ダイの大冒険異伝―竜の系譜―   作:シダレザクラ

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第11話 竜に捧ぐ献身

 

 

 眠るには難のある山道だったが、それでも身体を休めようとする努力が実ったのか、うとうとと意識が沈み始める。浅いまどろみと覚醒を幾度か往復した頃、物々しくも軍備が頼もしい雄大な砦に戻ってくることができた。

 日も傾き出し、斜陽に照らされながら砦に入城していく。ここで一泊し、明日王都に戻って王城に顔を出したら行程も全て終わりだ。ならばあとは本格的に寝る! というわけにはいかず、程なく俺達はテムジンに呼び出されたのだった。

 砦で供された味気ない夕餉を終え、ようやくというべきか歓談の誘いを受けて実現した席である。テムジンに招かれた理由なのだから受けないわけにはいかないという事情もあった。

 

 そうして俺達は砦の一室を借り切って顔を突き合わせていた。卓を挟んで向かい合い、椅子に腰掛けているのが俺とテムジン。ラーハルトとバロンはそれぞれの上司の背後に控える形で直立の姿勢だ。

 お騒がせじいさんことバダック老はここにはいない。折角砦まで来たのだから旧交を温めてくると言い置いてどこぞへと消えてしまった。今頃美味しく酒を飲み交わしているのかと想像するとちょっと羨ましい。

 

「さて、これでようやく落ち着いて話も出来るというもの。恥ずかしながら王都では気の休まる暇がなかなか見つからぬものでして、前線に出たほうが素直になれるというのも因果なものだと辟易するばかり。――おっと、失礼。少々生臭い愚痴を聞かせてしまいましたな」

「お気遣いありがとうございます。これで小心者ゆえ、耳目の集まる場で萎縮するようなお見苦しい姿を晒さずにすみます」

 

 自己顕示欲やや高しってとこかね。半分はこちらへの好意なのかもしれないが、ようは軍事にも力を持ってますよというアピールだ。この砦内部にもある程度顔がきくのだろうし、あるいは半ばまで掌握している可能性すらある。今回の地底魔城訪問の要請を一手に引き受け、ここまで問題を生じさせなかったのもこの男の手腕なのだろう。相応の権勢を誇っていると見て良い。

 

「ルベア殿におかれては我が国の安全対策には満足されましたかな? この砦も堅牢無比を誇るゆえ、有象無象の魔物なぞ鎧袖一触に退けてみせましょうぞ」

 

 自信に満ち溢れた物言いと不敵な面構えだった。

 

「危機管理体制に満足したかと問われれば是と頷く以外にないでしょう――少なくとも今日見た限りにおいては」

「ほう、含みを残しますな。ならば是非ともその胸の内をお聞きしたいものです」

「世の中には余人には見えぬものが見える方もいるでしょう? たとえば、かの大魔道士マトリフ殿」

 

 美辞麗句の応酬にはもう懲り懲りだと言ってみたい。言えないけど。

 けれど代わりにとマトリフの名を出した時、一瞬だけテムジンの眉が苦味走ったように歪められた。すぐさま取り繕っていたようだが、この様子だと確執でもあったか?

 

「戦後、マトリフ殿は貴国に仕えていたと聞き及んでおりますが、その折に『地底魔城の即時破棄』を提言したとか。あの方の危惧されたところを、この場にてご教示いただければ幸いです」

 

 おおよそのところは知ってるけどな。

 そんな俺の内心に応えたわけではなかろうが、テムジンの顔にどういったものかと困ったような苦笑が浮かび上がった。

 

「マトリフ殿はなんといいますか、こう……何分破天荒な御仁でしたからな。私も交流を密にしていたわけではありませんが、それでも小耳に挟んだところによれば、魔物の大規模襲撃を最後まで懸念されていたようですな。何が起こるかわからないのだからさっさと禍根(かこん)を断っておけ、と」

「けれど彼の言は受け入れられなかった」

「ええ、その通りです。我々は最終的に国土の復興と財源確保を優先しました」

 

 魔物がなんなのか、という疑問に明確な答えを返せる学者はいない。それはアバンだろうとマトリフだろうと同じことだ。

 彼らは魔王が消えてもこの地上に存在し続ける。例外は骸骨剣士や腐った死体のような不死の怪物、そしてガストのようなガス生命体くらいだ。

 

 魔物の誕生ないし増殖の仕方は未だに謎のまま解明されていない。ただ、彼らは《人間のいない場所、目にしていない瞬間に増える》のだ。人が長く住み着いた街中で突如魔物が誕生したような例は一度としてなかった。つまり魔物とは『あくまで外から襲い掛かってくる何者か』なのである。こう考えると彼らは単なる生命体として捉えるのではなく、現象や概念に近いあやふやな性質を想定するべきではないか。俺はそう考え、便宜上、彼らを生物というより妖怪のようなオカルトチックな種と位置付けている。

 

 そして魔物誕生の原理も、彼らの増殖の仕組みもわからず、けれど地底魔城では地上に類を見ない速度で魔物が誕生し続けている事実。これを前にしたパプニカ王家並びに家臣団がどう受け止め、マトリフが何を危惧して警告し続けたのか。おおよそのところは察するに容易いだろう。

 マトリフとパプニカ家臣団が主張を異にした根本理由、それは脅威度の見積もりの差である。それが見解の相違を生み、相互理解を拒み、当然のように意見が衝突し、割れた。

 

「とはいえ、今の状況を見るにマトリフ導師の心配のしすぎだったとも取れますね」

「幸いにも今日に至るまで地底魔城は我々の制御下にあるといえますゆえ。油断は戒めるべきものですが、もうじき七年という月日が経過する今、マトリフ殿の懸念は取り越し苦労だったというべきでしょうな」

「貴国の調査でも年々討伐数が減少している。それはつまり、魔物が発生しやすい地底魔城の特異性が失われつつある。そう考えて良いということでしょうか?」

「確かに魔王の残した呪法は謎のままです、おそらくは魔王の遺したなんらかのギミックによってモンスター発生数が尋常でなかったというのもその通りでしょう。ですが魔力は永遠ではありません、いつかは枯渇するもの。違いますかな?」

 

 そう問われて違うと答えられるわけもない。永続する魔力や呪法など聞いたこともないのだから。だからといってそれがイコールで地底魔城の無力化につながっていると断じられるものではなかった。

 杞憂が杞憂で終わればいいというのは俺も、そしてパプニカを見限ったマトリフとて同じだろう。乱を歓迎する性格ではないのだから。

 

「以前にもお話した通り、我が国は騒乱を望んでいない。それだけです」

「なればこそ、ルベア殿がどのように考えておられるのかを知りたいものです。そろそろ忌憚ないご意見を伺いたいのですが、いかがですかな?」

「……真新しい意見はありませんよ?」

「構いません」

 

 溜息をつきたくなった。この分だと知りたいのは対策ではなく、俺がどういった人間性を持っているかだろう。お互い様とはいえ、こうもあからさまに判断材料を揃えようとするのはいかがなものか。

 性急さは若さの特権なのだ、あんたはいい歳なんだから自重してくれ。

 

「軍事上の観点からいえばマトリフ殿が正しいでしょう。わけのわからないものをわけのわからないまま使い続ける。その危険性を一匙ほども斟酌できないなどとは言わせません。何が起こるかわからない以上、早々に危険の芽を摘むのが最上です」

 

 ふっと息継ぎをしてから、粛々と語る。

 

「魔王の操る呪法は地上の常識を超える。おそらくはマトリフ殿もそう考えたからこそ、多少の費用がかかろうと城そのものを崩してしまおうとしたのでしょう。地底魔城がルーラやリレミトを拒む以上、あの建物と土地一帯に魔王の残滓が残っていることは疑いありません。私自身、放置はあまりに危険だと考えています。だからこそマトリフ殿が提唱した次善策を進言したいですね」

「破魔の結界で邪気を払ってしまえ、でしたか。かつてマトリフ殿も似たことを言っておられましたな。そういえばテランで破邪の魔法の研究が進んでいるとか?」

「何も破邪呪文に頼らずとも聖水で場を清め、定期的に儀式を執り行って邪を払い続ければ魔王の残した瘴気は消えるはずです。魔物の出現数も減じるでしょうし、いずれは人の住む領域として少しずつ環境を整えておけば済んだ話です。……そうであればこそ、当時のパプニカ王国に受け入れられるはずもなかったというのは皮肉ですね」

 

 護衛団を率いての破邪の儀式、定期的なメンテナンス、家屋や道路の整備、入植の募集。いずれも人と金と時がかかる。

 マトリフの言葉は軍略のうえでは正しい。しかし政略がそれを許してはくれなかったのだ、国家として人も足りなければ時間と金にも猶予が存在しなかった。俺とて当時パプニカに仕えていればマトリフの案を退ける以外にはなかっただろう。

 

「意見の一致を嬉しく思いますよ」

「勘違いしないでください。今の体制が必要なのは戦後復興の端緒がつくまで、それ以降はマトリフ殿の要請を受け入れ、地底魔城の脅威を減らす案を取るべきだったと口にしているのです」

 

 叶うならば魂の貝殻を回収した後にでも瓦礫に還してしまいたい。そうすれば後の大魔王勢の侵略拠点として再利用されることも防げて好都合だ。認められるはずもなかったが。

 上手くいかない、と内心で吐息を零す。

 メリットとデメリットを勘案し、リスクを計算。最終的にメリットを優先したのがパプニカ家臣団、デメリットを警告したのがマトリフという構図だった。当初は復興の道筋が見えるまでという条件で妥協したマトリフの案で収める予定だったのが、予想以上に地底魔城から搾り取れる富に目がくらんだのか、最終的に家臣団が決定をひっくり返して今の体制の継続を主導した。

 マトリフにしてみれば彼らの行いと心根は呆れるほどの変節と映ったのだろうし、そんなことが続けば『欲の皮の突っ張った連中』だと失望するのも自然な成り行きだったのだろう。そのうちにマトリフも嫌気が差してしまったのだと思う。

 

 加えてマトリフが官職を辞す頃にはアバンもヒュンケル捜索の足をパプニカ国外に求めていたため、それ以上国内の情報をアバンに流す意味もなくなり、マトリフがパプニカ王家に士官し続ける意義が完全に失われてしまった。結局さしたる葛藤もなく辞職を決意し、マトリフは世を捨て、隠遁生活に入ってしまったというわけだ。

 パプニカの連中もいらんことをしやがって。別にパプニカに仕え続けようが隠居しようがどちらでも構わないが、人間に見切りをつけさせるような真似をするんじゃねえよ。これから口説くこっちの身にもなってくれ。

 

「魔王の怖さを最も知っているのは貴国だったはずでしょう。喉元過ぎれば熱さも忘れ、財貨に溺れるがごとき楽観に耽る。その果てに(めし)いてしまわれぬよう、厳にお慎みいただきたく願います」

「――待たれよ」

 

 そこで初めてバロンが動いた。

 元々半魔族を連れ歩いている俺に好意的でなかったのもあるだろう。とても看過出来ぬと、不愉快気な顔を隠すことなく口を挟んできた。

 

「ルベア殿、些か言葉が過ぎるのではありませんか。魔王打倒よりはや七年、貴殿が危ぶむような事態になったことは一度たりともありませぬ。敵を過大評価するは文官の常と申しますが、私の目には御身もまた机上を弄ぶがごとき悪癖を患っているように見受けられます。我らは護国の意志の下、最後まで魔王に抵抗し続けました。その底力を舐めないでいただきたい」

 

 侮辱したわけでもなし、そこまで反発しなくてもよいだろうに。

 その自信が根拠のあるものであることを願う。見通しを誤ればまた大量の血が流れるんだ、石橋を叩いて渡るくらいで丁度良いと思う。第一、ハドラー率いる魔王軍の攻勢に抗いきれず、あわや滅亡というところまで追い込まれたのがパプニカの、そして人類の限界だったはず。

 自身を奮い立たせることと事実を事実として受け止めることは矛盾しない。……俺がパプニカ側の人間ならもう少し素直に聞き入れてもらえたのかもしれない。

 

「その猛々しい矜持を示さねばならない相手は私ではないでしょう。そもそもこの場はテムジン殿と私の語らいのために用意された席のはず、御身は自重めされよ」

「貴様……!」

 

 しれっと応える俺、途端に気勢をあげるバロン。感情の昂ぶりに併せて眦も釣りあがっていた。ここで激昂するとはまだ若い、というよりプライドが高いのかな?

 歳若くして賢者として名声を博しているのだ、侮られるような物言いをされれば黙っていられないというのもわからないではない。それでも十三年しか生きていないラーハルトのほうがまだ弁えてると思うのは身内贔屓の賜物だろうか? その頼れる男ことラーハルトは今までずっと影に徹していたが、バロンが動いた時点で素早く牽制に入っていた。

 如才なく機先を制した形である。ラーハルトの振る舞いはとてもありがたい、俺も安心して口を動かすことができるからな。

 

「バロン、控えよ。ルベア殿の申す通りだ、余計な口を挟むでない」

「……はっ、申し訳ありません」

 

 歯軋りがきこえてきそうな形相で一度睨みつけられた。……俺だけじゃなくてラーハルトも。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いってやつかね? やっぱりこの国の者が持つ魔族への隔意は単純なものじゃなさそうだなあ。

 何年も後の話だが、レオナ姫がヒュンケルを許した一幕がある。その時、マトリフが彼女を大器と評していた理由がよくわかるというものだ。感情の拗れほど厄介なものはない。

 

「すまんの、ルベア殿。されどこの者が激したのも忠義ゆえのこと、広い心で許していただきたい」

「咎めるほどのことではありません、もう忘れました。それにバロン殿が憤ったのは国への忠のみならず、あなたを擁護せんがためとお見受けしました。羨ましいことですね、お二人は以前から?」

「そうですな、戦火を共に潜りぬけた戦友であり、今は頼れる部下です」

 

 これ以上は水掛け論になるだろうという意図を込めて別の話題を振ると、テムジンは軽く目礼で謝辞を表してから柔和に微笑んだ。意外といえば意外で、この二人、よほど親しいらしい。そうでもなければここまで弛緩した顔は出てこないだろう。

 

「この者、生まれで少々損をしておりましてな。もう少し高い身分で生まれてくれば、今頃は宮廷魔道士として陛下のお傍に上がることもできたでしょうし、将軍職の一つや二つ拝命していてもおかしくありませんでした。それに見合うだけの功は立てている」

「……テムジン様、どうかそのようなことは――」

「先の大戦末期、お前は若輩の身でありながら良く戦い、よく守った。お前の奮戦なくして王都防衛はならなかったのは誰もが理解するところ。だがその勲に見合った場を得ておらん」

「一部隊を率いる長なれば、過分な処遇に栄しております。私に不満などありません」

「そうか、すまぬな」

 

 察するに身分の軋轢か。パプニカは格式重く、伝統が幾重にも絡み合うお国柄、比例して貴族社会の苛烈さも随一と聞く。そこで高位の貴族籍を持ち、司教としての肩書きも併せ持つテムジンがバロンの将来性を買って支援し、引き立ててきたわけだ。そりゃバロンもテムジンに恩義を感じるだろうさ。

 

「ご苦労されたのですね」

「そう、それです! ルベア殿をお招きしたのはまさにそこなのですよ」

 

 と、いきなりまくしたてるテムジン。俺はあんたのいきなりなテンションにびっくりだよ。半分くらいは演技なのだろうけど、妙な情熱というか迸る興奮の残滓があちこちに放出されているような気がする。言葉を飾らずに一言物申すならば――落ち着けおっさん。

 

「そこ、と申されますと?」

「このバロンのように、才を持ちながらも開花せぬまま一生を過ごす者とて多いはずなのです。最大の国難が去った今だからこそ国力の充実は必須。なればこそ有能なものが上に立つのは当然、それが出来ぬ国は衰退の道を辿るのみでしょう。そこで私はもっと下々の民からも積極的に人材を登用すべきとの考えに至ったのです。それがゆくゆくは国の発展と安寧につながる。そうは思いになりませぬか?」

「随分過激なことを仰る。なるほど、王都ではとても口に出せないわけです」

 

 貴族に『人』はいないと公言するに等しいからな。正面きって無能と断じられて喜べる連中がいるのなら、是非会ってみたい。

 

「しかしあなたは凡百の民の出でありながら政の中心で活躍しておられる。伝え聞くところによれば、孤児の保護や教育にも熱心だとか。少なくない予算を割いて呪文の基礎理論と実践の伝授までしている。それは私の目指すものと同一の地平にあると愚考いたしますぞ」

 

 本当に愚考だよ。

 どうしてそうなる。冗談でいってるなら笑えないし、本気で言ってるならこれから先の付き合いを考え出すレベルだ。

 

「前提として幾つか訂正せねばならないことがあります。我が国では確かに大戦の猛威に晒された戦災孤児や不慮に事故で親をなくした不幸な子供を手厚く保護し、将来の受け入れ先の一つに軍の門戸も開きました。しかしそれは前線に出さぬいわば後方支援兵としてです。それも主目的は雇用を確保して治安を安定させるため、賃金も路頭に迷わせぬ最低限のものでしかない。彼らを生粋の騎士として受け入れるほどの優遇にはなりえませんよ」

 

 そもそもの目的は俺の実家を継ぐ候補探しだった、とかいったらどんな顔をするんだろうな、このおっさん。

 そんな真面目な政治家にとっては噴飯物の実情はともかくとして、俺の私情込みだとしてもあまりに手厚く彼らに便宜を図る意義も薄かった。戦力面からいっても、素質という点では血筋の確かなもののほうが潜在能力が高い傾向にあるからだ。平民よりも貴族、貴族よりも王族のほうが優れた使い手は現れやすい。

 それはうちの王族方とて例外ではなかった。現王陛下とて戦時中は陣頭に立って兵を鼓舞し、数多のモンスターを切り捨てている。そこらの騎士顔負けの武勇を誇るのだ。女の身であるソアラとて魔法の資質はかなりのもので、中位回復呪文(ベホイミ)まで自由に使いこなす僧侶呪文の使い手だった。魔法の才に特化した修練を積むだけの時間と環境があれば、最上位回復呪文(ベホマ)にだって手が届くだろう。

 

 時間効率の差は大きい。

 平民を連れてきて槍を持たせて闘気を練り、あるいは魔法の知識と実践を根気良く仕込むくらいならば、同じだけの時間と金を貴族出身の子弟につぎ込んだほうが見返りも大きいことは明らかだった。当たり前といえば当たり前で、彼らは何代、何十代にも渡って軍事と行政を担ってきたエキスパート集団なのである。戦に臨む心構えも違えば、蓄積した教育のノウハウも違う。

 

 なによりこの世界は数千年単位で王政の下、騎士がモンスターと戦い続けてきた。分業体制もそれだけ続けば、支配階級と被支配階級の間にちょっとした人種の違いくらいには基礎の骨格や運動性能に違いが現れてもおかしくないだろう。

 いわば血のもたらす実益である。隔絶こそしていないが確かな差、それがなければ後にポップが自身の『平凡な武器屋の息子』という出自を仲間と比べ、絶望に塞ぎこむほどの劣等感コンプレックスを覚えたりもしなかったのではないか?

 

「ならば何故魔法知識まで教え込んでおられる?」

「拾い物が出れば、との下心を否定する心算はありません。しかしホイミを使えるだけでも貴重な衛生兵になるのですからそうおかしな話でもないでしょう。給料のアップにもつながるのですから彼らにも喜んでもらえていると思いますよ」

「しかしそれは軍事技術の拡散にもつながりますな。反対するものも多かったことでしょう」

 

 その通りだと示すように苦笑する。それで十分通じるだろう、あまり言葉に出して肯定したいものでもないし。

 

「そこまで下々に手厚く接しながら民の地位向上は考えておられぬと? 何ともちぐはぐに見えますぞ」

「政は王侯貴族の特権、それで良いでしょう。問題なく回っている制度をイタズラに弄るものではありませんよ、テムジン殿」

「問題はないと言われるか。しかし貴国はそうでも、我が国は幾分血の巡りが悪くなっておるのだ。『上』に人が足りていない」

「……テムジン殿は大胆なことばかり仰りますね」

「さもあらん、事実を事実として口にしているだけですよ」

 

 溜息がでそうだ。少々踏み込みすぎだろう、一体この男は俺から何を引き出そうというのか?

 

「貴族に許された政治参加、出世の優遇、労役免除を始めとした特権の数々。それらが意味なく付与されたものではないことくらい、テムジン殿とて承知されているはずでしょう? 有事にあって真っ先に血を流す義務あればこその優遇にほかなりません」

 

 まったく、滑稽なほどあべこべだ。貴族であるテムジンが貴族の否定を口にし、平民の俺が貴族の肯定を口にする。妙な成り行きになったものだと心底想う。

 

「テムジン殿は人材に窮乏している事実を憂いておられるが、それは先の戦によって貴族が死にすぎたからです。彼らは貴族であらんとした、騎士として民を守るためにその命を盾にして戦った。誇り語り継ぐ同胞でしょう。共に戦ったあなたならば彼らの気持ちもわかるはずです」

「だからこそ今が許せぬ。そんな愚かな嘆きを汲み取ってはもらえぬか」

「……勇敢で高潔な者ほど先に逝く、と?」

「いかにも」

 

 国許には残りカスしか残っていない、と言外に匂わせるテムジンにどうしたものかと困り果ててしまう。どこまで本音で語っているのか知らないが、明らかに他国の、それも昨日今日顔を合わせたばかりの男にぶちまける内容じゃない。取り様によってはかなりやばいところまで――すなわち現体制の非難にまで飛び火しかねない爆弾だった。

 

 多分この男は自身に強烈な自負があるのだ。優秀なものが国家を治め、民を導くべきだという信念を持っているのだ。貴族にあって血統を重視しない、血を手段としか捉えないリベラルな思想を持つ政治家ともいえよう。それが高じて『王家の否定』に走る……ありえないことじゃない。特にレオナ姫の幼少期は城を抜け出すお転婆姫だったりと王族らしからぬ素行が目立っていたらしいから、この手の野心家が『自分のほうが良い指導者になれる』と考えれば戸惑いはしなかっただろう。

 

 もしもそこに不幸があるとすれば、それはこの男が一国をまとめる器を持たないことだろう。王女暗殺の是非はともかく、その決行場所に警護と引率の責任者としてのこのこ同行し、罪の一切をデルムリン島のモンスターに擦り付けるなんてお粗末な計画を立てる時点で程度が知れる。

 せめてデルムリン島でのレオナ暗殺と時を同じくして、遠く離れたパプニカ本国で茶を啜るくらいのアリバイ工作はしておけ。仮に暗殺の事実を隠し通せたとしても、王女と同行していた者が責任を問われないはずがないのだ。レオナ姫を守れなかったという一点のみで帰国すれば重い処罰が待っているのは明らか、そんな体たらくで国の実権を握れるはずもない。

 

 所詮は八年後の出来事だ。この世界ではまだ実行に移されていない以上、ありえた可能性だけで判断するのは危険だし不誠実に過ぎる。だからといってこの男と『親密な取引相手』になれるかといえば、はっきりとノーだ。こんな危なっかしい奴とお近づきになるなんて冗談じゃない。妙なシンパシーなんぞ感じてくれなくて結構、放っておいてくれ。

 まさかとは思うが、俺と誼を結んでおけば『事を起こした後に正統政府として認めさせやすくなる』なんて考えてやしないだろうな。さすがに現時点で王家転覆の謀を胸に暖めているとも考えづらいが……。

 

「未だ戦乱の傷跡は消えず、復興も途上とくれば人材の補填は急務でしょう。多少の痛みを恐れて立ち止まるべきではない」

 

 力強く所信を述べるテムジンは、なるほど生気に溢れているといえた。この男の口にする言葉に、一定量の説得力が含まれることも事実。パプニカ家臣団の中で頭角を現しているというのも頷ける。それがイコールで好意や協力に結びつくものでないことなど今更か。

 

「御身の言葉はややもすれば性急と映りましょう。いずれ時間が解決することとてあります。今は軽挙妄動に走らぬようお祈りするくらいしか私に出来ることはありません。無論、今日のことは私の胸に収めておくと約束します」

「……仕方ありませんな。こちらが急ぎすぎたことも自覚するところ、時間が必要なのは我々とて同様なのでしょうな」

 

 言質を取られたくないので曖昧な笑みで誤魔化す。優柔不断というなかれ、『善処します』は政治家の常套句なんだよ。

 それとテムジン、あんたは妙な心配をしなくていい。俺がお前さんと利き腕で握手することは未来永劫ありえないだろうから。

 

「とはいえ、少々拍子抜けのきらいがあったことは否めませんな。こういっては失礼ですが、ルベア殿はもう少し貴族に反感を持っているものだとばかり考えておりました」

 

 わかってんなら口に出さなけりゃいいのに。

 未来のことでどうこういうのはフェアじゃないが、それでもやっぱりこいつは最後の一線で詰めが甘いというか抜けてると思う。これだけ反体制的な発言をしておいて危機感の欠片もない。それとも意識して見せていないだけだろうか? 俺が他国の人間でパプニカ王宮とほとんど関わりがないとはいえ、少し安穏としすぎである。

 

「反感とはまた穏やかではありませんね。些か心外でもあります。私はそれほど狭量な男だと見られているのですか?」

「ご不快に思われたようならば謝罪させていただきます。ですがルベア殿が王宮にあがった時分は随分風当たりも強かったと聞いておりますゆえ、遠く離れた異国の地にて針小棒大に囃し立てられてしまうこととてありましょう」

「確かに噂話に尾びれは付き物でしょうが、困ったものですね」

「しかし、そうなると今度は何があなたの忠を支えているのか気になりますよ。どうでしょう? ここは来国の記念と私への土産と思し召し、この場でご教示願えませぬかな」

「なかなか狡い言い回しを心得ておられるようだ。それで借りは全て返せたと判断してよろしいか?」

「それはもう、ルベア殿の心遣いに感謝するのみです」

 

 にこにこと笑みを浮かべながら、その一方でぐいぐいと攻め込んでくる。『地底魔城訪問に便宜を図ってやった骨折りを忘れてないだろうな』ってとこだ。

 ここまでこの男と対峙し、改めて抱いたのは『惜しい』という感想だった。他国、特に竜の騎士が降り立った国の情勢に気を配る程度には目端が利く。こういった強かさは個人的に嫌いじゃないし、今のパプニカは特に閉鎖的だから外交窓口は貴重であることも確かだ。これで思考というか思想が妙な方向を向いてさえいなければ言うことなしだった。この手の輩とは左手で握手をしておいて、あとは適当にあしらっておくのが正解だろう。

 そんな人物評はおくびにも出さず、努めて気軽な様子で口を開く。

 

「テムジン殿の尋ねた問いへの答えはそう難しいことではありませんよ。足元に恩義を敷き詰められ、両手に信頼を渡された。いってしまえばそれだけのことです」

「恩義と信頼、ですか」

「私の身の上をご存知ならそれだけで納得いただけると思うのですけどね。テムジン殿は私が王家に召抱えられた経緯はご存知ですか?」

「風聞も混じっているでしょうがそれなりに。随分無茶をなされたようですな」

「ならばおわかりでしょう、ルベア・フェルキノは元犯罪者です。それも頭に大がつく、とびっきりのね」

 

 全てが動き出した日。

 バラン処刑の場において、俺は死刑囚を庇ったことで明確にアルキード王に反逆する形となった。しかもタチの悪いことに、国王が直々に取り仕切った公開処刑の儀式を妨害し、あまつさえ直訴という暴挙に及んでいるのだ。

 これは法に照らせば重罪以外の何者でもない。公務執行を妨害しただけでも相応の罰が待っているというのに、直訴に及んだということは事を起こした本人はもちろん、係累縁者さえも巻き込む死罪相当の罪に当たるのだから。

 

 これは何もこの世界の支配者層がことさら民に厳しい施策を取っているわけでもない。たとえばかつて生きた日本という国を例にあげるならば、明治時代以前に遡ると領主に直訴などすればすなわち死罪を意味した。それがたとえば天災による不作で食うに困窮し年貢の半減を願うようなものであり、その訴えを領主が聞き届けたとしても、願い出た当事者は家族共々処刑されるのが当然。お上を相手に正規の手続きを経ずに物申せば死罪。直訴とはそういうものだ。

 

 つまりバランを助け出そうとした俺の行動を客観的に見るならば、良くて俺の首一つで事態の収拾を図る、悪ければ俺を含めて一族郎党区別なく斬首、という結果が妥当なものなのである。少なくともアルキード王が大衆娯楽にしばしば登場するようなステレオタイプの駄目王族だったり、面子大事で臣下の一切を省みない暴君だったりしたなら、どう転んでも俺は助かることはなかった。もちろんそんな相手なら始めから希望など見出さずどうにか国外逃亡をする道を選んでいただろうけど。

 

 当然のことではあるが、結果は手段を肯定しない。たとえば病気で苦しんでいる子供がいるとして、必要な薬を手に入れるために窃盗を働くことが肯定されるか? されるはずがないだろう。

 俺があの場でやったのも似たようなものだ。到底誇れるようなものじゃないし、誇るような人間にもなりたくない。それは法治国家に生きた人間の矜持に悖るのだ。結局のところバランは死刑囚だったし、俺はそんな罪人に与するお尋ね者でしかなかった。社会正義と法理は最初から最後まで体制側にあったのだし、法の弾力的運用を論じて良いのは間違っても法を破った側の人間ではない。賭けに走らざるをえなかったとはいえ、俺も無茶をしたものである。

 

「しかし家族も含めて極刑になってもおかしくないところを、陛下は格別の温情を以ってお許しになりました。罪一等減じたところで強制労働か牢獄暮らしが待っている私を不問に処し、政に参加する望外の特権まで下賜される厚遇ぶりですよ。これで何も思わぬならばそれは畜生というものでしょう。恩に報いるが人の道と心得ております」

 

 全てをひっくりかえし、バランをアルキード王国に縫い付けるために命がけの賭けを打ったのが当時の俺だ。テラン王国に伝わる《竜の騎士》の伝説を利用して王に躊躇を生ませ、バランに権威を付与――すなわち政治的価値を見出させた。

 あの当時、俺の目論見は娘を溺愛するアルキード王にとっても至極都合の良いものに違いなかった。

 なにせ駆け落ちなどという愚行で国を出奔し、一度は祖国を裏切った王女なのだ。ただバランと引き離して国に連れ戻してもその後のソアラの立場は厳しいものになったはずだし、人望を失った後継者では国の舵取りも立ち行かない。早急に手を打とうにも手詰まりだったのが現実だろう。

 

 そこに俺が『王女殿下の選んだ相手はそんじゃそこらの貴種では相手にならない男だ』と言い出したのだ。王にしてみれば愛娘の醜聞を晴らす光明として映ったことだろう。俺の語った言葉の真偽はともかく一考の価値はある。そう判断することでバランを生かし、国と娘のために利用する術を練ったとして何の不思議があろうか。

 バランの価値を高めることがソアラの将来を保障することになる。王は竜の騎士の存在を知った時点でそう考え、以後の舵取りを決めた。打算的と蔑むなかれ、国家を背負う為政者が情だけで判断を下せるものか。それに結果的には愛し合う二人を祝福できるだけの状況が整うのだから、十二分に有情な親心だったと思う。

 

 アルキード王がバラン処刑劇のなかで俺が果たした役割をどこまで評価していたかは定かではない。しかしテラン行きの際に王と謁見し、非公式会談で発言を許す程度には俺を評価していたことは間違いないだろう。だからこそバランの従者として任命し、良く補佐をするよう申し付けたのだ。

 俺の咎を一切不問にした上での抜擢である。この仕置きがどれほど異常なことだったかは、おそらくこの一言で事足りるだろう。――『ありえない』。

 

 従者や小姓、傍仕えという立場は、広義では召使いの意味合いを持つが、これは仕える相手が玉座の後継者だったり有力一族の跡取りだった場合は側近として取り立てられることと同義。つまりガチのエリートコースに乗ることを約束された身分なのだ。

 これを踏まえてバランの補佐を任じられた俺の地位を現代日本風に例えるなら、『政府閣僚の補佐官ないし秘書』あたりが一番近いと思う。しかも恐ろしいことに出自や経歴を問わず、試験や実績のような一切を免除する壊れっぷりだ。もはや悪い冗談としかいえないような厚遇のされ方である。

 

 断っておくがこれは立法、行政、司法を独立させ、権力の集中を厭う三権分立が成立している民主主義国家での役職ではない。憲法の下に君主が存在する立憲君主制でさえもなく、王族に力があればあるほど雪崩のように権力が転がり込む専制君主制国家での話なのだ。

 そんな立場に収まったことを意識が戻っていきなり告げられた俺の混乱ぶりがわかるだろうか? 喜びよりも戸惑い、戸惑いよりも恐れが勝ったことは言うまでもない。許されるならば山奥に引きこもりたいくらいの心境だった。

 

 もちろんそうした俺の心境やら国の内部事情まで語ってやる義理はないため、表面上見えることのみで適当に話を切り上げてしまう。自国の醜聞にも関わるのだ、下手なことをいって王族批判をしていたなどと言われたくない。

 

「ご立派ですな、恩顧の何たるかも忘れた不忠の輩に聞かせてやりたいものです」

 

 リップサービスありがとう、残念ながら俺の心に響くものはないけれど。

 テムジンは俺が王家や貴族に反感を抱いているのではないかと推測を立てていたようだし、その共感をもって俺に何がしかの役割を期待したのだろうが、まったくもって的外れというしかない。

 

 なにせ――彼らを欺き、体よく転がしているのは俺のほうなのだから。

 

 バラン処刑騒動から今に至るまで、片時も怠らず彼らを手のひらで踊らせ続けてきた。俺の介入しない未来において、アルキード王国は竜の騎士バランによって国土ごと滅ぼされる。そう思ったからこそ俺はあの日、賭けとわかっていて刑場に飛び込んだ。『こちらの世界に来る前に得ていた知識』と『こちらの世界に来てから集めた知識』を刷り合わせて王族、貴族、平民の反応を分析し、持ちえる限りの札を使って直訴に及んだわけだ。

 

 結果は上々。『竜の騎士の力』を誤認させたまま刑の取りやめに成功したのだ、これ以上の収穫はない。だってそうだろう? 一体何処の誰が『一国を国土ごと消滅させる人智を超えた存在』を自国の支配者に迎えたがるというのだ? あの時点でそんなことが知れればバランを自国の王族に受け入れようなどとは露ほども考えられなくなる。恐怖政治でも始めろというのか?

 

 幸いなことに処刑場でのバランは粛々と刑を受け入れようとしていた。俺の話に信憑性を持たせるために多少の力の誇示はしてもらったが、まさかあれだけでアルキード消滅の危機まで想像する悲観論者がいるはずもない。というか、あの場面からそこまで思考を飛躍させられるのは夢想家か狂人の類でしかないと思う。幸いなことにアルキード国民は至って常識人であり、それは支配者側の王族貴族側とて同じだった。

 彼らはバランがアルキード王国に牙を向けた際の被害想定を甘く見積もったのだ――俺の期待通りに。

 

 その後はバランを受けいれさせるため、バランを弱く見せることに腐心することで竜の騎士の脅威度を誤認させ続けた。間違っても《本気のバランがアルキード王国に弓引いた場合の想定》などをさせるわけにはいかなかったからだ。

 いうなれば『人類の到達点(ハイエンド)』としての振舞いだ。たとえば屈強の兵士集団を手玉に取ることもアバンやブロキーナ、あるいは亡きロカあたりならば十分にこなせるだろう。ある程度地盤を固めたことで力の一端を解放した国境のいざこざ、つまりベンガーナ軍の戦意を挫いた極大雷撃呪文(ギガデイン)の一撃とて、マトリフならば極大閃熱呪文(ベギラゴン)極大爆裂呪文(イオナズン)を用いて似たような被害をもたらすことは出来るのだ。

 

 これら全てが俺の仕込みだったのだし、これ以後も《竜の騎士が安心して暮らせる国》を作り出そうとしているのが俺なのだから、踊らされている人間にしてみれば業腹なことだろう。王権に竜の騎士を取り込ませるという建前の元、竜の騎士が頂点に立ち得る国を作ろうとしているのだから弁解の余地もなく、また、する気もないのだ。

 『アルキード王国は人間が治める国なのだ』と、悲壮な声で訴えかけられたことだってある。それでも止める気がないのだから、俺はある意味で旧体制の破壊者といえた。……皮肉なもんだよな、俺の気質は何処までいっても保守的だってのに、やってることは竜の騎士を中心に置く新たな秩序の構築――つまるところ緩やかな革命だ。王家乗っ取りという意味では将来のテムジンをそう非難できたものでもなかったりする。

 

 とはいえそれがバランの、ひいてはダイのために必要なことだった。

 かつて――じゃないな、とある未来において大魔王バーンは勇者ダイに向かって『戦いに勝利した後、人間は必ずお前を迫害するようになる。それが人間というものだ』と予言した。それは半分正しく、半分間違っていると俺は思う。

 

 あの世界で勇者として戦ったダイが迫害される、これはおそらく正しい。高い確率でバーンの予言どおりの未来が訪れただろう。喉元過ぎれば熱さも忘れるのが人間だし、人の力で対抗できない外敵のなくなった後の世界で双竜紋を持ったダイの力は強大すぎる。

 時間が経つごとに人々はダイを疎みだし、いずれは目の届かぬ場所に追放しようとしたはずだ。また、ダイもそれに逆らわずどこか人の目に触れぬ場所にでも隠遁しただろう。人間に裏切られたらバーンを倒して地上を去ると広言した勇者だ、それで不満に思うこともあるまい。

 

 だが、彼はそれでよくとも子はどうなる? 子々孫々まで日陰者として隠れ住むのか? それとも子も成さず竜の血筋も自身で終わらせる覚悟だったのか? だが、それが地上を守った勲功として与えられる結果では寂しすぎると思うのだ。そして俺は人間をそこまでせねば己が安寧を図れぬ忘恩の徒だと貶めたくはない。

 

 ――だからこそ大魔王バーンの予言を否定したかった。否定するべきだと思った。

 

 そのためには『竜の騎士が統べる国』が必要なのだ。民が認め、民が奉じる為政者としての竜の騎士。在野の英雄が国にとって不都合ならば、初めから英雄が支配者側に君臨してしまえばいい。根無し草の勇者では無理でも、血統を保障できる国がバランを、ダイを、彼らの子孫を守り、盛り立てていくことはできるはずなのだ。

 

 バーンの言葉は人間の一面を語っているに過ぎない。

 そもそも個に優れた魔族は本質的に個人主義を掲げやすい。強靭な生命力と精神力を持つ彼らは寄る辺がなくとも生きていけるからだ。そして不老の魔道すら確立し、個で完結した強さの極致に至ったバーンだからこそ、群れて生きる人間の習性を掴み切れていない。

 

 バーンの言葉通り人間は確かに異物を恐れるが、その弱さゆえに確立した権威に従順な一面を持つ。日々の生活を投げ打ってまで体制に逆らい、命をかけて我を貫き通せる者など多くはないだろう。

 彼らが真実恐怖しているのは『理解できぬ隣人を持つことで自らの安全が脅かされる可能性』なのだから、それを潰してしまえば煩く声をあげる者も消える。大陸を消し飛ばすほどの力が知れ渡る前に、竜の騎士に統治者としての実績――民に安寧と富をもたらし続けた事実さえあれば十分だ。

 そもそも『王権神授説』なんて言葉があるように、統治に特別な血筋を用意することなど珍しくもなかった。

 

 そうして支配者として受け入れられ、長年に渡ってその施政に浴していれば、自ずと一つの意識が民に芽生え始めることだろう。すなわち『変わらない今日、変わらない明日』である。それは感覚の鈍磨であり、非日常が日常と化す過程でもある。

 実際、今のアルキード王国は俺の目論見通りになりつつある。少しずつ、少しずつ変容は進み、竜の騎士が君臨することに違和感も消えていく。

 

 ――戦後を見据えた世界の趨勢、その全てをこちらの都合の良いように引き寄せる。

 

 種族融和の必要性を訴えるのだって同じことだ。ソアラの唱えるそれは種族間のいがみ合いを少しでも軽減させ、より長期間の平和をもたらさんとする意志の表れあってのものだが、俺にとっては徹頭徹尾竜の騎士のためという理由に行き着く。

 種族融和の輪の中には魔族を皮切りに、いずれはモンスターも加えるよう働きかけるつもりだった。

 多種族をアルキード国民とすることで、竜の騎士の異物感を相対的に引き下げることができる。見た目でいれば人間と瓜二つの竜の騎士よりも、異形のモンスター種のほうがずっと遠ざけられやすい。竜の騎士を守る良い風除けになってくれるだろう。

 

 この動きの決定的な引き金となるのはダイの帰還だ。《魔物に育てられた》行方不明の王子が戻ったとき、人と魔物の関係もまた見つめ直さずにはいられなくなる。『敵』の線引きに綻びが出来るのだ。

 これまで俺が目指し、丁寧に丁寧に組み上げてきた数多の歯車が噛み合い、一層の加速を見せるのは確実。だからこそダイの無事を祈らずにはいられない。あと少しだ、あと少しで竜の親子が再会できる。

 

 俺は竜の親子の行く末を見届けることを自身に課した。そうあれかしと決めた以上は迷いもない。

 そしてアルキード王国は少しずつ、しかし確実に『竜の騎士のための国』に変わりつつある。あとは血の継承――次代の竜の紋章が発現されてくれれば、懸念の大部分が消えることになるだろう。竜の血筋を国父と守り立て、末永い安寧と繁栄を達成せしめる。そのための統治システムを構築し、遺漏なく後の世に託すのが俺の為すべきことだ。

 既に俺は俺の道を定め、歩いている。今更他人に己の命運を委ねるつもりもなかった。

 

「ルベア殿は先ほど平民から拾い物が出ればと口にされたが、あなたご自身が良き拾い物でしたな。アルキード王家は意図せず稀有な忠臣を得たようだ。無論、アルキード王の器量あればこそですが」

 

 バラン達の駆け落ち騒動や俺の登用にまつわるごたごたの核心部分は伏せて報恩のみに触れた会話を繰り返す。こうして事象の表面のみを追った結果、俺のことを私心なき忠臣と勘違いしているテムジンが少しばかり哀れだ。もちろん訂正の必要など認めないけど。

 

「過分な評価を感謝します。ですが、その『拾い物』とやらが真に指す者は私ではありませんよ?」

「ほう」

 

 ぴく、と一瞬テムジンの眉が顰められた。自身の把握しきれていない情報に焦ったのだろう。

 

「それはいかな傑物ですかな。是非芳名をお伺いしたい」

「改めてご紹介の場を整えるまでもありません。その者はずっと貴殿らの眼に映っているのですから」

 

 そこまでいえば誰を指しているか明確だろう。テムジンとバロンの視線がラーハルトに向き、注目を集めた当人は『何程のものでもない』と涼し気な佇まいを崩そうとしなかった。場数を碌に踏んでいないはずなのに小憎らしいくらいの落ち着きぶりである。

 

「そちらの者は……確か護衛として紹介されたラーハルト殿、でしたな?」

「ええ、我が主が手ずから見出し、少なくない時間を割いて稽古をつけるほどに将来を見込んでいる戦士です。今は若輩なれど、いずれ雄々しき竜の牙として諸国に名を轟かせましょう。私はその日が楽しみでならないのですよ」

「……なるほど、覚えておきましょう」

 

 ラーハルトを一瞥した後、俺とじっと目を合わせること数秒。テムジンは抑揚に欠けた声音でそれだけを口にした。俺の言葉を単なる揺さぶりと取るか、あるいは将来の脅威と取るか。このあたりはテムジンよりもバロンのほうが正確に察知しそうだな。彼らがどこまで本気にするかはさして重要ではない。この先も似たような話を俺が拡散させる予定だからだ。

 

 現時点で世界を救った勇者と互角にやりあえる武力持ちなのだ、どれだけおとなしくしていたところでラーハルトの武名が高まるのは確実なのである。だからこそこうして広報活動に勤しんでおけば、いずれラーハルトが大成した暁にはバランには『才覚溢れる部下を見出した慧眼』という風評が立つだろうし、ラーハルトの名にも大いに箔がつく。

 半魔族のラーハルトが人間の兵士の信望を得るために、諸国に響き渡る名声ほど役に立つものはないだろうさ。何時の時代も兵士が望むのは勝てる指揮官なのだから。

 

「アルキード王国には若い力が育とうとしているようですな。我が国も遅れを取らぬよう肝に銘じましょう」

「バロン殿という俊英を抱えてその台詞ですか? 謙遜が過ぎますね、テムジン殿。まして貴国の姫君は御年五つで賢者の才覚をお示しになられている上に、名家の子女の中にも目を見張らんばかりの金の卵が育っているとか」

 

 後の三賢者であるアポロとマリンの二人は若干十一歳ながら既に才能の片鱗を示しているようだ。賢者の卵として将来を見込まれている。

 エイミは彼らより年下の九歳であるためか、二人ほど名は聞こえてこないが、やはり数年で頭角を現すのではないだろうか?

 

「バロン殿も先達として鼻が高いでしょう。さすがは賢者輩出の地とまで呼ばれる国です」

「……まことに」

 

 言外にパプニカの事情の奥深くまで通じていることを匂わせる。バロンは動揺を隠しきれておらず、歯切れ悪い返答だった。そりゃ、正式に任官してるわけでもない人材にまでチェックが入っていると知れば不気味だわな。目にも畏れの色があった。

 その一方でテムジンは表向き何事もなかったかのように対応した。この場合、肝が据わっているというよりは面の皮が厚いというべきなんだろう。

 

「ふむ、確かに我が国にも将来が楽しみな者が幾人もおりますな。ですがそれもまだまだ先のこと。老婆心ながら申し上げれば、ルベア殿もラーハルト殿も表舞台に立つには少々若すぎます。お気を付けになられるがよろしいでしょう」

「重々承知しています。こういっては不遜に聞こえてしまうやもしれませんが、先の大戦で民を導き、最後まで魔王に屈さなかったフローラ様のように毅然と職務に臨みたいと考えております」

「はっは、それは剛毅なこと。フローラ女王といえば御年十四で国主代行まで務めきった英邁(えいまい)君主ですからな。なるほど、年齢で貴方を侮るような者には強烈なしっぺ返しになりましょう」

 

 あんたのところのお姫様は一族郎党全て生死不明の憂き目に瀕したせいで、代行どころか十四歳の若さで一国を背負う羽目になってたけどな。さすがにこの世界でも同じ轍を踏ませる気はないけどさ。

 この世界のフローラや別の世界のレオナの境遇は悲惨の一言であるが、多かれ少なかれそれが王族というものだった。労ばかり多く、実入りなど驚くほど少ない。そして泣き言など許されない苛烈な世界である、望んで仲間入りしたいとは思わない。

 

 その点では、うちの親が『奉公に出るのが早すぎる』と嘆くだけの余裕があっただけに、平民のほうが王族よりもよっぽど恵まれているだろう。そもそもこの世界では子供も労働力として扱われるが、そんなものは二十世紀前半の日本とて同じことだったことを思えば何ということはない。成人年齢として扱われるのが十六歳、慣例として奉公に出るのが十七か十八、俺が多少早熟だったとでも思えば……。

 

 俺が王族か貴族にでも生まれていれば似たような年齢で政に参与した前例も残っているのかもしれないな。ああ、フローラが既に前例か。七年前のハドラー戦役終結時に十四、五の小娘だったんだから、十やそこらの時分でも表沙汰になっていないだけで政務に携わっていたのだろう。そうでなければ国王が倒れた後に一国をまとめきれるか怪しい。

 

 今は戦時ではないし、うちの王子王女には十五くらいまで子供でいさせてやりたいものだが、などと考えているとやっぱり平民のほうが気楽だとつくづく実感する。もっとも八年ちょっと先の未来で大魔王バーンに対抗した最終メンバーのうち、ダイは十二歳、ポップは十五歳だったことを考えると、年齢云々を考え出すだけ無駄な気もするけど。

 

「ところでルベア殿、ベンガーナ王国が近年急速に配備を進めている大砲についてなのですが、アルキード王国にもいくらか輸入されているはずですな?」

「ええ。ベンガーナ王国との合同演習だけでなく、うちでも大砲の戦術評価を検討するべきだとの声が少なくなかったので、試験的に導入しています」

「我が国でも興味を示している者がいましてな。もっとも大砲を揃えて意気軒高にあったベンガーナ軍を、貴国のバラン殿下は歯牙にもかけなかったと聞き及んでいますが」

「バラン様と同じことを兵士一人ひとりに求めるくらいならば、海水を砂糖水に変える努力のほうがまだ実りあるものになるでしょうね」

 

 ひょいと肩を竦めてみせた俺に、テムジンは「それはそれは」と苦笑をこぼすばかりだった。

 

「戦局を決定付ける魔法使いの火力とて有限なのです、何事も運用次第でしょう。ベンガーナ王とも知らぬ仲ではありませんし、口利きがお望みならば骨折りも吝かではありません。ですが、その際はパプニカ王家の紋が必要になりましょう」

「無論です。私も良からぬ企みを抱いているなどと疑われては嬉しくありませんからな」

 

 本当にそう願うよ。もしトチ狂ってうちに迷惑かけにでもきたら、その時は一片の容赦もせず無慈悲にひねり潰すだけだけど。そんな風にちょっとばかし不健康な将来の算段を弾きながら、顔はにこやかに、あくまで友好的な握手を交わそうと席を立ち――。

 予期せぬ急報が飛び込んできたのは、まさに俺たちが握手を交わしあう瞬間だった。

 

「テムジン様! テムジン様はおられますか!?」

「何事だ、騒々しい!」

 

 バロンが怒りの表情で応対に出る。だが、ノックもそこそこに足音荒く部屋に飛び込んできた年若い兵士は、そんな賢者殿の剣幕にも動じる様子はない。いや、動じるほどの余裕がないというべきだろう、一目でわかるほど切羽詰まった顔をしていたのだから。

 

「落ち着け、何があった?」

「ま、魔物の襲撃です! 地底魔城の方角より敵影多数! 私は守衛長と同時に報を受け、その場にて急ぎテムジン様にお伝えするようにと」

「待て、貴様は新兵か? 客人の前なのだ、栄えあるパプニカ兵としての振る舞いを心掛けてもらわねば困る。よいか、報告は明瞭に口にせよ。そもそも地底魔城のモンスターがこの砦に襲撃をかけるのは初めてではないだろう。いずれも少数の散発的なものであったし、この砦は二十や三十の魔物が攻め寄せようとびくともせん」

 

 テムジンとバロンは呆れ顔だったが、俺の嫌な予感は膨れ上がるばかりだった。ラーハルトを見れば俺と同様険しい顔つきになっていた。テムジンらは今までの実績から事態を楽観視していたが、それにしては兵士の慌てぶりが尋常ではない。彼が本当にただの新兵でパニックを起こしているのならば良い。だが、そうでなかった場合は――。

 残念ながら、その答えはすぐさま証明されてしまうことになる。

 

「違うのです!」

「だから落ち着けといっておろう。何が違うというのだ?」

「地底魔城より迫りくる魔物は陸上、飛行モンスター合わせて五百を下ることはありません、かつてない規模の大攻勢です! また奴らは歩調を合わせ、魔物の群れとは思えぬ統率を見せつけながら迫りきているとのこと、深夜未明にもこの砦に到達する見込みでございます!」

「……ご、五百。しかも猶予もごくわずかだと?」

 

 一瞬呆然としたテムジンだったが、それでもすぐに精神の再建を果たしたのは、さすがに前大戦の経験が生きているというべきだろう。

 

「いや、それでもこの砦の防衛機能を活用すれば撃退できぬ数ではない。守衛長は既に事態を把握しているのだったな。急ぎ合流し、備えをせねばならんだろう。平行して王都に急使を――」

「お待ちください、報告はまだ途中です」

「む……」

 

 思考を中断されたテムジンが胡乱な目で兵士を見やるが、上位者の不興を買ったことなどこの若者は露ほども認識していないだろう。何故ならばそんな余裕は何処にもないのだと、俺たちもまたすぐに知ることになったからである。

 

「魔物の軍勢は地底魔城方面だけではありません、何ゆえか王都方面からも押し寄せてきています。数はおよそ百五十。つまり今現在この砦は実質包囲されかけているのです……」

 

 年若い兵士はそう報告するや目を伏せ、力なく項垂れた。狂乱が過ぎれば残るのは救いのない現実だけと告げるような気落ちぶりだ。

 

「馬鹿な……。王都側からも押し寄せてきているだと? 何故気づかなかった」

「警戒は常に地底魔城に振り向けられ、王都側には最小限の備えしかありません」

「わかっておる、わかっておるが……。――ええい、ぬかったわ!」

 

 木製の卓を殴りつけるテムジンはワナワナと肩を震わせていた。みすみす想定外を呼び込んでしまった自身への不甲斐なさだったのか、あるいは魔物の軍勢への怒りゆえだったのか。いずれにせよそれは今この場では何の意味も持たないことだった。

 テムジンだけではない、俺もラーハルトも、かつてない危機を迎えようとしていた。

 

「こうしていても埒があかん。バロン、すぐに守衛長と合流する。そこな兵士よ、案内せよ!」

「はっ!」

「ルベア殿たちにはご不便をお掛けするが、すぐに代わりの者を寄越すゆえこの部屋にて待機をお願いしたい。なに、心配めされるな。魔物ごとき我らパプニカの精鋭がすぐさま追い払ってみせましょうぞ。――では、ごめん!」

 

 俺たちに気を遣う余裕もなく、そう言い捨てて急ぎ部屋を出ていく三人。判断は正しいから何も言わないけど、ものすごくぞんざいな扱いには違いなかった。

 

 

 

 

 

「魔物の大軍勢襲来せり、か。奴らの慌てぶりを見るに形勢も悪いようだな」

 

 まずラーハルトが口火をきる。部屋から俺達以外の人の気配が消えたのち、どちらからともなく戦況分析に入っていた。

 

「仕方ないだろう、この砦に詰めてるのはおよそ三百って話なんだ。しかも地底魔城から溢れたモンスターとくれば、その強さはそんじゃそこらのモンスターの比じゃない。……それでも正面の五百だけならなんとかなったんだろうけど」

「背後の別動隊に戦力を振り向ける必要がある以上、兵力の分散は避けられん。王都側は砦の防備も薄いゆえ、ベテラン兵を中心に編成することになるだろう。となれば五十から七十の精鋭を王都側に廻して防衛、残りの二百余りの兵で正面戦力を迎撃、そんなところか」

「その布陣も含めてテムジンらが急ぎ話し合いを持っているんだろう。それに突然の奇襲かつ包囲されかけってのが痛すぎる、兵の間にも相当動揺が広がっているんじゃないか? どこまで速やかに混乱を収めて迎撃態勢を万全に出来るか、時間との勝負になる」

 

 パプニカが戦後七年で一度として遭遇したことのない未曾有の危機だ。テムジンたちはここから兵をまとめあげ、倍以上の魔物を敵に回して迎撃を成功させねばならない。援軍の見込みは……今から信号弾を挙げたとしても王都の兵は間に合わないだろうな。近隣の村や街から駆けつけるにしてもモンスターの大群に対抗できるだけの兵数を揃えるのは一苦労、さして王都と事情は変わらない。

 なによりこの砦が完成してから五年以上の間、地底魔城を完全に封殺しきっていたのだ。救援にしたってどこまで即応態勢を維持できているか怪しい。援軍頼みが無理な以上、現有戦力でなんとかする方策を見出すほうがまだ現実的だろう。

 

「籠城戦か、逃げ道が塞がれている重圧は相当なものがある。パプニカ兵の真価が試されよう」

「彼らには奮戦してもらいたいもんだ、俺たちだってそんな余裕ぶってられる状況じゃない。もっとも逃走経路を塞がれていなくてもパプニカの連中は死守命令に殉じるだろうよ。何百もの軍勢を素通りさせれば被害がとんでもないことになる。まかり間違って勢力を維持されたまま王都に行進でもされたら大パニックだ、考えたくもない」

「その懸念は奴らが余勢を駆って王都に攻め込めばの話だろう。抑え込まれた末の暴発だとすれば、案外この砦を落とせば奴らも解散するのではないか?」

「可能性は否定しない。が、だからといってどうぞと通すわけにもいかんだろ。国防の最前線を預かる将兵にそんな腑抜けた理論で動かれちゃたまらん」

「確かにな」

 

 それに、とつけ加える。

 

「この襲撃だけど、単なる暴発と片付けるには不審な点が多い」

「どういうことだ?」

 

 ふぅ、と一旦気を落ち着ける。俺も一層冷静にならないと思考を誤りかねない。

 しかし完全に厄日と化したな。瞬きするごとに状況が悪化している気がするぞ。

 

「まず別動隊の群れが一体何処から来たのか? 王都側の警戒が薄かったというのはこの際どうでもいい。問題は『別動隊』としかいいようがない軍勢の正体だろう、地底魔城とは別の勢力だとするにはタイミングが良すぎる。となると――」

「背後の連中も地底魔城からやってきたと?」

 

 こくり、と頷く。

 砦の王都側は街や村が点在している人類領域だ、モンスターが人里に降りてきたとてたかが知れている。今回のように百以上の集団が整然と『軍勢』として押し寄せてくるなどありえん。

 だが現実として今現在この砦は包囲されかけているのだ。となれば正面と背後の集団は間違いなく示し合わせてきている。つまりこの戦いは散発的な小競り合いではなく、この砦を戦術をもって攻めようとしているのだ。それは同時にモンスター集団を統一する意志が見え隠れしていることを意味する。

 

「百以上のモンスターが一斉に動き出せばこの砦の警戒網に察知されないはずがない。そもそも地底魔城から通じる道はこの砦を経由する以外にない以上、二つの勢力を地底魔城由来の集団と定義するのも不可能なはずだが……。ルベア、心当たりはあるのか?」

「いくつか条件をクリアする方法は思いつくよ。たとえば――」

 

 そう、たとえば地底魔城に飛行を可能とするモンスターがいれば峻険な崖上を迂回し、『地底魔城の魔物』を王都側に配することも出来なくはない。人間の体と魔法力では超えることはできなくとも、魔物の体力と空に特化した生態ならば……。その際魔法の筒が残っていればなおよい、魔物輸送も楽になるだろう。

 

 もっともこれは秘密裡に、かつ、地底魔城の統制の元、事あるまで身を潜ませるだけの忍耐と知能が必要となる。年単位の準備が必要な以上、魔王とはいかずとも魔物を服従させ、指揮統率できるだけの特別な個体がいるはずなのだ。

 あるいは地底魔城から少数のみを脱出させて近隣の魔物を糾合、今回の大攻勢に参加させるというのも可能性としてはあるのだが、そこまでの仲間意識を持たせられるか、別の縄張りの種族を説き伏せて地底魔城のモンスターのために命をかけさせられるか、というと無理筋に思える。当然その場合も長年の指示、警戒網を潜り抜けて連絡を取り合う等、様々な準備を進めなければならないことには変わらない。ばらばらの集団では絶対に不可能なのである。

 

 それに正面戦力の数の多さもひっかかる。パプニカの調査では年々魔物の発生は減少傾向にあるとのことだったし、それが『正規の間引き以外の成果』と誤認されていたとしても、相応の数が狩られていることには違いない。となれば今回の大攻勢は不自然なのだ、だが現実はそんな想定を軽く超えていた。

 

 この認識の齟齬を埋め合わせるピースは魂の貝殻だ。原作で魂の貝殻が残っていたように、地底魔城には未だ人類が把握していない隠し部屋がいくつも残っているとみるべきだろう。宝を隠しておく用途ではなく、侵入者を罠に嵌めて袋叩きにするための部屋なりがあってもおかしくないのだ。

 俺が設計者なら間違いなくトラップ部屋程度は設置しておく。最悪の場合、地底を通じて別の場所に避難場所を作ってあることだって考えられるとなれば、パプニカの調査結果など参考資料にしかならなかった。

 

 パプニカの討伐隊や調査隊の目を長年誤魔化し、モンスターの数を秘匿した上で一気呵成の反撃に踏み切る。不運なことにそれが今夜だったようだ。

 思えば昼間一度だけ遭遇した魔物は斥候の役目を持っていたのかもしれない。その結果が予定通りの侵攻だったのか、それとも計画を前倒ししてのものかはわからないが、それは大した意味を持ちえないだろう。

 ともあれ、どんな推測も行きつく先はやはりモンスターをまとめ上げる指導者の存在だった。ここまで組織だった動きを見せている以上、地底魔城に魔物の統率を取っているモンスターがいる可能性は極めて高い。……頭が痛くなるばかりだ、さすがにクロコダイン級の親玉とかはいないよな? ほんと勘弁してほしい事態である。

 

 そうやって今の状況を手短に読み解きつつ口にしているうちに、気が付けばラーハルトがどこか呆れたような顔で、まじまじと俺を眺めていることに気づいた。

 なんぞ?

 

「いや、よくもまあ、あれだけの情報からここまで推論を立てられるものだと思ってな。一体お前の頭の中はどうなっている?」

「大したことじゃないだろ? 所詮は推論に推論を重ねてそれらしく辻褄を合わせただけなんだから驚くようなことじゃないし、こんな穴だらけの推測なら誰だって出来る」

「それでも――いやいい。では今回の件、魔王軍の残党が蠢いているということはないのだな」

 

 この場合、魔王軍の残党とは言葉通りの意味ではなく、魔界で沈黙を守っているバーン一派のことを指す。『外』で話す際の暗号みたいなものだ。

 

「ふむ。俺もその可能性は考えたが、可能性は薄いと思う。どうにもやり方が迂遠すぎるんだ。魔王クラスの野心と知能を持つ実力者が率いていると仮定すると、今の地底魔城の襲撃からは戦略目標が見えてこないんだよ。版図を広げるような軍事行動にはほど遠い杜撰さだろう」

 

 なによりわざわざ地底魔城を足掛かりにする意味がない。そんなことをするくらいなら別の勢力を迎合したほうがよほど容易く力をつけられるだろう。よって今現在の地底魔城の意志は外部ではなく内部で発生したモンスターのものだと考えられる。

 ましてや、と話を続ける。

 

「竜の騎士であるバラン様や勇者であるアバン殿がこの場にいるならともかく、俺やテムジン、あるいはバロンはここまで大掛かりな仕込みをしてまで狙うには小物すぎるんだ。お前がもうちょっと有名になってれば威力偵察の線も考えられるけどな。よって今のところ特定個人を狙ってるようにも見えない」

 

 それが救いになるかといえば、そんなことはまったくないのだが。ことこの場に限っていえば最悪ともいえる。なにせ『パプニカ砦に籠る兵士対地底魔城の魔物』の図式では落とし所がないのだ。

 どうにもならない厳しい現実を前に、重苦しい溜息を零してから断言した。

 

「結論、今回の一件は純粋な『人類と魔物の生存競争』と考えるべきだ。どちらにせよ俺達は厄介な事態に巻き込まれたことになる」

「なるほど。地底魔城に抑え込まれていた魔物が一か八かの起死回生を図ったとするならば、どこにも手打ちのしようがないというわけだ。魔物も生き残るために死に物狂いだな」

「残念なことにな。この先は仁義もへったくれない、人間も魔物もただただ敵を殺しきるまで止まらない凄惨な戦が待ってるだけだ」

 

 窮鼠猫を噛む、そんなところかね。

 魔物の知能と脅威を誤認した結果がこれだ。なにより追い詰め、逃げ道を塞げば誰とて死兵になる。その程度は人間同士の戦争でもわかりきっていたはずなのに、パプニカ首脳部はそれら一切合財を軽視してしまった。これで図らずもマトリフの危惧を証明してしまった形になるな、できればその現場に居合わせたくはなかったけど。

 

「この戦い、パプニカは勝てると思うか?」

「……正直厳しいな」

 

 パプニカ兵を弱兵と侮っているわけではない。パプニカは歩兵や騎兵はともかく魔法部隊の質に限れば世界有数の国家なのだ。まして現在のパプニカの最前線といえるこの砦には選りすぐりの兵が揃っているはず、多少の戦力差があったとしてもそう簡単に落とされるとは思えない。

 とはいえ、返す返すも先手を取られたのが痛かった。戦力の集中運用が妨げられた以上、こちらは泥縄式に対応せざるをえないのだ。

 

「地底魔城で確認されているモンスターは往時ほどではないにせよ凶悪だ。予想されるモンスター種が捨て身の覚悟で攻め寄せてきているなら、パプニカ側は単純な戦力比で三分七分の劣勢、砦に籠る利とバロンの力量次第で五分五分まで持ち込めれば御の字、ってとこかな。――要するに痛み分けに近い終わり方をするんじゃないか? 今回の襲撃を凌いだところで、人的消耗が甚大になることだけは保障できるけど」

「嫌な保障だ」

 

 俺も言ってて嫌になってくる、他人事じゃないからなおさらだ。いきなりこんな死地に放り込まれるあたり、どうやら普段の俺の清く正しい行いを見守ってくれている心優しい神様はいないようである。

 

「――ふん、手詰まりだな。貴様も己が命運を他者に預けきるのは趣味ではないはずだが、この局面、いかな手を打つ?」

 

 暗に抗戦を仄めかすラーハルトだった。

 

「もちろん死ぬつもりなんてさらさらないが、だからといってお前の提案にはいそうですかと頷けるほど事は単純じゃないぞ。多分、俺たちには最後まで部屋に籠ってるよう要請がくるはずだ。なにせ俺らは国王公認で招かれたお客様なんだからな、彼らは俺達を無事に返す義務がある。それを抜きにしたって、半魔族のお前が戦場に出るといってもパプニカの兵には絶対に歓迎されないだろうよ。望んで肩を並べたがる兵がどれだけいると思う」

「その程度は覚悟のうえ。ここの連中と連携など取らずともこの身一つで軍勢の渦中に飛び込み、百でも二百でも魔物を屠り続けて見せよう」

「却下だ、そんな無謀な真似を俺が認めるわけないだろう」

 

 ラーハルトに気負いはない。こいつは本気で言っているし、本当に言葉通りの真似を出来そうなのが困る。虚言を好まない男だけになおさら凄みを感じるのだ。

 溜息を一つ。いかん、少し芝居くさかったかもしれない。

 

「いいか、俺達がパプニカのために血を流す義理も義務もないってことを忘れるな。ましてこんな戦でお前を失ったら俺はバラン様に顔向けできなくなる。それを踏まえて俺たちのすべきことは、第一に生き残る可能性を探ることだ。本格的に参戦するのは離脱の手段を検討してからでも遅くはないし、パプニカ兵の勝利を信じて待つのが一番順当でもある」

「承知している。そのうえでもう一度聞くぞ。『俺とお前がここにいる』。だというのにお前はこの程度の戦況も覆せぬと口にするつもりか?」

 

 その不遜な物言いに今度は混じりっ気なしの嘆息を零さずにはいられなかった。眩しい、と素直に思う。この傲慢なまでの自負が心地よく思える俺もどうかしていた。なにせラーハルトの方針も決して血気に逸った無謀ではないのだ。

 

 まず逃げるにしても徒歩や馬車で離脱はちょっと難しい。モンスターの群れが迫っている中、奴らに遭遇せず抜けるには相当低い確率だろう、命を預けるには心許ない。地理に明るくない俺達が下手に動き回るのは無謀なのだ。

 

 だったらルーラはどうかといえば、この砦に都合よくルーラ使いが控えているか怪しい。あるいはこの砦が設立された当初ならば待機させていたかもしれないが、何年にも渡り安全を保障されていた砦に、万一のためとずっと張り付けておけるほどルーラ使いの数は潤沢ではなかろう。それにルーラを使える魔法使いはほぼ例外なく優秀な術師だ、この劣勢のなかで引き抜かせてくれるとは思えなかった。

 第一、運よく確保できたとしてもルーラを実行する段になれば間違いなく二の足を踏むだろう。押し寄せる魔物のレベルによっては、最悪の場合ルーラの発動中にすら叩き落される可能性があるのだ。そんなことになったら確実にデッドエンドを迎えてしまう、ルーラは万能の逃走手段にはなりえないのである。テムジンにルーラで離脱を勧められても頷けるかどうかは微妙だ。

 

 ならばラーハルトの口にするように初めからパプニカ兵と協力して魔物を押し返す、否、殲滅するのはどうか。この場合、ラーハルトの参戦が認められるのならば少なくとも俺が生き残れる率は確実に上がる、想定されるパプニカ兵の甚大な損失も相応に抑え込めるかもしれない。そう考えれば悪手というほど実現性のない選択肢ではないだろう。その場合の問題点は……結局最初に戻るわけか。

 

「俺達が死ねばテムジンの責任問題になる。参戦するにせよ、まずは奴にそのリスクをどうやって呑み込ませるかというのが一つ。それとお前とパプニカ兵を連携させられるだけの下地の構築がもう一つの問題として立ち塞がる。お前だって味方に刺されるのは御免だろう? 最低限この程度はクリアできないと困るぞ、どうするつもりだ」

「知れたこと。細かな事はお前に任せるだけだ、貴様ならどうにでもするのだろう?」

 

 ……おい、こら。

 

「そこで他力本願かよ。ほんっとうに面の皮が厚くなりやがったな、お前」

「褒め言葉だな、ありがたく受け取っておこう」

 

 微塵も悪びれた様子がねえ。

 誰だよ、こいつに余計な知恵をつけたやつ。責任者出てきやがれ。

 

「それにもう一つ重要なことがある」

「なんだ、聞いてやろうじゃないか」

「なに、大したことではないさ。いっただろう、俺はこの国のために積極的に何かしてやろうとは思わん。だが、この国は俺の父母が眠る鎮魂の地でもある。死者は静かに眠らせてやるべきだと俺は思う」

「……ああ、そうだな」

「生前両親に迷惑をかけ通しだったこの不出来な男に、最後の孝行に励む機会をくれ。構わんだろう、ルベア?」

 

 ふっと柔らかな笑みを浮かべるラーハルトに虚を突かれた。どこか悪戯な光を宿した目に毒気を一気に抜かれ、自然とこみあげてきた暖かなものに突き動かされるまま、俺の顔にも笑みが浮かんでくる。これは完敗かな。

 

「いいね、『人』を良く見てる。お前も俺の動かし方がわかってきたじゃないか」

「ならば()く命じるがいい。俺の槍はそのためにある」

「了解、お前の命と心意気は確かに預かった。だったら後は俺の仕事だ、お前の槍を振るうに足る場を用意してやるさ。ただしお前には間違いなく死線を潜ってもらうことになるぞ、覚悟はいいな」

「言われるまでもない。――頼りにさせてもらおう」

「お互いにな」

 

 こつっと拳を打ち合わせた時、テムジンが口にした代わりの者が到着したらしい。足音荒く近づいてきていた気配が、蹴やぶらんばかりの勢いで出入り口の扉を開け放ったのだ。

 

「ルベア殿、ラーハルト殿、ご無事ですかな!? ワシが来たからには何一つ心配されることなぞありませんぞ、この命に代えてもお守り申し上げる所存!」

 

 俺とラーハルトの間で徹底抗戦の合意が取れたところで現れたのは、汗だくのバダックだった。よほど急いでいたらしい、ぜえぜえと息も絶え絶えの様子である。バダックは現在この砦で指揮系統の外にいる兵だ、正式な令によって詰めているわけではない。ということで俺たちの世話係に回されたのだろう、微妙に厄介払いの匂いがついてくるあたりはご愛敬というものか。

 そんなバダックは俺たちの姿を確かめると安心したように長く息を吐き、やがて呼吸が落ち着くと、にかっと人好きのする笑みを浮かべた。俺たちのことを心底心配し、安心させようとしているのがありありと伝わってくるようで、こういうところが憎めない爺さんなんだろうと思う。プライベートで友人に持ちたいタイプだ。

 

「ちょうど良かった、こちらからお話にあがるところだったのです」

「はて? なにかありましたかな?」

「不躾ではありますが、まずは紙とペンをご用意いただけますか? それと二人分の武具も一揃えお願いします。それが済みましたらテムジン殿への目通りを」

 

 俺は護身用のナイフを一本、ラーハルトも護衛の職務のために用意した槍を一振りしか持ち込んでいない。今のままでは戦場に向かうにしても装備が貧弱すぎる。それに俺は膂力の不足から。ラーハルトは速度を重視した戦闘スタイルから。二人ともに防具は軽装を好むとはいえ、さすがに厚手の防寒具を鎧と言い張るわけにもいくまい。

 幸いここは最前線の軍事施設だ。装備の予備くらい幾らでも転がっているため、遠慮なく拝借させてもらうことにする。そんな俺の矢継ぎ早な要請に、バダックといえば目を白黒させるのみだった。

 

「なぬっ? ちょっとお待ちくだされ。武具を揃えろとは、まさか――」

「ええ、お察しの通りです」

 

 バダック殿、と呼びかけ、眼光鋭く視線を合わせる。

 睨むわけではない。しかし不退転の決意だと受け取られるよう、腐心して言葉を紡いだ。

 

「アルキード王国はバラン殿下が臣、ルベア並びにラーハルト。我ら両名、此度の騒乱に参戦することをここに表明させていただきます。――さあバダック殿、共に力を合わせ、押し寄せたる魔物の軍勢を蹴散らしましょう」

 

 何卒よしなに。

 これ以上なく生真面目な顔で相対する俺とラーハルトを前にして、バダックは呆然とした面持ちのまま、しばし言葉もなく立ち尽くす羽目になるのであった。

 




 主人公、大望を語るの巻。アルキード王国半乗っ取りを野心と見るか忠心と見るか、はたまた別の何かと見なすかは皆さまにお任せします。現王家に対する不忠に当たるのは間違いありませんけど。

 それから拙作についてですが、一話や四話を読んで『子供に激務を課す王族は人でなし(意訳)』『主人公に嫌がらせする貴族は無能(同じく意訳)』と考える方もいらっしゃるようです。作者は『原作で人間の身勝手さや邪悪の象徴として描かれたアルキード王国の人間を物わかり良くし過ぎたかも』と苦笑いで執筆していただけに、まさかの180度反対のご意見にびっくり仰天でした。
 上述の状況を顧みて今回過去話を挟み、ある程度客観的な視点で解説しておきました。誤解の解消に役立てていただければ嬉しく思います。

 ではまた次回。

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