転生したのに死ぬ前提?最高だね(`・ω・´)   作:吉田

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魔術喰い(カニバルキャンディ)編を書くときは図書室から借りてきた原作があったんですけど、今は何度図書室に足を運んでも借りられっぱなし。
貸し出し期間は2週間のはずなのに返って来ないってどゆことよ?と憤慨中ですが、かといって書かない選択肢はないのでアニメと睨めっこしながら頑張ってます。
耳コピツラたん......。
wi-fiがあって良かったとひたすら思います。


第二十六話:フレイの想い

夜々の悲痛な叫びが舞台から何度も上がる。

 

「雷真! 雷真! 目を開けて下さい、雷真!」

 

「チッ! なにやってんだ、あのバカ!」

 

その声に我慢出来ず、俺は踵を返して舞台に上る。

雷真の体......主に背中には縦筋の大きな斬り傷が入っており、あのケルビムとかいう自動人形(オートマトン)の刃を直接食らったような印象を受けた。

血は止まらない。

噴水のように溢れ出す血は辺りの草を赤く染め、血生臭いを広げるだけだった。

 

「そこの君! 今すぐ離れなさい!」

 

やがて医療班(?)が担架を持って現れ、雷真はそれに乗せられ学院の中に運ばれていく。

俺と夜々、シャルは慌ててそれらについていくが、当然の如く扉を閉められてしまった。

 

「雷真! 雷真! 雷真!」

 

夜々は一心不乱に閉じられた扉を叩くが開くはずもなく、その両手に紫色の光が発光される。

 

「おい、夜々! やめろ!」

 

それは魔術を発動した証拠で、俺は慌てて夜々を止めにかかる。

 

「離してください! 雷真が!」

 

「落ち着け。お前が取り乱してどーすんだ。そんなに雷真のことが信用出来ねぇのか?」

 

その言葉に夜々がピタリと止まる。

 

「リュウ! そんな言い方はないんじゃない?!」

 

それを聞いていたシャルが声を荒げるが、俺は振り向きもしなかった。

 

「どんだけ雷真が心配か分かる。お前を庇ってあんな怪我を負ったんだよな? だけど、そうやって雷真のことで騒いでたら見てるこっち側は雷真を信じてないようにしか見えねぇんだぞ。分かってんのか」

 

「......」

 

「信じろ、あいつを」

 

「......はい」

 

「......いい子だ。大丈夫、俺も一緒に信じてやるから」

 

そうして夜々の肩に手を置き、ここから離れようと振り返る。

と、そこには花柳斎と一緒にいた青を主とした着物の少女が立っていた。

 

「お前は確か花柳斎と......」

 

「いろりお姉様......」

 

夜々が呆然とした様子で少女ーいろりと言うらしいーの名を呼ぶ。

 

「夜々を宥めて下さりありがとうございました」

 

ぺこりと一礼するいろりに、俺は小さく鼻を鳴らす。

 

「別に。俺がしたいと思ったからそうしただけだ。礼を言われるようなことじゃないーー行こうぜ、夜々」

 

夜々が小さく頷くのを見て、俺はいろりの横を抜けて寮に向けて歩き出した。

 

 

「キンバリー先生」

 

校内、雷真の様子を伺おうと廊下を渡っているとちょうど保健室から出て来たキンバリー先生を見つけ呼び掛ける。

キンバリー先生は俺の声に背中を振り返り、俺の姿を目に止めた。

 

「どうかしたのかね、リュウ?」

 

「先生、雷真の様子はどうでしたか?」

 

「なんだ、君もその用事か」

 

「ということは先生も?」

 

「あぁーーあとほんの数ミリ深ければ肺が裂け、一センチなら心臓に行ってたそうだ」

 

キンバリー先生から伝えられた雷真の状態に、思わず笑みが零れる。

 

「ハッ......悪運の強い奴だぜ。ったく」

 

「私もそう思うよ」

 

「じゃあ雷真は無事ってことでいいんですね?」

 

「あぁ、問題ない」

 

その言葉に俺は小さく礼をする。

 

「ありがとうございました。これであいつの自動人形を安心させてやれます」

 

「......そうか」

 

「はい」

 

そうして踵を返し、俺はトータス寮へと向かった。

 

「リュウさん!」

 

自室の扉を開けてすぐ、夜々が待ち侘びたとばかりに声を上げる。

 

「雷真の容態は?!」

 

「大丈夫。致命傷は負ってねぇよ」

 

俺の言葉に、夜々の表情が和らぐ。

 

「良かったです......」

 

ふっ、と力が抜け、夜々が崩れ落ちる。

 

「おい、夜々!!」

 

慌てて夜々を支えるが、夜々の表情はとても安らいでいた。

きっと俺がいない間、今にも不安に押し潰されそうだったんだろう。

 

「......しょーがねぇな」

 

思わず頬が緩むのを感じながら俺はそのまま夜々を抱え、普段雷真が眠っているベッドに横たわらせてやった。

 

 

翌日。

雷真がいなくても授業は滞りなく進んだが、やはり昨日のことがあるからか周りの生徒の集中力は完全に薄れていた。

そして、夜会2日目を迎えた。

今日は昨日勝ち残った第99位と第98位......詰まる所ロキとフレイの姉弟試合がある。

昨日雷真に致命傷手前の傷を負わせたロキだ。

俺はフレイに

 

「上位は下位に対してサボれるんだ、俺の番が来るまで待てよ」

 

と提案してみたがフレイは首を振り、

 

「大、丈夫......たぶん、これは私が乗り越えなくちゃダメだと思うから......」

 

と敢え無く断られてしまった。

仕方なくシャルの隣に座って舞台を見守っているわけだが......。

 

「おい見ろよ、剣帝陛下はやる気だぞ!」

 

「そんな気張らなくても、50位以下が束になったって剣帝陛下には勝てないってのに」

 

ひたすら野次馬にイライラしてしょうがない。

黙ってみてろと言いたいが、シャルの手前でそんなことは出来ない(お嬢様だからたぶんプライドかなにかが傷付く気がする)のでとりあえず今はなんとか抑えている。

と、ラビを連れたフレイが舞台に現れ、ロキと対峙する。

無意識に、右手に力が入った。

 

「はぁ......正直意外だ、あんたは現れないと思っていた。この戦いから逃げるだろうと」

 

「そんなこと、しない......」

 

「ガキの頃からあんたは何をやっても鈍くて、不器用で、その上諦めが早かった。いつも何かに怯えて、俺の後ろに隠れていた。そのあんたが、俺とやり合うつもりか?」

 

「ロキは、子供の頃からなんでも出来たね。いつもはきはきしてて、頭が良くて、力が強くて、器用だった。私はロキの後ろにくっ付いて、隠れていればよかった。ロキは私を憎んでるのかもしれないけど......私は戦う! ロキの後ろにいるだけじゃ、誰も守れないから!」

 

「守る? なにを言って......」

 

「ラビ!!」

 

ロキの言葉を遮るようにして、フレイが指示を出す。

ラビが走り出し、フレイからもらった魔力で高密度の音をロキに当てに掛かるがそれはあっさりとケルビムに弾かれ消えてしまった。

 

「ぬるいな」

 

モーションもなにもない。

魔力を注いだのかすらわからないうちにケルビムからいくつもの短剣が飛び出し、ラビを切り刻んでいく。

 

「ラビ! もう一度!」

 

フレイは再びラビに指示を出すが、

 

「ぬるいと言っている!」

 

ラビが攻撃を仕掛ける前にケルビムの短剣がラビを貫いた。

その勢いのまま、ラビが地面に横たわる。

慌ててラビに駆け寄るフレイだったが、

 

「あ......」

 

そこに覆い被さる2つの影。

獲物を求めるように鋭く光るケルビムの刃。

俺は走り出していた。

 

「目を閉じろ、これで終わりだ」

 

「フレイ! ロキの手袋を奪え!!」

 

「っ!! えいっ!」

 

俺の声に叱咤されて、フレイがロキの手を掴む。

 

「なにっ?!」

 

だが、フレイの能力ではロキの手を掴んでも手袋を奪えるだけの素早さが足らず、転けてしまった。

 

「......惜しかったな」

 

足元に倒れるフレイの前にしゃがみ込み、ロキがその手から手袋を剥がそうとする。

今すぐにでも手助けしてやりたかったがこれはフレイの戦いで、部外者の俺はただ叫ぶくらいしか出来なかった。

 

「フレイ!」

 

「ガウッ!!」

 

だが、その言葉に呼応するかのようにラビが立ち上がり、ロキに向けて高音圧を放つ。

やはりそれはケルビムに弾かれたが、そのケルビムの装甲にラビが体当たりを食らわせた。

ケルビムがぐらりと揺らぐ。

 

「よくやった! ラビ......」

 

褒めようとしてそちらを見たとき、俺は思わず目を疑ってしまった。

 

「グルルル......ガアアァァァ!!」

 

巨大な咆哮が夜会の舞台に響き渡る。

照明という照明全てが衝撃波に耐え切れず割れ、辺りを照らすものは月のみとなった。

 

「ラビ......なのか?」

 

そこにいたのは確かにラビで、だけどラビじゃないとはっきり断言出来た。

筋肉が膨張し普段のラビの何倍も膨れ上がった体格、ここからでも感じ取れる異常なまでの殺気......まるで獲物に飢えた獣だ。

 

「あ、れ......なに、これ? ーーぅ......ぅぁ......あぁぁぁぁ!!」

 

「フレイ?!」

 

いつの間にか獣に気を取られていると横からフレイの悲鳴が上がり、俺は慌てて振り向く。

 

「っ......フレイ!!」

 

その先ではフレイが苦しそうに喉を抑え、悶えていた。

それだけじゃない。

フレイの周りから赤い液体が浮かび上がっていた。

それら全てが獣の元へと行き、そのまま吸収されてしまう。

獣はそれをエネルギー源とし、ケルビムに連発で高音圧の攻撃を仕掛けるが、やはりそれらはケルビムの前に意味をなさず、それどころかケルビムの短剣によって傷を負っていく。

その度にフレイが苦しそうな声を上げ、さらに血液を搾り取られ、そしてそれは獣の活動源となり修復剤へとなっていた。

 

「くそっ、なにがどうなってやがんだ! フレイとラビはどうしちまったんだよ!! ーーロキ......っ!」

 

俺が叫んだと同時に獣がケルビムの隙を掻い潜りロキを押し倒す。

 

「ラビ......ダメっ!」

 

フレイが苦しそうな声で獣を......ラビの名前を呼ぶが理性を失ったラビに言葉は通じず、今にもロキを食おうと狙い定めする。

 

「助けるわよ!!」

 

それに見兼ねたのか背後からシャルの声と足音が聞こえてくるが、直後聞き慣れた声が辺りを一気に静める。

 

「身の程をわきまえろ!!」

 

「キンバリー先生!!」

 

思わず振り返ってみるとやはりそれはキンバリー先生で、キンバリー先生はゆっくりとこちらに近付いてきていた。

 

「夜会の舞台に立てるのは招待された者だけだ。呼ばれてもいない舞台に上がるのは無作法というものだぞ」

 

「そんなことを言ってる場合ではーー」

 

「良いから引っ込め。適任の者がいるんだよ」

 

「は......?」

 

「へ?」

 

キンバリー先生の根拠のない言い分に思わずシャルと声が重なった。

次の瞬間ーー

 

背後でドスッという音がした。

 

「なっ?! ーー雷真!!」

 

「あの......バカ!!」

 

「俺も混ぜてくれよ。ダンスの相手がいないんだ」

 

その先には夜々に支えられ、顔が引き攣っているもののラビを蹴り倒した雷真がいた。




前話でのお気に入り登録ありがとうございました。
それではお疲れ様です(´・Д・)」
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