サクラ大戦2外伝~ゆめまぼろしのごとくなり2~ 作:ヤットキ 夕一
ミカサの艦内は、吉報に湧いていた。
「武蔵内部の花組より、入電……武蔵入口にて金剛と戦闘。これを撃破し、武蔵中枢に進入する」
通信を受けたかえでが艦橋で読み上げた、その通信内容は、艦内放送であっという間に伝わっていった。
金剛の大日剣の撃破──それは五行衆が全員敗れ去ったことを意味する。
前回の維新軍騒動で一度は全滅したと思われた五行衆。その金剛と土蜘蛛が生き残っていたわけで、今回も……という可能性も無いわけではないが、さすがに二度目である。
しかも、先の土蜘蛛の件もあって、敵の撃破確認は慎重に行われていたので、金剛の撃破については間違いない報告であった。
『武蔵』内部の危険さや妖力の高さから生身の随行が不可能と判断されて、ミカサに残っていた夢組。
その指揮を任されている副隊長の宗次は──そんな艦内にあって、浮かない顔をしていた。
「副隊長……」
それに気がついたティーラが声をかける。その表情は憂いを帯びており、宗次のことを心配している様子であった。
「あの三人のことを気にしているんですよね?」
「ああ、まぁな。敵幹部の撃破は快挙だが、さすがに手放しに喜ぶことは……」
その彼の背中を、ティーラは軽くたたく。
「しっかりなさい。あなたがそんな様子では、夢組全体の志気に関わりますよ!」
「──ッ!」
彼女に言われ、宗次は慌てて体を起こし、顔を上げる。
その様子にティーラは微笑みを浮かべる。
「米田司令に、志気に関わるから、と箝口令をお願いしたんですから、その責任はとってください」
「……わかっているさ」
痛いところを突かれて憮然としながらも、宗次は他の隊員達の方へ歩いていく。
そして「この戦果に浮かれるんじゃない!」と檄を飛ばしていった。
その姿にティーラは苦笑気味に微笑み──こっそりため息をついた。
(……あの三人のことを予知できなかったのは、完全に私の落ち度…………)
ましてあの時、土蜘蛛の八葉は一度は花組に敗北し、散ったと思われていたのだ。
倒したという油断を誘い──それにティーラ自身もまんまと騙されて、戦闘力で劣る衛生部隊と錬金術班を無防備にしてしまい、その隙をつかれた。
(あの時、油断しないで注意を払っていれば、土蜘蛛の狙いを予見できていたはず)
だからこそ、釿哉、ヨモギ、舞の三人を失った責任は自分にある、とティーラは考えていた。
「──自分を責めても仕方ないと思いますよ」
まるでティーラの考えを読んでいたかのようなその言葉に、思わずそちらを振り返る。
「小詠さん……読んだのですか? 私の心を」
調査班副頭・御殿場 小詠。
調査班の幹部クラスで唯一、ミカサに乗り込んだ彼女は『
その彼女の能力を知っているからこそ、ティーラは険しい目で彼女を見ていた。
「……心を読まずともそれくらい分かりますよ。幸いなことに昨年、人を観察する技術を月組隊長から直々に教わりましたので」」
「まったく、あなたが優秀になるのは嬉しいことだけど……」
心情的には複雑だった。
ティーラがその特殊な予知というのに加えて優れた洞察力で未来を見通すように、彼女もまた読心という特殊能力に加えて表情や仕草から心情を読む技術で補えるようになっている。
調査班副頭という対外的に力を振るう立場以外に、監察係として特別班にも秘匿して所属する彼女は、それを夢組内部の監査として内部にもその力を使う立場にもある。
その対象になりたくないのは当然だろう。
「今は反省よりも、次の手を考えるべきかと……」
「──ええ、私もそれは分かっています」
予知・過去認知班の頭として、これから起こることを
(たとえそれが遠く離れた『武蔵』の最奥であっても、それを見通さなければ……)
その手をじっと握りしめる。
もしも花組に万が一のことがあれば作戦は破綻し、華撃団の敗北は確定する。
(同じ愚は繰り返さない……)
あの三人のためにも。
そして、あの三人がミカサを守って繋いだ希望を絶やさぬために──絶対に、この作戦は成功させなければならないのだ。
ティーラは唇を噛みしめ──予知・過去認知班の総力を持って花組の支援を、未来を見通さんと決意するのだった。
──だからこそ、彼女は致命的な見落としをしてしまう事になった。
それは、金剛が敗北する寸前のこと……
「うおおおぉぉぉ!!」
彼のあげる断末魔の叫び声。
それには敗れた悔しさと、仲間をやられ、その無念を晴らせない己の無力さへの怨嗟が込められていた。
(不甲斐ねえ!! 水狐……オマエの仇も取れず…………オレは!!)
その無念が込められた妖力は、乗機である大日剣の爆発と共に周囲に拡散し──『武蔵』内部に、帝都中から集められた怨念と結びつく。
そうして増幅された憎念に──応じる者達がいた。
大日剣の飛び散った破片やパーツは、それをかばって花組の攻撃を受け止め、それに付き従って戦い、花組によって動きを止めていた黄童子の付近へと散らばった。
倒された黄童子は、渦巻く憎念を受けて、再び力を取り戻す。
そんな黄童子には、「落とし前をつけるぜ、華撃団」という金剛の言葉が──彼の忠実なる部下の胸に刻まれていたのだ。
──花組が去った後に付近の悪霊と一緒くたとなり、大日剣の破片を巻き込んで漆黒の球体を生み出し──その闇が晴れると、大日剣の破片をまとった黄童子となり、そのカメラアイが、不気味に点灯した。
京極打倒のために『武蔵』を奥へ奥へと進む花組達は、自分達が通り過ぎたあとでそんなことになっているなど、知る由もなかったのであった。
ミカサ艦内に警報が鳴り響く。
「──敵襲だと!? バカな!!」
米田が思わずそう言うのも無理はない。
『武蔵』の外部には降魔兵器は存在しない。なぜなら、その高度が飛行限界を超えているからだ。
あるとしたら、『武蔵』内部からのものであり、実際、今の警報はその内部からミカサへとやってきた敵の存在を知らせるものだった。
だが、それはそれで疑問符がつく。
ミカサ突撃後に花組を送り出したが、花組はそこから『武蔵』の奥へと向かっているのだ。
向かいくる敵は倒して進んでいるのだから、ミカサへの敵襲はあり得ない。あっても、それを逃れた、はぐれたような散発的に単独で現れる敵のみ──そう考えていた。
しかし一応、その思惑通りにことは運んでいた。
なぜならその敵襲も、大規模な襲撃ではない。二年前の夢十夜作戦で、降魔との戦闘経験のある夢組隊員は、ミカサ側にも多数おり、降魔兵器も数が多くなければ十分に対応できる──はずだった。
その思惑から外れたのは──敵が降魔兵器ではなかったからだ。
「モニター、出ます!」
襲撃してきた敵の姿が、ミカサ艦橋のモニターに映し出される。
それを見て──米田が、かえでが、絶句した。
「大日剣、だとッ!?」
姿はまさに、先ほど倒したという報告のあった、金剛の駆る金色の巨大魔操機兵・大日剣そのものだ。
だが──その動きにかえでは違和感を感じていた。
よく見れば、細部も違っているように見える。
「あれは──黄童子も混じっているの? いえ、まさか……」
かえではとある資料を見たときのことを思い出していた。
当時、華撃団に所属しておらず、副司令は姉のあやめだったころの話だ。
華撃団が初めて倒した巨大魔操機兵・蒼角──黒之巣会幹部である蒼き刹那が搭乗していたその残骸の調査を、夢組が中心となって行ったことがあった。
その際、施設の付近で行われた戦闘で、刹那の弟である白銀の羅刹があげた断末魔の叫び声に反応し──回収していた活動を停止していた脇侍が、蒼角の破片をまとい、その能力を帯びて暴走するという事態を起こしていた。
(もしも今回、金剛が死ぬ間際に同じようなことが起きていたとしたら。脇侍の代わりに黄童子が核となり、大日剣の破片をまとったのだとしたら……)
かえでの目に映っている大日剣“モドキ”は、あの時の蒼角モドキのように元になった巨大魔操機兵に準ずるような性能を発揮する可能性が高い。
(いえ、今回は『武蔵』という帝都中の妖気を集めているような場所でおこったこと。大日剣と性能は互角か、下手をすればそれ以上に……)
かえでの顔が青ざめる。
「かすみ! 至急、夢組にあの大日剣モドキの妖力や性能の調査を指示して。椿、ミカサを緊急離脱させるのにどれくらいかかるかしら?」
あれにミカサに乗り込まれてしまえば、花組がいない今、防衛手段はない。
見るからに飛行能力がないアレに乗り込まれるのをを防ぐには、離脱してしまうのが一番手っ取り早い。
だが──椿が概算で出したその時間は、大日剣モドキがミカサに到着する方が早かった。
「誰かが、足止めをしないと……」
そう、かえでが悩んだとき──
「夢組の巽副隊長が、出撃しました」
「──えッ?」
由里の報告に、かえでは呆気にとられた。
モニターには、青い男性用夢組戦闘服に身を包み、槍を手にした男に率いられた部隊が、すでに大日剣モドキと対峙している様子が映し出されている。
「巽くんなら、あるいは……」
夢組でも屈指の戦闘能力を持つと賞される強さを誇る彼は、先の夢十夜作戦でも梅里、紅葉と並び、降魔と一対一で戦うのを許され、それに打ち勝ってきた剛の者である。
他の二人のように、巨大魔操機兵や降魔との戦いで目立った活躍をしてはいないが、それは単に、彼が作戦指揮を得意にしているので、後方での指揮を任されることが多いからにすぎない。
青い夢組戦闘服を身にまとった宗次と、金色の大日剣の破片をまとった黄童子の戦いの火蓋は切って落とされた。
「く、っそ……」
その大日剣モドキに、宗次は大苦戦を強いられた。
以前の蒼角モドキと戦闘経験のある彼だったが、やはり強さの桁が違う。もともと大日剣の性能の方が高いのだが、元の機体との弱体化具合も今回の大日剣の方が低いように感じていた
木刀のような鈍器で殴られ、吹っ飛ばされた宗次は、手にした神槍・真理を杖代わりにして立ち上がる。
「副隊長ッ!!」
宗次と同様に、ミカサに搭乗していた陸軍派のメンバーを指揮する、封印・結界班の女副頭が悲壮な叫び声をあげて、手にした銃を乱射する。
それに続いて、他のメンバーも銃を撃ち、弾幕を形成して大日剣を近づけまいと粘っていた。
だが──大日剣はゆっくり、確実に宗次へと迫る。
「巽! もういい、撤退しろ!! 一度離れてミカサの主砲で吹っ飛ばす」
米田から直接の通信が入った。
しかし──宗次は首を横に振る。
「司令……もしオレが退けば、ヤツを抑えられません。ミカサに肉薄し、乗り込まれます。そうなれば──ミカサは、墜とされます」
「だが、しかし! 今のままではキサマが死ぬぞ!! 四の五の言わずに戻ってこい。その辺にいるヤツ等を全員連れて、だ!」
大日剣とはまだ距離がある。宗次は何気なく背後を振り返った。
必死の形相で宗次を助けんとする眼鏡をかけた女副頭と、彼女の指揮で一列に並び、全力で霊力を込めて射撃する隊員達が見えた。
そしてさらに後ろには──壁のようにしか見えない、ミカサの巨体。
「オレの後ろには、アイツがいるからな……」
そのミカサに乗り込んでいる、夢組副支部長で予知・過去認知班頭であるティーラ。
彼女を思い浮かべる宗次。
そして出撃前の一幕を思い出す──
「帰省は途中になってしまったが……この戦いの後で、もう一度、オレと一緒に行ってはくれないだろうか?」
「……どこへ、ですか? 戦闘の慰労のために、温泉にでも?」
そう言って首を傾げるティーラ。
その姿を宗次は歯がゆく思い──それをどうにか隠す。
「いや、そうじゃなくてだな……」
夢組でもっとも高い予知能力を持ち、それだけでなく優れた洞察力を発揮して、いつも宗次の指揮をサポートしてくれる彼女。
その彼女が、どうして今、このときに限って、予知能力も洞察力もポンコツになり果てているのか。
宗次は嘆きたい気分だった。
一度、「コホン」と咳払いをして──宗次は、真剣な面もちでティーラをじっと見つめる。
「改めて、オレの実家に来てほしい」
「……それは、どういう……ことでしょうか?」
長い黒髪に褐色の肌をしたティーラは、驚いたように──宗次を見つめていた。
「そこで、家族に紹介させてくれ。オレの──いや、オレと……結婚してくれないか?」
宗次の顔が、珍しく──本当に珍しく赤くなっていた。
その言葉に、ティーラの頬も赤く染まる。
「……さすがに、その言葉は予知、できませんでした…………」
ポツリとつぶやき──ティーラは首を縦に振る。
「はい。わかりました。ふつつか者ですが、よろしくお願いいたします」
「こちらこそ、な。後は──帝都を守りきるだけだ」
「はい!」
ティーラは涙でにじんだ瞳を拭いつつ、笑顔で答えた。
「──命を捨てるつもりもなかったが、だが……ここを突破させるわけには、いかないんでなッ!!」
宗次が両足を踏ん張らせ、大日剣の前に仁王立ちになる。
すでにその身は満身創痍。しかしそれでも──退くことはできない。
彼は手にした神槍・真理を頭上で回転させ始めた。
「オレの命に代えても、守らなければいけない者達が、背後にいる!! だから、オレは──退かんッ!! 絶対にな!!」
徐々に上がっていく回転速度と比例するように、彼自身の霊力が急速に高まっていく。
高まった霊力はその属性である水を具現化し、高速回転する槍にあわせて、彼の頭上で渦を巻き始めていた。
それはさながら、水の竜巻のようである。
急激に、そして異常なまでに高まった霊力に、警戒した黄童子が距離を詰めた。
それが目前に迫り、再び振り上げられた木刀様の鈍器が振り上げられたその時──
「我が命を賭した極意……その身で受けるがいい!!」
頭上で回転させていた槍を手元に戻し、練り上げられた極大の霊力は一度自分の体の周囲に渦巻く波飛沫として纏い──
宗次は渾身の一撃──いや、無数の突きを繰り出していた。
「究極奥義──
なずなにもやって見せ、そして授けた『青龍一穿』。
渾身の一撃と共に龍を具現化して放つそれを、無数に繰り出す極意──それが『青龍百穿』である。
「ハアアアァァァァァァッ!!」
繰り出される一突き一突きから放たれる水の龍は、群となり、怒濤となって次々と大日剣を襲う。
霊力を極限まで──いや極限を超えて高めた霊力によって繰り出す大技であった。
その威力は凄まじく、大日剣の破片をまとい強化された黄童子でさえ、無数の打突に翻弄され、されるがままに無様なダンスを踊るしかない。
だが──
「オトシマエ……ヲ、ツケル」
基になった黄童子から、無機質な“声”が響く。
宗次の『青龍百穿』をその身にくらいながらも、何度も、何度も聞こえるその言葉。
それに突き動かされるように──大日剣は、喰らいながらも手にした得物を振り上げた。
「……
それは金剛が大日剣搭乗時に使っていた、渾身の妖力を込めた一撃と全く同じ技。
金色に輝く大日剣と──
怒濤のごとく蒼き百龍を繰り出す宗次が──
──ぶつかり合った。
その光景は、もちろんミカサの艦橋のモニターに映し出されていた。
「あの、野郎……」
己の命を懸けて高めた霊力をぶつける宗次の姿に、米田は思わず悲痛な言葉を吐く。
かえでも、帝劇三人娘も、その苛烈な戦いの前に何も言えなかった。
そしてその光景は、まだ小さな艦橋要員──野々村つぼみも食い入るように見ていた。
つい先ほど──ミカサの突入が成功し、花組が『武蔵』内部へと突入を果たした直後、巽 宗次は一度状況確認のために艦橋に来ていた。
そのとき彼は、風組戦闘服を着たつぼみを見かけていた。
そんな宗次と目が合ったつぼみはといえば──蛇ににらまれた蛙のようにおびえて固まっていた。
もちろん頭をよぎったのは、ミカサ発進前の夢組戦闘服に関する一悶着である。
それですっかり宗次を「怖い人」と認識したつぼみに──彼はその前までいき、そっとその大きな手をつぼみの頭に優しく乗せたのだ。
「──ッ!?」
半ばパニックになりかけるつぼみ。
そんな彼女に対し、宗次は──
「怖いのか?」
先ほどとは打って変わった優しい口調でそう問いかけてきた。
「い、いえ……だ大丈夫です。なんともありません! スマイルスマイルです!!」
無理に笑みを浮かべようとしたため、ひきつったような、こわばったような、奇妙な笑みを浮かべるつぼみ。
そんな彼女に宗次は苦笑し──
「その、怖いと思う気持ちを、大事にしろ」
「──え?」
つぼみに語りかける。その意外な言葉に、つぼみは呆けたように彼を見た。
「恐怖を乗り越えるには、怯えているということを認識しなければできない。その怖いと思う心に立ち向かう気構えこそ、勇気だ。恐怖から目をそらして突撃するのは無謀……そんな無茶には勝利は確約されない」
そう言って、またポンと頭をなでる宗次。
「安心して乗っていろ。それに、怯えて構わん」
「え? いいん……ですか?」
戸惑うつぼみに宗次は笑みを浮かべる。
「お前はまだ乙女組なのだろう? ミカサを、そしてお前のような弱者を守るのは、オレ達の使命だからな」
そう不器用に言った宗次の姿が──脳裏に浮かび、大日剣に立ち向かうその姿と重なる。
「巽さん……」
これぞ強者であり、弱者を守る務めを果たす姿であった。
その姿を──背中を見て、つぼみは初めて、まだまだか弱い、そして何の力にもなれない自分に対して、悔しく思った。
そこへ慌てた様子で入ってきたのは、紫色の袴の夢組女性用戦闘服を着た、黒髪に褐色の肌の女性──アンティーラ=ナァムである。
「副隊長ッ!?」
その光景に、彼女は絶望した。
いったい自分は、今まで何をしていたのか、と激しく後悔する。
無論、彼女はこの状況下で何もしていなかったわけではない。先の三人の犠牲者を出したことに対して深く反省し──花組の支援をすべく、予知・過去認知班の面々と共に、必死に次の局面を読もうと予知のための集中を行っていたのだ。
実際、それによって得られた情報もあり、無意味な行動ではなかったが──突然もたらされたミカサの──そして宗次の危機に、遠くを見すぎて近くが疎かになっていたのを思い知らされたのだ。
彼女の目の前でぶつかり合う金色の妖気と、蒼色の霊力。
今まさに鬼神轟天殺と、青龍百穿がぶつかり合おうとし──お互いの力が最高に高まる。
それを見たティーラが悲鳴を上げた。
「ダメ!! それ以上霊力を上げるのは──」
明らかに彼の限界を超えていた。
秘奥義を前に未だに倒れぬ大日剣を、それでも意地で倒そうと、宗次はすでに己の限界を突破させて霊力を高めていたのだ。
それに呼応して大日剣の蒸気機関もまた限界を突破してフル稼働し、限界を超えた機関は危険な唸り声をあげている。
そして──
大日剣の得物が振り下ろされ──
「これで──終わりだああぁぁぁッ!!」
宗次の、百龍の最後を飾る渾身の突きが繰り出され──
妖力と霊力が激しくぶつかり合い──
──暴走した機関を中心に、大爆発を起こした。
「宗次ぃぃぃぃッ!!」
ティーラの悲痛な叫びを背景に、大日剣を中心に起きた大爆発は──どう見ても間近にいた宗次は完全に巻き込まれていた。
その光景に──愕然とする米田。
思わず目を伏せるかえで。
絶句するかすみ、由里、椿の帝劇三人娘。
つぼみもまた──
「巽、さん……」
その苛烈な光景に、呆然とつぶやき──足に力が入らなくなり、膝から崩れ落ちていた。
爆心点には、四散した大日剣と黄童子の破片が散らばり──人の姿は影も形も残っていなかった。
「イヤアアアァァァァァァッ!!」
ティーラの悲痛な声が、艦橋に響きわたり──それ以外の誰もが、ただ無言でいることしか、できないでいた。
【よもやま話】
宗次の究極奥義が登場。その名も『
これありきの『一穿』だったのです。
で、「龍」と「百」と言えば、『聖闘士聖矢』の天秤座の黄金聖闘士の必殺技・廬山百龍覇。それが技のイメージになってます。そのため『一穿』は廬山昇龍覇をモチーフにしたのです。
──ちなみに本当の最初の最初の思いつきは「3外伝」のなずなの後期必殺技として考えていたもの。そのため宗次からなずなへと伝承されたことになっています。
水ではなく雷なので、技の見た目的には廬山百龍覇というよりは、『覇王体系リューナイト』のメテオザッパーですかね。(あれも雷じゃなくて火だし)
今回のネタバレ系の予告は「次回──宗次死す。放て、希望の究極奥義!!」といったところでしょうかね。