異世界から問題児と寂しがり屋が来るようですよ    作:三代目盲打ちテイク

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 地獄だ。ここは地獄だ。だからこそ、今こそ立ち上がれよ雄々しき者たち。そんな声が響いている。試練に立ち向かえ輝け雄々しき者たち。

 そんなお前たちを愛しているのだ。そんな声が響いているのだ。愛したいのだ。お前たちを。忘れたくないのだ。

 

「認めるかよ。お前のその思想。今度は俺が否定してやるよ。お前の意思を他人に押し付けんなよ。何をして、どうするか主張を決めるのはお前じゃない。こいつら自身だ」

 

 だからこそ、認めるものか。

 十六夜が守りたいと思う者たちはここにいる。だが、守られたいと思う者はいない。

 

「なあ、お前ら。違うよな」

 

 そう問う。

 

「ええ、違うわ。十六夜君。私は、守られたいなんて思わない。言いたいことが山ほどあるもの。だから、力を貸して。私は、誰かに投票して戦ってもらうなんてまっぴらよ。

 私の意見は私が言うわ」

 

 飛鳥がそう言う。

 

「うん、私も。自分のことは自分でやるって決めたから。私も一緒に戦うよ」

 

 耀もまた同じく。

 

「わたしも頑張る。もう、誰もいなくなったりさせない」

 

 椿姫もまた決意した。

 

「私も負けません。十六夜さんたちに任せきりでは月の兎の名が泣きますから」

「ぼ、僕も! 僕も一緒に戦います!」

 

 皆の言葉に十六夜は笑う。どいつもこいつも、まったく良い奴らだ。だからこそ、ここに協力強制は成る。

 誰も彼もが試練に立ちあがった。だが、そこにあるのは甘粕の思想ではなく、ただ自らの思想をぶつける為に。

 

「へっ、ならお前ら全員、一緒に行こうぜ!

 

 ――急段・顕象――

 

 天地開闢・疑似創星図(行くぞお前ら)

 

 急段が発動する。ここには彼の支持者がいるから。展開された急段の範囲はこのアンダーウッド全域。そこに十六夜の声が響く。

 

 お前らはどうするのかと。力のない者には力を貸そう。だからこそ、立ち上がれ。お前たちは誰か他人に任せていいのか。

 ここはお前たちの街だろう。お前たちが作り、はぐくんできた街だろう。それを他人に守らせていいのか。

 

 皆が選んだ代表者が戦うのではない。皆が代表者になる。阿頼耶に選ばれた盧生に任せるのではなく、全人類が代表。

 人類の代表が個人であって良いはずがない。だからこそ、十六夜は誰も彼もを人類の代表にすることを選んだ。

 

 その中で自身の特異性が薄れても構わない。人類の意思は自分たちで決めるのだ。それに同意した者に十六夜は自らの力を伝播する。

 そして、伝播された者は繋がり、その力は十六夜へと伝播する。

 

「力がみなぎる。これが十六夜君の夢」

「凄い」

「へえ、これがお前らの力か。面白いな、ヤハハ!」

「いやいやいや、みなさん! そんなゆっくりしていて良いのでごすか!」

「お嬢様があのデカブツ止めてるし、もっとヤベエ神様たちが来たからな」

「え?」

「ほら、見てみろよ」

 

 曙光の輝きがそこにはある。

 

「俺らはあいつの相手だ」

「――急段・顕象――」

 

 もう我慢ならないとでもいうかのように響く声。

 

斯く在れかし(あんめいぞォォ)――聖四文字(いまデェェウス)!」

 

 甘粕正彦が今ここに魔王として降臨する。ノーネームを前にして、もう我慢ならないと――。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 輝く曙光。これぞまさしく夜の闇を照らす夜明け。天照輝きだ。

 

「行くぞ、覇吐! 甘粕だとか言う魔王にこれ以上好きにさせてなるものか。私の益荒男ならばここで奮起して見せろ」

「おうよ! 見てろよ竜胆俺のかっちょいい活躍ってやつをよ!」

 

 傾く男と、勇ましき女。坂上覇吐と久雅竜胆。共に、八百万の大御神(やおよろずのおおみかみ)の主神たちだ。

 そんな相手に対してメジェドが即死の視線を放つ。そんなものを受ければ如何に神だろうとも、いいや神だからこそ死ぬ。

 

 なぜならば神の怨敵を殺すことはすなわち、同族たる神をも含むからだ。

 

伊邪那美命言愛我那勢命(いとしきわがなぎのみこと) 爲如此者 汝國之人草(なのくにのひとくさ)  一日(ひとひにち)絞殺千頭(がしらくびりころさん)

 

 爾伊邪那岐命詔愛我那迩妹命(いとしきわがなみのみこと ) 汝爲然者(ながそをなせば) 吾一日立千五百産屋(われはひとひにちいほのうぶやをたてよう)

 是以(これをもちて)一日必千人死(ひとひにかならずちいたりしせば) 一日必千五百人生也 (ひとひにかならずちいほたりうまるるなり)

 

 禊祓(みそぎはらえ)――黄泉返り(よもつがえり)

 

 朱の大剣振るいて、相手の一撃を受ける。そして、返す。簡単に言えば覇吐が行っているのはこれ。例えるなら覇吐の総体を五百と仮定する。そうすると覇吐は死ぬ。

 しかし、桃花・黄泉返りは受けた受けた相手の力を増幅し、千五百の力を発生させる。うち五百の力を使って覇吐は蘇り、残った千の力を対象に跳ね返す。

 

 本来は歪みに対するものであるものの、今現在この箱庭における歪みとはギフトと呼称される。つまり、このメジェドの一撃もまた返せるということ。

 そうでなければここには来ていない。

 

「おらああ!!」

 

 返した一撃がメジェドを貫く。その一撃は覇吐の分も含めて、更に十六夜の急段に嵌っている為に十六夜の力も乗ってメジェドを消し飛ばす。

 その瞬間、現れる三頭竜。悪であれ悪で在れ、悪で在れ。地獄の瘴気が噴き出す。全てを消し飛ばす勢いで吐き出される悪の念。

 

 しかし、ここにいるのは二人だけではない。

 

「「() () () () () () () () (ここの) (たり)

 

 布留部(ふるべ) 由良由良止(ゆらゆらと) 布留部(ふるべ) 」」

 

 地獄に響く二つの声。

 

曰く(いわく) この一児をもって(このひとつぎをもって)我が麗しき妹に(わがうるわしきなにものみことに)替えつるかな(かえつるかな)

 すなわち頭辺に腹這い(まくらへにはらばい)脚辺に腹這いて(あとへにはらばいて)泣きいさち悲しびたまう(なきいさちかなしびたまう)

 

 その涙落ちて神となる これすなわち 畝丘の樹下に(うねのこのもとにます)神なり

 

 ついに()かせる十握劍を抜き放ち 軻遇突智(かぐつち)を斬りて三段(みきだ)に成すや これ各々神と成る

 劍の刃より滴る血 これ天安河辺(あめのやすのかはら)にある五百個磐石(ほついはむら) 我が祖なり

 

 謡え(うたえ) 詠え(うたえ) 斬神の神楽 他に願うものなど何もない

 

 未通女等之(おとめらが) 袖振山乃(そでふるやまの) 水垣之(みずがきの) 久時従(ひさしきときゆ) 憶寸吾者(おもいきわれは)

 

 八重垣(やえがき)佐士神(さじのかみ)蛇之麁正(おろちのあらまさ)――神代三剣(かみよさんけん)、もって統べる石上の颶風(いそがみのかぜ) 諸余怨敵皆悉摧滅(しょよおんてきかいしつざいめつ)

 

 ――太・極――

 

 神咒神威(かじりかむい)――経津主(ふつぬし)布都御魂剣(ふつのみたまのけん)

 

 まず走る斬撃。斬るという概念そのものである斬撃が奔る。ただの一刀。神性すら付与されていないただの刀。

 その一撃が悪で在らんとした神を切り裂く。容易い。なぜならば己は剣であるから。遍く全てを斬る。そう在ろうとした神であるから。

 

 曰く、経津主。その名は壬生宗次郎。女性のような細面ではあるが、彼の放つ斬撃はもはや斬撃と呼ぶ代物には程遠い。斬撃、いいや切断の極致だ。

 これはそういう神威。遍く全て例外なく切り裂く神威。斬れないものなどただの一つもなく、ただ一振りの刃として剣として遍く全てを斬るのだ。

 

 莫大な殺意が飛翔する。極大の斬気。もはや振るった刃に距離など関係ない。距離という概念すら斬り裂いて彼の斬撃は三頭竜へと届く。

 

「まったく、先に飛び出していきすぎですよ二人とも」

 

 まったくこれだから覇吐さんは、とあきれたように呟く彼の端で首を飛ばされた三頭竜の傷口から這い出す異形共。

 その数数千、数万。かつての鬼の如く、這い出す狂気。しかし、もう一つの祈りがそれを打却する。

 

「ここに天の数歌(あめのかずうた) 登々呂加志宇多比(とどろかしうたい)あげて 浮かれゆかまくする魂結(たまゆい)の 聞こえこしめして(さきわい)給う

 

 我が身に阿都加倍奈夜米流(あつかいなやめる) 夜佐加美阿倍久病(やさかみあえぐやまい)をば

 

 いと速やかに伊夜志(いやし)たまいて 堅盤(かきわ)常盤(ときわ)に守りたまえ聞こえしたまえと

 

 天の八平手(やひらて)打ち上げて 畏み畏み申す

 

 (オン)摩利支曳娑婆訶(マリシエイソワカ)

 

 唵・阿毘哆耶摩利支娑婆訶(アビダヤマリシソワカ)

 

 鬼縛(きばく)――隠身(おんしん)三昧耶形(さんまやぎょう)・大金剛輪

 

 ここに帰依したてまつる 成就あれ

 

 ――太・極――

 

 神咒神威――紅楼蜃夢(こうろうしんむ)摩利支天(まりしてん)

 

 無限に拡大された可能性の奔流が、異形を押し流し破却する。陽炎のごとく揺らぎ、実体と幻影の違いはもはや存在しない。

 数多の彼女は全て実体であり幻影でもある。例え倒されたとして、生きる可能性があるならば彼女は死なない。

 

 これはそういう神威。摩利支天。名は玖錠紫織。圧倒的なまでの才気を持った女武芸者が無限の可能性を武器に戦場へと踏み込む。

 その踏み込みの衝撃は、爆発に等しい轟音と共に大地を揺るがし

 

「あんたもね、宗次朗」

「いえ、紫織さんほどじゃないですよ」

「しかし、厄介ねあれ。倒しても倒しても沸いて出て来るわ」

「幾らでも斬れて良いのですが流石に面倒ではありますね。あまり斬り応えもありませんし」

「ならば、ここは我らの出番かな龍水」

「はい、夜行様!」

 

 滅するには、傷口を残さずに滅却する以外にはない。ならば簡単だ。

 二人の男女にはそれが出来る。

 

「ざんざんびらり、ざんざんばり、びらりやびらり、ざんだりはん

 つくもふしょう、つかるるもふしょう、鬼神に王道なし、人に疑いなし

 総て、一時の夢ぞかし

 ここに天地位を定む

 八卦相錯って往を推し、来を知るものは神となる

 天地陰陽、神に非ずんば知ること無し

 計都・天墜――凶に敗れし者、凶の星屑へと還るがいい」

 

 男摩多羅夜行の声が響き渡ると同時に世界に隔絶した現象が引き起こされる。夜行にしか出来ない夜行だけの咒を紡ぎ出し、それに合わせて太極が揺らめく。

 組み替えられる森羅の理が軋みながら、夜摩の万象が位相を変えてこの世界へ顕れる。夜行が紡ぐ咒に、蠢く指に合わされて中天から嵐の乱雲が穴を穿たれ、徐々に広がる。

 

 まるで何かを通すための道を開いたかのように、そこに集中する極大の神気は天井を震わせそこに巨大な穴を穿つ。

 最後に、咒力の密度は幾何学的に膨れ上がり、咒法が励起される。夜行の呼びかけに答えるかのごとく、計都彗星の威容が宙の果てから燃える大火球と化して迫り来る。

 

 大質量でもって押しつぶす。その術もはや既存の術法体系を逸脱し彼独自のものとかしている。地下だろうが関係はない。

 彼が呼び寄せ天墜させるのだ。太極位の陰陽術。星が降る。大質量の流星が三頭竜へと堕ちる。

 

 神格六柱。かつて箱庭を救った御神の威光は遍く全てを照らす――。 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

「が、ハッ――」

「フン、この程度か無貌(フェイス・レス)。まったく、どうしてこうも度し難い屑ばかりなのだ、ここは」

 

 ボロボロの膿と血に塗れた鎧武者一人。幽鬼のような男に首を掴まれて死に体だった。この騒乱を収めるべく彼女は奔走した。

 しかし、今や燃えるような紅い舞踏仮面と流れるような銀髪のポニーテールに黒い髪飾り、精密な意匠が施された白銀の鎧を纏う女性騎士の姿はここにはない。

 

 ここにあるのは死病をうつされ、腐りきった肉袋と化した憐れな女がいるだけだ。

 

「あーあー、まーたやってるよ飽きないねセージ」

「フン、俺には俺の目的がある。お前にも邪魔はさせんぞ蝿声」

「うんうん、この僕が親友である君の邪魔をするはずがないじゃあないか。寧ろ応援しているくらいだよ」

「ならば今すぐ俺の目の前から消えろ蝿声。貴様の声など聴くに堪えん。ここには俺だけあればいい」

 

 フェイス・レスを捻り潰しセージは巨竜を引き連れアンダーウッドを進む。消え失せろ塵共。俺の糧に成れ。

 滅尽滅相――俺以外の全て尽く消え失せろ。ここには俺だけ在ればいい。

 

「手に入れるぞ。第六天。貴様の力、俺がもらってやる。そして、俺の上に立つ屑ども全てその座から引きずり降ろしてくれる」

 

 虫唾が走るんだよ。何が神だ。なぜお前らはそうなのだ。この俺の上に神などあるはずがないだろう。俺を生かさぬ神ならいらん。俺を生かさぬ世界ならいらん。

 

 

 地獄は続く。生まれた希望は加速度的に増し、そして、地獄(箱庭)の時は進む。

 




タジャドル・隼様企画の超コラボ始まりました。
タイトルはロストボックス ~問題児の集結~です。どうぞ読んでみてください。うちの椿姫ちゃんが出る予定です。どんな風にでるのか今から楽しみです。

それからなんとか体調も戻ってきました。皆さまにはご心配おかけしました。

さてそういうわけで本編について。
第七天参戦。満を持して参戦。とりあえずメジェドとアジさんを一瞬で退場させてもらいました。
ぶっちゃけると、私こいつらあまり好きじゃないんですよね。いえ、キャラ的には好きなんですけど、こいつらの太極の詠唱が非常に面倒で、面倒で。

ルビ振らないと読めないとか、もうね。うん、作業量倍化で大変なんです。だから今まで出なかったし、出てもねアレだったのに。今回は、うん。
しかも、だいぶ神咒神威の記憶薄れててキャラとかあれなのに。

という愚痴でした。こいつらの太極ルビ振るの大変過ぎでちょっと愚痴りましたすみません。
とりあえずかなりの戦力アップ。こいつらのおかげで厄介なメジェドさんとアジさんが一発退場
そら切断の太極でぶった切って可能性で押し流して、KEITOTENTUI☆。してたら勝てる。
これで勝てないのは糞野郎くらいです。
これでもこいつら箱庭の中で最上位クラスの求道神ですし。覇道神には負けるけど。

それから十六夜の急段。
四四八や甘粕のように自分が代表になって支持を受けて戦うのではなく、全員を代表にしてみんなでこの先の為に戦おうというもの。

十六夜の全能力の伝播と他者の全能力の十六夜への付与が実際の効果。アンダーウッド中なのでアンダーウッドの全員が十六夜化して、アンダーウッドにいる全員の能力が十六夜にプラスされてます。

ええ、あの第七天の奴らもこの急段に嵌ってますね。あれ、十六夜が超チート化してないかこれ。
協力強制は十六夜が守りたいと思い、相手が守られたいではなく自分も戦う、つまり代表になりたいと思うことによって急段が発動します。

さて、次回は甘粕戦。いきなりラスボスが我慢ならないと出てきちゃったよ。どうすんだよこれこの十六夜に甘粕勝てるのかよとかやりつつ、空亡をどうにかするために飛鳥と耀による地脈の大規模工事が始まります。
とりあえず、飛鳥仕事しすぎ。

そしてセージは、もうやばいところに足突っ込んでる。これ冷泉パターンかと思いきやセージだからなあ。
フェイス・レスさんは地味に箱庭から退場しました。逆さ磔にされました。ジャックさんのお隣です。実は、あの魔王だったり牛魔王だったりが逆さ磔の餌食。そのうち白夜叉も取り込みに行くよ。セージが実は一番手の付けられないことになっていく。
おい、まじ問題児原作どこ行った。

な感じですが、これからもがんばります。
いつになるかはわかりませんがまた次回。
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