爆豪、母校へ帰る   作:秋編

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切島「爆豪が雄英高校の先生だってよ!漢だな!!」芦戸「それ言いたいだけでしょ!!」 その8

 ヴィラン退治へのご協力ありがとうございました!

 いえこちらこそ、ご協力できて何よりです!これからのご活躍を祈っています!

 

  そんなやり取りが、ヒーローと単なる一般人との間にあったその当日。正確には日付を跨いでもう深夜。この辺りでも開いている唯一のバー。生徒がヴィランと会敵。危うく個性をぶっ放して除籍処分、最悪負けて命を奪われるという危機的状況だったため、担任の切奈と副担任の勝己が警察へと呼ばれることになった。勿論、剛健ヒーローさんが発した個性使用許可宣言のため、特に除籍になることもなく(意識が戻り次第キツいお灸が待っている)、かのヒーローと「善意の一般人」のお蔭で命の危険も事無きを得た。

 「そんで事件のあらましに心覚えがあっから、直接聞き殺してやろうかと思ったら・・・。」

 「ういーひっく、もう無理ぃ」

 「何がもう無理じゃボケ!!死にさらせ!!!」

 あれだけしっかり戦った、正義のヒーロー様が酔いつぶれて死んでいた。

 「人様が来るとわかってたら、せめて会話できる状態ぐらい残しとけや!!」

 普段はどちらかというと、常識を問われる側のこの男が言うのである。よっぽどえぐい状態になっている、我らが剛健ヒーロー烈怒頼雄斗様。元々酒には強い方。しかし飲みかけや転がっているグラスを見れば、火が付けば燃えるレベルのお酒に手を出していた。

「だってしゃあ、らってしゃあ・・・」

「だってもこうもあるか!ったく、二十歳やそこらのガキじゃねーんだから・・・。」

 専ら爆豪組で飲むときに潰れ易いのは、弱い癖に馬鹿飲みする電気、次にそんな電気の介抱をしている範太である。鋭児郎は大体潰れた二人の回収をし、面倒くさいから逃げ出そうとする勝己を呼び止める係だ。それが今日はこの低落。もっとも、彼がこうなる理由なんて大体一つだ。

「また黒目か・・・。」

「んだよぉ、文句あんのかよぉおおおお!!!」

 鋭児郎と三奈の関係については、焦凍と百のド天然カップルでさえ触れないようにするレベルの、元1年A組における最大級のブラックボックスだ。勝己自身はこの手の話題に興味がないため(というより人類に対して興味がないため)、率先して会話に入ろうとしないから基本はどこ吹く風といった具合だ。しかしそれも、たまに鋭児郎が爆発すればこの通り、回収の役割はこの爆発三太郎さんだったりする。

「堂々と地雷を踏むのは、玉ぐらいなもんだが・・・」

 鋭児郎を自らの仲間だと煽り散らす捕縛系個性の持ち主は、その度に元クラスメイトから古傷を物理的に抉られのたうち回っている。

「ちくしょう、んだよぉ、子供までいたらどうしょうもないじゃんかよーーー。」

「ガキ居なくてもどうしょうもねぇだろうが。ったく、未練たらしいわボケ!」

 昔の女に袖にされて腐る親友を、情け容赦なく切って捨てていく我らが爆心地様。そこまでいけば、さしもの酔っ払いも言いたいことがあるのか、荒れ狂う暴君をジト目で見ながら呟いてしまう。

「お前だって耳郎が上鳴と付き合い出した時は、毎晩酒屋で荒れてた癖によう・・・。」

「だぁーーーー、うっさい、昔の話はやめろや!介護し殺すぞ!!」

 そうやって喚く、今は幸せ絶頂な男を横目で見て思わず溜息を吐いてしまう『不壊』。今日対峙したらヴィランが見たら、余りの変貌ぶりに気を失ってしまうかもしれない。

「俺が荒れてたこと、響香に言うんじゃねーぞ?」

「かぁーーーーぺっ!!なんだよ惚気かよ!別にいいけどよ、だったらなんか報酬くれるんだろうな!!?!この失恋中の烈怒頼雄斗様によお!!」

 いい加減荒れすぎてて面倒くさいなぁと思いながら、案外肝心なところで無神経だったりする元1-Aの天才マンは、致命的な一言を鋭児郎にブチ込んでしまう。

「響香の飯を食わせ殺してやる。食いに来やがれ。」

「リア充爆発しろ!!!!」

 そのまま硬化した拳で殴りかかる、もう本当にダメな奴になっている剛健ヒーロー。やられたらやり返す精神で、爆撃を噛ます爆心地。バーのオーナーが呼んだ警察に怒られるまで、下らな過ぎる喧嘩は続いたのだった。

 帰りはしっかり、勝己が鋭児郎の肩を担いで帰ったことを追記しておく。

 

 現在の医療機関は個性の使用により、余程の致命傷ではない限り、三日もすれば退院できる。『博多弁天』の三人もしっかりお灸を据えられた後、ちゃっかり学校へと復帰してきた。もっとも、

「かっちゃん先生!尾白流の人みたいに、烈怒頼雄斗さんも授業に呼んで欲しいたい!」

「呼ばねーわ!」

 まさか職員室に居ても、昼夜休みなく自分の生徒があの酔っ払いを求めて絡んでくるとは、さすがの№2も予想はできなかったのだった。

「そこをなんとかお願いったい!同じクラスだったなら仲良かったはずったい!」

「しばらくあのアホ髪の顔なんざ見たくもないわ!」

 会計まで俺持ちだったんだぞと呟いたものの、諦めの悪さだけで雄英高校に受かった銀髪銀眼の恋する乙女は、その首を傾げるだけで。ついでに取蔭先生は向こうで笑っている。大体何があったかは、どうやら同期同学年の間では筒抜けらしい。

「お願いったい爆豪先生!!何でも言うこと聞くったい!烈怒頼雄斗様のラインを教えて欲しいと!!」

「要求内容しれっと上げてんじゃねーぞ!!しかも様付けてなんだコラ!?」

 昼夜問わず食いついていく『博多弁天』の白虎。その氷の牙は、一度食いつくとなかなか離れることはないらしい。そんな愛嬌があるというか、むしろ残念なだけのリーダーを、子分二人は相も変わらず溜息を吐きながら追いかけていく。

 定期考査でクラス一位になったら考えてやると、かっちゃん先生が折れるまで、しろつめ寅子の追撃は続いたそうだった。

 

 

「オラァ!行くったい!」

 それはもう暗くなり始めた夕暮れ。そんな中、泥塗れなりながら自主トレに励む、銀と橙と翡翠の女子高生。一人は新しい恋と目標を見つけて。そしてもう二人は、これからもそんな彼女についていくと決めていて。

 そしてそんな三人を見つめる、年の頃は幼稚園児であろう二つの影。

「おぉ!誰かと思えば、救けてくれた雄英高校の人って、師匠たちのことだったのかぁ~。」

「そうだね、知り合いだったの?」

「そうだゾ!オラ、いつも遊んでもらってるんだゾ!」

 それはあの日助けられた泣き虫の男の子と、いつも怒鳴り散らされ追いかけられている、悪戯坊主の二人であった。

「それにしても、おでこは狭いですなぁ~♪」

「それを言うなら、世間は狭いんじゃないの?」

 そうとも言うと、少年のお決まりのポーズを眺めて溜息を吐く、今はもう涙無き泣き虫小僧。これからも涙することはあるだろうけど、拭って立ち上げる強さは、未だ雛鳥の彼女達にもらっただろうから。

「ママが車置いてきたらお礼を言いに行くんだから、変なことしたないでよ?」

「そんな・・・まるでオラが無理矢理付いてきたみたいに・・・。」

「勝手に車に乗ってたのそっちでしょ!?」

 事実無理矢理付いてきたのだから、さもありなん。そうやってマイペースな彼に、周囲はいつも振り回されっぱなしなのだ。それは勿論『博多弁天』の彼女達の同様で。

 そんないつもいつも、『博多便座』と三人をからかって遊んでいる、このどこか将来大物になりそうな幼稚園児は、グラウンドで懸命に励む三人を見て呟く。

「やっぱりオラが見込んだ師匠達は、とってもカッコ良いヒーローさんだぞ!」

 空はもう月明かり。それは未来ある若者たちと、その背に憧れる子供達を、ただただ優しく照らしているのであった。

 

 

 月明かりが照らす職員室。他の教員達も帰路に着き、爆豪勝己一人となった部屋で、彼は書類を難しい顔で睨みつけていた。心なしか、眉間の皺もいつもより深い。

「雄英付近で、被害が多い?」

 今回、氷川寅子たち三人がたまたま居合わせたのは、勝己も昔通ったことがある、ゲーセンへと繋がる裏路地だった。以前出久が襲われ嵐島飛天が巻き込まれた案件も、言ってしまえば雄英高校の近くということになる。どちらもパトロールの範囲時間外。そんな都合の良すぎる偶然など・・・

「あってたまるかって話だわなぁ!」

 ぎらつく赫眼が月夜に煌めく。灯りは点いていない部屋のはずなのに、その眼光はどこか怪しく光って見えた。狙われているのは、明らかに雄英生。それも、

「両方とも俺が赴任してきたからって話か・・・。」

 そう、それは協力者である出久も指摘してきた点だった。小賢しく頭の回る幼馴染が言うには、勝己に何か恨みを抱く人物が、副担任就任と同時に動き始めたのではないかとのこと。可能性もなくはない、だが。

「恨みなんざそこら中で買ってるから知ったこちゃーねーがなぁ・・・。」

 自覚が有っても改善しないことで有名な男である。誰が何をほざいていようが、実力でねじ伏せればいいだけのこと------そう思い生きてきた漬が、どうやらここに出たかもしれない。

「赴任して来たタイミングで雄英生が狙われれば、それだけで俺の評判が下がる、か。」

 それまでは何事もなかったのに、就任して舌の根の乾かぬ内に事件が続けば、マスコミはいずれ騒がしてくる。マスコミ対応まで、糞を下水で煮込んだようなことをしている男である。庇い建てするような、殊勝な感性を持ち合わせてはくれないだろう。

 いずれの犯人も海外のサーバーを経由して、ヒーローのパトロール範囲時間外を捨てアカからのメールで知らされたと言っている。本丸は明らかに同一。勝己に恨みがあり、ヒーローのパトロール範囲と時間を把握できる人物。

「それだけじゃ絞りようも・・・待て、そういやあいつなんであの時・・・。」

 何かに気づいた勝己は一瞬だけ、本当に一瞬だけ辛そうな、どこか悲しそうな顔をしたのは事実だった。しかしその哀愁は、彼自身の内から湧き出す闘争本能が塗りつぶしてしまう。

 「上等だ、だったら炙り出してやるよ!この夏の林間学校でなぁ!!!」

 後日爆豪から、元1-Aのグループラインにある投稿がなされた。それは本来なら、機密とされる林間学校の開催場所。他の登録者から指摘があり、「間違いだった。忘れ死ね!」と、爆心地本人からの謝罪(?)があり、この件は二人の元クラスメイトを除いて笑い話で終わってしまった。一人は協力者である緑谷出久。そしてそう、もう一人は、犯人であるその人。

 物語が進む、金髪赫眼の副担任も因縁がある林間学校。しかし非常に残念なことに、夏休み前、忘れてはいけない行事が最後に一つだけ残っていた。

 「期末テストの企画書、校長のババアまで持ってかねーとな。」

 やる方もやられる方も楽では済まない、学期末テストのお時間である。

 

 

 

 

 逢魔ヶ時動物園。そう看板が書かれたかの園を歩く、優しいそうな男性と、黒目で角がある異形型の女性。二人は夫婦だろうか、男性が女性を気遣う姿は実に自然で、それがまるで予定調和だったかのような、決められた運命かのようにう馴染んでいた。幸せそうにお腹をさする動作からわかる、どうやら女性は、妊娠しているらしい。

 腕を組み歩く二人。園を周りながら、女性の方はどうやら動物だけではなく、別の何かを探しているようにも見えた。

 「あっ、居たー!!」

 一人の身体ではないため、飛び跳ねることはできないが、それこそ以前ならそのようにしたであろう女性------旧姓芦戸三奈が、動物ではなく飼育係に向けて声をあげた。特別彼が珍しい姿をしている訳ではない。どこにでもいる普通の異形型、しかし三奈にとってはなじみ深い、誰よりも優しい男がそこに居た

 「口田君久しぶり!遊びに来たよ!!」

 激しく手を振る彼女の視線の先、ゴリラの餌遣りに励む、口田甲司がそこに居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   Next story is 口田「ば、爆豪君が雄英で・・・って僕が期末テストの試験管!?」,coming soon.Please wait.

 

 

 

 

 

 

 

 




pixivにて連載中のものを再掲載しております。
何卒宜しくお願い致します。
次話→口田君「ば、爆豪君が雄英で・・・って僕が期末テストの試験官!?」 その1
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13465860
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