転生したのに死ぬ前提?最高だね(`・ω・´)   作:吉田

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やっと書けました(;´・ω・)

これで3巻も終わりです

次話からは、3巻のラストにある後日談+オリジナルをぶち込んでいきます(`・ω・´)ゞ


第四十一話:決着

アンリに支えられ、ボロボロのリュウが現れたのは夜会に出ようと自室を出た直後だった。

 

「雷真さん......」

 

「夜々!」

 

「あ、はい!」

 

雷真と夜々を認識し、縋るような目で呟いたアンリに雷真は夜々に呼びかけ、慌てて2人かかりで彼女の代わりに意識朦朧のリュウを支える。

いろいろと危ない道を渡ってきた雷真にとって、この状態でギリギリ意識を保てているのが不思議な気持ちだったが、何かに安心したのか雷真と夜々に支えられたまま気を失ってしまった。

 

「夜々、悪いがリュウをベッドに寝かせてくれないか?」

 

「わかりました」

 

夜々はしっかりと頷き、補助程度にもらった魔力で1人担ぎ部屋へと戻っていく。

 

「アンリ、一体なにがあったんだ?」

 

雷真は、廊下で立ち竦むアンリに声を掛け、自室に連れ込むと早速尋ねる。

夜会のルールでは、交戦フィールドに駐留する1時間以内に相手が現れなければその日はお流れとなってしまうので、最悪の場合規定に沿えるだけの時間......即ち23時までに舞台に上がればいい。

遅刻はあまりよくないが、今はそれどころではない。

 

「ごめん......なさい......私が、私なんかのせいでリュウさんが......」

 

いつの間にかアンリの両目には涙が限界まで溜まり、今にも零れ出しそうだった。

どうやら、リュウがここ最近姿を見せなかったのにはシャルが無茶ばかりしていることとなにか関係があるらしい。

本当は当人(リュウ)の口から聞けるのが一番好ましいが、それが不可能な場合関係者に聞くのが最良の策ではある。

だが、アンリもリュウの状態に負い目を感じとてもじゃないが話せる状態ではない。

 

「......」

 

リュウの手当を一通り終えた夜々と視線を交わし、雷真は肩を竦めながらアンリの背をを軽くさすった後そっとその場から離れた。

最初に会った時やシャルの手かがりを求め訪ねた(正確には追いかけ回していた、だが)ときなどから、彼女には男嫌いがあるように思えたが今は特に反応を示すことはなかった。

それほど責任を感じている、ということなのだろう。

この分ではリュウが目覚めるまでは話にならなさそうだ。

それこそ、夜会の規定に従えるだけの時間はある......と思う。

 

「アンリ、俺らがいない間リュウを頼むな」

 

念のため、そう言って雷真は夜々と部屋を出る。

だいぶ遅れてしまったが、それでも交戦フィールドでの待機義務を果たせばなんら問題はない。

そうして寮室には声を押し殺して泣くアンリと寝息を立てるリュウが取り残された。

 

「ーーうっ......」

 

それから30分と少し経った頃。

気を失っているはずのリュウの声がし、アンリが慌てて駆け寄る。

 

「リュウさん!」

 

「アンリ......そうか、おれ......」

 

よかったと何度も呟くアンリを見て、リュウは気を失う前までのことを思い出し申し訳ない気持ちになる。

 

「その様子だと随分心配かけたみたいだね......ごめん」

 

痛む体をゆっくりと起こしながら謝るリュウに、アンリは顔を上げた。

 

「そんな、リュウさんはなにも悪くありません! 全部私のせいなんです! 私さえいなければこんなことには......」

 

「違うよ、それは」

 

「えっ......?」

 

そんな風に返されると思わなかったのだろう、わずかに潤んだ瞳でアンリはリュウを見つめる。

対してリュウは、少し言いづらそうに、けれども目はしっかりと彼女を捉えたまま口を開く。

 

「上手く言えないけど......アンリはなにも悪くない。もちろん、シャルも。確かに、彼女のしてきたことは決して褒められるようなことじゃないし、むしろ非難されて当然のことだ。けど、それだってあの子が仕向けなければ起きるはずがなかったんだ」

 

「でも、私さえいなければあの人が、私を人質にしてお姉さまをそう仕向けることも......」

 

「アンリ、少し前に君が言ってたよね? 自分のせいで、家族がバラバラになったって......久しぶりに会えたとき、シャルの様子はどうだった?」

 

セドリックに命令され、時計塔跡地で泣き崩れるアンリを彼の元へ連れて行こうと抱き抱えていたとき彼女のほうから話してくれたのだ。

まるで呟いているような声の大きさに加え、その声は完全に風の音に負けていたがD-ダイブ下のリュウにそんなことは関係ない。

とはいえ、突然のことに驚いたリュウが聞き返したときはアンリはなんでもないと首を振ってそれ以上はなにも言ってくれなかったのだ。

 

「聞いてたんですか......?」

 

「ごめんね。聞き返しても教えてくれなかったから......」

 

そう言うと、アンリは俯いてしまう。

わずかな沈黙のあと、

 

「......お姉さま、すごく嬉しそうだった。こんな私と、また会えて不幸になるわけないって、言ってくれたの......」

 

そのときのことを思い出したのだろう、再び目に涙を溜め始めたアンリにリュウは言う。

 

「確かに君の言う通り、いなければとまではいかないけれど、君が人質にならなければシャルがあんなことをする必要はなかったのかもしれない。けれど、逆に言えば人質になったおかげで、もう二度と会えないかもしれないシャルに会えたんだ。だったら、どんな過程があったにせよ、それは喜ぶべきだーーアンリ、君はもっと、自分に自信を持っていいと、おれは思うよ」

 

「リュウ......さん......」

 

その言葉に何かを感じ取ったのか、アンリの涙は堰を切り、泣き出してしまった。

 

「......」

 

リュウは静かに彼女の背中をさすり、宥める。

やがて泣き疲れてしまったのか、アンリはリュウの座るベッドに体を預けたまま寝てしまった。

リュウがアンリを自身の寝ていたベッドに寝かせてあげようと思い立ったとき、不意にガチャリとドアノブの音がし寮室の扉が開いた。

雷真と夜々が帰ってきたのだ。

 

「雷真......」

 

「リュウ! もう体はいいのか?」

 

「うん、大丈夫。心配かけてごめん」

 

こちらに近付きながら問う雷真に、リュウはそう返す。

 

(......?)

 

リュウの雰囲気にどこか違和感を覚えるものの、雷真は気のせいだと割り切って

 

「いや、リュウが平気なら別にいいーーって、アンリのやつ、寝ちまったのか」

 

ふとベッドに体を預けて眠るアンリを見つけ、ふっと小さく笑う。

 

「こんなとこで寝たら風邪引くだろ......っと」

 

言いながらアンリを持ち上げ、所謂お姫様抱っこをする雷真。

それを見てリュウはベッドから降りる傍ら、彼の相棒は何故か戦慄した。

 

「雷真?! もしかしてそのままアンリさんと添い寝......?!」

 

「ちげーよ!! いきなり雰囲気ぶち壊してんじゃねぇ!!」

 

「夜々とも添い寝してくださいです~~っ!!」

 

「お前はそればっかだな!! たまには違うこと言えよ、ツッコミに疲れるだろ!!」

 

もはやそういう問題で片付けてもいいのだろうか、いつも通りのやり取りを始めてしまう2人。

リュウは苦笑しつつ、

 

「雷真」

 

「あ、おぅ。すまねぇな」

 

雷真の名を呼んでベッドが空いたことを知らせた。

彼は夜々との言い争いを中断してすぐに返事をし、アンリをベッドに寝かせる。

そうして布団を掛け終えた後、彼は体の向きを変えリュウと相対した。

 

「さて、と。アンリに支えられて意識朦朧で現れたときはびっくりしたっつーかビビッたんだが、一体なにがあったんだ?」

 

するとリュウは申し訳なさそうに視線を逸らし、小さく呟く。

 

「ごめん......今はまだ、話せない」

 

「は......? なに言って......」

 

「ホントにごめん......終わったら必ず話すからーーアンリのこと、お願い」

 

「待てよ、リュウ! どこに行く気だ?」

 

歩き出したリュウの腕を掴み、無理やり自身のほうへと視線を向けさせる雷真。

彼のまっすぐな瞳に、逃げれそうにない雰囲気でもあったがリュウはどこかかつての自分と重なるのを感じ小さくため息を吐いた。

 

「シャルは今日の深夜、必ず動く。それまでに彼女を止めないと」

 

「なんでそんなことが......」

 

これはシャルとアンリの問題であり、それに巻き込まれるようにして関わってしまったリュウの問題でもあるためなるべく無関係な人を巻き込みたくなかったリュウだが、最悪、この件のあらましを話してしまっても自身の行いに繋がる証拠を残さなければいい。

今はまだ、捕まるわけにはいかないのだ。

 

「おれもシャルも、弱みを握られてたんだ。おれはなんとか逃げてきたけれど、シャルは違う。アンリを人質に取られているから、逃げたくても逃げられなかったんだろうし、助けも求められなかったんだ。あの子が救われるとしたら、相手の戦力を削る他にない」

 

「シャルのやつ......待てよ? じゃあ、あいつが学院長を狙うのは!」

 

「うん......約束の時間までに学院長を殺さないと、アンリを殺す......最初から関わっていたわけじゃないからわからないけれど、大体そんなところだとーー」

 

「......くそっ! 夜々!」

 

どこか焦りを含んだ表情で走り出す雷真を、今度はリュウが腕を掴み止める。

 

「どこに行くの? きみが行ったところで出来ることなんてなにもないかもしれないんだよ?」

 

「だからって、こんなとこで大人しく待ってられるか! それに俺には世界最高の自動人形が......」

 

「おれのこの傷は、全部相手の自動人形につけられたものだ」

 

「っ!!」

 

不意に切り出された内容に雷真は息を呑む。

 

「奇襲を掛けられたせいで対応が遅れたのもあるけど、向こうの力のほうが遥かに上だった。それこそDーダイブ(あの力)を使えば勝てるかもしれないけど、そんな相手に少しだけタフでしかないきみがなんとか出来ると思ってるの?」

 

「......」

 

雷真が押し黙る。

確かに雷真はここに来てから事件に巻き込まれっぱなしで、その度にかなりの怪我を負っている。それでも今ここに立っていられるのは完治とまではいかなくともこの短期間で回復し、そしてその強い想いがあるからだ。

だが一方で、リュウがD-ダイブして戦っていたほうが良いのも事実だ。

たった一発、ドラゴナイズドフォームのリュウが振り下ろした腕がシンの胸に掠っただけで出血したのだからその威力は間違いなくこの状況を打破する手になるだろう。

そしてリュウは、自身の力を信じて疑わない。

 

「お願い、きみはここでアンリを守ってて。シャルは、おれが止める」

 

故に雷真にそう言うが、彼もそう簡単には退かない。

否、退くわけにはいかなかった。

時計塔が壊されたその夕方、自身のことを探るなと警告に来たシャルの涙を見てしまったから。

あいつを助けると、そう決めたから。

 

「......いや、俺がやる。あいつには叶えなくちゃなんねー大事な夢がある。それを、あいつからわざわざ話してくれたんだ......シャルを説得するなら、俺にやらせてくれ」

 

やはり、どこまでもまっすぐな彼の瞳にリュウはなにを言っても退きそうにないことを悟り、小さく頷く。

 

「......わかった。なら、こうしようーー」

 

そうしてリュウは、互いが許容できそうな案を提示するーー。

 

 

思いがけない人物に驚いていたシャルの顔が真面目に戻り、厳しい声音でリュウに命令する。

 

「そこをどきなさい、リュウ」

 

「シャル、もういいんだ。もう、無理をすることもない。あとはおれに任せて」

 

「あなたになにがーー」

 

出来るのよ、そう紡ごうとしたシャルの言葉が止まる。

リュウの体を覆うように、あのときの炎がいつの間にか彼を包み込んでいた。

赤くなった(・・・・・・)瞳はすでにシャルを見ておらず、シンただ1人を見つめている。

 

「もう、躊躇わない。きみだけは絶対に見逃せない」

 

その雰囲気に圧され、慌ててシャルがその場から退く。

リュウは静かに歩みを進めつつD-ダイブをし、シンの前へと行く。

雷真はとっさにリュウとの会話を思い出し、シャルの元へと掛けた。

 

その案とはこうだ。

まず、雷真がシャルとコンタクトを取る。

リュウがアンリを匿ったことも含めて彼女を説得してもらい、もしそこで上手く彼女の気持ちが変われば尚良し、変わらなかったとしても説得という時間稼ぎによって刻限まで残りわずかになれば、事が起きないことを不審に思ったセドリックがシンを寄越すはず。

そうしてシンが現れればあとは雷真にはアンリとシャルを守ってもらい、リュウは彼を再起不能までに追い込む。

当然雷真がシャルを説得している間にリュウとアンリの姿が目撃されれば説得が上手く行かない可能性が高いので、2人はシンが現れるまで付近の草陰に息を潜めることが絶対だ。

それが、セドリックが誰の目にも触れず、好き勝手にしていられるのもその前提にはシンという執事がいるからだと考えたリュウの作戦だった。

 

「アンリ!! 来い!!」

 

雷真の呼びかけに、草陰に潜んでいたアンリが慌てて彼の元へ駆け寄る。

 

「アンリ?! どうしてここに!!」

 

シャルはその姿を見て、混乱しているようだった。

だが、状況がそれを許さない。

 

「シャル、ここは危険だ! 退くぞ!!」

 

「退くぞって......なにを言ってるの?! 退けるわけないじゃない!! 私はーー」

 

「お前が逆らえなかった原因は、アンリが人質になってた他にアイツの存在があったからだろ? だったら、そいつを打ん殴っちまえばいい。ただ、その役はリュウがやってくれるが、ここじゃ巻き添えくらうかもしれねーんだ」

 

「......わかったわ」

 

渋々と、シャルは走り出した雷真とアンリに続く。

すでにシグムントは巨大化をやめ、シャルの傍を平行して飛んでいた。

一方でドラゴナイズド・フォームとなったリュウは宙を浮くシンを睨みつけていた。

 

「またあなたですか」

 

対してシンは、呆れたように、しかし敵意を含む声音で話す。

 

「あのときは正直驚きましたよ、たった一掠りであそこまでの傷を負ったのは初めてでした」

 

「......」

 

だが、リュウは一言も発さない。

ただ殺気だけが強く増していく。

 

「私の体は神性機巧マシンドールと言いましてね、そこらへんにある自動人形(クズ)とは違い遥かに規格外なのですよ。その私がたった一回の攻撃如きであの傷を負ったその屈辱が、あなたにはわかりますか?」

 

そう言って、シンの姿が掻き消える。

その直後リュウの背後、頭上辺りに姿を見せ高速の蹴りが振り下ろされた。

不意をつく一発。

が、リュウはそれを冷静に捉え、振り向き両腕を交差させて受け止める。

ズンッという衝撃と共に、わずかに地面が揺れる。

 

「くっ!!」

 

無言のままリュウに自身の足を弾き飛ばされたシンの声が漏れる。

リュウはそのまま互いの間に生まれたわずかな距離を背中の噴出口で全速力で追撃し、右腕を薙ぐ。

とっさにシンは空中で体勢を立て直し、その場から高速で離れた後息つく暇もなく攻撃を開始する。

シンの主な攻撃手段は高速で動き、相手の視界から失せ視覚をついたところで一撃ごとに重たい蹴りをお見舞いするものだ。

だが、リュウはその全てを見切り、時には受け止め、シンにほんのわずかで一瞬の隙が生まれたところを確実に攻撃する。

D-ダイブ下の彼の主な攻撃手段は腕を振り下ろす『ヴィールヒ』、腕を薙ぐようにして敵を殴る『ウラガーン』、腕を一気に振り下ろし敵が怯んだ隙にアッパーをかます『タルナーダ』とたった3つしかないが、その威力は折り紙つきで時と場合を考え臨機応変に使いこなせればそれはもはや最強と呼んでも過言ではない。

その分使えば使うほどに命が削られてしまう捨て身の技でもあるが、命尽きるまでシンとの戦闘が続くとは思えなかった。

それほどまでに圧倒的な力をシンは行使され、気付けば彼の体は血に塗れていた。

 

「はぁ......はぁ......」

 

荒い息を繰り返し、リュウを警戒するシン。

 

「す、すごい......」

 

圧倒的な戦闘を見て、雷真と共に身を隠していたシャルがぽつりと呟くが、雷真は嫌な予感がしていた。

そして、それは当たってしまう。

 

「......」

 

冷静に考えれば、あと一発。

タルナーダでも放てば終わる戦いだったが、そのときリュウの体から火が吹いた。

 

「ウオオォォアアァァ!!」

 

それまで無口だったリュウが獣のような叫び声を上げ、シンのいる方へと愚直なまでに突っ込んでいく。

当然の如くシンは軽々に避け、チャンスと捉えたのかリュウの側頭部に蹴りを叩き込む。

が、繰り出された足を掴むと彼は勢いよく後方に投げ飛ばし、シンを追撃しようと走り出した。

直後、ザクッとリュウの直線上に突き刺さる一本の剣。

 

「っ!!」

 

突然のことにリュウの動きが止まり、大勢を立て直せなかったシンが先のほうで地面を転がる。

 

「目を覚ませ、リュウ」

 

いつの間にか剣の柄にはアジーンが留まっており、異様な殺気(・・・・・)に怯むことなくアジーンはリュウの瞳を見つめていた。

虚ろな(・・・)瞳に徐々に光が宿り、リュウはハッとなる。

 

「クールダウンしろ、これ以上は危険だ」

 

そう言うアジーンにリュウの表情はわずかに暗くなるが、自分でも気付いているのだろう、すぐにD-ダイブを解く。

 

「ごめん、アジーン......ありがと」

 

人へと姿を戻したリュウが開口一番に言うが、アジーンは首を振る。

 

「気を付けろ、リュウ。それ以上力を使い過ぎればアイツが戻ってきたとき反動で壊れるぞ」

 

「うん......わかってる」

 

そう言ってリュウはアジーンの留まる剣の柄を握り、地面から引き抜く。

そうしてシンに視線を戻した頃には、シンはわずかな息切れまでに落ち着かせ、それでもこちらへの警戒は薄まるどころか強まっていた。

脅威的な姿からそこら中よく見かける人に戻ったというのにも関わらず。

 

「どうしたのです? そのまま私を攻撃すればあなたの勝ちだったものを。今更手加減ですか?」

 

「ふざけるな、手加減なんて絶対にしない」

 

そう言ってリュウは、柄の握り方を変え両手で掴み、勢いよく地面に突き刺した。

 

「くらえ!」

 

言葉と共に地面が大きく揺れ、衝撃が走る。

 

「クッ......ッ! おのれ......!」

 

『絶命剣』の衝撃波により足元をすくわれたシンに、リュウはすぐさま剣を引き抜き左側に構えたあと、わずかな炎を纏い人間離れした速さで近付く。

 

「終わりだ」

 

一気に肉迫し、そのまま切り上げるように見せかけて右側から剣を振り上げる。

咄嗟のことに最初の動きを読んで腕で防ごうとしたシンだったがものの見事に騙され、そして

 

「ぐうっ!」

 

さらに腕を半捻りして左側からも切り上げられたその剣の軌道は最初の邂逅によって付けられた痕を辿っていた。

治り掛けていた傷口から勢いよく血が噴き出し、シンは渾身の力でリュウの顔面向けて蹴りを放つ。

 

「......っ!」

 

目と鼻の先まで迫ったシンのつま先にリュウは息を呑み、慌ててバックステップで距離を取る。

そうして上手くリュウとの距離を稼げたものの、さすがに血が抜け過ぎたのかシンはがっくりと膝を突き息を荒くしていた。

ごふっ、と血の塊を吐き出し、地面が赤く染まっていく。

 

「シンッ!」

 

と、不意に戦場に割り込む一人の少年がいた。

 

「大丈夫かい、シン?」

 

セドリックだ。

 

「大変......申し訳ございません......坊ちゃま......」

 

心配する主に、息も絶え絶えのままシンは応える。

セドリックは小さく頷くと、シンを支えながらゆっくりと立ち上がり

 

「神性機巧のシンを相手にしてここまでやるなんて、人を超えてもはや化け物だね」

 

「......」

 

「君を混ぜたら面白そうだと思ったけど、間違いだったみたいだ」

 

「クッ、待て!」

 

言いながら、シンと共にすぅっと姿が薄れていくセドリックに、リュウは慌てて走り出すが、辿り着く前にそれは完全に消えてしまった。

 

「クライマックスにしてはいささか物足りないけれど、ノルマは達成出来たんだ、今回は見逃してあげるよ。でも、次はないと思ったほうがいい」

 

まるで全体に響くような声にリュウは顔をしかめるが、それで終わりなのだろう、それ以上セドリックの声が聞こえることはなかった。

 

「逃げられた、か......だが」

 

アジーンが隣で言い、チラリと視線を送る。

それに釣られてリュウも見てみると、その先には草陰から飛び出しこちらへと駆け寄る雷真達がいた。

 

「終わったんだね」

 

「あぁ。今は少し休め、力の使い過ぎだ」

 

「うん......そうさせてもらうよ」

 

そう言って、リュウはアジーンから雷真らへと視線を戻した。

 

「リュウ、大丈夫か!」

 

「うん、大丈夫。ありがとね」

 

「いや、礼を言うのはこっちさ。俺一人だけじゃ、たとえシャルと協力したって返り討ちにあってたかもしれない......お前のおかげでこいつらを助けることが出来たんだ、ホントにありがとな」

 

「あ、あの、助けてくれてありがとうございました!」

 

雷真に倣って、アンリが頭を下げて言う。

シャルはと言うと、少し恥ずかしそうにモジモジと、けれどもハッキリと聞こえる声で

 

「......ありがと」

 

「うん」

 

それにリュウは小さく微笑みながら頷き、そして

 

雷真達の視界に映るリュウの姿がグラリと傾いた。

 

「「リュウ?!」」

 

「リュウさん!!」

 

慌てて雷真が、倒れる直前のリュウを抱き留める。

 

ー暴走したせいか......短時間に命削り過ぎたかな......ー

 

徐々に縮まっていく視界の中で、リュウは呑気にも自身の状況を悟る。

 

この世界を閉ざすとしても、彼らだけは地下で生き延びて欲しい。

 

そんな言葉に出来ない、想いを秘めながら。




リュウ・ヴォル「なぁ」

うん?

リュウ・ヴォル「クロスハイパーで〆るんなら、最初からぶった切ればよかったんじゃね?」

うるさい、それは私も思ったけど、そもそもドラゴンブレードないし剣がないんだから無理なの

リュウ・ヴォル「木とか折ってそれっぽくすればよかったろ......」

その行動してるリュウがアホみたいになるから、アホキャラはあんただけで十分なの

リュウ・ヴォル「サラッと何気に酷いこと言われた?!」

作者ですから(`・ω・´)
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