背後で爆発が起き、爆風が辺りのコンテナを一気に吹き飛ばす。
「......ーーはぁっ、はぁっ、はぁっ、」
巨大な4足歩行タイプの機械、アシモフを葬り終えた俺はクールダウンし荒い息を何度も繰り返していた。
ゲームではアシモフのHPを0にした時点で自爆スイッチが入り、3ターン後に自爆するかD-ダイブしてD-ブレスを空打ちすれば戦闘が終わったはずなんだが、そもそも自爆スイッチが入ってくれる気配すらねぇ。
ずっとニーナを援護しながら彼女に氷結魔法を発動させ続けるのも酷だし、女の子にずっと任せっきりってのもアレだったから仕方なくD-ダイブしたんだが相変わらず原作知識?通り体力の消耗が半端なくて困る......。
体力の消耗、というよりは寿命が縮んでいくような感覚なんだけど。
使う度に思う......ホント命懸けだよな、これ。
「バケモノめ......」
ボッシュが首を何度も振りながら、一歩また一歩と後退りする。
「隊長......俺は......俺たちは行きます......だから、そこをどいてくれ」
「リュウ......それはお前の意思ではない」
その言葉に反応するかのように、鼓動が自分の中で大きく響く。
その原因が何かなんて考えなくたってわかる......アジーンが表に出ようとしていた。
「それは、お前にリンクした実験体の意思だ」
ーー違う
「違う......これは、紛れもない俺の意思だ」
「ーーもう、話し合いでの解決は無理なのだな......」
悲しそうな声でポツリと呟いたゼノが、持っていた剣を水平にする。
「このままじゃ俺は、あんたを殺す......あんただけは殺したくはないんだ。だから、頼むから......そこを開けてくれ」
「リュウ、悪いが......ここまでだ」
俺の言葉を返すことなく、ゼノが問答無用で剣を引き抜く。
空になった鞘を華麗な動きで腰に直すと今度は空いている手でもう一本の剣を引き抜く。
「......」
俺は一度深呼吸をし、今にも暴れ出してしまいそうなアジーンをねじ伏せながら剣を構えた。
「はぁっ!」
ゼノが気合の声を上げながら、腰を低くして一気に俺へと近付いてくる。
俺は歯を食いしばりながらそれを受け止め、なるべく拮抗状態を保てるように力をコントロールする。
今気を抜けば一瞬にして体のコントロールをアジーンに奪われ、圧倒的な力でゼノを殺すだろう。
『リュウ 1/8192』にとってゼノはただの剣の師匠という認識かもしれないし、それ以上かもしれない。
ゼノ自身彼を秘蔵っ子と考えたり、周りから彼は『隊長のお気に入り』と呼ばれるくらいの溺愛ぶりだ。
すでにこの手で何人も葬った俺が言う資格なんてないのかもしれないが、彼にとって思い出深いゼノを殺したくないというのが俺の気持ちだった。
別にゼノを殺さなくたって今後の展開には影響なんてないだろう、なんて思うが所詮は俺の「こうだったらいいな」という妄想でしかない。
実際にはどうなるかなんてわかるわけないし、だからこそ俺はハッキリと決めかねていた。
殺すか、否か......をーー
「っ......!!」
「リン! ニーナ!!」
伏兵のレンジャーがいたらしい、唐突にリンの呻き声が聞こえ俺の意識は完全にそちらを向いてしまった。
リンの頬に小さな擦り傷が見える。
「戦闘中に、余所見はするなと何度教えた?」
「しまっーー」
耳元でゼノの声が聞こえ、とっさに前を向いた時には遅く。
気付けば俺はコンテナに背中を打ち付けていた。
「かはっ......」
肺の中の空気が押し出され、息苦しさが身体中を駆け巡る。
「リュウ!」
俺を呼ぶリンの声が、ものすごく小さく聞こえていた。
ーードクンッ
(まずっ?!)
一瞬、ほんのわずかな時間意識が飛びかけただけで鼓動の音が体中に響き、ギリギリ手放さなかったドラゴンブレードを握る力が強まる。
俺は急いで頭を左右に振り意識を呼び戻したあと、
「......っ!!」
視界に映ったソレに地面を強く蹴り左へと緊急回避した。
背後でドゴンッ!と音がし、慌てて振り向く。
と、ゼノの放った紫音絶命剣がコンテナにクリーンヒットし粉砕していた。
あと少し遅かったら俺がああなっていたかもしれない、と嫌でも思いざるを得ない。
尋常じゃない怖さが俺の戦意を一気に削り取っていく。
それでも俺はなんとか立ち上がり、構えを取り直す。
......ゼノの瞳の奥が少し嬉しそうなのは気のせいだと思いたい。
「私たちのことはいいから、リュウは自分のことに集中して!!」
ほとんど叫ぶようにリンが言い、そのまま自身の戦いへと身を投じる。
俺はそれに答える余裕もなく、息を整えながらゼノを注意深く見つめた。
「こうしていると、訓練していた頃を思い出すなーーだが......!」
言いながらゼノが再び走り出す。
彼女の武器、紫音剣2本とその実力で繰り出される様々な剣術にドラゴンブレード1本で対応出来るはずがなく、気が付けば完璧に防御へと回っていた。
「くっ......だあぁぁぁぁ!!」
長くも短い攻防の末、ギリギリのラインで防御ばかりしていたせいかつい集中力を切らした俺を僅かな炎が包み込む。
そのまま防御姿勢から無理やりに押し上げ、紫音剣の1本を弾き飛ばした。
「っ......!」
無理に弾き飛ばした衝撃にゼノが痛みを堪えながらも俺の腹部目掛けて残った1本の紫音剣を薙ぐ。
ゼノがそれを行った速さも、距離的にも、避けようのない攻撃のはずなのに
「......?!」
気付けば俺は地面を強く蹴り上げ、後ろ側へと“人としてはあり得ない”ジャンプをしコンテナの上へと回避していた。
視界の端で、チラチラと火の粉が見える。
「その強さ、あまりにも危険......やはり今、ここで止めねば......!」
先ほどの痛みに痺れているのか、紫音剣を握る手で利き手ではない方を抑えながらゼノが声を上げる。
彼女の眼つきが、本気のそれへと変わっていた。
殺したくはない......その気持ちは変わらないし、偽りもない。
けど、本気で来るもの全てを流し半殺しにするのはその人を馬鹿にしているみたいでもっと嫌だった。
それは、この世界に紛れ込んでから新たに芽生えた、俺にとって初めての拘りだった。
「だったら俺は、それを突破するまでだ!」
コンテナから飛び降り、俺はドラゴンブレードを構えゼノに向かって愚直に突っ込んだ。
視線の先で、彼女が俺の特攻に備え紫音剣を構える。
一閃。
交わり、勢いのまま互いに離れた俺の背後で消え入りそうな声が聴覚を刺激した。
「ーー強く、なったな......」
そのまま力無く倒れ込む音がし、俺はゆっくりと振り向く。
その先にはどことなく満足そうで嬉しそうなゼノの死に顔があった。
クロスハイパー。
それが俺の放った、この場に相応しい
「隊、長......っ?! うあぁぁぁぁ!!」
ゼノが倒れる音に気付いたのだろう、リンやニーナと戦っていたレンジャーはそう言うと逃げるようにしてこの場を去った。
「......」
やっと終わった......そんな達成感2割の疲労感8割を覚えながらも俺は顔を上げとある方を見る。
「......」
恐怖を顔に貼り付けたボッシュが、何度も現実を否定するかのように首を振っていた。
1歩、また1歩と後ろへ下がっていく。
「......っ!!」
俺と視線が合った途端、声こそあげなかったものの先ほどのレンジャーと同じようにボッシュが踵を返して走り出す。
「ボッシュ......ッ!!」
俺はそれを慌てて追いかけようと足を動かすが
ーードクンッ
「グっ......?!」
タイミングが良いのか悪いのか、心臓を鷲掴みにされたような痛みが走り胸を押さえながらそのまま崩れ落ちてしまう。
「リュウ!!」
リンとニーナが慌てて近付いてくる気配を感じつつ俺は痛みを堪えながらもなんとか顔を上げきる。
だが、やはりというべきかその先にボッシュはおらず、ドアも沈黙を保ち続けていた。
「クソったれ......なんで今なんだよ、ちくしょう......っ」
言いながら俺の体力は限界を迎え、そのままぶっ倒れる。
ギュッと拳を握ってみるが、入れた力は萎んでいく風船のようにすぐに抜けてしまった。
この“レンジャー3連戦”で1人生き延びたボッシュが仲間にプライドを傷付けられ、俺を殺すことに執着すると知っていたからこそ今のうちに大怪我の1つでも負わせておきたかった。
そうすれば『逃げてきた』なんて言われてプライドを傷付けられることもなくなる......。
だが、結局俺の手がボッシュに届くことはなかった。
当たり前だ、もう少し冷静に考えればわかることじゃないかーーボッシュを器として蘇ったチェトレを無理やりD-ブレスで押し上げることで、空へと続く『メインゲート』を開くのだから。
これも物語には欠かせない1つの展開ポイントだったんだ。
ーーここまで来たら、あとはもうなるようになるしかない......
立ち塞がる敵を薙ぎ倒してエンディングまで行くだけだ
徐々に暗くなる視界の中で俺はそう密かに心を決め、瞳を閉じた。
うふふ......うふ、うふふふふ......
リュウ・ヴォル「どうした?! いきなり! 気持ち悪い!!」
いや、ね?
実はーーいいや、活動報告に載せたからそれ見て悟って......?
2度も言い......もとい書きたくないよ......(´°ω°)チーン
どれだけ訂正すればいいんだろ......はぁ......
リュウ・ヴォル「......(今は触れないでおこう、うん)」
☆
最近になって編集し直されてるのは、そういうことなんです、はい(´・∀・`)