転生したのに死ぬ前提?最高だね(`・ω・´)   作:吉田

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誤字修正(6/24)
→初っ端から誤字見つけた......(´・ω・`)
ちっちゃな訂正(8/29)
全体訂正(9/26)
タイトル編集(9/26)


第三十話:ラピュタ? うん、ただのフラグだね

朝日が瞼を通り越して目に染み、俺は目を覚ました。

 

「んだよ......もう朝......? ......って朝?!」

 

自分で呟いた言葉に慌てて起き上がり、そこでハッとなる。

 

「そういや先輩に送ってもらってそのまま寝たんだっけ......うー、体だりぃ」

 

目眩のせいで気持ち悪かった気分はすっかり良くなっていたが、今度は逆に寝過ぎたらしく体が重たくなっていた。

自分でもびっくりするくらい腰が痛い......。

 

「はぁ......よいしょっ、と」

 

重たい体に鞭を打ち、とりあえずカラカラの喉を潤そうとベッドから降りてシンクの前へ移動する。

そのままグラスに水を入れ一口飲んだ後、気合いに頬をぺちっと叩いた。

 

「うし、今日からまた頑張るぞ......ーーっと、ん?」

 

ふと手から変な臭いがして、クンクンと嗅いでみる。

 

「くっさ......なんだ、この臭い......俺なんかやったっけ?」

 

嗅いだことのない初めての臭いに思わず顔から手を遠ざけてしまう。

なんだか工場によくありそうな、油くどい臭いにとりあえず流水で洗ってみるがやはり臭いが臭いだけに落ちず、もう一度今度は石鹸で丁寧に手洗いする。

丁寧と言っても時間をかけるだけじゃたかが知れるだろうということで前世のバイトで覚えた手洗い方法を実践してるわけだが、まさかこんなところで役に立つと思わなかった......。

逆に言えばこんなときにしか役に立たないわけだけど。

 

「......お、取れた取れた。えっと、今何時だ?」

 

しっかり嗅ぎ直してから手を拭きながら時計を確認してみると、驚いたことにまだ7時前だった。

 

「なんだ、まだそんな時間なのかよーーうーん、講義の時間までなにしよう......? さすがにもう寝る気はしないしなぁ」

 

言いながら視線が窓の外に向き、自然と空へと移る。

 

「そうだな、久々に散歩でもして来るか」

 

そうと決まったら早速踵を返し、俺は扉へと向かう。

途中、何故か小上がりで眠っているアジーンを誘おうか悩んだが昨日一昨日(?)のことを思い出してしまい

 

「......ま、すぐ帰ってくるから別にいいよな」

 

と、結局1人で部屋を出ることにした。

 

「......とは言ったものの。どこに行こうか?」

 

トータス寮のエントランス前で右手を腰に当て、空いた手で髪の毛を弄りながら辺りを見回す。

当然ながらこんな時間帯なので辺りに人影はない。

恐らく......というより大抵の人はまだ夢の中だと思う。

こういうときに思い付くのが『寝起きドッキリ』なんだが、悲しきかな、いろんなことに巻き込まれ過ぎて部屋番号を知ってる友は0人だし、唯一のルームメイト雷真君も入院中でドッキリを仕掛ける相手すらいない。

つまるところ、気軽に会いに行ける友人もいなければ仮の目的地として図書館は選べない(こんな時間に開館してないのは身を持って体験した)し、他の施設もだいたい想像がつくので散歩するための方向性が全く見えてこなくて困ってるんです、はい。

別に当てのない散歩もありといえばありだが、俺的にそういうのは気が乗らない(というか嫌)のでこうして立ち止まっていたりする。

 

「いっそのこと散歩やめて、寮の屋上でゴロゴロしてようかな? いや、でもそれじゃあ何のために外出たんだって話だしなぁ......今から戻るのもなんか癪だし......ーーあぁ、もう! こんなことしてたら逆に時間の無駄だっての! とりあえず歩こう、うん」

 

わしゃわしゃと髪の毛を掻き毟り、寮の屋上へと向いていた視線を戻して歩き出す。

行く先が結局決まらなかったので気の向くまま適当に道を進んでいくと、気が付けば何故か学院の出入り口付近にいた。

 

「へぇ、こんな道もあったんだ」

 

辺りを見回しながら、感慨深く歩いていると、不意にD-ワークスでのあんなことやこんなこと(意味深)ーもちろん嘘だけどーが頭の中を駆け巡った。

そしてその結末を聞いたときのアジーンの態度も。

 

「......ヨミ達、大丈夫かな」

 

誰も教えてくれなかった。

いきなり意識がぶっ飛んだ理由も。

あのあとなにがどうなったのかも。

ヨミ達があそこから助け出してもらったのかどうなのかも、なに一つ。

神との会話である程度は予想出来るけど、やっぱり当事者から話を聞きたいっていうのが本音で、なのに聞いてもはぐらかされてばかりの現状に辛く感じるものがあった。

主にぼっちという意味で。

 

「......ま、そのうちわかるよな」

 

終わったことをぐちぐち悩んでいても仕方が無い。

そんなのが俺の性分に合わないのは自分でもよく知ってるはずだ。

 

ネガティブ思考になりつつある自分に気が付き、無理やりポジティブ思考へと切り替えた俺は止まっていた足を動かして今度は自身の知ってる道を帰る。

来た道なんかに帰ってみろ、迷子にしかならない自信しかないぞコラ。

と、そうしてしばらく歩いた頃だった。

 

「きゃ......っ!」

 

「は?」

 

不意に頭上から思わず漏れたみたいな声が聞こえ、空を見上げる。

 

「えぇぇ?! 嘘だろ?!」

 

女の子が降ってきていた、それもものすごい急降下で。

天空の城ラピュタみたいなゆっくりとした落ち方じゃなく、普通に重力を伴って落下する女の子が。

 

「え、あ、ちょっ?! ト、トランス!」

 

俺はとっさに魔力を練り、放出した魔力を自身に纏う。

瞬く間にいつも通りの赤い竜人へと姿を変えた瞬間、

 

ズキンッ!!

 

「あぐっ......」

 

不意に心臓を鷲掴みにされたような痛みが走り、フラッとよろめいてしまう。

 

「う、うぅ......くそったれ......ッ!」

 

俺はそれを頭を振ることで誤魔化し、おそらくここから飛び降りたであろう建物の壁を伝って女の子を受け止めた。

 

「......ふぅっ。なんとか間に合った」

 

そのまま背中にある噴出口(・・・)でそっと着地し、彼女を地面に寝かせる。

 

「えっと......こういうのって頬っぺたはマズイんだよな......? よ、よし、肩で行こう......肩で......」

 

完全に気を失ってるっぽい女の子を起こすのに一瞬セクハラという単語が思い浮かび、戸惑いつつも肩を軽めに叩こうとする。

 

「って、シャル?」

 

そこで初めて失神中の女の子がシャルだと気が付き、俺は呼び掛けながら“シャルならまぁ別にいっか”と彼女の頬を軽めに叩くことにした。

 

「おい、シャル。起きろ」

 

すると気が付いたのか、シャルの目がうっすらと開く。

 

「う......うぅん......っ?!」

 

彼女の視線が俺を捉えた瞬間驚いたように目を見開き、そして

 

「きゃあぁぁ! 変態!!」

 

パァンっ!!

 

といっそ清々しいほど音が鳴り響いた。

......俺がビンタで叩かれた音だった。

 

「いってぇなシャル!! なにすんだいきなり!!」

 

思わずカッとなってシャルに声を上げると、視線の先でシャルが手で頭を守りガクガクと怯えているのがわかった。

 

「ってあれ? シャルじゃ、ない......?」

 

パッと見シャルに似ているが、よく見てみればそもそものところで髪の毛の色が違う。

シャルの髪の毛は雷真曰く輝くような金髪だが、彼女の髪は亜麻色を宿しているのだ。

 

「お姉さまの知り合い......?」

 

女の子が俺の“シャル”という言葉に反応したのかしていないのか、そっと目を開ける。

 

「お、お姉さま? ーーあ、ほら、掴まれよ」

 

「ありがと......ーー私の名前、アンリエット・ブリューって言うの......」

 

俺の手を借りて体をゆっくりと起こし、自身の名を明かした彼女に対して俺は頭の整理が追い付いてきていなかった。

 

「え、あいつに妹なんかいたの? 初耳なんだけど」

 

「初耳......?」

 

「あ、えっと、初めて耳にする......まぁ簡単に言うと聞くって意味だ、うん」

 

「......そう、なんだ」

 

ふっ、アンリの顔に小さな陰りが見える。

 

「アンリ?」

 

俺はつい名前を呼んでしまうが、彼女は小さく首を振るだけだった。

 

「なんでもないの......」

 

「そ、そうかーーとりあえずこんなとこにいるのもあれだし、まだ早いんだ。寮まで送ってやるよ」

 

「うん、お願い......」

 

「えっと......グリフォン女子寮でいいのか?」

 

アンリが頷いたのを確認し、俺は彼女と共にグリフォン女子寮へと歩く。

 

「そういやなにをどうしたらあんな建物から落ちたんだ?」

 

ふと気になって(普通のヤツなら真っ先にこれを聞くんだろうな)俺は前方を向いたまま尋ねてみるが、何故か距離を取って歩くアンリの返事はなく、俺は白けたのを感じながら“やっぱなんでもね”と打ち切った。

それから少し歩いて女子寮へと到着した俺はアンリと一言二言交わし、一直線にトータス寮へと戻った。

 

 

「勝者、静かなる騒音(サイレントロア)!」

 

そんな審判の声に辺りの観客が歓声を上げる中、早くもフレイが夜会の舞台から立ち去ろうとする。

 

「フレイ!」

 

俺はその背中に呼び掛け、小走りで彼女の元へと寄った。

フレイがその声に気が付き、振り向いて俺の姿を認める。

 

「あ、リュウ......」

 

「お疲れさん、随分頑張ってるみたいだな」

 

「うん......この子たち(・・)が頑張ってくれてるから......」

 

「たち?」

 

その言葉に彼女の足元からガウッと犬の声がいくつも(・・・・)する。

見ればラビと同じ装甲を着けるダックスフンドが俺の足に向かっていた。

それだけじゃない。

コリー、グレートデン、シェパードもこの場にはいた。

 

「その子はロビン。あとはこっちから順にリベエラ、ルビー、レビーナって言うのーーほら、挨拶」

 

フレイの指示にラビ以外のガルムシリーズがワンッと一声した。

 

「そっか......みんな助かったんだな」

 

「うん」

 

「良かった......あ、あのさ」

 

「なぁに?」

 

「今更って感じもするが、なんでまだ夜会に出続けてるんだ? ヨミ達も助かったんだし、これ以上無理することもないだろ?」

 

ちょっと恥ずかしい気持ちを覚えつつ、頭をポリポリと掻きながら尋ねる。

 

「ふふ......ホント、今更だね」

 

「う、うるせーよ!」

 

クスリと笑みを漏らしたフレイは少し俯きがちに、けれどもはっきりとした意思が込めて教えてくれた。

 

「私やロキの心臓にはね、機巧が組み込まれてるの。それを取り除くためには魔王(ワイズマン)になって禁術が使えるようにならないとダメなんだ。私はお姉ちゃんだから、今度からは守られてばっかじゃくてロキを守る側に立ちたいの」

 

「......そっか、頑張れよ。俺も応援してやっから」

 

「うん」

 

俺は踵を返し、フレイに向かって小さく手を振る。

 

「じゃあな、呼び止めて悪かった」

 

「ううん、平気。またね」

 

「おう」

 

そうして夜会会場から立ち去ろうとしたときだった。

 

「あ、リュウ!」

 

不意に呼び止められ、振り向いてみると久しぶりに風紀委の腕章を着けたニーナが見えた。

 

「あ、先輩」

 

「体のほうはもう大丈夫なの?」

 

「えぇ、もうこの通りなんともないです」

 

「そう、良かったわーーリュウはこの後用事とかある?」

 

その言葉に俺は首を傾げた。

 

「いや、別にないですけど......なんでですか?」

 

「実は、ちょっと手伝って欲しいことがあって......ホントは病み上がりのあなたに頼むべきじゃないのはわかってるんだけど......」

 

「厄介な仕事、ってことですよね?」

 

言いながら風紀委の腕章に視線を送ると、彼女は小さく頷いた。

 

「......わかりました。俺に出来ることならなんでもやりますよ」

 

「え......? ホントにいいの?」

 

「はい。先輩には寮まで送ってくれたこともありますし」

 

途端にパッと笑顔を浮かべたニーナが

 

「ありがと! それじゃあ案内するからついてきて!」

 

「うわっ! ちょっ、先輩!!」

 

そう言って予備動作もなしにグッと腕を引き、俺は思わず転けそうになりながらも彼女にについていった。

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