ゴトンゴトンと列車が揺れながら傾いていく。
それに従って自分の体も傾いていくのを感じて、俺は隣で眠っているアジーンを揺さぶった。
「アジーン、起きて」
「うぅ......どうした、リュウ?」
「もう少しで外に出られるよ」
そう言ってる間にも窓の外は真っ暗で代わり映えのない地下から地上の......しかも海の広がる景色へと変わっていた。
「ほら!」
「ん? ーーほぉ......?」
俺が指す方向を見て、アジーンが言葉を漏らす。
海の広がるその先には大陸があり、あそこがロンドンということになる。
あそこまで辿り着ければ学院まではあと半日だ。
「懐かしいな」
ぽつりと呟いた言葉に、俺は反応する。
「え? 見たことあんの?」
「あぁ。もう随分と昔になるがな、オリジナルがニーナと見に来たことがあったのだ」
オリジナルというのは、俺とアジーンとで名付けたドラクォの主人公であるリュウのことだ。
俺の名前がリュウだから、同じリュウだとちょっと......というかかなりややこしいかったんだな。
「あ、そうだ。なぁアジーン、オリジナルとニーナってあの後どうなったわけ?」
「あの後......?」
「空を開いた後だよ。ゲームのエンディングだとアジーンがオリジナルに
「......?」
まるで頭の上にハテナを浮かべそうな勢いで本気でわからなさそうなアジーンの顔。
あえて遠回しに聞いたのが間違いだったのかもしれない......。
「だから、いわゆる恋バナだよ、恋バナ!」
「......お前はそういうものが趣味だったのか」
途端に訝しむように尋ねてくるアジーン。
俺は一瞬で自分の顔が赤面するのがわかった。
「はぁ?! いや、待て待て待て待て!! なにがどうしてそうなるんだお前の思考回路おかしいんじゃねぇの?!」
別にやましいことなんてなにもないはずなのに、なんで俺は慌ててるんだろ......自分のことなのによくわからん......。
「通常ならば女性同士がするものではないのか、恋バナは」
「ならなんだよ、男同士はダメだって言いたいのか!」
「そうとは言ってはおらん。だいたい、私とお前は確かに生物学上男同士だが自動人形と人形使いであろう?」
「細かっ?! 別にどっちでもよくないか、それ!」
そんな益体もない話をしていると『まもなくロンドンです』という車内アナウンスが聞こえてきた。
「お、そろそろか。おいアジーン、今日は見逃しておいてやるけど、次はないからな。尋問じゃボケェ」
俺はなんだか楽しくなりながらアジーンにそう宣言し、テキパキ列車を降りる支度を始める。
アジーンはといえば俺の宣言を聞いて露骨に嫌な顔をしていた。
「ふふん♪」
先ほどまで海一面だった窓の外は早くも大陸に入り、駅のホームもまた近くなっていた。
やがて列車は駅に到着し、車内にいても聞こえてくる耳障りな音に顔をしかめつつ俺達はホームに降り立った。
さらば、寝台列車よ。
自部屋のベッド並みにふかふかで気持ちよかったぜ!(`・ω・´)b
「さて、と。アジーン、腹は?」
隣でパタパタと高度維持をしているアジーンに聞いてみる。
自動人形のくせに、人間のように飯を食べないとダメらしい。
毎回思うけど、変な構造してるよな、アジーンって。
「いや、問題ない。それよりもお前はどうなんだ」
「俺はちょっと小腹が空いたって感じ。ちょっとそこの売店でパン買ってこようと思ったんだけど、アジーンが腹減ってないんじゃなぁ......」
「私に構わず食べればよいだろう?」
「まぁそうなんだけどね」
正論を言われ、俺はアジーンに知られないよう顔を背けて小さくため息を吐く。
一人で食べるのが嫌で、一緒に食べたかったなんて言い出したらなに言われるかわかったもんじゃない。
「なに食べよっかなぁ......」
俺はさっそく売店の前に立ち、視線だけで物色する。
「お、たまごサンドイッチだーーすんません、これください!」
「相変わらずたまごサンドイッチが好きだな」
「うるせぇ、ガキで悪かったな!」
そうして手に入れたパンを手にアジーンに噛み付きながら、俺はアジーンと共にリヴァプール行きの列車へと乗り込んだ。
発車まではまだ時間があるようなのでたまごサンドイッチを片手に最後の復習へと入る。
ロンドンに来るまでの列車でやろうとも思った(実際にやった)が速攻で酔い、吐き気を催したためやるなら今しかないのだ。
「自動人形はなにを内蔵し、人形使いの魔力を受けて活動する人形か?」
「魔術回路」
「現在最も普及している魔術回路は?」
「イブの心臓」
「臓器についての禁書の名ーー」
「デ・オルガルム。なぁ、もう少し難しい問題とかねぇの?」
ため息を吐きながら俺は座席の背もたれに全体重を掛けると、アジーンに渡した教科書がこちらに飛んできた。
俺は慌てて飛んできた教科書を片手で叩き落としてからアジーンを睨んだ。
「うお、あっぶね?! なにしてんだ! 角が頭に当たったらどーする気なんだよっ!」
「そんなに文句を言うのなら最初から私に頼まなければよいだろう!」
「一人でやってたら答えが視界に入っちゃうからお前に頼んだんだよ! ーーん?」
ふと列車の外でトタパタと下駄を鳴らして走る音が聞こえ、俺は視線をそちらに向ける。
「とうとう着きましたね! ハネムーンの地、英国に!」
その先には黒いミニの着物に身を包んだ黒髪の可憐な少女が楽しそうにはしゃいでいた。
「この約束の地でついに、夜々は雷真のビックベンを受け入れますっ!」
「やめろ、紳士の地で!」
少女の瞳には精悍な顔つきをした少年が映っており、その少年はそんな少女に対して疲れたような表情を浮かべていた。
「なんだ、ただのリア充かよ......」
前世では年齢=彼女居ない歴だった上に、今世でも上の方程式が成り立ちそうなフラグを前に、あんなもの、見ていて余計に虚しくなるだけだ。
「あーぁ、俺も彼女欲しいなぁ......」
「お前みたいな人間を受け入れてくれるような心広い女性が居ればな」
「何気にサラッと酷いことを言うな!」
それにしても......と、再び外へ視線を向けてしまう。
(日本人、か。高校生ぐらいのリア充でロンドンに旅行って、どんだけ裕福な家庭なんだよ......羨ましいぜ)
日本で一生を過ごしていた前世の記憶を引き継いでいるからか、少年少女の容姿を見て俺はすぐにそう判断した。
私情が混ざってはいるが、そこはまぁ気にしない気にしない。
と、俺の乗っている列車が発車のベルをけたたましく鳴らした。
「このベル、リヴァプール行きじゃねぇか?」
「あっ! い、急ぎましょう!」
外できゃっきゃしていた少年少女が慌てた様子でこの列車に乗車しようとする。
「雷真! 早くっ!」
(なんだ、あのリア充もリヴァプールに行くのか。めんどくせぇなぁ......)
ま、目の前に来なければ別にいいかと俺は教科書をカバンにしまい、アジーンをくいくいと手招きをした。
「なんだ」
「学院まではあと半日あるからな。技術試験に備えて今のうちに寝ておこうぜ」
「私は別にお前の魔力さえあれば動けるのだが......」
「そうツマンネーこと言わずに付き合えってぇの」
「はいはい」
苦笑しながらも膝の上で体を丸めてくれたアジーンに手を置き、俺は背もたれに寄りかかって目を閉じた。
☆
体が列車の振動でだんだんと沈んでいく。
「うぅん......ーーッ?! いって!」
そのまま寝台列車なんかとは比べ物にならない硬さの座席に頭を打ち付け、俺は一瞬で目を覚ました。
「やべっ! 乗り過ごした?!」
途端にそんなことが頭の中を過ぎり、慌てて窓の外を見てみるとそこは機巧都市リヴァプールの街並みが一面を覆い尽くしており、むしろちょうど良いタイミングだった。
「よ、よかった......ようやくここまで来て乗り過ごすとかマジ冗談でもキツイって......」
「痛い......」
「あ、アジーン。すまん、つい......」
そう、慌てて起き上がったときに膝の上にいたアジーンは寝ていたこともあってか列車の床に叩きつけられていた。
「今回はマジゴメンって」
顔の前に片手を持ってきて軽く謝りながら下車の準備を始めたときだった。
「どうして止まらないんだ?」
ふと他に乗っていた乗客が疑問の声を上げる。
「もう終点だぞ!」
「止まらない?」
その言葉に窓の外を見てみると列車はホームの最終を走っていた。
「皆さま、どうか、どうか落ち着いて聞いてくださいーーブレーキがききません!」
ひどく焦った車掌がこの現状の要因を乗客に知らせる。
そんなことをしても、逆に不安を煽るだけなのに。
事実、乗客は一瞬にしてパニックに陥っていた。
「落ち着いて下さい! 大丈夫、列車は自然に止まります!」
故に、車掌の声も届かない。
俺は心底嫌な気持ちになって、アジーンを見た。
「なぁ、アジーン。どうしようか?」
「どうするもなにも、列車が止まらなければどうにもなるまい」
「デスよねー」
このあと技術試験を控えていると思うとここで魔力は使いたくなかったが......魔力を温存してもそれで死ねば元も子もない。
「列車止めんぞ、アジーン」
そう言って俺が立ち上がったとき、
「全員、座席につかまれ!」
そんな命令文が車内に大きく響いた。
途端に車内は静まり返り、少年の声がよく通るようになる。
「ん? あいつら」
見てみればロンドンの駅のホームで見かけたあのリア充が列車の通路に立っている。
なにかを始めるつもりなのか、オロオロしている車掌に一言いうと少年は少女と共に車窓から出て行ってしまった。
「おいおい! 死ぬ気かよ?!」
俺は慌てて自分のいた座席の車窓からアジーンと共に躍り出て、屋根に登る。
と、二人は俺の姿を目に留めて叫んだ。
「なにしてる! 早く車内に戻ってろ!」
「お前らバカか?! そんな可愛い羨まし過ぎる彼女共々心中する気かよ! リア充こそ大人しく車内に戻ってろってぇの!」
「なっ?!」
俺の言葉に少年が赤面する。
逆に少女は少年の彼女と呼ばれてなんだか嬉しそうだった。
「あー、もう!」と俺は二人を見ていられなくなって、代わりにアジーンに視線を向ける。
「アジーン、とっとと片付けるぞ、めんどくさい!」
「なんやかんやで列車を止めるのだな」
「そこには触れるなっての! 行くぞ、トランス!」
俺は両手をパンと顔の前で合わせ、バッと両腕を広げる。
瞬間俺の体は傍にいたアジーンと一緒に炎に包まれ、アジーンは巨大な黄土色の翼竜の姿へ、俺は赤い竜人のような姿へと成った。
俺とアジーンが一緒になって最初に覚えた、独自の変身技だ。
名前はドラクォの前作『ブレスオブファイア4〜うつろわざるもの〜』から引っ張ってきてしまったが、他に思いつかなかったんだから仕方が無い。
(「アジーン、列車の最後尾を頼む! 俺は最前列から列車のスピードを緩める!」)
(「引かれるなよ!」)
(「お前が手さえ抜かなかったらな!」)
俺はアジーンにテレパシーで作戦を伝え、早速実行に移した。
今回はかなりテキトーに書いたからね。
相当テキトーに書いたからね。
大事なことだから2回言ったからね←
いい感じに切れなかったから、ちょっと中途半端かも?
あ、雷真と夜々の台詞はアニメスペシャルから引っ張ってきたり、原作から引っ張ってきたりしてます。
二人の外見はwiki先生からです。