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ズルズルと、ものすごく格好のつかない姿で3人が遠ざかっていく。
有無を言わさない雰囲気に加え新たに増えた無礼者の放った言葉に、シャルロット・ブリューは己の背後に立つ
「もしかして、どこか痛むの?」
恐る恐ると言った感じで、シャルが問う。
シグムントはまばゆい光を放ちながら銀色の巨大な竜の姿から小さな竜のそれへと変えたのち、翼をわずかに動かした。
「翼を少々、な。ニ、三日は大事を取りたい」
シャルにしか聞こえないほどの少量の声で、シグムントは訴える。
シャルは、長年付き合って来たはずなのに彼の負傷に気付けず、それに対して申し訳ない気持ちを覚えた。
「なに、気を負うことはない。時間さえ経てばこのくらいの傷、すぐに癒えよう」
「......ごめんなさい」
「さて、寮へ戻ろう。今日はもう遅い」
そう言われて顔をあげてみれば空はうっすらと紫掛かっていた。
「......そういえば結局、あの無礼者3人組はいったいなんだったのかしらね」
ふと唐突に現れたあの無礼者のことが頭の中に浮かび、首を傾げながら呟く。
「気になるのか?」
まるで見透かしたように尋ねるシグムントに、シャルは思わず取り乱してしまう。
「な......! ば......バカなこと言わないでちょうだい! お、お昼のチキンをパンくずに格上げするわよ!」
「落ち着け、シャル。チキンからパンくずでは格下げだぞ。どちらにせよ、パン屑では私の体は持たないがな」
「も、もう......黙りなさいよね。いちいち揚げ足も取らないで。いい?」
そんな風に反目する掛け合いをしながら、1人と1体は荒れた校庭から去っていくのだった。
☆
その夜、トータス寮の東棟305号室にて。
「リュウさん、わざわざ雷真のために寝床を確保してくださりありがとうございました。こちらはお礼の品です」
異常なほどニコニコした夜々が、こちらにホクホクと湯気の立つお茶を差し出してくる。
どこか有無を言わさない様子に、俺は嫌な予感を覚えつつ受け取った。
「リュウ、ストーップ!!」
コップの端に口を付けて今に飲もうとしたとき、雷真がそんな声を上げる。
「な、なんだよ雷真。せっかく夜々が入れてくれたお茶なんだぞ」
「ものすごく嫌な予感がする......リュウ、飲む前に匂いを嗅いでくれーーいや、むしろ嗅いでください!」
「やだ、雷真。嫌な予感だなんて♡」
「怪しいな、ものすごく......」
アジーンにまでそんなことを言われ、俺は渋々匂いを嗅ぐ。
と、見た目はお茶のはずなのに、お茶には有ってならない臭いが漂ってきた。
「......? お茶じゃないな.....何の臭いだ、これ......?」
「......チッ」
「ちょっと待て、夜々。今なんで舌打ちした?」
慌てて雷真が夜々の取った行動を問い詰める。
夜々は唐突にもじもじとし始め、仔犬を彷彿させるような目で俺と雷真を見た。
「夜々は今日の戦いで怪我をしてて。火傷も少し......リュウさんだって人形使いなのですから知っていますよね? 私たち
「俺が邪魔だって言いたいのか」
夜々の言いたいことがわかってしまい、俺は思わずため息を吐いてしまう。
「あー、もう。わかったよ。俺のベッドは夜々、お前が使え」
「え? 良いんですか?」
驚いた表情を浮かべ、夜々が尋ねてくる。
わざとらしいにもほどがあんだろ、おい......。
「あぁ。ただし今日だけだからな?」
「はい♡」
「だ、だがリュウはどこで寝るつもりなんだ?」
「俺か? 俺はアジーンと一緒に寮の屋上で星でも見てくるよ」
どこかビクついた様子の雷真に、俺はさらりと答える。
(「楽しそうだな、リュウよ」)
(「あ、やっぱわかっちゃう?」)
ふとアジーンがテレパシーで話し掛けてきて、俺は雷真と夜々にバレないよう小さく笑った。
普段の雷真からは想像も出来ないような今の様子に今すぐにでも笑い転げてしまいそうで、俺はとっとと窓に手を掛ける。
「んじゃま、おやすみなさい。お二人とも」
「あ、リュウ!!」
雷真の叫び声を背に、一気に窓から飛び降りて俺のみにトランスを発動する。
言い忘れたが、トランスには3つパターンがある。
1つめは俺とアジーンが変身するもの。2つめはアジーンのみが変身するもの、そして3つめは今みたいに俺だけが変身するものだ。
臨機応変に発動出来るもんだから、ものすごく便利なんだよな、これ。
「よっ、と」
トランスで竜人へと姿を変えた俺は一気に屋上まで背中の翼を使って高度を上げ、屋上に着いたところでトランスを解く。
さっそくごろりと適当な場所に寝転がって空を見てみると、空は綺麗に晴れており、星がよく見えた。
「アジーン、お前も来いよ。星めっちゃ綺麗だぜ」
空を指差しながら、アジーンを呼ぶ。
アジーンはパタパタと羽ばたいて俺の腹の上に着陸すると、わずかに首をもたげた。
「なぁ、アジーン。あれ、見てみろよ。なんか大きな犬っぽくない?」
「いや、それよりもあちらのほうが犬っころっぽいぞ」
「いや、あれってどっちかっていったら熊だろ?」
そんな感じで俺らは星でいろんな動物を思い描いていった。
「......リュウよ」
どのくらいが経ったのか、一段落したところでふとアジーンが呼び掛けてくる。
「ん?」
俺は仰向けで空を見上げたままその呼びかけに応えた。
「お前は......私とリンクしたことを憎まないのか?」
あまりにも唐突過ぎる質問に、思わず上半身だけ起こしてアジーンを見てしまう。
「は? いきなりなんなんだよ。らしくないな。......前に言ったような気がするけど、リンクしちゃったもんは仕方ないだろ?」
「......前からずっと思っていたが......やはりお前は他の適格者とは違うな。オリジナルでさえ、最初は私を憎みはしなかったが恐れていたというのに」
その言葉に、俺はまた寝転がって空を見上げたまま内側に意識を向けてみる。
「......たぶん、認めちゃってんだろうな」
「? どういう意味だ?」
俺の言葉に、アジーンがハテナを浮かべる。
俺はアジーンの腹部に手を置いて口を開いた。
「前に言ったよな。俺が転生した身で、神様との約束で前世の罪は転生した先で償うって。そんときに言われたんだよ。転生してから前世の罪を償うんだから、転生した際にはその罪相応のデメリットがついてくるって。だからこの歳まで罪を償おうとしなかったから父さんも母さんも死ぬことになったんだと思うし、その直後にお前とリンクしたのも罰が下ったんだ、ってーーごめんな、こんな話。ツッコミにくいだけなのによ」
「......お前はそれでいいのか?」
「え?」
思わぬアジーンの聞き返しに、俺はまた起き上がってしまう。
「運命に抗わず、流されるがままに生きる......それでいいのか?」
「そりゃ......さすがに嫌だよ。けどアジーンには過ちから学ばず再び汚れちまったこの世界を浄化しなくちゃなんねーっていう大事な役目があんだろ? ドラクォの内容を知ってるからこそ受け入れてられるけど、そうじゃなかったら俺はお前とここにはいないし、犬猿の仲にすらなってると思うぜ」
「リュウ......」
「さ、もう寝ようぜ。なんか叫び疲れたわ」
クスクスと笑いながら、俺は小さくため息を吐いて目を閉じる。
「そうだな」
俺の腹の上でアジーンが頷き、体を丸めているのがわかった。
「おやすみ、アジーン」
「おやすみ、リュウ」
そうしてお互いに挨拶を交わし、目を閉じたときだった。
ふと下のほうでぎゃーぎゃー騒ぐ音がしているのに気が付き、俺は顔をしかめながら起き上がる。
「あいつら、せっかくベッド譲ってやったのに寝ないつもりかよ」
落ちないようにゆっくりと屋上から覗いてみると、俺が出てきた窓には明かりこそついていないものの明らかに雷真と夜々のよくわからない言い争いが聞こえて来ていた。
「どうも一緒のベッドで寝るとか寝ないとかで言い争っているようだな」
ふと上昇しながら現れたアジーンに、俺は苦笑する。
「わざわざ見に行ったんかい」
「煩くては敵わんからな」
「ははっ、まぁ寮生活一日目だし多めに見てやろうぜ」
「リュウが言うのなら仕方あーー」
不意にアジーンの言葉が途切れる。
「? どうした、アジーン?」
「なにをしている、あれは......?」
「あ?」
俺はアジーンの見る方向をじっと目を凝らして見てみると昼間の校庭で黒い影が何かを貪っているのがわかった。
少しばかり遠いが、月の光が照らしているおかげでうっすらとだが見える。
「飯かなんかじゃねーの? ま、なんにしろ俺らには関係ねぇけどな」
「それもそうだな」
俺はそう言って謎の光景を見ないことにし、再び目を閉じた。
シャルとシグムントの掛け合いは完全思い付き制です、悪しからず(´・ω・`)
次話からは