転生したのに死ぬ前提?最高だね(`・ω・´)   作:吉田

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第三十一話:魔術喰い再来?!

夜会会場からニーナに腕を引かれ、連れて来られたのは魔術喰い(カニバルキャンディ)の件以降もう二度と来ることはないと思っていた風紀委主幹の執務室だった。

 

「うわぁ、なんか懐かしいなぁ」

 

本当に厄介な仕事が出来たのか、部屋は資料や本で散らかっている。

というほど汚くはないけれど。

前回よりかはかなり進歩してるのは間違いなかった。

人が違うから当たり前か(´・Д・)」

 

「にしても先輩、なんでこの場所なんですか? 他の場所でもいいのに......」

 

そんな中俺になにか見せたいものがあるらしく、資料を探っているニーナに話し掛ける。

ここにいると嫌でもあのモヤシ野郎(フェリクス)のことを思い出すので出来れば違う場所にして欲しいんだな。

と、

 

「そういえば言ってなかったわね.....フェリクスもリズもいなくなった今、実質上私が主幹のようなものなのよ」

 

「マジで?!」

 

ニーナの発言に、俺はつい脊髄反射並に反応してしまう。

確かにモヤシ野郎がいなくなってから誰が主幹務めてんのか気にならないこともなかったけど、知り合いが似た立場にいたことには正直に驚いた。

なんとなく誇らしくなるのは仕方がない。

 

「まだ手続きは踏んでないけれどねーーはい、お待たせ。これをちょっと見てくれないかしら?」

 

ようやく見つかった資料をニーナが俺に寄越し、俺はそれに視線を向ける。

 

「これですか? ーーっ......んだよ、これ......?」

 

それは、一枚の写真だった。

自動人形の腹部に開けられた、焼けたような跡。

辺りに飛び散った部品。

 

まるで魔術喰いの事件を彷彿させるような現場のソレだった。

 

「......また、魔術喰いでも現れたんですか?」

 

自分で聞いておいて、すごくバカな質問をしたと思う。

魔術喰い......フェリクスは雷真にフルボッコされてもう学院からは居なくなったはずだ。

それが停学になったのか退学になったのか、はたまた自主退学をしたのか見当もつかないが、あれ以来フェリクスの顔を見ていないと言うことだけはハッキリとしている。

 

「ううん。フェリクスはもうこの学院にはいないもの、それはありえないわ。それに魔術喰いのときは心臓......つまり魔術よね、それが飴玉みたいに綺麗に抜き取られていたけれど、今回は手口こそ似てるもののそういうわけじゃないのよ。犯人の意図はわからないけれど、今のところ心臓は無事だから技師に頼んで直してもらっているわ」

 

その言葉にホッとする。

ニーナの説明にあったように魔術喰いの場合は心臓がやられていたので被害にあった自動人形も直せず仕舞いだった。

そうやって考えれば自動人形が失われなかっただけまだマシかもしれない。

 

「良かった......」

 

「でも、これだけじゃないのよ」

 

「まだあるんですか?」

 

「残念ながら、ねーーはい、これ」

 

「......」

 

更に渡された写真は全部で10枚以上に上り、内半分は別アングルも含め、背景からして外で襲撃されたんだとすぐにわかった。

が、残りの半分は俺の見間違いだと思いたいが、寮の一室を背景に写真が撮られていた。

 

「今日のお昼に同じ風紀委の知り合いからこの話を受けてね、実は昨日の夜から起きてるみたいなのよ」

 

「昨日の夜から?!」

 

「えぇ......おまけに外だけにとどまらず寮内へ侵入、学生達の寝込みを襲ってるから被害数は早くも10数体に及んでるわ。ホント、魔術喰いのほうがまだ可愛かったぐらいよ」

 

「魔術喰い、か......」

 

そういえば魔術喰いのときは破壊された自動人形の他に行方不明者が20人くらい出たんだったっけ......。

 

「人形使いのほうは無事なんですか?」

 

「それについては安心して良いわ。犯人は必ず人形使いの意識を刈り取ってから犯行に及んでるみたいでね。それも用があるのは自動人形のほうだけらしくて、どの件も必ず使い手は半壊した自動人形の近くに寝かせられてるわ」

 

「じゃあ目撃証言とかないってことじゃないですか......」

 

「そこが私達も動けない理由なのよね......当たり前、って言われたらそうなんだけれど」

 

はぁ......とニーナが重たいため息を吐く。

 

「あの、先輩」

 

俺の呼び掛けに、彼女は“なぁに?”と顔を上げる。

 

「俺は、主になにをしたらいいですか?」

 

「そうね......ホントは一緒に事件を解決して欲しいんだけど、リュウには、あの魔術喰いを倒した赤羽雷真って人にどうやって魔術喰いの正体がフェリクスだってわかったのかそれを聞いてきて欲しいのよ」

 

「あのー、俺一応現場を目撃したんスけど......?」

 

「現場を目撃したじゃ、なんの参考にもならないでしょう?」

 

「まぁ、そりゃそうかーーわかりました。雷真に聞けばいいんですよね?」

 

「うん、お願いーーところで雷真って呼び方が随分親しい感じがするけれど、もしかして知り合い?」

 

その言葉に、俺はつい吹き出した。

 

「知り合いもなにも、ルームメイトですよ」

 

「そうなの?!」

 

「はい。でも、雷真は今入院中なんでまた明日聞いてみます」

 

「わかったわ、私のほうも出来る限りのことはするね。ホント、ありがとね」

 

申し訳なさそうな表情を浮かべたニーナに俺は小さく微笑んだ。

 

「任せてください」

 

そうして部屋を出ようとしたとき、ニーナに呼び止められた。

 

「先輩?」

 

「その......あともう一つ聞いてもらってもいいかしら?」

 

 

「ただいま〜」

 

寮の扉を開け、言いながら俺は無意識のうちに靴を脱ごうとして慌てて履き直した。

たまにやるんだよな、こういうの。

前世じゃそれが当たり前の世界だったから、今でも癖が抜けなくて困る。

確か雷真の故郷もそういう習慣のある国だったっけ?

あんま覚えてないけど。

 

「随分と遅かったな、決着がつかなかったのか?」

 

パタパタと羽ばたき、ここ最近必要なこと以外話してくれなかったアジーンが顔を覗かせて珍しく話を振ってくれる。

 

「いや、決着はすぐに付いたよ。俺が遅かったのは別の用事」

 

雷真が入院している関係で夜々もいない広々とした部屋で大きく背伸びする。

 

「別の用事?」

 

「あぁ。なんか昨日の夜からだってのに、自動人形が半端ないペースで破壊されてる事件が起きてるみたいでさ。俺もそれを手伝おうと思って」

 

そのまま元俺のベッド現夜々のベッドに寝転がり、布団を肩にまで掛ける。

 

「......それがいったいどうしたら寝るという結論に繋がるのだ」

 

冷静に突っ込んできたアジーンに、俺はふと思って口を開く。

 

「つーか、わざわざ聞かなくても俺の記憶覗けば早い話じゃね? 説明すんの、地味に面倒なんだけど」

 

「だが、そうは言っても結局教えてくれるのだろ?」

 

「性格わりぃなぁ......ま、別にいいんだけどーー俺の場合どうやって魔術喰いを暴いたのかを雷真から聞くだけだから、どっちにしたって明日になんなきゃ動けんのよ」

 

「なるほどな」

 

「ホントは深夜に様子見をしたいんだけど、今日はさすがに眠い」

 

「もうそんな時間か」

 

俺の言葉を受けてアジーンが時計を仰ぐと、時刻はすでに0時を回っていた。

 

「夜会の後だったし、仕方ねぇよ」

 

言いながら布団の中でもぞもぞとし、横になって体を丸める。

 

「あ、アジーン。隣来るか?」

 

「......遠慮しておく」

 

「ちぇっ、良い抱き枕が出来ると思ったのにーーんじゃ、おやすみ」

 

「だから遠慮すると言ったのだーーあぁ、おやすみ」

 

アジーンと挨拶を交わし、俺はそっと目を閉じた。

 

 

「......っ!!」

 

不意に背後から異様な殺気を捉え、男子学生は慌てて振り向く。

 

「......」

 

が、それをするよりも速く首に手刀を当てられ、あっさりと意識を刈り取られてしまう。

体を支えるための力を失い、フラッと崩れ落ちる男子学生をドラゴナイズド・フォーム下のリュウは優しく抱き留めた。

直後、リュウの姿が一瞬にして掻き消えた。

地面を蹴った際に生まれた土煙はわずか、次の瞬間には

 

ガッ!!

 

と、男子学生の自動人形の腹部を貫いていた。

そのまま腕を振り上げて自動人形を空へ投げると、リュウは躊躇うことなく『D-ブレス』を放ち粉砕した。

 

「ニ体目......か」

 

隣でアジーンが呟き、『クールダウン』したリュウが小さく首を振る。

 

「さすがに対応が速いね......いくらここに自動人形が集結しているとはいえ、こうも警戒されてるとやりにくいよ」

 

「魔術喰いという似たような前例があるからな......対応が早くなるのも仕方があるまいーーそろそろ寮へ乗り込むか?」

 

「いや......今日は外で狩るよ。俺が止めない限り熱りが冷めるとは思えないけど、さすがに連続じゃ無事に帰ってこれるとは思わないからね......それになるべくリュウ君の生活を壊したくはないし」

 

「相変わらずどこまでも甘いな、お前は」

 

そんなときだった。

不意に背後からゆったりとした拍手が鳴り、リュウはとっさに振り向き抜刀の体勢を取る。

ーーが、今の彼の腰に剣はなく、それに気付いたリュウはバレないよう静かに体勢を整えていた。

 

「お見事、今のは凄く良かったよ」

 

そう言いながら近付いてくるのは、小柄で少女のような線の細い体つきをした貴族系統の少年だった。

 

「......」

 

「そう警戒しないでくれ。僕に君をどうこうするだけの力はないよ」

 

そう言われて警戒を解く人はいない。だが、リュウの本能は少年に対して危機感を覚えていた。

自分の左手をアジーンに差し出し、そこに留まらせて警戒する彼を宥める。

 

「ふふっ、利口だねーー君に少し頼まれて欲しいことがあるんだ」

 

「......なにをさせたい?」

 

「なに、簡単なことさ。これから始まるショーを盛り上げてくれるだけでいい......もちろん、断ればどうなるかわかるよね?」

 

いつの間にか少年の手の中には、数枚の写真が握られていた。

そこに映るはD-ダイブ中のリュウが自動人形を貫く瞬間。

 

「くっ......」

 

アジーンの歯噛みする声が漏れる。

 

「......」

 

リュウはただ言葉を発さず、静かに少年へと近寄った。

 

「そう、それでいいーーさぁ、ショーの始まりだ」

 

少年の嬉しそうな声だけが、夜の闇に反響した。

 

ーーリュウの表情は、ただただ悔しそうに歪められていた。

 

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