異世界から問題児と寂しがり屋が来るようですよ    作:三代目盲打ちテイク

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 今こそ語れ、それは旧き世界の物語。男と女の物語。悲しい悲しい回転悲劇の一幕。これは大輪の華と永遠の男の物語。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 それはいつかのどこか。始まりは、世界のどこか。いつかのどこかである日、流行り病で家人が全滅した屋敷の中で発見された。

 大層憐れに思われた幼子は孤児院に引き取られることになる。憐れな彼女に孤児院の人間は愛を注ぐことにした。

 

 しかし、彼女が預けられた孤児院は次の日には彼女以外が皆殺しにあった。彼女以外が彼女の前で皆殺しにあったのだ。

 再び、彼女は別の施設へと移されることになる。その施設もまた彼女以外が全滅することになった。天災により彼女以外が死んだのだ。

 

 またその次も、その次も、その次も。彼女の行く先々で、彼女の周りにいる者が死んでいく。彼女に関わった者、彼女を愛した者。

 すべて消えていく。いつしかそんな彼女を人々は嫌悪し、忌避し、恐怖し、彼女は誰とも触れ合うことなく育っていく。

 

 ある日、いくつになるかわからない預けられていた施設が潰れるも、忌み嫌われた彼女はどこにも引き取られることなく誰に看取られるでもなく、おそらくは家族を病死させた病によって誰もいない暗がりで人としての生涯を終えた。

 彼女は一人、己の世界で生き続ける。ただ一人己の異界で過ごし続ける。永遠の孤独を。そして、ある時、一人の男と出会った。

 

「ああ、そうか。私の女神の同位体(ドッペル)であるのか。それでいて対極。だからこそ、残念だ。そんなにも寂しがりでなければ、私は貴女にこの座を譲っても良かったと言うのに」

 

 永劫の固定。ある意味で彼女に抱きしめられると言える。だが、それではない。望む終末は彼女ではない。

 なぜならば、彼女は私の女神ではないのだから。

 

「だれ?」

 

 カール・クラフト、あるいはメルクリウス、もしくはカリオストロ。そう呼ばれるこの世界の所謂神。そんな男がそこにいたのだ。

 初めて、話しかけてくれた人。触れあえた人。勝手にお風呂に入れようとするいじわるな人。いなくならない人。

 

 それからもう一人。

 

「やあ、アルフレード。久しいな。もっとも、これがどれほど昔に交わした言葉なのかは正直忘れてしまったのだがね」

 

 割烹着を纏った男がそう目の前の男――アルフレードに言う。

 

「お前か、カリオストロ、いいやカール・クラフト? メルクリウス。どうよべばいいのかな、水銀の蛇。あまり時間は経っていない昔なのはお前だけだ」

 

 それらは旧知の間柄であった。

 

「お好きに。その権利は君にある。私と君だ。好きにすればいい。こちらは今、少し忙しい」

「何がだ? お前の女神に関係があるのか?」

「ああ、我が愛しの女神の同位体(ドッペル)さ。これがまた寂しがり屋なのでね。私が世話をしているというわけさ」

「ああ、それで似合わない恰好をしているのか」

 

 頭に三角巾を巻いて割烹着を着ている主婦スタイル。胡散臭い軍装の男がそんな格好をしているというのは甚だ違和感しか感じない。

 彼の自滅因子たる黄金の獣が見たらあまりの未知に何を思うだろうか。

 

「ふふふ、これを着ていると彼女は喜んでくれるのだよ。君も来ると良い」

「では、行こう。お前の女神に会うのは気が引けるが同位体とやらならば良いだろう」

 

 そして、二人は出会った。

 

「むぅ、カリオストロ、どこ行ってたの寒い」

「こらこら、まったく。裸でいれば寒いに決まっているじゃないか」

「――――」

 

 一目彼女を見た瞬間、

 

 全身を駆け巡る衝撃にアルフレードは打ち震える。ゆえに、跪くのだ。やっと見つけた。

 こうして永遠を過ごす意味を、意義を見つけたのだ。

 

 跪く。ああ、どうしてこの少女を前に立っていることなどできようか。できるはずがないだろう。この少女を前にして、立っていることなどできはしない。

 熱い鼓動が胸を打つ。これが恋なのか。永遠不変のこの身にただ一つ、楔が打ち付けられたかのよう。ああ、なんたることだ。

 

「カール、酌み交わそう、喜びの酒杯を。美しい華と共に。飲もうじゃないか、甘いときめきが恋を鼓舞するんだ。抗いがたい眼差しが私の心を誘うがゆえに。

 だからこそ、私は君にこう言おう。あなたに恋をした。どうか跪かせて欲しい、花よ」

 

 それが出会い。永劫を過ごす、男と女の出会い。

 

「やだ」

 

 思わずそう言ってしまったのを誰が攻められよう。大爆笑しているメルクリウスはさておき、固まっているアルフレード。

 

「私が失敗したのだ。君が成功するはずがない」

「五月蝿いぞカール。お前の宇宙に風穴あけてやろうか」

「できるかね? 君はただの永遠だ。私の宇宙に風穴を開けたいのであればそれを外側に流れ出させない限りは無理だろう」

「カリオストロ、だれ?」

「いきなりで驚いたかね。彼はアルフレード、私の友人だよ」

「カリオストロ、友達いたんだ」

 

 こんな胡散臭いに友達なぞいるはずがない。

 

「いるとも」

「いないだろう」

「君は少し黙っていたまえ。暗黒天体ぶつけるぞ」

「やれるものならやってみろ」

「むぅ、けんか、だめ」

 

 楽しい日々だった。彼がいて、彼女がいて、彼がいる。楽しい日々だ。誰もいなくならない。永遠にそんな日々が続くだろうと思われていた。

 メルクリウスが用意する歌劇を影からアルフレードと共に見守る日々。彼の悲願が達成されるその時まで。

 

 数万の回帰を二人で永遠に過ごそう。

 

「なあ、椿姫」

「なに、アルフレード」

「いい加減アルって呼んでくれてもいいんだぞ?」

「そう。ねえ、アルフレード。さっきカリオストロが呼んでたよ」

「…………」

 

 彼女は人の名を呼ばない。本人を前にして。あるいは親愛を示す略称を使わない。名を呼べば、いなくなってしまうから。

 だが、それでも彼はいなくならないと誓う。永遠だから、永劫だから。しかし、永遠なんてものはなく、人は幻想にはなれない。

 

 だからこそ悲劇は起きた。彼の水銀の蛇が己の悲願を達成したその時に。

 

「ねえ、アルフレード」

「うん? どうした椿姫?」

 

 椿姫の問いかけにアルフレードが笑顔で答える。

 

「アルフレード……アル、大好き」

「えっ? 今――」

 

 思いもよらないもので。そしてたまらず振り返って――。

 

「ミツケタ、ミツケタミツケタミツケタ―――」

 

 ちょうどその時、絶望が訪れた。

 

「っ!? 椿姫!!」

「ああ、なぜだ? 潰したはずなのに不快感が消えてなくならない。……そうかお前か。お前もか。ああクサイクサイクサイクサイイクサイ。消えてなくなれ塵屑どもがぁ!!!」

「ぐっ! 危ない!!」

 

 それの拳を体で受け止めて、そして砕けた。

 

「がっ!?」

「アル!?っ!?」

 

 消えていく。体が、魂が、存在が、砕けて消えていく。全てが消える。もはや少女は叩き潰された。残った男の残骸は、ただ少女の名を呼ぶ。

 

「つ……ばき!!」

 

 自らの存在を繋ぎとめるかのように、声を絞り出して少女の名前を呼ぶ。

 

「ああ、そうだよな。こんなの、こんな……のは」

 

 許さない。認めない。彼女と過ごした日々が、彼女の笑顔が、彼女の愛が、こんなものに消されるなど。

 だからこそ。終わらせてなるものか。永遠に、永遠に、永遠に、愛する少女と永遠に。刹那に何度も言われた。そんなものはないと。永遠になんてなれないと。わかっている。だけど、それでも。

 

「く、そ!!!」

 

 少女との永遠を求めよう。少女の名を叫びながら、アルフレードは自らの理を流れ出させる。それはたった一人の少女に捧げた詩。さみしがり屋の君の側に、永遠に居続ける。ただそれだけを願い、誓った詩を。

 

 永遠に

 In Ewigkeit

 

 たとえ刹那の時だろうと

 für eine Stunde

 

 私が貴女の腕に抱かれれば

 n deines Arms Umfangeni

 

 私と貴女は呪われるでしょう

 wärst du verdammt mit mir

 

 私は貴女に幸せをもたらすために、ここに来たのです、

 Auch dir bin ich zum Heil gesandt,

 

 貴女が、あの憧れから目を背けないのであれば

 bleibst du dem Sehnen abgewandt

 

 貴女に幸せは決して与えられない

 eh jener Quell sich dir nicht schliesst.

 

 泣きながら、それに焦がれているのを私は見た。

 nach dem ich jammernd schmachten sah;

 

 私が貴女に救いをあたえます

 Frevlerin, biet ich auch dir.

 

 神のごとき貴女をどうか愛させて欲しい

 Lass mich dich Göttlichen lieben,

 

 貴女が私に道筋を示してくれるなら

 zeigest du zu Amfortas mir den Weg.

 

 私が愛と救いを貴女に与えます。

 Lieb' und Erlösung soll dir werden,

 

 流出

 Atziluth――

 

 人型の永遠でしかなかった宇宙が流れ出す。

 

「よくやった、こんな結末、認められない。ああ、認めるものか。私の女神も、お前の女神も、叩き潰したアレなど認めるはずがないだろう」

 

 過去最高純度で流れ出すかつての法。永劫回帰。回帰する。それは幸せな日々へと。そして、男は全てを箱庭(ゴミ箱)へと放り捨てた。

 そうして、回帰した果てで椿姫もまた箱庭へと送られる。彼の存在の■■因子であるから。だからこそ、永劫の男もまた箱庭へ降り立っている。

 

「椿姫の為に、お前をここで滅ぼす」

 

 闘争は未だ続いている。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

――時刻現在

 

 奮起するノーネームを見てこの男はまたやらかす。

 

「ああ、良いぞ。そんなお前たちだからこそ、俺は好きなのだ。愛しているのだ。お前たちの輝きを永劫絶やしたくないと思っているのだ。

 ゆえに、俺は今こうしてここにいるのだ。我が愛しの男に習い、俺もまた挑戦者であるように。だからこそ、お前も俺と同じ道を進むと言うのであれば、その意志を俺に示せ」

 

――終段・顕象――

 

 悪で在れ。悪で在れ。悪で在れ。

 

 現れるは三頭竜。悪で在れと型に嵌められた偉大なりし悪が、最も古き人類最終試練がここに顕現する。さあ、楽園はそこだ。

 

「さあ、俺も行くとしよう。待っているが良い第六天、お前の宇宙など俺も認めんよ」

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 柊聖十郎の前にいるのは巨大な竜だった。それは、竜の眷属たる女の神性。このアンダーウッドの大地で眠りについた龍。

 

「さて、いい加減目覚めろ。俺に手間をかけさせるな」

 

 今、ここに目覚める龍。

 

 さあ、地獄は加速する。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

「今行くぞ」

 

 ニコラ・テスラが向かうアンダーウッドへ。壊滅しかけているそこへ。しかし、漆黒の空が全てを覆い尽くす。

 

「行かせんよ。ペルクナス。お前の力は届かない。お前の意志は守られない。お前は誰も救えない。

 

 残 念 だ っ た な!!」

 

 提案しようペルクナス。

 

――食事の時間だ。

 

 女の身体から出るのは数式。クルーシュチャの方程式。喰らう牙。もはや、ここから先何人たりとも通さぬ。

 

 特にペルクナス、お前は。

 

 そう言っている。




椿姫の過去編を凄まじいダイジェストでお送りしました。

とりあえず、書くべきことは書いたはず。
現在体調不良で頭痛が酷く、熱もあるという状態なので間違いとかあるかも。クオリティもお察しですし。元気になったら修正します。

とりあえず更に地獄を加速させます。ダブル人類最終試験とか、龍三体の三者面談とか。メジェド神のビームとか。

 この状況に飛んでやってくるニコラテスラさんは足止め喰らってます。
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