轟「爆豪から林間学校のお誘い…」八百万「怪しさしかないですわねぇ」 その1
テレビに映るかつてのクラスメイト。動物達をこよなく愛する彼は、第二神野戦線でヴィランの命を奪った。当時の落ち込みようは、とてもじゃないが見ていられず、芦戸三奈と合わせて難儀したものだった。
「口田さん…。本当に良かったですわ…。」
その復活宣言に、百は思わずその端正な顔を綻ばせた。学生の頃から変わらないその美貌は、結婚して今も尚、老若男女問わず多くのファンから支持されている。勿論理由の一つに、番になる男性も負けず劣らずの美青年というのがある―――つまるところ嫉妬する気にもなれないということだ。大衆はいつだって身勝手なものである。
「どうしたもんかな、この手紙…。」
右半身に氷河、左半身に灼熱を宿すこの社長室の主、轟焦凍が呟いた。彼自身も級友の姿に喜んだものの、とりあえずは目の前にある爆弾の処理を優先することにしたらしい。その様子を見て、百も家庭ではなく仕事として社長へと声をかける。先代から引き継いだ際、和装へとリフォームした社長室。緑茶が似合う正賓さの中で、少し張り詰めた空気が漂い始める。
「何が裏がありますわよね…。」
「むしろ裏しかねーだろうなぁ…。」
先日金髪の暴君は林間学校の開催場所を、無料チャットアプリの元1-Aグループに誤爆していた。その段階で些か彼らしくないと思うのに、こうやって№1とその右腕に召集をかけてきた。慣れない教職に、かの天才マンも疲労が溜まったかと思っていたが…。
「行ってやるしかないよな…。」
「そうですわね、とっても豪勢な林間学校になりますわね!」
いろいろ夫婦で可能性について考えたものの、結局裏を読むということが苦手な天然ヒーローと、育ちの良すぎるお嬢様ヒーローは、何かあれば力押しでどうにかできるだろうと考えて、『№2』からの召集へと応じることにしたのであった。
八賀根鉱哉は雄英生である。そして、優等生でもあったりする。
「本当に意外だけどな。」
「うっさいわボケ、しばくぞ。」
終業式も終わり、自宅にて座学の復習の励む鉱哉。そこに声をかけたのは、いい加減長い付き合いになってきたルームメイトの友人である。なかなかに失礼な物言いだが、彼の言うこともわからなくはない。何せ鉱哉と言えばタンクトップか、肩から先がないデニムのジャケットを常備し、筋骨隆々とした体躯は2m近いものになる。そして極めつけは―――
「金髪のモヒカンヘッド。ヴィラン顔ランキングなら、例の副担任とタメ張れるんじゃない?」
「お前喧嘩売ってんのか!?」
それこそ泣く子も黙るであろう強面ぶりは、1-Aの中でも屈指のものに違いないであろう。本人としてはただの趣味なので、些か不本意だったりするのだが。
「そんなお前が雄英に推薦入学しのも驚きだったけど…期末試験でも上位だったんだって?ルームメイトとしては鼻が高いよ。」
「はっ、うっせえよ。学費免除のためだ、仕方なねーだろ。」
そんなクラスきってのタンク役を務める彼の照れ隠し。それを聞いて、尚も優等生優等生と煽ってくるルームメイト。いい加減キレた鉱哉が、復習していた教科書を投げつけたのであった。そのまま二人で軽い取っ組み合いを始める青春真っ只中の二人。仲良き事は良き事かなを地でいく二人に、声がかかったのはその時だった。
「鉱哉兄ちゃん…。」
「お勉強教えて!!」
見れば小学校低学年ぐらいの子供が二人、少しだけ開いたドアの隙間から顔を出していた。両方とも男の子、強面の鉱哉相手の所にわざわざ顔を出す以上、日頃からの仲の良さが伺える。年の割に落ち着いて見えるのは、きちんと躾られているからだろう。
「ちゃんと挨拶できたな?だが人の部屋に入る時は、ちゃんとノックからにしろや!」
「「はーい。」」
学校の宿題を教わりにきたという二人。割と部屋には顔を出すようで、鉱哉からの言葉に反省しながらも、どこか嬉しそうに入室してくる。和気あいあいと勉強道具を広げる二人に、復習の手を止めて相手をする鉱哉。そんな様子を傍観者として眺めるルームメイトは、鋼の身体に変貌できる友人にこう声をかけた。
「下の子達に人気なのは、怪獣か何かと勘違いされてんじゃないの?」
「誰が特撮のメインだ!ざけんな!!」
そんな二人の掛け合いに、ようやく年相応の笑い声を上げた小学生達。鉱哉が幼き頃から繰り返す、ありふれた日常の一つであった。
雄光学院。
主に健全な親子関係を円滑に送ることが難しい子供達を対象に、各市町村や国が保護する目的で子供達を預かり育成する児童養護施設の一つ。鉱哉は物心ついた時には、既に施設の一員として生活していたのであった。
「まあ、住めば都とは言うけどな…。」
他を知らない以上、なんだって都に感じるわなと自らの境遇を嘲る鉱哉。そんな彼は現在、朝の食事当番で朝食を子供達や同期へと配っていた。それこそ施設はというと、子供同士のいじめがあったり職員からまともな生活もさせてもらえなかったりと、そんなイメージが付きまとうもの。しかし現実そんなところはほとんどないと聞いているし、少なくともここ雄光学院ではそういった点は全く見受けられなかった。そう、少し老朽化―――つまりボロいぐらいで。
「おら!喧嘩すんなよ!ちゃんと並べ!」
ただ社会と関わった時に、施設の子だからと馬鹿にされないように、躾については一般の家庭よりも厳しく感じてしまうことはあるだろう。鉱哉はこれが普通だが、物心ついてから入院した子達は何かとそうであった。今もそう、まだ慣れていない子が横入りし揉めていたところであった。
「兄ちゃん…。」
「だってこいつが!!」
家ではわがままを言う相手もおらず、暴力もしくは無関心の最中で育った子も多い。守るべきルールはきちんと守らせる。仕方ないわねなんて言ってくれる家族は、元よりいないから。
「横入りなんざそもそもダメだ!!ただな、喧嘩にしちまったお前も悪い!!」
本来なら職員が対応するべきことだが、本職の人間達は向こうの方で、食事の食べ方すら怪しい子供達を見ている。年下の面倒を見るのも、高校生組の役割の一つであった。
そのまま喧嘩両成敗とばかりに、子供達のおかずを一品減らした鉱哉。席について落ち込んでる二人に、周りの子たちが少しずつだが食事を分けてあげている。そうやって回っているのだ、鉱哉の時も、そして今も。
「食った奴から片付け行けよ!!混むんだからちゃっちゃとせえや!」
鉱哉の言葉はキツいものの、そこに害意がないことはみんなわかっている。見た目は怖いが、彼はあくまで優しい怪獣なのだ。
「「「「はーい!」」」」
そんな優しい咆哮に応えるように返事をし、子供達はみな片付けを始めていく。中学生ぐらいの子は勿論のこと、小学校低学年や幼稚園に通うような子もそこは変わらない。放っておいてもやってくれる家族は地球上のどこにもいないし、それこそ施設の躾の一環でもあった。
「…他が羨ましく思うのもわかるけどな…。」
子供達にはそれぞれ外の生活も勿論ある。施設であることをさらけ出すか、はたまた隠しながらか。その中でそれぞれが見た友達の家庭は、さぞかし暖かく見えたであろう。わがままが言えてそれが叶う環境、それと比較して皆言うのだ、「施設は厳しい」と。
「鉱哉君いつもごめんね、ありがとう!!」
「あっ、いや別に俺は、大したことしてねぇから。」
物思いに耽る金髪のモヒカンヘッドに声をかけたのは、職員の中でも笑顔が可愛いことで有名な女性だった。分け隔てなく浮かべるその笑顔に、救われる子供達や職員は多い。
「本当は私たちが見なきゃいけないところも任せちゃってるからさ、いつもマジ感謝してる!!」
「いや、本当に俺じゃどうしようもねぇ子らの相手してんだから、こんぐらい何でもねーよ…。」
そして鉱哉が唯一その睨みをきかせない相手でもあった。そう、理由は思春期の男子高校生特有の、甘酸っぱいあれである。まぁこの施設の男の子は、大概誰でも一度はこの職員に心を奪われてしまうのだが。
そのまま雑談をしながら玄関まで移動する二人。視界に映る下駄箱は、整理がされず靴が飛び出たままになっている。
「相変わらず直さないんだから!」
「仕方ねーガキどもだぜ…。」
しかし二人とも、その脱ぎっぱなしで散らかりっぱなしの下駄箱を直そうとはしない。自分のことは自分で。こういったことで甘やかせば、いつまでも繰り返してしまうと知っているから。
「まぁ鉱哉君も小三まで直らなかったけどね!」
「む、昔の話は辞めろよ!」
再び咲き誇る、しかし今度はどこか悪戯っぽい向日葵のような笑顔。それを見て赤面してしまう自分は、いろんな意味でこの人に敵わないんだろうと――――どこか悔しくもあり、でも嬉しくもある不思議な敗北感の中で、鉱哉は少しだけ、本当に少しだけ今日も笑顔を浮かべるのであった。
雄英高校一年生の林間学校は、夏休み前半に行われる。某副担任にとって非常に身に覚えのあるトラブルが過去にあったため、A組・B組は同じ日程だが、それぞれ別の場所で開催されることになっている。このがっぽい――――学校っぽいイベントを管理する上で、ヒーローに対する生徒の割合を少なくするためだ。
「開催場所自体は近いらしいから、意味あんのかよって思うけどよ。」
大手のショッピングモールを練り歩く金髪モヒカンヘッド――――鉱哉はそう独り言ちた。かのイベントの準備のために、買い出しへと顔を出した彼。見れば同じクラスの同級生達も、先ほどからチラチラとその姿を見ることができる。
「ったく落ち着きねーなあいつら。嵐島は相変わらず孤城に焼かれてたしよ。」
風使いの癖に空気が読めない同級生――――『風しか読めない大馬鹿野郎』こと、嵐島飛天が例のごとく孤城姫子に燃やされていたのだ。いつもの光景と言えばいつもの光景である。ただここは公共の場。小野田小町と出水洸汰の姿も見受けられ、暴れ過ぎだよと姫子が怒られているのが見て取れた。
「…同じクラスだと思われるのはごめんだぜ、施設のガキどもの方がしっかりしとるわ。」
『博多弁天』なんて叫び声が聞こえてきたと思えば、同じクラスの女子が三人揃って見るのも恥ずかしいポーズを取ってキメ顔をしている。頼むから雄英高校だと名乗らないで欲しい。確かB組だろうか、どこか見たことがある男子生徒達が指を指して笑っていた。
「一人で来て良かったわ。いろんな意味で。」
鉱哉自身、一緒に買物にいく同級生がいないわけではない。髭面の偉丈夫である漆原亜衣磁や、骸骨パーリーピーポーな骨川煙煉とも仲が良い。今日も一緒に行こうかなんて話はあったが、鉱哉の方から断っていたのであった。土日連れ立って遊ぶこともあるが、買い物というイベントだけはなんとなく昔から避けていた。
「そりゃあまぁ、一般的な家庭と比べたら少ないわな…。」
林間学校の準備があるからと、施設へと陳情したおこずかい。別に誰と比較した訳ではないのだが、どうにもこうにも後ろめたさを感じてしまう部分があった。そんなことを気にする奴らではないことぐらい、鉱哉が一番わかっているのだけれど。
「みみっちいこと考えてんな、柄にもなくよ。」
夏休み、非常に親子連れも多いショッピングモール。決して自分のことを不幸と思った訳ではないのだけれど、どこか夏らしくない郷愁を感じてしまうのは、仕方がないことなのかもしれない。
「大空君や大江ノ山君どこに行っちゃったのかな…。」
ショッピングモールの中、一人探し人を求めるのは武藤遊次である。アッシュベースの髪色にカチューシャをする立ち姿は、大人でもなく子供でもない――――そんな移りゆく季節にしかない可愛さを揺蕩えている。
「どうお姉さん、俺らと一緒に。」
「いいじゃんいいじゃん!」
「ごめんなさい、友達を待っているので!」
だからだろうか、美男美女が多いと言われるA組の例にも漏れず、男性からナンパされることも非常に多かったりする彼。そう、あくまで彼。つまるところ、そういうことなのである。
「好意を持ってもらうのは嬉しいんだけどね…。」
ナンパしてきた男性二人を慣れた様子で袖にした後、再び連れの二人を探す男の娘。季節は夏真っ盛り。肩まで伸ばした髪が汗で頬に張り付くのを、少しだけ苛立ち気に右手で払っていた。
スマホでの連絡は取れない。二人してどこかのんびりしている彼らだ。大方鞄の奥に入れっぱなしで、気づいていないのだろう。
「もしかして僕、はぐれたことにすら気づかれてなかったりしない?」
夏の暑さから来るものとは違う嫌な汗をかきながら、遊次はその可能性に思い至った。男の娘なんてクラス唯一のマイノリティを誇る彼である。本来なら目立って然るべきなのに、他の灰汁が強すぎていつも存在を忘れさられるのだ。酷い時などただの出オチキャラなんじゃないかと言われたことがある。
「というか一緒に来たことすら忘れてないよね…?」
先程もナンパされた通り、第一印象こそ鮮烈なものがあるようだが、なぜかみんな継続的に会うようになると自分のことを認識しなくなる。過去には親にさえ買い物に来た先で忘れられたのだ、同じクラスメイトの彼等ならそういった惨劇(あくまで主観的な)が再び起きてしまいかねない。
「影の薄さって、どうやったら治るのかなぁ…。」
岸君に聞いてみようかなぁっと、影を操るクラスメイトのことを思い浮かべて、あの些かどころかかなり癖のある喋り方と対峙することを想定し、思わずため息を吐いてしまう遊次であった。そんな時だろうか、前方から歩いてきたのは金髪のモヒカンヘッド。
「あっ、八賀根君だ!」
いろいろな意味で心細かった所に現れた、クラス一番の前線タンク。如何せんそのインパクト抜群な外見のせいか遊次は少し苦手としていたが、今は迷子という立場がそれを上回らせたらしい。己から率先して声をかけ、なんとか大和や外道丸と合流できないかそう思っていると…。
「あの八賀根君!!」
「…。」
「いや真横で叫んでんに気づかないとかそんなこと起こり得る!?」
それでも気づかないので、一気に接近して鉱哉の腕を掴みにいく男の娘。普段ならそんな強気な行動は絶対に行わないのに、気づかれない苛立ちと合流できない焦りから、彼らしくもない結果を生み出させたようだった。
「おっと!!」
しかし鉱哉から見れば、いきなり意識の外から腕を掴まれてしまったようなものだ。思わず声を上げて、反射的に捕まれた腕を引いてしまう。それこそ2m近い身長に、青春を訓練に身を窶す鉱哉が反射的にでも腕を引けば、もう一人の男子…間違ってはいない、男子高校生が力負けしてしまう訳で。
「キャ!!」
「…っと危ねー、誰かと思えば武藤じゃねーか。」
態勢を整えた鉱哉に、遊次は抱きしめられる形になってしまっていた。突然のことに思わず赤面する遊次。しかし当たり前であるのだが、鋼の前線タンクはどこ吹く風。
「お前いきなり、人の手引っ張ってんじゃねーぞ?」
「!声をかけて気づかなかったからだよ!」
そんな鉱哉に、男子高校生とは思えないソプラノボイスで抗議する遊次。そういえば、音楽の授業でも彼のパートは女子だったりする。何がなんだかわからない。一瞬自分が何と話をしていたのか錯乱したモヒカンヘッドであったのだが、とりあえず落ち着いて、遊次がここにいる理由を聞き出すことにした。
「大方お前も林間学校の買い出しってとこか?一人か?」
「そうなんだよ、そしたら大空君たちとはぐれちゃって…。」
「スマホで連絡取ったらいいだろうが…。」
「なんか鞄にしまってるのか気づかなくて…てかそもそも僕が居なくなったことに、気づいてないのかもしれないっていうか…。」
遊次のあんまりと言えばあんまりな状況に、開いた口が塞がらない鉱哉。そのまま非常に残念な生き物を見る目で、出オチ系男の娘のことを見てしまう。
「いや、まぁ、その、なんだ…。」
「いやもうそこはいいよ!わかってるから!てか鉱哉君だって、さっき声かけた時気づかなかったから同罪だからね!同情してくれてるけど!あっ、目を逸らさないでってば!」
己にも責があることを問われ、思わず目を背けてしまう筋骨隆々のモヒカンヘッド。性根は優等生で真面目な分、己に非がある時は無駄に言い返さなかったりする。だからその責を果たそうする所も含めて、彼は優しい人間に違いないのだ。
「しゃーねぇなぁ。」
「何が?」
「気づかなかった詫びとまでは言わねーが…。大江ノ山達と合流できるまでだ、付き合ってやるよ!」
思わずその優しさというか甘さの発露に、きょとんとした表情を浮かべてしまう遊次。そんな様子を尻目に、行くぞと歩き出してしまう鉱哉。遊次は気づかないであろう、彼が一人できた理由。それを曲げてまで共に歩こうとしたのは、上記の通り彼の優しさもあるのだが…。
「一人にされんのは寂しいだろうがよ。」
「え?なんて?」
「何でもねー、置いてくぞ!」
クラス一番の肉体を誇る鉱哉を、体力テストでは女子にも負ける遊次が追う。普段はあまり会話がないどころか、連絡先すら知らない二人だけれど。
日頃見えないからこそ触れられた意外な一面に、妙に臍痒い感情を抱いた遊次なのであった。
生徒達が林間学校の準備をするのに精を出していた、その日の夜。雄英高校の職員室、夏休みとはいえ教員が休みではなく、しかしこの時間には誰も残っていないようなそんな時。ようやく安物の椅子に慣れてきた爆豪勝己は、その金髪にディスプレイの明かりを映えさせながら、PCの画面に向けて話しかけていた。
「奴は俺が雄英に勤め出してから動いた…間違いねーな?」
そう問いかける暴君の赫眼は、生徒達を見つめるどこか優しくもあり厳しくもあるものとは違う…獲物を罠に嵌める狩人のそれであった。PCに映る人物は、その眼光にも恐れることなく答えを返す。
「うん、間違いないと思う。僕や切島君が遭遇した件だけじゃない…雄英周辺のパトロール時間外の地域が狙われてきてる。」
緑がかった天然パーマの黒髪。学生の頃に比べたら幾分垢抜けしたものの、どこか芋っぽさが抜けない『壊れた英雄』――――緑谷出久が画面越しに言葉を発していた。インターネット越しのテレビ会議。元英雄の家と雄英高校という、ウィザード級ハッカーも真っ青になるような、そんな強固なプロテクトがかけてある回線での密談だった。
「狙いは『№2』であるかっちゃんの失墜。生徒達を守れなかった教師として晒上げること。そして、ヒーローのパトロール区域を把握している人物。」
「そんな奴がA組の林間学校、その開催場所を知っちまったら動くしかねーわな!」
夜の帳もとうに落ちた、ディスプレイ以外に明かりなき職員室。そんな中不適に笑う、獲物を捉えた爆撃の狩人。幾人もの犯罪者達を刑務所に叩き込んだ実績そのままに、新たなヴィランに狙いを定める。
「それが例え、また元1-Aであってもか…。」
「当然だな。当たり前のことだろうが!!」
かつて葉隠透がそうであったこと、その時の傷を思い出し目線が下がる出久を、真っ向から否定する爆心地。それは引退した人間と現役との差というより、生来の気質によるものだろう。
「でも…。」
「でもも糞もねーんだよ!!何食わぬ顔して今日までヒーロー面してきやがったんだ、ただじゃあおかねー!!」
その「でも」が幼馴染からの気遣いであることぐらい、金髪の暴君も分かってはいたのだが、その身に背負ってきた矜持が受け取ることを拒否していた。
「ともかく林間学校で必ず星は動く。何かしらの証拠は掴ませてもらうぜ!!」
「そうだね、見過ごす訳には「あぁー!!また爆豪君となんかこそこそしよる!!」
うげぇ、丸顔―――勝己がそう呟いた時には、画面の中には嫌でも見慣れた幼馴染の顔ではなく、その未来を約束した相手の顔でいっぱいになる。そうなった瞬間、導火線の火を消すかのごとく、会議中を示すウィンドウを閉じることにしたのだった。
「鍵ぐらいきっち閉めとけ、糞ナード。」
今頃へそを曲げた婚約者の機嫌を取るのに、きっと幼馴染は苦労している頃だろうが、知ったことではないわと、勝己はため息ともにその瞳を閉じるのであった。
卒業式だったと記憶しています。それこそそれまでは、何度か外で食事に出かけたこともありましたし、忙しい合間を縫って遊びに行ったこともありました。でも一向に関係性を進展させる言葉をいただけないものでしたから、てっきりこのまま仲の良い異性の友人、その関係で終わってしまうと思っていましたの。それが突然ですわよ?みんながみんな別れの挨拶をしている校門で堂々と、
『今から二人で話がしたい。』
周囲の方々の視線を、二人占めしちゃいましたわね。そこからは大変でした。どこに行こうとも誰かがついてくるものでしたから、なかなか二人切りになれなくて…。フフフ、拗ねないで下さいませ。お互い今より若かったですし、あなたはそういった事に疎かったから。でもその時ずっと手を引いて移動して下さったことは、今でも私の宝物ですのよ。
それからまさか同学年のほぼ全員が協力してくれて、私たちを二人にして下さって…。皆様本当にああいうイベント事が好きでしたわね、かく言う私もそういったことはとても楽しんでおりましたけれど。
澄み渡るような青空と、まだ咲き始めた桜の木々を、今でもとてもよく覚えています。あなたはどうですか?緊張してそれどころじゃなかった?あら?突然連れてこられた私もかなり固くなっていましたのよ?それでも、この世界で一番幸せな瞬間を覚えていたかったから…。精一杯忘れないようにしました。思った以上にシンプルでぶっきらぼうな告白でしたけど、あの日から変わらずに、大好きですよ、旦那様。
なんか緑茶もいるけど、轟百編開幕です。