ありきたりな話かもしれませんが、よければどうぞ
本文部分追加(3/25)
→コメントを受け、変更させていただきました。
ふと気が付くと、俺はどこか薄暗い、一直線に伸びた通路のど真ん中に突っ立っていた。
「あ、れ......? ......どこだ、ここ?」
見慣れない景色に、思わず辺りを見回しながらとりあえず歩みを進めてみる。
「? 扉......」
すると少し遠くの方、通路の先に出口のようなものを見つけ、俺は無意識のうちにそこを目指して歩き出す。
扉はどうやら自動ドアのようで、俺を感知すると同時に上に開いた。
「......っ」
その先に見えたのは『死』そのもの。
様々な動物っぽいなにかの死体がいい加減に重ねられ、相当長い間放置されていたのか死体の周りにはハエがたかっていた。
そしてひときわ大きく目立つのは磔にされた、腐りかけた肉体を持つ巨大な竜。
いつもならこんなの見ただけで不快さのあまり逃げ出すのに、俺は何故かその竜に目を奪われていた。
おぼつかない足取りのまま、フラフラと竜の真下へと歩みを進める。
「......アジーン......」
真下に立ってその名を口にした時、目の前の化け物と呼応するかのように俺の心臓が普段よりも強く鼓動した。
☆
「っ?! はぁ、はぁ、はぁ......」
ガバッと布団ごと体を起こし、ドクドクとまるで限界まで走り切ったあとのような心臓を落ち着かせようと何度も呼吸を繰り返す。
「なんだったんだ、あれ......」
体になにか違和感がある。
俺は右手をじっと見つめつつ、試しに握ったり開いたりをしてみたがやっぱりなにかが違った。
「......なんだろ、しっくりこねー......」
思わず眉間に皺を寄せながらとりあえずアナログの目覚まし時計を確認してみると針は3時49分を示していた。
(まだこんな時間か......嫌な夢見たな......)
そう思いながら、俺はもう一度寝ようと布団に頭から被って目を閉じた。
「......くそっ、寝れん」
が、変な夢を見たせいなのか寝ようとしても寝れず、時計の音になんだかイライラしてきた俺は仕方なく起き上がることにした。
「あれ? 誰か起きてる?」
特にやることもないのでなんとなく廊下に出てみると、時間的に誰も起きてないはずなのに廊下にはリビングの光が漏れていた。
「父さん......?」
俺はそっとリビングを覗き見してみると、中ではなにをしているわけでもなくただソファに座って目を閉じている父さんがいた。
「ん? おぉ、リュウか。どうした、こんな時間に?」
俺の声に気付いたのか、父さんが驚いたような表情でこっちにこいと手招きする。
「うん、ちょっと変な夢見ちゃって寝れないんだ」
俺は正直に答えながら父さんの隣に腰を下ろす。
「変な夢?」
「うん。あのねーー」
親として気になるのだろう、尋ねてきた父さんに俺は先ほど見た、わけのわからない夢を愚痴のつもりで話した。
「ーーっていう夢を見たんだ」
のだが、ただの夢のはずなのに聞き終えた後の父さんの表情はどこか険しい感じを覚えた。
「やっぱり、か......」
「父さん......?」
父さんの呟きが理解できず、俺はつい不安になって父さんを呼ぶ。
「リュウ、少し待ってなさい」
が、父さんはそう言ってリビングから出て行ってしまい、呼び止めることのできなかった俺は一人取り残されてしまった。
そのままおとなしくソファで待っていると、少しして帰ってきた父さんの手には見たことのない置き物のようなものがあった。
「なにそれ? ーードラゴン?」
置き物の外見に、俺は素直に第一印象を述べる。
父さんは小さく頷いた。
「これはアジーンって言ってな、代々受け継がれているたった一つの自動人形なんだ。その大昔、俺らの先祖と共に厄災により閉ざされてしまった空を取り戻したとされる竜だって聞いてる」
「? それどっかで聞いたことある」
「有名な昔話だからな。つって、俺はお爺ちゃんからこいつを渡されるまで知らなかったんだが......。で、そんな竜がどうしてこんな形で残されているのかはまだはっきりしてないんだけどな、アジーンは最後の起動からかなり長い間一度も始動してないみたいなんだ」
「......不良品?」
父さんの説明に正直どう反応すればいいのかわからなかったが、幸いツッコミどころがあったのでなんとか会話を持続させる。
「いや、アジーンが起動するための条件があるんだってさ」
「条件?」
「簡単にいえば次の適格者が現れるまで起動しないってことさーー個人的には起動しないでくれってのが本音なんだけどな」
「......?」
父さんの言葉に、思わず首を傾げてしまう。
口ぶりからてっきり起動して欲しいのだとばかり思っていた。
「これはまだ俺しか知らないことなんだけどな......アジーンが再起動したとき、世界は終わりを告げるーーリンク者一人の命と引き換えに」
「厨二くさっ!? 父さんってそんなキャラだったっけ?!」
「バカ言え、ホントのことだぞ。アジーン本人が言ってたんだ」
「え? 父さん、アジーンと会ったことあるの?」
「夢の中で、な。俺は適格者じゃないからってそれ以降は会ってないよ」
「適格者じゃないって......そんなんどうやってわかるんだよ?」
「そのための証明がこれなんだそうだ」
そう言って、父さんが置き物......もといアジーンの形をした自動人形を強調させるように差し出す。
「もしこいつが動かなかったらそれでいい、だが動き出せば......あとは言わなくてもわかるな?」
小さく息を呑み、俺は差し出されたアジーンを恐る恐る手に取る。
......。
だが、いくら待ってもアジーンは動き出すことはなかった。
「......父さん、これって?」
「よかった......リュウは適格者じゃなかったんだな......」
「と、父さん......?」
目の前でへなへなと座り込む父さんに慌てて寄り添うと嫌な汗が手についた。
父さんの表情は傍から見てもわかるくらい疲労していた。
「ははっ、お前に悟られないようにしてたから安心した途端これだ......情けないな......」
「父さん......」
そのあと俺は父さんに寄り添いながら寝室へと一緒に行き、父さんが眠りについたのを確認してから自分の部屋へと戻った。
「アジーン、ね」
ベッドの上に座り、勉強机の上に置いたアジーンをじっと見つめる。
俺は知っていた。
アジーンという名前を。
この世界に伝わる大昔の話を。
『はるか昔、世界に、“大いなる災い”があった。
空は焦げ、瘴気は遍く地表に満ちた。
見上げるべき空を見失った人々は、足の下に生き残る術を見つけ出す。
大深度地下都市。
シェルター。
覆われた、第二の世界で、幾世代もの刻が過ぎる。
人々はもう、空を忘れたのだろうか......?』
これは俺が前世で大好きだったゲーム、ブレスオブファイア5ドラゴンクォーター(通称ドラクォ)というゲームのプロローグの一部だ。
何度も何度も繰り返し遊んでいたせいか、前世を離れて結構経っているのにまだ一言一句しっかりと思い出せる。
『下層地区のレンジャー、リュウは、任務で訪れたバイオ公社(生物化学工場)で、奇妙な体験をする。
閉ざされた地底の世界の物語が、動き始める......
この世界で生きるしかないとしても......
このまま生きるほうが楽だとしても......
その先に何があるか分からなくても......
何も知らないほうが幸せだとしても......
たとえ世界を壊してしまうとしても......
少女を救うために......
世界を開くために......
少年は空を目指す......
ニーナ、空に行こう』
これはもちろんゲームであるためリュウは無事にニーナを空に連れて行くことができ、そして俺が今いる世界はリュウが空を開いてから何年も経った世界なんだろうと思う。
父さんの話と照らし合わせてみれば多少食い違ったところもあったけど、それはおそらく長い時間が経ったからに違いない。
人伝いの話なんてみんなそういうものだ。
「いや、気のせいか......ありえそうな話じゃあるけど、さすがにないよな」
そう、信じられるわけがない。
ゲームだってアニメだって、元を辿れば全部人が考えた空想上のもの。
その世界に入るなんて絶対に想像なんかつくはずなかった。
外国の小説で、主人公が現実と異世界を往復する『ナルニア国物語』なんてものもあったけど、あれだってどこまで行ったって人の創造物に過ぎない。
「あーもーわっけわっかんねー」
バタンッとベッドに体を預け、瞼を閉じる。
(ったく、いったいなにがどーなってやがんだ俺の第二の人生は......でも、もしホントにドラクォの世界に来てるんだとしたら俺のキャラ設定ってどうなってんだろ......?)
そんなことを考えているうちにようやく眠くなり、俺は我慢することなくベッドに体を預けた。
その後、寝過ごして学校に遅刻したのは内緒である。
ブレスオブファイア6が発表されたけど、ブレスオブファイアシリーズ独特の特徴が無くなっちゃった気がする......
『私にとっての、君の存在』をどうかお願いします(`・ω・´)