者が多くてな、幹部の一人が未来予知をしたのじゃ。そやつから誕生祭のプレゼントとして送られたのが、その予言というわけじゃ」
「なるほど、で? この予言の信憑性は?」
「石を上に投げて、下に落ちる程度には正確じゃな」
白夜叉のたとえに皆が呆ける。それも当然だ。石を上に投げれば落ちる。それは常識である。この箱庭に置いて重力を操る者は確かにいるが、それは恩恵の力であって、力を解けば石は下に落ちる。
自然現象として確立されているのだ。それは必然であり当然の現象である。ゆえに、その例えはつまり、予言は必ず当たると言っているも同義だった。
「それは予言か? 上に投げれば落ちるのは当然だ。未来予知なんかじゃなく、未来視だろそれ」
「あながち間違いじゃないかもしれんが。まあ、そこは重要ではない。重要なのは、魔王の襲来が必ず起こるということじゃ」
「なるほど、で? 俺らに何をさせようってんだ?」
「魔王が開催するであろうゲームの攻略じゃない。魔王とてこの箱庭の
「な、なぜ、それをノーネームに?」
白夜叉の言葉にジンが口を挟む。名前を奪われ、旗もないコミュニティになぜわざわざそのようなことをさせるのか。
「ふむ、まあ、そうじゃのう。覇吐たちに任せた方が確かに手っ取り早いのは確かではある。じゃが、あ奴らは私の留守を任せておるからのう。それに、早々奴らは動かせん。特に、この北ではな。
一人で対処できるかどうか微妙な線らしくてな、おんしらを呼んだわけじゃ」
「で、ですが……」
「まあ、いいじゃねえか御チビ。これはチャンスだ。御チビを旗頭にしたノーネームは、魔王討伐コミュニティとする。その初戦としては上出来なくらいだ。宣伝にもなる」
「……そうでしたね」
名と旗を、いつか取り戻すために。全ての魔王を打倒する。それが十六夜とジン=ラッセルで考えた、全てを取り戻す為の方法。
「わかりました、“ノーネーム”は魔王襲来に備えて、協力したいと思います」
「ふむ、まあ、そう気張ることも無い。魔王はこの私が相手をするからな」
「そうか」
どこか不服そうな十六夜。いや、何かを企んでいる顔だった。
「なんじゃ? 露払いでは不服か?」
「いや、箱庭の魔王がどの程度のものか見るのにいい機会だ。ただ――」
「ただ?」
「――ただ、どこかの誰かが、偶然、魔王と鉢合わせして、偶然、倒してしまうかもしれないが、良いよな」
十六夜はそう言った。
約一ヶ月ぶり、お久しぶりです。
はい、相変わらず忙しいながらもちびちびと執筆をつづけております。
今回はノーネーム中心の回でした。次回は、温泉回を予定してます。ええ、皆さま、温泉回です。
男祭りになるか、それとも女の子がうつるのかは不明。ただし椿姫ちゃんの裸はニートによって完全規制入っているので、無理かもしれません。
いや、予定は未定なんですけどね。
では、また次回。牛歩更新ですが、感想などくれると喜んで更新が早くなるかもです。