爆豪、母校へ帰る   作:秋編

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姿無き囚人
透ちゃん「嘘ー!?爆豪君が雄英の先生!?」 その1


吹きすさぶ血風。溢れかえる有象無象。

取り分けて凶悪と言われる犯罪者がその檻を砕かれることで野に放たれる。今ここでヒーローに捕まり再び臭い飯を食わされる者もいれば、逃げに徹し野に帰るものもいるのかもしれない。そう、それは全て自分のせいだ。内通者として生きることを選んだ、自分のせいだ。

 

 「なんでよ透ちゃん!!」

 

 高校一年生だった頃の同級生が叫んでいる。白々しいと思った。何にも気づかなかった癖に。

 

 「あなたを止めます!!透さん!!」

 

 長い黒髪の彼女が叫んだ。綺麗で端正な顔。羨ましいとずっと思ってた。何がわかるんだよ。知ったようなことばかりいつも言ってさ。

 その後かな。気がつけば叫んでた。最後までヒーロー側とは何も喋るつもりはなかったのに。顔見知りがいるとやっぱり駄目なのかな。煩わしいと思っていただけで特に何の情も感じなかったのに。誰も何にも気づいてない癖に。

 だって私が本当に欲しかったのは。知りたかったのは------

 

 

 「内通者の可能性かぁ」

 「そう、だから何か参考になることないかなって。」

 呼吸することさえできれば避けたい不気味な空気の中で、緑谷はかつてのクラスメイトに話しかけた。同じ時間を共に歩いた彼女はあの頃とは違い今は塀の中だ。

 「でもなぁ・・・。私質問には噓なくちゃんと答えてるし、もう特に言えることないよ?」

 その個性故に表情を伺いしれない彼女。その身振り手振りから恐らく疑問符を浮かべていることはわかるのだけれど、それももう「恐らく」としか言えない緑谷。きっとそれは自分だけではないのだけれど、ともかくこの場は言葉を重ねることでなんとか彼女から少しでも情報を抜き出そうとする。

 「本当に少しでもいいんだ。何か欠点というか……自分ならこう潜入するっていうか。」

 「あぁ、それならあるかも!」

 身振りで閃いたのポーズを取る葉隠。本心どころか姿すら見通せないことを歯がゆく思いながら、

いつかきっとと緑谷は思い直しその言葉を待つ。あの日選ばせてしまった責任を背負いながら。

 「身内にすっごく甘いの、ヒーローってさ!」

 「えっ」

 思わず呆気に取られるその言葉。物理的な手段や方法ではなく、ヒーローの習性から入ったその言葉はまるで緑谷自身のことを言っているようで。

 「内通者の可能性は私が雄英在学中の時から浮上してた。それなのに常時透明化してる私を最初に疑うことすらしてないんだもん。それこそ---」

 イレイザーヘッドの目ですら私を捉えられなかったのに。そう言葉を切る透に緑谷は何も返せない。だって彼女の言葉の先には、見抜けねかった自分達では何にも言えない結果だけがあって。

 彼らを別つ対弾性の強化プラスチック。監視の目のある中、元インビジブルガールは言葉を続けた。

 「私もやったけど、やっぱり生徒として潜り込むのが一番だよ。一回入っちゃえば簡単だから。」

 仕草は肩を竦めていたのに、緑谷にはなぜか彼女が嗤っているように見えた。

 

 

 

 

 女刑務所の朝は早い。

 「点呼!!」

 並ばされた廊下にて番号順に名前を呼ばれる。個性の使用ができなくなる、そういった触れ込みの腕輪は入所時に嵌められている。

 「2206番!」

 「はい!」

 「2207番!」

 勿論寝坊などすれば厳罰だし同じ部屋の人間は連帯責任だ。お風呂だって毎日入れる訳ではない。そんな状況。

 「2208番!」

 「はい!」

 しかも男性刑務所と違い施設の数自体が少ないため、終身刑であろうと半年で出られるものであろうと関係なく部屋に押し込まれる。・・・それでも私が一番、罪が重いのだけれど。

 「2209番!」

 「はい!」

 2209番。それが私の、ここでの名前だ。

 

 「あぁ、労役だっる!アホ程一日長いんだけど!!」

 薬で捕まったという、そんな同室の彼女は就寝前に必ずそのように騒ぎ出す。

 「毎日毎日のことですけど、刑期は本当に長いですわね。」

 結婚詐欺だっただろうか。別に取り分けて美人じゃない彼女がそういう。

 「仮釈遠いなぁ……」

 万引き癖がある初犯の彼女は、そう言いながら薬で捕まった彼女にしな垂れがかる。

 「ちょっとあなた…」

 「いいじゃん、溜まってるのはお互い様でしょ?」

 陰部摩擦罪で刑期が伸びるのは私達もなのに、性欲に抵抗できないのは残念なのかそれとも喜ぶべきところなのか。結局見回りが来たため今日の性欲解消はお開きになった。私も含めて、みんな布団で慰めるのが関の山だろう。

 

 

 スマートフォンに映った名前を見て爆豪は軽く舌打ちする。用事を頼み小間使いのように使うことを決めたのは自分だがガキどもにかっちゃん呼ばわりされる元凶なのだ。彼からしたら決して面白いことではないのだろう。しかし逃げたと思われるのも彼としたら癪なのだろう。通話をボタンを押し流行りのスマホを耳へと押し付けた。

 「んだこらクソ出久!死ねよ!」

 『理不尽過ぎる!!』

 電話口で騒いではいるものの、爆豪からしたら知ったことではない。もともと用事が無ければ電話も何もしないタイプなのだ。寝落ち通話など考えただけでも意味がわからない。

 『まさか耳郎さんにもそんな無茶苦茶言ってないよね?』

 「てめぇにんなこと話す義務はねえ!」

 それこそ通話ではなく直接同じところで寝ればいいのだ。心も身体も直接スキンシップを取った方がめんどくさくなくて済む。何より、

 「合理的だしな。」

 『?』

 「んで?透けはなんっつってた!?」

 『透けて.........潜入するにはやはり生徒になるのが一番楽だって。』

 「ふん、経験者は言うことがちげぇなぁ。」

 在学中あまり関わりがなかった葉隠のことを爆豪は思い出す。光を操り完全な透明化を果たしている異形型。雄英でもトップに来るであろう恵まれた個性である彼女がヴィランだったことに対し爆豪は、

 「俺を騙しやがって、ぜってぇ許さねぇ!!!」

 『かっちゃん……』

 元1-Aの中で唯一スタンスの違う爆豪の立ち位置。それは止められなかったことを悔やむのではなく、罪を犯したこと自体を責めるその姿勢。

 「てめぇも何も八つ当たりされたか知らねえがな、上手くいかねーからって誰でも彼でもヴィランになる訳じゃねぇ。選んだのはあの透けだ。」

 『・・・うん。そうだね。』

 「高校まで無個性だった奴でも棚ボタとは言えナンバーワンになってんだ。てめぇが選んだことでグダグダ言ってる話なんぞ聞くかボケェ!!」

 言葉は確かにキツい。しかしそこに含む確かな気遣いを緑谷は受け取ることにした。

 「ヒーロー側は甘いから生徒に紛れ込ませる……ってことは俺の管轄だな。」

 『僕は引き続き事務所やサイドキックから情報を集めてみるよ。』

 耳郎さんの手料理楽しみにしてるよ、なんてそんな緑谷の言葉で通話は終了することになった。

 

 「生徒への潜入・・・しかしそこまでやれるほど連合や解放軍に余力があるか?」

 葉隠の内通者発覚から、ヒーロー科への入学試験で徹底的な身分調査が行われることになったのだ。それを誤魔化せるほどの力は今残党どもにはもうないはず。つまり、

 「透けにはまだ何かある。ちっ、使えねーナードだぜ。ったく、」

 そうやって呟きながら爆豪は校長室と書かれた部屋のドアをこじ開ける。ノックは無し。いきなり爆撃で吹っ飛ばさなかっただけ彼もきっと大人になったのかもしれない。中を見れば突然の来訪に驚きを隠せないミッドナイトと1-Aの担任の2人。手間が省けた、そう思い笑う爆豪を見て二人は嫌な予感がしたのだろう盛大に引きつっていた。

 「ガキどもの社会科見学の行き先。タルタロスにしろ!!!」

 ミッドナイトは最近よく使うようになった胃薬を、今日も盛大に飲み込むことになったのだった。




pixivにて連載中のものを再掲載しております。
何卒宜しくお願い致します。
次話→透ちゃん「嘘ー!?爆豪君が雄英の先生!?」 その2
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