「僕が指揮を執ります。」
作戦を決める時間をくれと教師陣に言い放ち、返事も待たずにクラスメイトを集めた土屋大地は、いい加減見慣れた顔を前にそう言い放った。実戦は誰も待ってくれねーぞと後ろで叫んでいるのが聞こえるが、ここは全員で無視している。相手は無個性とはいえ、神野を知っている元ヒーロー。それこそやかましい副担任の相手をしている余裕はない。
「無個性とはいえ決して舐めてはいけない相手、そう考えて動かないと返り討ちになります。」
「・・・それはわからないでもないけど、なんで土屋君が仕切るの?」
声をあげたのは見目麗しい美少女だ。黄色いカチューシャが特徴な彼女が声をあげたことに、土屋は不思議そうに返事をした。
「武藤『君』・・・居たんですね・・・。」
「居たよ!!朝から居たよ!!」
その外見に反し君付けで呼ばれることにまるで違和感がない様子。武藤と呼ばれた彼は、どうやらそういうことらしい。アッシュの髪を乱しながら憤る彼を尻目に、近くにいた青髪の少女が土屋へと問い直す。
「武藤君の地味さ加減はともかく、「ともかくって何さ!?」君は本当にうるさいな、えとね、」
そう言葉を言い直す彼女は、その特徴的な狸耳を揺らし、生来隈のある目で土屋のことを睨む。
「失敗はできないんだよ。それこそ除籍がかかってるんだ。君がなんで指揮を執るんだい?」
質問をしたのは彼女、野開未来なのだが、他のクラスメイトも同じような視線を大地に向けている。そんな周囲の仲間を見渡して、それでも自信を胸に、彼は鼻高々と言葉を紡ぎ始める。
「実際僕は現役ヒーロー相手に実戦を経験し、指揮を取っています。」
「それはっ!!」
思わず口を挟んだのは孤城姫子。彼女は九本の尻尾を逆立てながら、更に言い募ろうとしたものの、大地はそれを手で制し話を強引に続けていく。
「僕は確かにその時未熟でした。しかし、当時の反省をして、今日ここで活かしたいと考えています!」
それこそ失敗の経験すらない人よりはマシでしょ?と、最後に付け加えられた言葉に、周囲の雰囲気もよくなる。一度でもやったことがあるというのはやはり大きなアドバンテージになるのだ。
「それでは作戦とみんなの動きを・・・出水君大丈夫ですか?聞いてます?」
「あっ、ご、ごめん・・・大丈夫。」
出水洸汰のそのどこか上の空、心ここにあらずな様子に一瞬訝しむものの、周囲に異存が出ないことを確認した大地は人員配置について説明し始めるのだった。
「いやぁ、お待たせ致しました。」
相も変わらず慇懃無礼。そんな様子を隠そうともせず、大地は教師陣へと向き直った。己の過ちは全く認める気のないそんな清々しい表情には、もはや怒りを通して呆れが顔に出てしまう。なんだかなぁと思いつつ、猿夫は臨戦態勢を整えようと少しずつ前に出る。始まりは大方、かっちゃん先生が爆撃でも鳴らして合図してくれるだろう。そう思っていると、
「あぁ大丈夫ですよ。」
大地の声に一瞬、何のことかと気を取られる。他の教師陣も同じように静止し、彼の発言の意図を読もうと思考を巡らせる。
「もう始まってますから。」
その言葉と共に、白煙が爆発した。
「奇襲か!?」
あまりと言えばあんまりの開幕に、思わず猿夫は声をあげてしまう。それに答えるのは嘲笑を隠しもしない、煙の奥に消えていく大地だった。
「よーいドンで始まることなんかないんでしょ!?」
その間も白煙はまるで、猿夫に纏わりつくように濃く広がり始める。見れば骨の形を象るように、彼を見下ろす生徒の姿。
「行かせしゃしないぜ?Hey!Boss!!オケ丸水産しくよろどーぞ!!!」
1-A出席番号11番 骨川 煙煉(こつかわ えれん)
個性:スモーク 自分の上半身を一部、または全て白煙に変化させることができる。口からも煙を吐ける
開幕は奇襲の上に、いきなり視界を煙に潰された猿夫。舌打ちと共に後へ一旦下がろうとしたその時、再び大地の声が響き渡る。
「伊木山さん、孤城さん今です!」
「あいよ!」
「わかった!」
最初に伊木山さんと言われたオレンジ色の髪の生徒。彼女はその腰まで目立つロングの髪を揺らし、丸印がついたマスクを剥ぎ取った。そこにあるのは耳の近くまで大きく裂けた口。普段はジト目と称されるそれが吊り上がり、前髪がオールバックに舞い上がる。個性発動の予兆。そしてその口を開けて大きく息を吸い、解き放たれる赤い炎のブレス。
対し姫子のお尻に生える九つの尻尾。そこに灯るは青白い艶やかな幽鬼の炎。彼女が狐火と命名するそれが、尻尾の先から大きな炎の塊となって撃ち放たれる。
1-A出席番号2番 伊木山 吟子(いきやま ぎんこ)
個性:七色吐息 7種類のブレスが吐ける
1-A出席番号10番 孤城 姫子(こじょう ひめこ)
個性:九尾の狐 九尾の狐っぽいことは大体できる
赤と青。それぞれ別の色の炎が向う先は、猿夫が包まれている白い煙。着弾した瞬間、より鮮やかに燃えあがるそれは、地上に突如として火の海を作り上げる。
「くっそ!!」
ギリギリの所で炎の海に飲まれず躱した猿夫。無個性相手だろうと全く容赦のない一撃、されど歴戦の勇士は笑みを浮かべた。周囲の視界を潰すほどの炎。そこに人影を見たのは、その時だった。
「くらえやあああああ!!」
「おっと!」
まるでどこぞの副担任のような荒々しい声をあげて、殴りかかってきた筋骨隆々たる青年。金髪のモヒカンがトレードマークのその身体。鈍色に変化したそれは炎を物ともせず、ここまで真っ直ぐ突っ切ってきたようだった。
「温度変化に強い鉄の体!?」
「さぁ!どうだかな!!」
再び振り上げた拳を中心に、もうその身体はその性質を変えていた。具体的には、鈍色のそれは輝くダイヤモンドのように変化している。
1-A出席番号16番 八賀根 鉱哉(はがね こうや)
個性:鉱化 身体をありとあらゆる鉱物に変化させることができる。
「ダイヤモンド・スカラック!!」
言葉とともに、上段から打ち下ろされる金剛石の拳。受けるのは危険過ぎると、バックステップしながら攻撃を避けていく猿夫。見れば奇襲の役割を果たした炎の海は、既に燃料を失い燃え尽きている。そこに飛び込んでくる、新たな4つの影。
「・・・面倒やから早よ落ちてぇなぁ?」
羊の角に紫の鬣を持つ獅子の上半身に、蝙蝠の翼。そして鷹や鷲を思わせる猛禽類の下半身。まるで旧約聖書から飛び出して来たかのようなその姿。悪魔王はその拳で、無慈悲なる一撃を猿夫へと浴びせていく。
「無個性とはいえ神野の経験者。些か汚い手段とはいえ、悪いが勝ちにいかせていただくよ。」
その立ち姿はまるで英雄譚の騎士のよう。群青の髪を風に揺らし、その手に持つ竹刀を猿夫へと向ける。明らかに竹刀ではあり得ない重さと長さを繰り出すそれは、彼の個性の影響だろう。
「悪い子はいねぇぇぇぇぇぇえええかぁ!?」
東北地方で有名なその風習。一度はテレビで見たことがある、どこかコミカルなその鬼が、猿夫へ向けてその顎を開いていた。お酒に関わりがある個性のようだ。酒臭くて、到底噛まれたくない。
「前で闘う方があってるんだよね!」
最後はそう言葉を投げかけるお狐様。その9つの尻尾に炎を宿しながら、野生動物を思わせる動きで猿夫に的を絞らせない。
1-A出席番号20番 六郎木 碌朗(ろくろぎ ろくろう)
個性:King of deviles 「キメラ」「赤龍」「蛇」にその姿を変化することができる
1-A出席番号6番 大空 大和(おおぞら やまと)
個性:竹刀使い 竹刀の大きさ重さ長さを変化することができる
1-A出席番号5番 大江ノ山 外道丸(おおえのやま げどうまる)
個性:酒は百薬の長 姿が異形になるものの身体能力が大幅に向上する。自動再生も可能。
「なかなかどうして、強力な個性が集ったもんだね!」
獅子の爪、鬼の牙、金剛石の拳撃に異様な竹刀。そして隙あらば飛び込んで来る幽鬼の炎。繰り返される5人の波状攻撃。猿夫は獅子の爪を左手で流し、鬼の牙を顎を蹴り上げ防ぎ、ダイヤモンドの一撃は受けず躱して、竹刀のそれは右手で姫子の方へ受け流す。それにより狐火までなんとか封じて、己の立ち位置を左へ3歩分ずらした。
「・・・ちっ、外したか。」
猿夫がいた所に降り注ぐ風の弾丸。天翔ける有翼の風使い。上空から狙ったそれを、気配と直感だけで躱した猿夫の姿を見て、鳶色の翼---その持ち主は臍を嚙んだ。
1-A出席番号1番 嵐島 飛天(あらしま ひてん)
個性:有翼の風使い 風を操りその翼で空を翔ける。空気が読めないのは本人の性格。
再び煙が充満したと思えば繰り返される炎の海。そして飛び込んでくる鈍色の青年。どちらも巧みなフットワークと長年の経験で躱し流し、避けてきっていく猿夫。更に飛び込んでくる、熱線に弾丸、黒い液体に植物の鞭、果ては氷のブレスまで。
「20vs1。まぁなかなかにピンチな状況かな。」
ピンポイントで頭を狙いにきた水流を、首を傾げるだけで躱した神野の経験者。言葉とは裏腹に、その表情からは焦りも怯えも見受けることができない。そう呟いてすぐ、今度は羽根の手裏剣だろうか。まるで背中どころか全身に目が付いているかのように全て躱していく。
「さぁて、そろそろ、行きますか。」
生徒達はこれから知ることになる。個性を失い、されど道場を開きその技を伝授する立場である猿夫の力を。警察やヒーロー、自衛隊までもが彼から教授を受けているという現実と、それに伴う結果を。なぜ彼が関係者各位から、「武神」と呼ばれているかということを—―――。
「なかなか詰め切れませんね・・・。」
焦りの表情を浮かべる土屋大地は、猿夫達から少し離れた位置で戦況を指揮していた。邪道とも言える奇襲に、数に物を言わせた波状攻撃。自身の土を操る個性を使って足場を操作するデバフも行ってはいるものの、決定打にならないどころか、猿夫の道着を汚すことすらできずにいる。
1-A出席番号14番 土屋 大地(つちや だいち)
個性:地面と仲良し 地面を操り隆起させたりできる。服越しや靴ごしでも身体のいずれかが地面に当たっているなら、大地のエナジーで回復もできる。
見れば地毛だというアッシュの髪を風に揺らしながら、武藤遊次が個性を発動する機を伺っている。その地味な動きはとりあえず無視するとして、大地は己の周囲を見渡してみる。
「みんな頑張ってぇー!小町、除籍になりたくないなぁ!」
「・・・。」
闘っているクラスメイトに声をあげて応援しているのは、小野田小町だ。その芸能人顔負けの美貌は、自身で施した薄化粧により一層のこと際立っている。そして彼女の隣で猿夫を睨み続けているのは、十礎聖。本作戦の中核を担うこのクラスの副委員長だ。金髪碧眼のその姿は、大和撫子と形容される小町とまた違った美しさを醸し出している。彼女達は、何もサボって外から眺めているだけではない。
1-A出席番号7番 小野田 小町(おのだ こまち)
個性:お姫様 自分に好意を持つ異性に対するバフ掛け。好意に比例して上昇率が上がる。
1-A出席番号 13番 十礎 聖(じゅうそ ひじり)
個性:魔眼 千里眼、コピー眼、識別眼、麻痺眼、洗脳眼の5つが使える。
最初の奇襲で落とせるなそれでよし。無理なら近・中・遠距離も含めての波状攻撃。それでもダメなら魔眼による洗脳による強制終了。大地が用意した三段階の作戦だった。みればお酒が切れかけ、ただのイケメンに戻りかけてきた外道丸が、野開未来から追加の酒を受け取っているところだった。
1-A出席番号 15番 野開 未来(のひらき みらい)
個性:スーパーポケット 道具を一種類につき一つずつなら無限に入れることができる
「野開さんの個性は、何でもポケットに入るけど、同じものは二つも入れられない・・・。いずれじり貧になる。」
本当に彼―――尾白猿夫が20人の自分達相手にここまで立ち回れるとは思えなかった。それこそこ大地から見たら、抜け目なく際限なく行われている波状攻撃。それだけでも、なんとか詰め切れると思っていた自分が甘かった。
「十礎さん、洗脳眼はまだですか?」
決まれば確殺。強制終了のチート個性。そのどこか神聖さすら漂う雰囲気の彼女が持つには、些かどうかと思われる魔眼という個性。それさえ発動してしまえばという思いで、土屋は彼女へと声をかける。
「難しい・・・ですね、発動条件を満たせません・・・。」
「っ・・・くぅ・・・」
彼女が持つ魔眼は5つの能力を持つものの、全てを同時発動することはできないようになっていた。更に言うなら、ただ見ただけで発動できるのは千里眼・識別眼の二つだけであり、後の三つは前述の二つの個性が決まらなければ、発動すらできないという条件付きであった。
「私の洗脳眼は、識別眼が決まらければ発動することができないんです。普通の相手なら、ここまで時間がかかることもないんですけど・・・。」
「識別眼が決まらない理由は?」
「相手の能力を技や動きを解析するのが識別眼・・・それが判明すれば洗脳眼が使えるんですけど・・・判明した技や流派って言うんですか?それがすぐ別のものに変わってしまうんです・・・。」
「流派・・・つまり、動きや型が常に変わり続けているってことですか?そんなこと可能なんですか!?」
世界が超人社会になってからというもの、スポーツは勿論のこと格闘技というものも大きく廃れることになる。人々が同じ規格に収まらなくなってしまったからだ。故に、当時のように決まった型や流れが明確にこのご時世ある訳ではない。だからと言って
「規格がないなら、それぞれがそれぞれの形を作っているはず・・・それが常に変わり続けているってことですか!?」
「わかりません。ただ、現実目に映る相手はそれを可能にしている・・・。あっ、また変わりました!」
そう言われ見てみれば、猿夫の掌底が、丁度鉱哉の顎をカチ上げたところだった。
綻びがないなら作ればいい。まるでそう言わんとばかりに、猿夫は本気で踏み込んでいた。それは持てる個性を使い、個性を中心に闘うこの社会ではもはや異端となってしまった技術。
「爆豪先生と、同じ!!」
姫子がそう叫んだ時には、猿夫の移動はもう終わっていた。瞬きの瞬間、僅かに気が逸れるほんの一瞬の隙を突き、距離を詰めるその歩法。古武術―――『瞬動』。
「そりゃあ、爆豪にこれを教えたのは俺だからな。」
刹那にて鉱哉の懐に潜り込んだ猿夫は、彼の顎を掌低でアッパー気味にカチ上げた。
「いくら個性で肉体を変化させても、二足歩行で生きてるんだから、脳が揺れたらお終いだよ。」
顎の先端、そこをピンポイントで打ち抜き、鉱哉を一瞬で無力した猿夫は、彼の個性が気絶しても解けないものであることを眼で確認して呟く。
「まず、一人。」
「おのれ!!」
拮抗しているのに、目の前で仲間を墜とされた。そのことで頭に血が上ったのか、大和がその竹刀を大上段に振り上げる。
「青いな。」
大和が振り上げた竹刀を持つ右腕―――それが振り下ろされようとする前に、武神は自身の右ひじを当て左手で柄を掴んでしまう。そのまま時計回りに身体を回せば、
「武器は奪える。空手技『柄取り』。」
「くぅ!!」
武器を奪われ、そのままたたらを踏んでしまうまだまだ若い竹刀の使い手。その側頭部を、何の躊躇いも容赦もなく蹴りぬき、猿夫は言葉を贈る。
「武器がなければ何もできない。それじゃあはっきり言って、二流にもなれないよ?二人目。」
前線を守っていた二人が隙とも言えぬ隙を突かれて秒殺。あまりのことに、姫子、碌朗、外道丸の足が一瞬止まる。その一瞬があれば、「無個性の武神」にとっては十分な隙になる。
「しまった!!」
猿夫は気絶した鉱哉の襟首を持ち、個性が解除されていない彼を引きずりながら、一気に前線を抜け中陣・後陣に構える生徒のところへと飛び込んでいく。
「行かせない!!」
立ちはだかるのは、遊撃要員として空を舞っていた飛天と、
「【召喚】!」
地味にウロウロしていた武藤遊次だった。
飛天はその鳶色の翼から長めの羽を刀替わりとして、二刀流として猿夫に迫る。対し遊次は個性を発動。手に持つカードが光輝き、帯電する山羊が姿を現した。
1-A出席番号19番 武藤 遊次(むとう ゆうじ)
個性:お絵描き 描いた絵の中身を召喚できる。遊次は事前に描いた絵をカード状にして持ち歩いている。
「帯電している動物・・・選択は悪くないかな?」
言葉ともに鉱哉を山羊に向けて投げつけ、飛天の双剣術を受け流していく。更に猿夫は二人と一匹を射線上に置くことで、中・遠距離要員からの援護を封じていた。慌てて駆け寄ってくる姫子や碌朗に外道丸、その救援が間に合う前に、
「1人で引き付けるにはまだまだ青いよ。もう少し後ろで、仲間と連携してやるべきだった。」
キックボクシング---脳天を打ち払うハイキックが、飛天の頭を直撃する。
「3人目。」
天空からクラスメイトを守ってくれていた、オッドアイの神童は、為す術もなくその膝を折ることになった。そしてそのまま遊次に接敵。投げられた鉱哉を振り払った電気山羊が割って入るものの、
「ダメージ覚悟で突っ込ませてもらうよ?」
「!?」
重心が低く、自分より大きい相手でも関係なくなぎ倒すそれは、かつて栄華を誇った格闘技、レスリングのタックル。
自分が痺れるのを覚悟で、尾白は電気を纏う双角獣ごと、遊次を押し倒した。
「うぎゃあああああああああ!」
まるでギャグみたいな絶叫をあげる1-Aきってのサモナー。被召喚物からのダメージは受けない等とそんな都合のいいことはなく、しっかり電撃を受けて失神した。気絶すると個性は解除されるらしく、ポン!っという気の抜けた音と共に、役目を終えた山羊はその身を消してしまった。それを見下ろす武神の表情に、一切の陰り無し。
「個性に頼り切っているだけではダメだよ。どう生かすか考えなきゃね。四人目。」
学生時代に訓練で散々電撃を浴びる機会があって良かった、慣れは何事も大事だよななどと思いながら、飛んできたミサイルポッドを躱していく。更に降り注ぐ弾丸を、気絶しても個性が解けない鉱哉を盾にすることで防ぎ接近する。
「せせせ、気絶した生徒を盾に!?」
「20vs1の上に奇襲から初めてるんだ、今更卑怯とは言わせない!」
両肩に1門ずつのミサイルポッド、両腕にガトリング砲が同じく一門ずつ、更に胸部に二門のバルカン砲。それを全力射撃でぶっ放しながらも、全て仲間を盾にされることで防がれる。
1-A出席番号12番 塩田 弾道(しおだ だんどう)
個性:弾幕 引っ込まないタイプの各銃器。蓋はある。身体の塩分を弾丸へと変化させるため、使いすぎると熱中症で倒れる。
「フレンドリーファイヤーを警戒したかもしれないけれど、もっと思い切りの良さは必要かな。」
決め切れないうちに間合いに入られ、演武のごとき蹴りがマシンガンのごとく弾道に突き刺さる。それが外国由来の蹴り主体の格闘技、テコンドーであることを彼は知りもしないだろう。
「五人目。」
崩れ落ちる弾道の陰から伸びてくる、アホ毛が目立つ赤毛の少女。何の躊躇いもなく仲間を囮にした決断力は、この状況では褒められるべきだろう。
「もうちょいと可愛い気が欲しいところだけどね。」
猿夫がそう呟く間にも、彼女が向かってくる対面から襲ってくるのは髭面の偉丈夫。どこから出したのかわからぬ黒い二つの日本刀を使い、何の躊躇いもなく殺しにくる刈り上げた金髪の男。
「これ以上やらせない!!」
見れば前線にいた姫子達もようやく追いついてきたようだ。少しでも猿夫の勢いを止めようと、遠距離攻撃が可能なメンバーも積極的に攻撃を繰り出して始める。20人で抑えきれなかったものを、
人が減った状況で果たしてどうできるのか。
「さて、指揮官の腕の見せ所な訳だけど、彼はどう出るかな?」
「くっそ!馬鹿な!?」
小野田小町は自分の隣で暴言を上げ始めた指揮官、大地の姿を横目で捉えた。悔し気に親指の爪を噛む姿は、今時三流悪役でもやらないのではないかと思えるほどのものであった。そう、生意気な舌鋒や周囲に対する無意味な煽り。人間的な性格はともかくとして、彼には指揮官として致命的な欠陥があった。
「ダメです!またやられました!」
波打つ金髪を揺らし悲鳴をあげる、十礎聖の声に反応して見てみれば、黒き二刀の刃を操る漆原亜衣磁が膝を付いたところだった。どうやら個性により生成したらしいその日本刀は、術者の意識喪失により元の砂鉄へと姿を変えていく。
1-A出席番号4番 漆原 亜依磁(うるしはら あいじ)
個性:磁界 半径0~5mまでの周囲の鉄を磁力により操る。
次にその背を地面に叩きつけられたのは、補給の隙を突かれた外道丸だ。どこかコミカルで教育番組に呼ばれそうなその姿は見る影もなく、どちらかというなら大手の芸能事務所所属のアイドルかのようだった。
気がつけば三分の一の生徒が墜とされたのに、追加の指示が出せない大地。その口から漏れるのは、聞くに絶えない言い訳だらけだった。
「そもそも全体的にみんなやられ過ぎじゃないですか?それこそ無個性なんだから指示待ちなんかしてないで自分で考えてなんとかしてくださいよてかてかどいつもこいつも本気になってバカなんじゃないですか?雄英で除籍になったんなら転校でもなんでもしましょうよ。そうですよそれがいい。みんなでやれば今日日クラス丸ごと除籍にした学校側に傷がつきますからそれで校長を脅せばいいんじゃないですかそれでいいに決まってる!!!!」
もう喋る気も起きないレベルのそれ。自然と小町が溜息をついたことに、きっと彼は気づきもしなだろう。魔眼の連続使用が祟って、血の涙を流している聖にも。そう、これが土屋がもっとも指揮官に向いていない理由だった。それは一つ何か上手くいかなくなると、まるで対応出来なくなるところであった。ことが予想通りに進むうちはいい。しかし、少しでも道を外れればこの様である。ここから先は、できもしない現実逃避のオンパレードだ。
「まっ、ここまでかな。」
もともと身内への限定的なバフ掛け(しかもオート発動)しか個性のない姫子だ。ここから戦況をひっくり返す切り札を持っている訳ではない。そんな自分がしゃしゃり出たって何ができる訳ではない。それこそ大地の言う通り、他の学校への転入での考えた方が上手くいきそうだ。
「元々ヒーローになりたくてここに居る訳じゃないし・・・。」
そう、小野田小町がここに居る理由は他でもなく、将来玉の輿をするための布石でしかなかった。
あくまで闘うのは男の仕事。勿論、思うところがあり彼女なり今努力していることはあるのだが、それを披露した所でどうこうできるとは思えない。だから彼女が敗北を受け入れ、現状を諦めかけたその時だった。
「嫌だ!!私は諦めない!!」
前線で戦うクラスメイトが大声吠えたのは。
それはクラスで唯一、小町が本当の意味で親しくしている、狐耳の女の子だった。
pixivにて連載中のものを再掲載しております。
何卒宜しくお願い致します。
次話→尾白「爆豪が・・・雄英の先生ねぇ・・・。」 その4
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