次で終わる気がする
シューッと音を立てながら、自身の肉体に付けられた傷がゆっくりとしかし確実に塞がっていく。
こうしてみると、俺って人間やめてるよな......。
そんな呑気なことを考えるが、そうでもしないとこんな状況、発狂してしまいそうだった。
「グッ......アアァァァ!!」
激痛なんてレベルじゃない。
悶絶なんてレベルじゃない。
意識を手放したくてもそれを許さない高圧電流が体中を駆け巡り、俺は喉が枯れるんじゃないかと思うほど叫ぶ。
「うっ......」
そしてそれは唐突に切られ、俺の首がガクンと落ちる。
体が完全に痺れ口の締まりが悪く、自分でも涎を垂らしているのがわかった。
正直汚いと思うが、そんな余裕でさえ今の俺にはない。
「っはぁ、はぁ、はぁ」
浅い呼吸を繰り返し、満身創痍にある俺を心配するどころか目の前にいる男は冷たい瞳をこちらに向け、もう何度目かもわからない質問を投げかけてくる。
「もう一度問う、その身にいったいなにを隠している?」
「......」
だが、俺はグッと唇を引き締めると先ほどの電流で溜まった唾を飲み込み、それ以降はただただ無言を貫き通す。
「答えよ」
「......」
そんなやり取りをもう何度したことか。
それでも俺が黙っていると、男は小さく鼻を鳴らし踵を返した。
やっと終わった......。
そう心の中で安堵する傍ら、去り際に男が呟く。
「次には必ず吐かせるからな」
その言葉に俺は“げっ”とあからさまにも嫌な顔をするが、すでに後ろを向いた男に気付かれることはなかった。
「ヤバい、本気で口が締まんねぇんだけど......」
さきほどは黙秘の意思表示に唇を引き締めたがやはり体が麻痺しているため、気が緩んだ隙にかぱぁっと口が開く。
情けないな、と思う。
そもそも事の始まりは、俺が先ほどとは違う男の問いに答えあぐね、結局答えないと決めたことが原因だった。
雷真に扮していた男に蹴り飛ばされ、よくわからん現象に意識を持っていかれ、目が覚めたら普段の白衣ではなく黒のローブを身に付けたキンバリーがいた......あの時俺は自分の身に起きたことを洗いざらい話したはずだ。
確かに、キンバリーには去り際に“幾つかの質問に対し嘘偽りなく答えろ”と言われ頷きもしたがハッキリ言ってあれ以上に話すことなどなく、そのときの俺は漠然と“さっき話したことを繰り返すんだろうな”と感じていた。
......まぁ、ものの見事に初っ端から外れたけど。
キンバリーが姿を消してどのくらい経ったのかわからないが、続いて現れた男はキンバリーと同じ黒のローブを羽織っており、俺は呑気にも
(またあのローブだ。先生の間で流行ってんのか?)
などと思っていた。
事実、キンバリーを含めそのときの俺の前にいた男とのちに来る男2人は
そんな奴らが、こんな人畜無害の俺に何の用だよ、とか、俺なんか悪いことしたか?など甚だ疑問だったのだが、どうやらわけのわからない現象に意識を持っていかれた後、俺はD-ダイブして散々暴れまくったらしい。
それは当然、俺を蹴り飛ばした男はフルボッコに。
その過程で医学部の一角を粉々にしたのだと言うのだから、どんだけ暴れたんだと自分でもツッコミたくなる。
そんな俺を止めてくれたのがキンバリーと言うわけだが、どうもD-ワークスでも暴走した俺を止めていてくれていたらしい。
まぁそんなことから監視の標的にされた俺はこの度のことから魔術師協会のお世話になることになったのだ。
たった2回でお世話になるとか、どんだけよ?と思うがそれはそれ。
「鶯の同胞から聞いた。リュウ・ヴォルフィード、貴様は“知らないうちに意識を持っていかれた”と述べたが、その裏自身の意識を持っていった者の名を知っているだろう? それは一体なんだ?」
そうして尋問2回目......初っ端からそう問われたときは、正直マジで驚いた。
なんで知ってんの?と言いそうになる気持ちを抑え、俺は一度冷静になって考える。
いきなりリュウが憑いていることを当てたのは、キンバリーが俺の話を流したからに違いない......俺が、わけのわからない現象、と言った時点でそれは考えればすぐにわかることだ。
だが、問題はそこじゃない。
今重要にすべきことはなにより、この問いに正直に答えるか否かということ。
確かに大人しく答えておけば俺は晴れて解放、なんて道もあるかもしれない。
......いや、それは甘過ぎるか。
監視はつくだろうが、ある程度の自由は許されるはず。
どちらにせよ、大人しく答えれば俺が助かるのに間違いはない。
だが、リュウはどうだ?
この世界をぶっ壊したいだなんて言っているのに、俺がその情報を公開したら逆にリュウはやり辛いだろうし、なにより成功しないと思う。
物騒な話なのだから、成功しないほうが良いのかもしれないけれど。
そんなことをウジウジ考えていたせいか、男は小さく“ふむ”と言うと、踵を返してしまった。
「またのちに返事を聞こう。良い返事を期待している」
そう言って姿を消した男などそっちのけで俺は、そのまま“ゔ〜”と悩む。
結論から言えば、最初にも言ったとおり俺はこの問いに答えないことを決めた。
例えその道を選んだことで酷い目に遭わされるとしても、俺はリュウ側についていたい。
この世界は、ドラクォが終わってから1900年も経ってる世界だ。
それでもなお、彼の意思が誰かに憑いて今も生きているなら(実際、俺に憑いてるわけだし)、きっとその目で見てきた闇は深いんだと思う。
前にアジーンにも言ったが、それが人間なんだと括ってしまえば話は早いが、それは俺個人の持論。
2000年も人の闇を見てきた相手にそんな単純思考の俺の持論が通じるとは思わないし、なにより俺もドラクォを知ってる身だから思うところが色々とあるのも事実だ。
おかげで俺の尋問はあっさりと拷問に変わり、誰かが来るたびに高圧電流を流される羽目になったが、有益な情報が得られないと判断されるまでの間だけ......のはず。
それがいつかなんてわからないし、気が遠くなるほど続いて限界を迎えてしまっても俺は後悔しない。
「......ん?」
ふと翼が羽ばたいている音が聞こえ、俺は自分でもわかるほどに不機嫌になった。
「無様だな、リュウよ」
それはどっちのリュウに対しての言葉か。
......俺以外にいるわけないか。
「......今更なにしに来たんだよ、アジーン」
とりあえず色々と言いたいことがあった(どこ行ってた、とか、なにしてた、とか)が、なによりもそれだけが疑問だった。
「そろそろだと思ってな。貴様の最後を看取りに来た」
「あぁ? 誰が最後だゴルァ。ちょっと表出ろや、叩き潰してやる」
何故かいきなり喧嘩を売ってきたアジーンをガン飛ばしていると、この場にはいないはずの声が聞こえてきた。
「ーー苦しくないの?」
「リュウ......」
声はその姿を裏切らない。
見れば今にも消えそうな光で形成された、見慣れたリュウの姿があり、その表情は悲痛に満ちていた。
「おれを庇ったばかりにこんな酷い目にあって、憎くないの?」
「憎くない......苦しくないって言ったら、嘘になるな。あんな高圧電流流されて平気なほうがおかしいだろ」
「どうして......おれなんか気にしないで、全部話せばよかったのに」
「俺の中にいたんだから、それくらいわかるだろ? それに......俺、前世のときからずっとあんたに憧れてたんだ。なんでもやり通せるあんたがカッコ良くて、俺もそんな風に慣れたらって......それはどこまで行っても2次元で、作られたキャラだってわかってたんだけどな」
苦笑する俺に、リュウはさらに眉を下げる。
「リュウ君......」
「それに、俺からなんの情報も得られないってわかったら相手も解放してくれるさ。だから、それまでの我慢だ」
「ううん......もう我慢なんてしなくていい、もうきみが苦しむ必要はないんだ」
「は? それってどういう......」
「言ったはずだ、最後を看取りに来たと」
俺とリュウの間に割り込む、アジーン。
普段なら“てめぇは黙ってろ”とか言うところだが、このタイミングで割り込んできたのがただの冷やかしだとは思えなかった。
明らかに意味深過ぎる。
「ーーっ!! ゔっ」
そう思ったとほぼ同時に俺の心臓は強く鼓動し、全身が激しい熱と高圧電流を流されている以上の酷い痛みが襲う。
「あっ......」
だが、なによりも。
「ああぁ......うああああぁぁぁぁ!!」
視界の端から徐々に迫り来る、闇。
それが、全てを物語っていた。
「い、嫌だ!! ちょっと待てよ、こんな話俺は聞いてねぇぞ!! こんな終わり方があってたまるか!!」
「......」
熱いのも、痛いのも、そんなのを無視出来てしまうほど今の俺は完全にパニックに陥っていた。
きっと、拘束具を解いたら手足首が真っ赤に腫れてるんじゃないかと思えるほど俺は動ける限りに動き、暴れる。
それでも、迫り来る闇が止まることはない。
「なんか言ったらどうなんだよ、リュウ!! くそっ......ーーあ」
そうして視界の全てが真っ暗に染まったとき、俺は自分の中で込み上げる思いにようやく気付いた。
それは
紛れもなく
後悔
終わり方がアレだけど、これで主人公は永久ログアウトです
年末以内にこれ終わらして、新しいの書きたいので精一杯
もちろん、その分クオリティは下がるだろうけど、その辺は新しいのが行き詰まったときとかそういうときに気分転換がてら変えようかなぁっと
なんか誤字脱字とかあったら待ってます
P.S.評価下さった方ありがとうございます!
評価バーに色がついて、すごい嬉しくて気付いたら携帯が飛んでましたww
今後ともよろしくです(*´ㅂ`*)